次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 序章 06
2010/03/08 Monリリカル・クロニクル
 海鳴市。そこの一角にある一軒家、高町家。その家では現在、高町士郎だけが在宅している。他の家族の面々は姿を消したこの家の末女、なのはを探している為、今、この家にはいない。
 そこで何故士郎が残っているのか? それはもし、なのはが誘拐されていた場合、身代金の要求があるかもしれない。そう言った時の対処で尤も冷静であれるのは士郎であろう。という結果から、士郎は自ら家に残る事を決めていた。
 本当はすぐにでも飛び出して娘を捜したい。だが、ここで待つ事もきっと実りになるのだと信じて士郎はただ縁側に座っていた。身動きせず、自らを落ち着かせるかのように。


「…なのは」


 その中で静かに行方を眩ませた娘の名を呼ぶ。今思えば、なのはは自分と良く似ている、と思う。良い子に見えて、実はその中身は結構な我が儘だ。だが、それを押し込めてしまっている。
 …あの日。士郎がボディーガードの仕事に就き、テロに遭い、重傷を負ってしまったあの日から。それからなのはは我が儘を言わなくなり、良い子になろうとし、自ら抱え込むようになった。
 俺の責任だ、と。士郎はそれを思い出す度に悔やみ、それが何にもならないと理解しつつも、そう思う事を止められず、そんな自分に苦い感情が宿る。それはずっと抱え続けてきたもんだが、最近になって更に重くその感情が滲み出てくるようになった。
 魔法使い。なのはが踏み込んでしまった異世界。それによって得られた物はあまりにも重かった。そしてそれを失った。支えきれず、崩れ、その身すらも砕きかけて、なのははそうして全てを失った。
 止めるべきだった、と何度思っても時は返らない。そして、きっと止めても無駄であったのだろうと士郎は思う。あの子は自分に良く似ているから。だからこそ止まらないのはわかっている。頑固だからな、と士郎は思い、苦笑する。


(なのは…今、お前は何をして、何を思ってるんだ…?)


 今ここに居ない娘を思い、士郎が空を見上げた時だった。
 電話の、音が鳴り響いた。
 士郎はすぐさま立ち上がり駆け出す。電話の前に立ち、自らの動きを一度制止させる。ゆっくりと息を吐き出し、自らを落ち着かせる。それから、ゆっくりとした動作で受話器に手を伸ばし、そして電話を耳に当てた。


「…もしもし。高町ですが」


 返答。一体誰からだ? なのはか? 不安と期待を思いながら相手の返答を待つ。受話器の向こう側から息づかいが聞こえる。そして、その後すぐに電話の送り主は返答を返した。


『もしもし。私は佐山と言う』


 士郎は動きを止めた。受話器を持つ手が震え、目が驚愕に見開かれる。士郎に脳裏にある光景が浮かんだ。それはまだ士郎がボディーガードを勤めていた頃の話だ。一人の老人がいた。鮮明に覚えている。あれほど衝撃的な人物に出会ったのは、覚えた感情は違えど、恐らく今の妻である桃子ぐらいだろう。
 今でも覚えている。彼が告げた台詞を。一言一句、欠けずに。


『佐山の姓は悪役を任ずると』


 忘れもしない。そして、その老人からある話を聞いた事がある。それは生意気な孫がいるという話だ。その話も良く覚えている。衝撃的だったからだ。実際、その子供と出会った事もある。鋭い目つきをした少年だった、と印象に残っている。
 不思議と、老人を覚えていたら、その少年の名も覚えていた。まさか。と言う思いが駆けめぐる。だが、問わずにはいられなかった。


「…御言君かい?」


 それは、彼が自分の知る少年と同じ人物なのかどうかを確かめる為の一言だった。





    ●





「!?」
「佐山君?」


 佐山は携帯電話を耳に当てたまま顔を強ばらせた。隣で新庄が心配げな顔を浮かべるが、すぐに佐山は電話を持ち直す。電話の相手、高町士郎は先ほど、佐山の名を呼んだ。御言君、と。
 …つまりそれは佐山の事を知っている、と。佐山はそう判断する。だが、いや待て、と彼は判断と決するのを留まらせる。最後まで確認するまではわからない。そう思い、問いを投げかける。


