次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 第1章 02
2010/03/08 Monリリカル・クロニクル
 竜徹が家に戻ると、廊下の向こう側から誰かが飛び出してきた。そのままドンッ、と竜徹の腹に飛び込んでくる。わぷっと声をあげて後ろにひっくり返るその誰かを見て、腹をさする。竜徹は呆れた声をひっくり返った誰かに向けて。


「なにやってんだ? お前」
「りゅ、竜徹さん」


 ひっくり返った影はなのはだった。なのはは鼻を押さえながら、見つけた事に安堵したように溜息を吐く。その後ろにはやっぱり草の獣がくっついていた。よく見るとさっきからしきり無しに酸素を吐き出しまくっている。
 それだけ疲労してるって事か、と竜徹はなのはの身体の状態を把握する。だが手は抜くつもりは無い、と竜徹は外を見る。もう夕暮れに染まった空。暗くなるのはすぐだろう。そう判断すれば竜徹はなのはを見て告げる。


「もうすぐ暗くなる。山に行くのはまた明日だ。これから道場に行くぞ」
「道場、ですか?」
「あぁ」


 言う事は言った、と言わんばかりに竜徹は道場の方へと歩いていく。なのはもそれに従って後ろを付いて行く。
 竜徹が道場の扉を開き、竜徹が中に入り、続いてなのはが入る。なのはは初めて見る道場の中を興味深げに見渡している。なのはが辺りを見渡している内に竜徹が立て掛けてあった竹刀を手に取る。全部で三本。一本は普通のサイズの竹刀だが、二つはやや短めに作ってあるようだった。
 一本を脇に抱え、二本の竹刀を両手で持ってなのはの方へと振り向き、竜徹はなのはへと声をかけた。


「おい。受け取れ」
「ふぇっ!? わ、わっ」


 竜徹に唐突に投げられて渡された竹刀。なのはが慌てた様子でなんとか手に取ろうとする。一本は取れたが、二本目の竹刀はこつん、と綺麗に頭に当たった。思わず頭を抱えて蹲るが、草の獣が常時回復している為、すぐに痛みは消える。
 竜徹はなのはの様子を気にした様子もなく、感触を確かめるように竹刀を振るう。感触を確かめ終わったのか、竜徹はなのはへと視線を向ける。


「これから適当に攻撃するから適当に防げ」
「は…? ちょっ、ちょっと待ってください!? 何で竹刀を!?」
「お前は反射神経は悪くない。だが、運動となるとパッ、としない」


 いきなり竹刀を握る展開になのはは付いていけず竜徹に問いかける。すると竜徹に事実を言われて思わず息が詰まり、唸る結果となる。それを見ているのか見ていないのかわからない様子で竜徹が更に続ける。


「だが完璧に出来ない、ってわけじゃねぇだろ。運動が苦手? スポーツが出来なくたって指が動けば運動になる。スポーツ出来なくても指先器用な場合がある」
「そ、それって暴論なんじゃ…」
「間違ってねぇだろ。人には身体にあった動きって物がある。人は何か得意な物を見つけてそこから発展・応用していく」
「…それが何だって言うんですか?」
「お前。御神についてどれだけ知ってる?」
「古流剣術を受け継ぐ一族で、ボディーガードとかしていた、とは聞きましたけど…」
「そうだ。で、だ。話は戻る。…テメェは完璧に運動が駄目なわけじゃねぇ。ただ身体が思うとおりに動かない。違うか?」


 なのはは竜徹の言葉に考え込むように眉を寄せる。確かに、思い返せば反応は追いつく。それでボールを取る、という動作にまでは結びつくのだが、どうにもうまくいかない。手が追いつかなかったり、滑ったり、とにかくイメージ通りにいかないのだ。
 ボールが見えているから取る、というヴィジョンは浮かぶのだが、それが上手く反映されない、そんな感じだっただろうか?


