次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 序章 04
2010/03/08 Monリリカル・クロニクル
「ふむ…」


 尊秋多学院の学生寮の一室。そこは佐山と新庄の部屋だ。そこで佐山は手に持った資料を眺めて小さな呟きを漏らした。それを見て、新庄が佐山の方へと視線を向ける。


「佐山君。それ朝に届いた資料だよね? どうしたの? それ」
「うむ。高町君の家族構成についての調査を昨日の内に調査して貰っておいたのだよ」
「あ、そうなんだ。で、高町さんの家族ってどんな感じなの?」
「父親は高町士郎。母親は高町桃子。兄に高町恭也。姉に高町美由希と、5人家族だそうだ。彼女の両親はパティシェをやっていて翠屋という喫茶店を営業しているそうだ」
「へぇ…。パティシエさんの娘さんなんだ…」


 新庄が呟きを漏らす。それに佐山が再び資料に目を通して眉を寄せている。新庄はそれを見て思う。佐山君、なんだか変だな、と。だがそこで、変なのはいつもの事か、と思い溜息を吐く。
 いや、だが、それでもおかしい。まるで苦虫を噛み潰したかのような顔をするなんて珍しい。新庄は佐山を観察しながら思う。しばらく新庄は佐山を見つめるだけだったが、埒があかないので問いかけてみる事にした。


「…ねぇ佐山君。どうかしたの?」
「…ふむ。新庄君。この資料を見て私は少し引っ掛かりを覚えてね」
「引っかかり?」


 新庄の問いかけに、うむ、と佐山は頷いて返す。そして佐山が新庄に資料を手渡す。新庄はそれを不思議に思いながら資料に目を通す。


「高町士郎の旧姓は「不破」というらしい。兄である高町恭也も高町桃子とは別の妻の子であり、実質高町君とは異母兄弟にあたるそうだ。高町美由希に至ってはどうも高町士郎の養子らしく、血縁関係は無い」
「へぇ…。で、それで?それに何か引っ掛かりを感じてるの?」
「私が引っ掛かりを覚えているのは高町士郎の旧姓だ。不破…私はこの名字に聞き覚えがある」
「えっ!?」


 佐山が告げた事実に新庄が驚きの声を挙げる。何で佐山君が高町さんのお父さんの旧姓に聞き覚えがあるのだろう? と。佐山は新庄の様子を気にせずに続ける。


「更に言えば、「御神」というのも聞き覚えがある気がする。…勘違いかね?」
「わ、わからないよ。そんなの。だって佐山君じゃないとわからないでしょ? そんなの」
「まぁ、そうなのだがね。…さて、新庄君。私は少し御神について追わなければいけなくなったみたいだ」
「え?」


 佐山は立ち上がる。制服へと着替えながら、佐山は言う。


「御神、というのは古流武術を扱う一族だったらしい。正式な名は「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術」というらしい。そして御神家は要人の護衛などを勤めていたらしい」
「…それって。まさか、御神の罪って…」
「まだ、確定したわけではないが…可能性としては、御神家が「概念戦争」に関わった要人の護衛を務め、それにより怨まれたという可能性がある。そして高町美由希もまた、高町士郎に引き取られる前の旧姓は「御神」というらしい」
「!?」
「そして、高町士郎は「御神流」の師範を勤めていたそうだよ。つまり高町士郎は「御神流」の剣士だったんだろうね。…旧姓が「御神」ではなく「不破」なのが気になる所だが」


 …それって、と新庄は思う。御神家が要人の護衛を務めて、佐山君が聞き覚えがあるのが本当だとしたら…。


「まさか、佐山君のお爺さんを…?」


 佐山のお爺さん。それは佐山御言の祖父、「佐山薫」の事を指す。かつて10のGを滅ぼした張本人の一人であり「八大竜王」にも数えられている。総会屋を職業とし、数多くの怨みも買っていたと聞かされている。佐山が「全竜交渉部隊」に入る少し前に亡くなったと聞かされている。
 新庄の呟きが聞こえているのか、聞こえていないのか、佐山は学校の用意の手を止めて。


「…さて。新庄君。そろそろ学校に行く時間だよ。行かないと遅刻をしてしまうよ?」


 そう言って佐山は新庄にを向ける。それに、新庄が慌てた様子で時計を見て、わぁっ、と声を挙げてから用意を調えて行く。そんな中で新庄は思う。もし、佐山君のお爺さんの護衛を御神家の人達がしていて、お爺さんの護衛をしていた為に、高町さんが狙われてるんだとしたら…。