「…私の事を知っているのか?」
『やはり、御言君だね? 佐山薫のお孫さん。そうだね?』


 佐山は確信する。高町士郎は私の事を知っていると。祖父の名が出た時点で確定した。彼は自分を、そして私の祖父を知っている、と。そして結びつく。御神と佐山の繋がりが。
 …やはり高町士郎は祖父の護衛を務めていたのか? 確かめたわけではない。だがもはや確定しているような物だ。
 …祖父の話が出た事により、僅かに心臓が軋んだ。ストレス性の狭心症。祖父や両親の事を聞くと痛みをもたらす心臓。佐山が煩う病。佐山は若干、苦しそうに眉を歪めたのがわかったのか、隣で新庄が心配そうに佐山を見つめている。
 …大丈夫だ。幸いな君がいる。君がいるならこの痛みは何も問題は無い。佐山は思い、新庄に大丈夫だ、という視線を向けて頷く。意識を受話器へと戻し、話を続けようと。


「…祖父を知っているのか? 貴方は」
『覚えてないんだね。…まぁ、当然だ。俺が君と出会ったのはまだ君が幼い頃だ。それに一度だけだったしね。覚えられなくて当然だ』
「そうか…。貴方は、私の祖父の護衛を務めていたのか?」
『そうだよ。俺は君のお爺さんの護衛を一時期務めさせて貰っていたんだよ。俺の家と佐山家はどうやら俺の親父と親交があったそうでな。俺はその縁で護衛をさせてもらったんだよ』
「…貴方の父、とは? 私の祖父とどういった関係か聞いたことはあるかね?」
『いや。詳しくは教えて貰えなかった。俺が物心つく頃にはもういなかったしな。それに君のお爺さんからも伺ってはいない。ただ、戦友、だったとしか聞いてない』
(つまり、高町士郎は「概念戦争」については知らず、ただの護衛だったというわけか。むしろ関わりがあったのは高町士郎の父、息子には概念戦争の事は教えていなかったのか)


 佐山は士郎の返答からそう判断する。士郎が隠している、という可能性があるが、それはまだ判断できない。嘘ならば小さくとも綻びが見つかる筈だ。その時にそれを突けば良い。
 さて…予想外の事が起きてしまったが良しとする。これはこれで幸運だった。しかし、そろそろ本来の目的を果たすとしよう。それで彼の言葉の信義も確かめられる筈だ、と。
 佐山はネクタイを片手で直し、小さく呼吸を繰り返す。。ここからだ、と佐山は自らに告げる。…交渉を始めよう、と。


「さて。本題に入りたいのだがよろしいかね。高町士郎…いや、敢えて不破士郎と呼ぼうか?」
『…君にその姓を教えた事はないんだがな。何故その姓を?そしてそれを出す意味は何だい?』


 電話の向こう側で士郎の声に鋭さが増した気がした。まるで喉元に刃を突きつけられているようだ、と佐山は思う。だが、自らは交渉役。この程度で屈する事はない。


「事情を説明しよう。今私は貴方のご息女、高町なのはを保護している」
『っ!? なのはをっ!? 君がっ!?』


 受話器の向こう側で士郎が大きな声を挙げる。それに佐山は一度携帯を耳から離し、声が止んだのを確認してから再び耳に付ける。


「落ち着きたまえ。今彼女は奥多摩のIAI社で保護している。良いかね? 彼女は現在何者かに狙われている」
『…何?』
「私達は偶然襲われた彼女を保護し、今その身柄を預かっている。…彼女を襲った者はこう言っていた。「御神の罪に断罪を」とね」


 沈黙。士郎の方から声が上がらなくなった。それに佐山は「良いかね?」と士郎に言い、士郎の返答を待つ。一瞬茫然自失でもしていたのだろうか、すぐに士郎が慌てたように返答を返し、先を促すように沈黙した。


「高町士郎。私は彼女を私達の元で保護したいと思っている」
『…何故だ?』
「これはね。どうやら私の祖父も一枚噛んでいる事件のようでね。むしろあなた方はとばっちりを受けた形だと私は推測している」
『…君のお爺さんは確かに多くの怨みを買っていたね。その怨みが御神に向いたと君は言いたいのかい?』


 佐山御言の祖父。佐山薫は総会屋であった。一匹狼の総会屋として、多くの他の総会屋を自らの信念の元、排除し続けた。その急激な改革により、付いて行けず、職を失っていく会社もあったという話だ。

『佐山の姓は悪役を任ずる』

 自らを悪と断定する事により、悪と判断した者達をそれを上回る悪で排除する。それが佐山薫が定めた「悪役」としての信念。
 余談ではあるが、その信念は佐山御言にも継承され、今、彼は全竜交渉部隊の交渉役としてUCATに所属している。