「そりゃお前がお前の身体にあった身体の動きをしてないからだろうな」
「そ、それと竹刀がどう関係するんですか?」
「御神は小太刀二刀流を扱う一族だった。…なら、テメェが最も身体に合う動きってのは小太刀を持った動きじゃねぇのか?」
「…は?」


 今、一瞬竜徹の言った事がわからなかった。小太刀を持った動きが、己にとって最も身体に合う動き…? ようやく言葉の意味が脳に浸透したのか、なのはが慌てたように首を振る。暴論だ、と思っていたがここまで暴論だとは思いもしなかった、と。


「そ、そんな!? ば、馬鹿げてませんかそんなのっ!?」
「うるせぇな。そうじゃなかったとしてもやる。俺が決めた。拒否権はねぇ」
(な、なんて理不尽な…!)


 竜徹の有無を言わさない言葉になのはは思わず内心呟く。ふと、なのはは手の中に収まる竹刀を見つめる。小太刀を持った動きが最も身体にあった動き? そんなの馬鹿げてる、と思うのだが、どうやらやらざるを得ないようだ。


(…こんなの初めてだよ)


 兄達は確かに剣術をやっている。だが己は運動が出来なかったし、人を傷付ける事に積極的でも無かった。必要な時があれば喧嘩もしたが、それでも誰かを傷付けたりするのは好きじゃない。やってはいけない事だ、と思う伏もある。それは魔法だって同じだった。
 だから見ているだけだった。そう、ただ見ていただけだった。兄と姉の稽古を。脳裏に記憶を呼び起こしながら、なのはは竹刀を握りしめる。別に特別な感じはやってこない。
 …やっぱり暴論。竜徹さんの暴論だよ、となのはは思う。小太刀を扱う動作がなのはの身体に合っているだなんてそんな事が在るわけがない、と。


「行くぞ」
「っ!?」


 唐突に竜徹が言い、竹刀を振った。手を抜いたような振りだ。だがそれでも早い。思わず避ける。身体を横にして、半身になる状態で避ける。竹刀が床を叩く。だがその反動を利用して竹刀が跳ね上がる。なのはは急な竹刀の動きに付いていけない。


「うわぁっ!?」


 思わず仰け反る。足が蹈鞴を踏むかのように後ろへと下がり、バランスを崩しそうになる。そこに跳ね上がった竹刀が振り下ろされ、パンッ、と額を打った。一瞬目の前に火花が散り、なのはは額を抑えて蹲る。


「~~~っ!!」
「ちゃんと竹刀使って防がないとまだ気絶するぞ、オラ。立て」
「は、はい…」


 使った事も無いのに防げとか言われても無理ですよっ!! と竜徹に返事をしながら思う。理不尽だ。だがしかし、やらなければならない。自分を奮い立たせてなのはは竹刀を握り直す。竜徹は一度距離を取っている。肩に竹刀を載せてぽんぽん、と肩を叩いて。


「行くぞ」


 また一言と共に竜徹がこちらに向かって無造作に上段から竹刀を振るう。竹刀を使え、って言われても、と思いつつも、とりあえず竹刀で受け止める事にしてみた。竜徹が振るう竹刀にぶつけるように振るう。ぶつかり合う竹刀と竹刀。そして力負けしたなのはの竹刀がなのはの顔を直撃する。再び気持ちの良い音が鳴り、なのはが再び額を抑えて蹲る。


「~~~っっ!!!」
「馬鹿か。オメェ。片手で防げると思ったか?」


 額が痛い。もの凄く痛い。両手で顔を押さえてその場に蹲りながらなのはは涙目になるが何とか堪える。背中に乗った草の獣が心配そうに前足でこちらの肩を叩いている。そうこうしているウチに痛みは消える。
 そして起き上がる。痕残ってないよね…? と思いながら涙目のまま、竹刀を構える。気づけば竜徹は再び距離を取っている。そして、先ほどと同じように肩に担ぐように竹刀を構えて。