(…どうするの? 佐山君、君は…)


 先を歩く背を追う新庄。だがその背は何も返答して来なかった。ただ、いつも通りに彼は歩いていく。新庄は彼の隣に立つ為に少し、歩くスピードを上げるのであった。





    ●





 UCAT本部の中にある医務室。そこである一人の少女が深い溜息を吐いていた。髪は団子のように纏められ、身に纏うのは白衣。口には古めかしいシガレットチョコを咥え、天上を見上げている。
 この少女の名は趙・晴。この医務室の室長であり、つまりは文字通り医務室の主である。趙はガリガリと頭を掻いた後、ふぅ、と息を零した。


「やれやれ、まさか今更になってあの名を聞くだなんて、ね」


 漏れた言葉は苦笑を帯びた口調だった。皮肉った笑みが口元に浮かび、ぱんっ、と額を軽く叩く。その顔にはどこか懐かしむようなそんな表情がある。少女の容姿には少々似合わない仕草だが、何故だか彼女にはそれがよく似合っている。


「…懐かしいね、本当に。いや、本当に久しぶりだ。そうだろう? 佐山…」


 佐山。それを示すのは全竜交渉部隊の交渉役の少年の事なのだろうか? もしくは、別の「佐山」なのだろうか。それは彼女にしかわからない。シガレットチョコを口の中に入れ、噛み砕く。口の中に微妙な味が広がる。
 …梅味か、とシガレットチョコの味を確認しながら趙は溜息を吐いた。同時に、こんこん、とノックの音が響いた。それに趙は気怠げに身体を起こして、医務室の扉をノックしているだろう向こう側の者達に声をかけた。


「空いてるよ。入ってきな」
「Tes.失礼いたします」


 そう断ってから扉が開かれる。3rd-Gの自動人形。そして…一人の少女。それを見て趙は若干目を細める。どこか眩しげにその少女を見つめてから、溜息を吐きだす。きしっ、と椅子が軋む音が医務室の中に響く。


「趙・晴、って名乗れば良いのか? お嬢ちゃん」
「あ、は、はい。私は高町なのはです。は、初めまして」


 初めまして、と挨拶を交わしながら趙は苦笑する。因果かねぇ、と内心呟き、続けて、高町なのは、と心の中でその名を呼ぶ。観察するように趙はなのはをジッ、と見る。
 それになのはは少し戸惑ったように視線を返している。その仕草に趙は口元を歪めた。そして額に当てていた手を払い、白衣で拭ってから、スッと手を差し出した。ニッ、と笑みを浮かべながら趙は言う。


「ま。固くなるこたぁない。気楽に、な?」
「は、はぁ」
「んじゃ、ちゃちゃっと診察するぞ」


 趙の言葉になのはがお願いします、と返し、趙がなのはに背を向ける。趙は口元を歪めた。苦笑の形に、だ。その胸中にはどんな思いがあるのだろうか? …趙は語らない。だからこそ、その思いを知る者は誰もいない。





    ● 





 一方。その頃尊秋多学院では…。


「あぁっ!? 佐山先輩っ!? いきなり何なんですか!?」
「はっはっは。見たまえ新庄君。飛場少年がクネクネしているよ。気持ち悪いね。見物だと思わないかね? こう、殺意が湧いてくるというか、とりあえずその顔面に一発かまして良いかね?」
「あぁっ!? 何なんですかこの唐突バイオレンス劇場はっ!! 誰かヘルプッ! ヘルプミーッ!!」


 何故か木の枝に吊され芋虫状態となっている飛場の姿と、それを見て笑みを浮かべながらシャドウボクシングをしている佐山の姿がある。その佐山の隣にいる新庄は慌てた様子で詰め寄る。


「だ、駄目だよ佐山君っ! というか何だよこのいきなりな展開はっ!? 何がどうなってこうなったんだよっ!?」
「何。単に罠を張り、餌を置いておいたら飛場少年が見事に食いついただけじゃないか」
「あぁっ! まさか「美影さんハイグレード」が餌だったなんて! いや丸わかりだけどそれでも引っ掛かっちゃうのは哀しい男の性っ!!」