「そういう事だよ。つまりは貴方には貸しがある。私は貸すのは好きだが、貸しを作るのは好ましいと思っていなくてね。…借りを返す為にも、貴方のご息女を護らせていただけないか?」
『…なのはに、話は?』
「彼女とは既に交渉し、彼女はここに残る、と言っている。貴方が望むというのならば、家に帰す事も可能だが、私はそれを避けたいと思っている。万が一の事もある」
『君たちになのはを護るだけの力があるのかい?』
「無論だ。故にこの交渉の場に私はいる」


 士郎が沈黙するのと同時に佐山も沈黙する。士郎は今頃考え込んでいるだろう。概念戦争を知らずとも、彼は佐山を知っている。佐山が成した事を知っている。佐山の信念も恐らく知っているだろう。
 そしてボディーガードという職に就いているならばわかるはずだ。…佐山への怨みは測り知れないと。それに、自らも巻き込まれている、と。さて上手く行くか。と佐山は思う。だが、そこまで思い内心首を振る。
 ――交渉を成功させるのが私のすべき事だ。故に、失敗の2文字は無い。


『…条件がある』


 その言葉が交渉が良好に進んでいる証だと判断する。自らの交渉に手応えを感じた佐山は頷き。


「条件を聞こう」
『調べて欲しい事がある。もし、俺の懸念が当たっていたら、それは俺も関わるべき問題だ』
「何かね?」
『「龍」という組織を知っているかい?』


 「龍」? 佐山は思わず眉を顰める。聞いた事は無い。だが、不吉な物を感じる。龍。変換すれば「竜」だ。
 …まさか、概念戦争絡みか? 深読み過ぎる、とも思うが、あながち間違ってはいないかもしれない。確信を得るべく佐山は士郎に問いかける。


「私は知らないが…その「龍」とやらは何者かね?」
『無差別なテロ行為を行う犯罪者集団だ。…奴らに御神家の宗家が爆破テロに遭った、そのために、御神家は滅びたと言っても良い…もし、そいつ等が関わっている可能性があるなら…俺は黙ってはいられない』
「1つ聞こう。貴方の姓は「不破」だ。なのに何故「御神」と関わりが?」
『不破は御神の裏だ。御神が表の仕事をこなすならば、不破は裏方の仕事をこなす。…まぁ、平和になってきてからは不破の仕事は地味な物へと変わって行ったんだがな。だが、どちらも御神である事には変わらない』
「では更に。「龍」とやらにわかっている事はあるかね?」
『俺も俺なりのツテで調べたんだが…詳しい事はわからない。非合法のテロ組織であるという事。そしてかなりの組織力を有している、という事ぐらいしかな』


 ほぼ手がかりは無し、と言った所。だが逆にこう推測する事も出来る。「龍」は概念戦争の関係者であると。
 仮説として、「龍」が概念戦争の関係者であるならば「八大竜王」である、Gを滅ぼした一人である佐山薫を怨んでいる。あり得る話だ。そのために佐山の護衛を務め、親交があった御神家がテロに遭った。
 そして詳細は掴めない程の組織力とは言うが、概念戦争に関わる者ならば「概念空間」を発生させる事が出来る筈だ。それで行方を眩まし、常人の組織では捉えられないと仮定する事が出来る。


(だが、あくまで仮定だ)


 更にこの仮定だと何故、狙われたのが御神家で無ければいけなかったのか? という事について説明が出来ない。狙うならば他の所でも良かった筈だ。何故ならば、「龍」が概念戦争の関係者ならばこの世界自体が憎い筈だ。ならば御神家、または直接的に「八大竜王」の眷属を狙っても良い筈だ。
 そこまでの組織力が無かった? だからこそ概念戦争に関しての経緯を知らない御神家を襲った? 推論ならば幾らでも出てくる。だが、そこに確証は無い。
 …情報が足りなすぎるな。このままではただ仮説を立てる事しか出来ない。ならば考えるのは後にし、今は成すべき事を成すとしよう。


「その条件を呑もう。こちらで「龍」という組織について調査を行う」
『…信用して、良いんだね?』
「佐山の姓を知るならば、その姓の任ずる物にかけて信じていただきたい」
『悪役、か。…「基礎に礼節を敷き応用には信頼を広げよ。 佐山の姓は悪役を任ずる。ゆえに刃向かわぬならばただ与えよ、──されば奪われぬ」だったかな?』
「その通りだ。私はあなた方を裏切らぬよ。ここに誓おう」