「行くぞ」


 再び一言。竜徹が先ほどと変わらない動作で竹刀を振るう。目は追いついている。さっきは片手では防げなかった。なら、どうする?
 なのはの出した答えはシンプル。足りないなら補えば良い。一本が駄目なら、二本で。
手に持った竹刀を交差させるようにして、竜徹が振った竹刀を挟み込むように抑える。
 止めれる。少し驚く。だが竜徹は竹刀に全然力を込めてない。本当に軽く振っただけなのだろう。竜徹がそのまま竹刀を弾き、右側から肩を狙う軌道で竹刀を振るう。なのはの目は追いついている。だが、今度は右側からの一撃。片手じゃ駄目、両手で防ぐには?
 なのはは身体を動かす。身体を半身にして再び交差させるようにして竜徹の竹刀を受け止める。すぐ目の前には竜徹の竹刀がある。危なかった。と思った時、腹に衝撃が来た。思わず吹き飛ぶ。
 肺の空気が抜け、ゴホッ、咳が漏れた。足を上げた態勢のままの竜徹が呆れたように倒れ込んだなのはに視線を向ける。


「適当に攻撃するって行ったろ? 足が無いとは言ってないぜ?」
「ひきょ…うだ…」
「戦いに卑怯も糞もあるか」


 竜徹の物言いになのはは、理不尽だ、と思いながらも起き上がる。草の獣の吐く酸素量が若干増したのを感じる。疲れてるんだな、と思う。だが疲労は感じない。ならまだ自分は頑張れる、となのはは身体を起こす。
 竹刀を持ったまま、先ほどいた位置まで戻る。竜徹が再び竹刀を肩に担ぐ。なのはは竹刀を構える。最初から若干交差させた形に持って構え、竜徹を見つめる。


「行くぞ」


 再び一言。上段から脳天を狙う一撃。すぐに竹刀を交差させたまま上へ。挟むように受け止める。すぐに、竜徹が竹刀を持ち上げる。左肩狙い。左に半身になり、竹刀を交差。防ぎ。再び竜徹の足が迫る。慌てたように蹈鞴を踏むように斜め後ろへと下がる。
 だが空振りした足がそのまま地を踏み、竹刀を振るう。思わず片手で防ぐが、力負けする。だが自らの身に当たらないようにすぐさま再び半身になり、当たる寸前の所で竹刀を交差させて押さえ込む。
 だが態勢が悪い。力が入りにくい態勢だ。力負けして腹に竹刀が腹に入る。そこから痛みが発生し、思わず顔を顰める。


「いっ…つ…」
「おら。どした。ちゃんと防げ」


 そして竜徹は再び、距離を取る。再び竹刀を肩に担ぐ竜徹。なのはは自らの持つ竹刀を持つ。片手じゃ駄目、両手じゃないと防げない…。だけど常に両手じゃ防げない。
 …どうする? となのはは考える。暫し目を閉じて息を整えて、そして目を開いて竜徹の前に立つ。


「行くぞ」


 一言。それと同時に竹刀が振り下ろされる。なのはは竹刀を上げる。一本だけ。そしてそのまま刃と鍔に当たる部分で受け止める。それに竜徹が面白い物を見たような表情を浮かべる。刃と鍔の丁度付け根にある部分で防がれてる為、力を入れても押し込めない。
 ならばと蹴りを入れようとした所を、なのはが木刀で腹に突きを入れようとした為、後ろに飛び、距離を取る。


(…ほらな。やっぱり)


 竜徹は半ば確信していた。なのはの動きが徐々にだが良くなってきているのを。人は自ら動作を覚えて、そして新しい事を始める時似たような動作を応用する事がある。だが、なのはの場合、その自らに合った動作を覚える機会が無かった。
 何故か? それは、なのはにもっともあった動きが「小太刀を持った動作」であるからだ。何を馬鹿な、と思う人もいるだろう。だが日常を考えて欲しい。ふと気づけば、いつの間にかある動作にある動作を応用している事が無いだろうか?
 人は常に動きを応用し、様々な事に対処していく。だが、それにはやはり元となる動作が必要なのだ。高町なのはの場合はそれが特殊であり、そしてそれが特殊であるが為に触れられなかった。
 誰が幼い子供に竹刀を持たせて遊ばせるだろうか。それに加え、なのはは女の子だ。男子と違い、ちゃんばらなどには興味は無いだろう。それに幼い頃のなのはは士郎がテロによって負傷した為、寂しい年少期を送っている。
 その時に「傷付けると何かを失う」や、「力は怖い物」や、力に対する忌避感を覚え、力に対して過敏に避けるようになったとは考えられないだろうか? 事実。なのはは無闇に力を振るう事を嫌う。必要な時には発揮されるその力をなのはは無意味に見せつけようとしたりはしなかった。
 故になのはは元となる動作である「小太刀を持った動作」を行う事は無かった。しかし、そんな特殊な動作を元にする人間がいるのか? そう思う人もいるだろう。だが竜徹はその可能性を示唆するものをなのはが持っている事を知っている。