 ロープでぐるぐる巻きにされている飛場の手には箱があった。そこには美影の写真が貼ってあり「HG」と書かれた箱であった。それはよくおもちゃ屋などで見かけるアニメのロボットとかのプラモデルが入っている箱とそっくりだ。


「ちょっ!? 誰だよあの大人プラモデル作ったのっ!?」
「鹿島主任だよ。私は新庄君モデルも有しているぞっ!! 装甲服から水着、制服に各種コスプレ衣装も完・全・装・備だよっ!!」
「ふぅん! 凄いね!! 後で全部ぶっ壊すけどっ!!」


 額に青筋を浮かべ、いつも通り佐山のネクタイを高速で締め上げる新庄。佐山が気道を塞がれ、キュッ、といい音が鳴る。佐山が呼吸を出来ずにそのまま窒息死させられそうな状況に追い込まれる中、そこに新たな人影が歩いてくる。


「おぉ? なんだこの飛場吊るし上げショーは? 何だ? サンドバックか? だったら俺も殴らせろ。良いストレス解消になる」
「そうね。覚。前と後ろから同時に攻撃してサンドイッチにしてみない? きっと素晴らしい事になると思うわよ?」
「ちょっ!? 出雲先輩に風見先輩あんまりですよっ!! 可愛い後輩になんて事をするつもりなんですかっ!?」


 歩いてきた人影、出雲と風見の台詞に飛場がクネクネと身を捩らせながら言う。それを見てから出雲と風見は顔を見合わせる。はぁ、と呆れたように二人は示し合わせるかのように溜息を吐き出す。


「覚。アンタ後輩にサンドバックなんていたんだ」
「いや。俺は知らねぇな。幻聴じゃねぇか?千里」
「鬼だぁぁーーっ!! 人権を主張しますっ!! 世界はラブアンドピースッ!!」
「おいおい。サンドバックは人じゃねぇから人権は主張できねぇぞ?」
「そうよ? サンドバックはサンドバックらしくボコられてなさい?」


 出雲と風見の台詞にドナドナを歌い出す飛場。プラーンプラーン、とロープに縛られた彼の身体が揺れている。
 そんな事をしていると、ようやく新庄から解放されたのか、佐山がネクタイを直しながら飛場へと向き直る。コホン、と咳払いをして。


「さて。悪ふざけはここまでにしておいて…飛場少年。君に聞いておきたい事がある」
「何ですか? 答えたらこれ外してくれますか? 答えますから外してください!!」
「はっはっは。何を言っているのかね飛場少年。君が答えるのは当然の事。何故当然のことに報酬を払わなければいけないのかね?」
「お巡りさーーーーんっっ!! 助けてーーっっ!! 頭に血が上るーっ!! 天に地があるーっ!!これぞ天地絶叫ーーーっ!?」
「良い感じにハッスルするのは構わないが、私の質問に答えて貰おうか。飛場少年。君は「御神」、そして「不破」という姓に聞き覚えは?」


 佐山の非情な返答に飛場が叫ぶ中、佐山はに指を二本立てながら問いかける。それに飛場が真面目な顔になって、佐山を見つめる。しばらく黙り込んでいた飛場だったが、ゆっくりと口を開いて。


「…すいません。頭に血が上って思い出せません。下ろしてくれたら思い出しちゃうかもっ!!」
「出雲。風見。遠慮無くやりたまえ」
「「Tes!!」」
「イィィーーーーヤァァアアーーーーーッッッ!!!!」


 佐山の指示に良い返事を返す出雲と風見。思い切り身体を揺らしながら飛場の叫び、悲鳴が響き渡る。だがそれを無視するかのように風見のミドルキックが、それと同時に出雲のストレートが飛場にたたき込まれる。
 左右から挟まれたその攻撃に、飛場は白目をむき、ビクンッ、ビクンッ、としながらブラブラと揺れる飛場。余波に絶えかねたのか、ロープがブチン、と千切れて飛場が落下する。ベチンッ、と良い音を立てながら地面に落ちて痙攣する。
 その様子を見た新庄の感想は、潰れたカエルだった。新庄がそんな事を思っているうちに、佐山が飛場へと近づいていき。思いっきり足を振り上げる。その下にはプラモデルを抱えた飛場の手がある。