 佐山のその言葉に、受話器の向こう側の声が止まる。ゆっくりと重たく息を吐く音が聞こえて、士郎は縋るような声で告げる。


『御言君…。なのはを…頼む』


 押し込めたような声。わかっているのだろう。自ら一人ではどうにもならぬと。そして相手の頼む事が出来る。託す事が出来る。こちらの事情は話せない。それが真実かどうかもわからない。それでも、信じる、と彼は言い、任し、頼んだ。
 …強い人だ。そう思う。賞賛に値すると佐山は素直に高町士郎を評価する。


「我が姓にかけて」


 故に。我が姓にかけてその願いは裏切らぬと。佐山は強き意志を胸に以て士郎に返答を返した。




    ●





 がちゃん、と受話器を置く音が響いた。士郎はゆっくりと息を吐き出した。突然の電話。そして今なのはに起きている事態。そして見え隠れする因縁。
 何もわからない故に確定は出来ないが、考えられるのは「龍」しかいない。もしなのはが「龍」に狙われているならば? …今度こそは、自らの手で護りたい。かつて守れなかった故に。
 一度壊した身体だ。それでも諦める事は出来ない。受話器を握っていた手を、そっと握りしめた。


「なのは…」


 名を呼ぶ。自らの娘の名を。護らなければいけない娘の名を。瞳を伏せてその顔を思い出す。脳裏に浮かぶ彼女の姿。今は傷付き、道を見失った哀れな娘。
 もうこれ以上の哀しみは与えたくはない、と。何もしてやれない自分が歯がゆくて仕方が無い。だが信じよう。あの「悪役」を任ずる「佐山」の姓の少年を。自らの記憶に鮮明に残るあの老人の後継を。
 …ふと。士郎は自室へと向かった。そこで部屋の奥に締まっていた1つの箱を取り出した。
 木箱だ。結ばれていた紐を解き、木箱を開く。…中には、二本の何かがが入っていた。それは、鞘に収められた小太刀だ。だが、不思議な小太刀だ。本来、鍔があるべき所に唾が無く、代わりに宝石が埋め込まれている。それを手に取り、鞘を抜く。
 曇り無き刃がそこにある。そこに己の顔を映して、士郎は呟いた。


「…なぁ。親父。アンタと佐山の爺さんの関係って…何だったんだ?アンタが佐山の爺さんに関わったから御神家は滅びなきゃいけなかったのか?…なのはが、今狙われてるのもアンタの所為なのかよ…親父」


 顔も覚えていない。物心つく前から己の前から姿を消した父親。残したのはこの二刀の小太刀だけだ。銘すらも教えて貰っていない。1つだけ、遺言がある。


『これの銘を知る者だけが、これを持つ事が許される。そして、それを知る者が現れるまで、これは厳重に保管しておく事』


 …誰が知ってるってんだよ。心の中で呟き、士郎は形見である小太刀を睨み続けるのであった。




    ●





 士郎と同じく通話を切った佐山はベンチにもたれ掛かった。ベンチにもたれ掛かった佐山の肩に手を置き、心配げに顔を覗きこむ新庄。


「…大丈夫? 佐山君」
「あぁ。問題無いよ。新庄君。…高町君はこちらで引き取る事で合意してもらった。代わりに高町君を襲った者達についての調査を依頼されたよ」
「そうなの?」
「あぁ。私は恐らく、高町士郎が言う組織と、実際に高町君を襲った自動人形の主は繋がっていると見ている。御神家は佐山と親交があったみたいだからね。それで狙われたのかもしれない」
「で、でもそれだったら別に御神家じゃなくても良い筈じゃない?」
「そう。だから調べるのだよ。御神家をね」


 新庄の言う事は佐山も既に先ほどの会話から考えている事だ。首に手をかけ、首を回す。首の骨を鳴らしてから、ゆっくりと佐山は立ち上がり空を見上げる。


「約束したからね。佐山の姓にかけて、と」


 だからこの誓いは絶対だ、と。未だ見えて来ない真実。だが、それで良い。それはいつもの事だ。何も知らない所から知っていき、そして果たすべき事を果たすのみだ。そうして佐山は拳を握り、ただ遠い空を見続けていた。隣に幸いな人を置きながら。



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