(血、だろうな)


 御神の血。長年受け継がれてきた古流剣術の剣士の血。それがそうさせるのだろうか? 事実、なのははその片鱗をこれまでに見せつけて来た筈だ。これまでの魔法を用いた闘争の中で。
 戦う為になのはは強くなる。力を望まずとも、戦う度に強くなる。戦う為の才能は片鱗を見せていた。それはやはり御神の血がそうさせるのではないだろうか。
 だからこそ竜徹はなのはに小太刀を模した竹刀を振るわせる。それが、お前の本来の動作なのだと。それこそが、お前の原点であるのだと。そしてそれは竜徹の予想を外す事無く合致した。


「行くぞ」


 そして竜徹は竹刀を振るう。なのはを動かす為に。教える為に。導く為に。竹刀の噛み合う音が、静かに道場の中に響き渡った。





    ●




 ――時は流れる。
 奥多摩UCATの中に佐山御言はいた。その傍にはいつも通り新庄運切と、そして自動人形が一人、付き添っていた。赤髪をショートカットのその自動人形の名は8号。佐山を慕う自動人形の一人だ。


「佐山様から頼まれていた「御神家」の調査の事ですが…」
「どうかね?」
「はい。まずはなのは様の父親。高町士郎様の調査を終えました。…父、不破恭也。母、不破雪花。両親を共に早くに無くし親戚の不破家に引き取られたそうです。その後はボディーガードなどの仕事を勤め、一度は結婚し、息子の恭也様を授かりましたがすぐに離婚。その後はご子息を連れて世界各地を旅して回っていたそうです。その為、御神家、不破家があったテロに巻き込まれる事が無かったそうです。その後、御神家の宗家のご息女であった御神美由希を引き取り、そして現在の妻である高町桃子と出会い結婚。その後なのは様を授かったそうです」
「高町士郎の両親については?」
「不破雪花様は不破家の中でも指折りの実力者であったそうです。ですが…」
「…ですが?」


 言い淀んだ8号に新庄が不安げに眉を寄せて問いかける。それに8号が少し額の眉を寄せながら。


「不破恭也についての出生からその経緯までがまるでわかりません」
「高町士郎の父親がかね?」
「はい。不破雪花様と婚約なさる前までは「御神」と名乗っていたそうなのですが…御神家に「恭也」という名の持つ子は当時産まれていません。養子、という線もありません」
「隠し子かね?」
「それでも出生の記録などの経歴がほぼ全てが残っていないのは不可解では? そこまで隠さなければならない意図が不破恭也にはあったと? 例えば、他のGの人間であった、と」


 8号の問いかけに佐山は顎に手を当てて考え込むような仕草をしながら黙り込む。3人の歩く音だけがUCATの廊下に響き渡り、暫し、沈黙の時間が過ぎる。


「…仮に、不破恭也が他Gの人間と考えるならば、何故不破恭也は「御神流」を使えたのかがわからない」
「そうだよね。だったらおかしいよね…」


 近いと言えば2nd-Gだが、そこで御神流が伝わっていたとは考えにくい。可能性は低いと思い、新庄は佐山に同意するように呟きを入れる。佐山は顎に当てていた手を離し、足を止める。


「何かが、引っ掛かるのだがね」
「でも、わからないんでしょう?」
「あぁ。もう少し情報が欲しい。8号君。頼まれてくれるかね?」
「Tes.それが佐山様の望みなら」


 8号が一礼をして佐山と新庄に返す。それに佐山が1つ、頷いて。


「御神についても気になる所だが…なのは君はどうしているだろうかね?」
「もう一週間経つよね? なのはちゃんが飛場先生の所に行ってから」
「ふむ…後で様子を見に行こうかね? 新庄君」
「そう、しよっか」