「さぁ。プラモを破壊されたくなくば答えるんだ飛場少年」
「Tesッ!! Tesですから止めてッ!! 一生物の宝物ですよっ!! 値打ち物ですよっ!!!!」


 半ば涙目で抗議しながら起き上がる飛場。身体をほぐすかのように身体を動かしてから、ふぅ、と息を吐いて頭を掻く。その顔には一切の巫山戯た様子は無く、真剣な表情がある。


「…どっちも覚えがありますね。佐山先輩はどこでその姓を?」
「詳しくは覚えていない。ただ…恐らく私の祖父関係だと思っている」
「奇遇ですね。僕も爺さん伝いですよ。よく覚えてませんけど、昔、口にしてた記憶があります」


 その飛場と佐山の言葉を聞いて新庄が息を呑む。出雲と風見は互いに眉を寄せる。


「おい馬鹿佐山。どういうこったソレ」
「御神ってなのはちゃんの言ってた御神でしょ? 何でアンタ等二人が聞き覚えあるのよ? しかもどっちともお爺さん関係で」
「おや。わからないかね。二人とも。何、簡単な事だよ」


 出雲と風見の問いかけにに佐山は溜息を吐き出して二人の質問に答えた。


「御神は私の祖父、そして飛場先生との関わりがある。それがどういった関係かは定かではないが…「概念戦争」に僅かながらかもしれないが関わった形跡がある。そういう事だよ」





    ●





「これ張っておけば明日には全快するよ。今日はこれで大人しくしておきな」
「あ、あのこれだけで怪我が治るんですか…?」


 医務室でなのはは戸惑ったように趙の顔をのぞき込んでいた。なのはの身体には包帯が巻かれ、そして符と呼ばれた物が張られていた。これだけで治ると言われても…と言った顔をするなのは。それに趙は若干眉を寄せる。


「何だい。私の治療が信用出来ないって言うのかい?」
「い、いえ。そういうわけじゃないんですけど…」
「なら大人しくしておきな。大丈夫。治癒用の概念を込めた符さ。良く治る、ってね」
「はぁ…概念、ですか」


 そうなる。と決められた事象。究極の理由、概念。未だピン、と来ないが、そういうものなのだと納得するしかない。なのははそう思って溜息を吐いた。それを見て趙はきぃ、と椅子を鳴らして、楽しそうになのはを見る。


「馴れないかい?」
「え? ま、まぁ…」
「そうかい。まぁ、ここは変わり者が多いしね」
「ま、まぁ…」


 ここでの出来事を思い出してなのはは苦笑する。それに趙がなのはの顔をのぞき込むように見てから、身を乗り出してそっと手を伸ばす。そして、ぽん、とその頭に手を置いて優しく髪を撫でる。


「負けんじゃないよ」
「え? あ、はぁ…ありがとうございます」
「よし。なら見学でもしてきな。明日には身体の調子も戻ってるよ」


 そう言って手を離し、離した手でヒラヒラ、と手を振って趙がなのはに背を向ける。それになのはがもう一度お礼を言ってから、背後で控えていた43号に声をかけて医務室を後にしていく。
 ぱたん、と扉が閉められた音が聞こえれば、趙は手の平を見つめる。先ほど、なのはの頭を撫でた手だ。それをギュッ、と握りしめてから、溜息を吐いて。


「…負けるんじゃないよ、本当に。…アンタがきっとこれから背負うだろう事は、きっとそんな軽いもんじゃあないんだからさ」


 机の中に仕舞ってあったシガレットチョコを咥えて呟く。ガリガリ、と頭をかいて。フゥッ、と息を吐き出す。何気なしに彼女は思う。煙草吸いたい、と。だがあいにくここは医務室。吸う訳にはいかないと、彼女はシガレットチョコを噛み砕くのであった。