 佐山の提案に新庄が頷いて返す。そしてそれを聞けば佐山は再び歩き出した。それに新庄が付いていき、8号もまた付いていく。
未だ真実は遠い所にある。それを、胸の内で再確認しながら彼らは歩みを止めずに向かってゆく。




     ●





 山を疾走する影が2つ。1つはなのは。1つは竜徹だ。互いに山の急斜面を駆け下りながら激しい追走劇を繰り広げていた。なのはが短く息を吐き出し、急斜面な地を蹴りながら落ちるように走っていく。
 それを追う竜徹。そのスピードはなのはよりも若干早い。だが、それを振り向いて確認する事はなのはは無い。ただ、前を見据えて走っていくだけだ。なのはを追い、老人が更にスピードを上げる。勢いよく強く地を蹴り、なのはとの距離を詰める。
 後、数センチという所でなのはが振り向いた。同時に竜徹が手を伸ばす。交錯する刹那。竜徹の手がなのはの手によって弾かれた。再度、竜徹が手を伸ばす。だがなのはは身を屈め、その手を避ける。
 そのまま竜徹の足を容赦なく蹴りつける。だが竜徹は怯む事は無い。三回目の伸ばされた手はなのはの服の襟首を掴み、なのはを吊り上げる。


「終わりだ」
「まだっ!!」


 宣告する竜徹に対し、なのはは闘志を殺さぬまま、拳を握り、竜徹の顔面をなのはは思いっきり殴った。まさに容赦無用で手加減なく殴った。その拳を受けた竜徹が一瞬よろめく。だが、すぐさま顔を戻してまるで堪えていない様子でなのはへと視線を戻す。


「終わりだっつてんだろ」


 こちらもまた容赦無用、手加減なしになのはの腹に思いっきり拳を叩き付けた。拳を受けたなのはが肺の中にあった空気を全て吐き出して、くの字に身体を折る。それから一瞬震えたと思えば一気に身体の力を抜いて力尽きた。


「ったく…この野郎。容赦なく殴るようになりやがって」


 おー、いてぇ、と呟きながら竜徹はなのはを背負って山を下り始めた。高町なのはがやってきて一週間。この間、彼女が起きている間は飛場の特訓と食事、風呂以外の時間は無い。
 常に竜徹がなのはの特訓を行う。その間になのはもこのように反撃してくるなどという成長もしてきた。身体能力も上がってきている。確かに成果は出始めているようだ、と竜徹は感じていた。
 

(…まっ、多少は上がって貰わなければ困るけどな)


 だが実際、竜徹が思った以上の成果は着実に出始めている。山を登る時、あまり距離が離れなくなった。逆に山を下りる時は走行距離も長くなり、捕まっても蹴るなどの反撃をしてくるようになった。これは確実な進歩だ。
 この劇的な進歩の背景には4th-Gの草の獣の疲労回復による半永久的なトレーニングと、小太刀を取り入れた訓練を行うようになってからの高町なのはの著しい成長があったからだ。
 小太刀を取り入れた訓練を行うようになってからなのはの反射能力などが大幅に成長しつつある。その様はまるで乾いたスポンジが水を吸い上げるかのようである。


『なのは?』
「…んぅ…?」
「お。目が覚めたか?」


 なのはの背負うザックに入った草の獣がペチペチ、と背を叩くと、それになのはが呻き声を上げながらゆっくりと目を開けた。このように耐久力も付いてきた。高町なのはは確実に成長している。
 本人曰く「慣らされた」と苦笑を浮かべたそうなのだが。それは真偽の程は定かではないし、仮に真実であったとしても竜徹にとっては痛くも痒くもない話だが。


「お腹…」
「んだよ。捕まったお前が悪いんだろうが」
「違います…お腹空きました…」


 ぐったりとしながら力なく呟いたなのはの腹からぐ~、と可愛らしい音が鳴った。それになのはが顔を赤くする。草の獣が首を、こくり、と傾げて。


『なのは。えねるぎーぎれ?』
「うぅー…お腹空いたー、竜徹さーん、早く帰りましょうよー…」
「うっせぇな。ペチペチ叩くんじゃねぇ。つか自分で歩けっ!」


 なのははねだるように竜徹の背を叩きながら言う。だが竜徹はなのはがそう言うなり、不満をぶちまけたように背に乗っていたなのはを剥がし、地面へと放り捨てた。唐突に放り捨てられた結果、地面に大の字着地をするなのは。へぶっ、と可愛くない悲鳴がなのはの口から零れて。