    ●





 医務室を後にしたなのはは43号と共にUCATの施設を一回りし終えて宛がわれた部屋へと戻っていた。部屋に戻り、なのはは43号に説明されてきた物の数々を思い返して思わず感嘆の溜息を吐く。
 UCATには武力がある。概念を用いた概念兵器だ。概念兵器は概念を内蔵する事によって戦闘力を発揮する武器である。その系統は大きく分けて「機殻(カウル)」の名を冠するタイプと、そうでないタイプに分けられる。
 まるでデバイスのような形をした物と、まったく違う、普通の刀とかの形状の物もあり、驚きを覚えた。概念は使用者を限定しない。扱おうと思えば誰でも扱える物である。
 概念の中には概念核という物がある。概念核というのは、1stから10thの世界の各Gに1つずつ存在する巨大かつ強力な概念の塊である。世界そのものとも言えるその能力は強大を極め、自我を持ち、担い手を自ら選定する。全竜交渉部隊のメンバーもその概念核を宿した概念核兵器を用いているという話だ。
 なのはは今日聞いた世界の事を思い出す。1stから10thの世界について43号から説明を受けたのだ。この1stから10thの世界はどうやら、このLow-Gで伝わる神話や伝説の元となった世界らしい。その理由Low-Gが他のGが貯めた負荷を落とすらしく、その為に神話や伝説となって残るらしい。
 なのははふと、43号から手渡された各Gの詳細が纏められた報告書を思わず手に取った。


 「1st-G」。表記された文字が力を持つ世界。ニーベルングの災いの原型となった世界。テーブル嬢の大地を空が覆う内向型構造の世界で、星はドームに張り付き、太陽は地下道を通って周回するという。だが月は無い。
 精霊が実在し、人は精霊と対話する事で説得し、自然を操る事が出来たという。半竜などの種族が確認されている。

 「2ndーG」。名前が力となり、それが意味する内容を自分の能力として使用する事が出来る世界。古事記、日本書紀の原型となった世界。広い大地とどこまでも続く空があり、Low-Gとあまり大差は無い。自らの世界を巨大なバイオスフィアとして改造した。人種的にも日本人に近く、比較的早くにこの世界に慣れたという。

 「3rd-G」。金属の命と意志を宿し、更に行動するために軽度の重力制御能力が与えられる世界。ギリシャ神話の原型の世界だと聞いた。ある一定まで続く空に幾つかの大陸が浮遊する世界で、過去には海も存在していたらしい。人口が少なく、そのために労働力などを養う為に自動人形や、武神と呼ばれるロボットを開発した。技術力に関してはかなり抜き出ており、概念戦争でも積極的に参加した。
 
 「4th-G」。 植物に自我と行動力を持たせ、動物化させる概念を有した世界。アフリカ神話の原型とされている世界。太陽としての機能を持つ恒星を中心に、3つの環状大地が回転する世界構造をしていた。環状大地は概念核によって動物化した植物で覆われて、環状の内側には川が流れていた。各大地で生態系に差異が生じると他の大地の交差時にそれを交換し、生態系を均一化していたという。
 4th-Gには人類が存在せず、動物化植物、通称「草の獣」のみが住んでいた。

 「5th-G」。自らの意思によって落下する方向を定め、使いこなせば飛行すら可能とする概念を有した世界。ネイティブアメリカンの神話の原型とされる世界。大気のある宇宙空間に2つの隣接する惑星が浮かぶ世界構造をしている。5th-Gの人々はそれぞれの星を居住惑星と資源惑星に使い分けていた。概念戦争中は資源惑星は防衛基地、居住惑星は生産基地として改造されたとも聞いた。航空手段として、機竜と呼ばれるロボットの竜を開発した。機竜は単体で圧倒的な戦力を誇る、概念武装の中でも最高位に属する。

 「6th-G」。輪廻転生の概念を有した世界。インド神話の原型とされている世界。世界は2つの川にはさまれた停滞の空間と呼ばれる生物が存在する通常空間の両側を、死亡した魂が送られる破壊の空間、魂に肉体を与える再生の空間で挟み、魂は3つの空間をめぐり続けていた。

 「7th-G」。詳しい概念の詳細はUCATでも把握して無いらしく、どういった概念があるのかは不明。中国神話の原型とされている世界。起伏を持った階層構造型の世界で、8層に連なった大地の上には天山と呼ばれる巨大な山と川が流れる天井の階層があった。9つの大地には人間が生きるのに最高の環境が広がっており、人々はそこで生活していた。天体に関しての情報は明記されていない。生体改造と人造生物の開発に特化した文化を持つ世界で、7th-G人類のほぼ全ては仙人、仙神と呼ばれる一種の技術者だったという。