「何でいきなり地面に叩き付けるんですか!? 痛いじゃないですかっ!?」
「うっせぇ。重いんだよ」
「女の子に重いとか言わないでくださいっ!!」
「うっせぇ。重い物は重いんだよ」


 怒り心頭、と言った様子でなのはが頬を膨らませるが竜徹は気にした様子も無く山を下りていく。なのはも竜徹を追って走り出し、竜徹に向けてドロップキックを放つ。竜徹はそれを見ないで回避。
 足を掴んで動きを止める。そしてそのままズルズル、となのはの足を抱えて、なのはを引き摺るように引っ張りながら歩いていく。そしてそのままハッ、と鼻で笑って。


「アホ。百年早い」
「むぅーーっ!! って痛いっ!? ちょっ!? 竜徹さんっ!? 木の枝とか痛いっ!? っていやぁああああああっっ!! 虫、虫服の中にっ!? いや、取って、取ってぇえっっ!?」
「あー。うるせぇ」
『やかましい?』
「まったくだ」


 ジタバタとのたうち回るなのはを引き摺りながら竜徹は気怠げに溜息を吐きながら山を下りていく。草の獣は引き摺られるなのはの背の上でのんびりと酸素を吐き続けていた。
 竜徹が山を下りてくる頃になれば大分外は暗くなっていた。竜徹に引きずられながら返ってきたなのははもうドロドロのボロボロだ。絶望しきった表情で涙を流してぶつぶつと呟きを零している。


「ふぇぇ…虫嫌い…気持ち悪い…もうヤダ…絶対嫌い…嫌いったら嫌い……」
「何トラウマってやがる? さっさと風呂入ってメシ食ってこい」


 飛場道場の玄関前までたどり着いたなのはと竜徹。竜徹はウジウジとトラウマっていたなのはを蹴り飛ばして入り口へと押し込む。その際に固い玄関の床と顔面衝突をしたのだが、もはや文句を言う気力すら無い。
 肉体的な疲労は回復しても精神的になかなか追い付かなくなってきている。このクソジジィ、ともしくは心の中で思っているかもしれない。


「…あれ?」


 ふとなのはが顔を起こすと、そこには普段見慣れぬ靴があった。誰の靴だろう? と思いながら見ているとドタドタと廊下を駆けてくる影が見えた。


「ちょ、ちょっとなのはちゃん大丈夫!? ボロボロだよっ!?」
「あれ? 新庄さん…?」


 目の前にいたのは新庄だった。何故ここに? と疑問に思いながら見つめていると竜徹に踏まれた。ムギュッ、と声を挙げながら再び床へと顔を打つ。竜徹は靴を脱いでそのまま家の中へと入っていく。新庄はあまりにも唐突だった為、何も言えず、それから少し間をおいてから。


「…大丈夫?」
「…ヘイキデス」


 片言で呟くなのは。やっぱり心の中で、あのクソジジィ、と思っているのかもしれない。そんなやりとりをしていると新庄の後ろにもう一人、誰かがやってきた。


「いや。なかなか随分な姿だね。高町君」
「…佐山さんも来てたんですか?」
「君の様子を見にね」
「そうですか。ありがとうございます。ちょっと待っててくださいね。お風呂に入ってから着替えて来ますんで」


 そう言ってなのはは何事も無かったかのように立ち上がり、すたすたと家の中へと歩いていってしまう。それを佐山はほぅ、と1つ頷いて見送り、新庄は引きつった笑みを浮かべて。


「…竜徹さん、容赦無いなぁ…」
「それでこそ飛場先生だよ。さすがはドS変態爺だ。しかし高町君も凄いね、この一週間で大分慣れたようだ」
「慣らされた、の間違いじゃない?」


 佐山の関心したような言葉に、新庄が呆れたように呟き、額に手を当てて溜息を吐くのであった。


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