 「8th-G」。熱エネルギーに意思と行動力を授け、生物化させる概念を有した世界。アボリジニ神話の原型とされる世界。8th-Gは無の空間に熱エネルギー体、通称「ワムナビの遣い」と呼ばれる者達が浮遊する世界。砂粒サイズから惑星サイズまで大小多数の「ワムナビの遣い」は何も無い空間の中で熱を発し続ける事によって生命を持続させ、熱が弱まってくると冬眠して消滅を免れていた。4th-Gと同じく8th-Gには人間が存在せず、「ワムナビの遣い」だけが存在していた。

 「9th-G」。光と闇、熱と停止に関する内容の概念を有した世界。中東ゾロアスター神話の原型とされる純戦闘系の概念が色濃い世界。光熱と闇が切り替わる空間に球状大地が存在する世界で、天体は一切無く、空そのものが太陽と夜闇の特性を担っていた。昼は暑い、夜は冷たい、水源は限られているという厳しい環境であった。

 「10th-G」。加護と治癒の効果を持つ概念を有していたと思われる世界。北欧神話の原型とされるGで、1st-Gが民話や伝説のGであるのに対し、こちらは本当に神々が住む世界であったという。概念核を保有する世界樹を主軸にして天上、地上、地底の3層からなる。天上に住む神々は人間達を管理し、天上と地上は繋がっていた。また地底には罪を得た死者と巨人達が住んでいた。地上には人間などが存在していた。





「…概念戦争、か」


 呟きを漏らしてから、なのはは書類を置いて、ゆっくりと手を握り、開き、また握るという動きを繰り返す。それをぼんやりと眺めてから、ふぅ、と溜息を吐く。
 思う。知ってしまったと。世界が滅びるかもしれないこの戦いの事を。それを知って…? それから自分はどうしたいのだろうと考える。
 いや、既に決まっていたのかもしれない。きっと、それを願っていた。顔を上げる。そのまま部屋の扉の方へと近づいていく。身体の方は趙の治療によって万全へと近づいている。
 …行かなきゃ。誰に急かされるわけでもない。だが、なのはは急かされるように扉へと手を伸ばした。
 その時に、ドアをノックされる音が響いた。なのはは一瞬驚いたように身を竦ませた後、誰ですか? と扉の向こうに声をかけた。


「あ、なのはちゃん? ボク、新庄だけど入って良いかな?」
「…新庄さん?」


 扉の向こうから聞こえてきた声になのはは一瞬目を丸くさせてから、すぐに表情を普通の表情へと戻して、新庄に答えを返す。


「はい。私も、ちょっと話したい事があったので」
「佐山君も一緒だけど良い?」
「はい。佐山さんにも聞いて欲しかったので大丈夫です」
「なら、入るね」


 ドアが開くと新庄がいる。その後ろには佐山がいる。それを見てからなのはは道を開けて二人を部屋へと通した。佐山と新庄は部屋に入るなり、辺りをぐるり、と見渡してそれぞれ呆れたような表情を浮かべた。


「…やれやれ。何をやっているのかねUCATの連中は」
「…もう。何、これ」
「あ、あははははは……」


 二人のツッコミになのはは苦笑を浮かべる。フォローの仕様がなかった。とりあえず、二人は床に座り、なのはもまた、二人と向かい合うように座る。視線が交わされ、佐山が口を開く。


「高町君。君の言っていた御神、なのだが…私の方で現在調査を進めている」
「…はい」
「それで恐らく御神というのは恐らく御神家の事だろう。古流剣術を受け継ぐ一族で、ボディーガードの仕事などを多く勤めていたという事がわかった」


 それを聞いてなのはの脳裏に浮かぶのは家にある道場。そして兄や姉が木刀を持って稽古を行っている風景。そういえば兄は父から剣術を習ったと聞いた事がある。…つまり。


「…じゃあ、多分お父さんはその御神家の人間だったんですね」
「正確にはわからないが、君のお父さんは確かに御神流の剣士だったようだ」
「…そうですか。じゃあ、御神の罪って…」
「恐らくだが、御神家の誰かが概念戦争に何らかの形で関わっていたのだろう」


 そうですか、となのはは佐山の言葉に呟きを返す。唇を引き結び、視線を落とす。それに新庄が心配したように少し身を乗り出して、心配げになのはの肩に手を置く。


「えと、なのはちゃん。大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」


 新庄の心配する様子になのはが首を振って返して。それから、息を吐いてから、二人を見つめる。その表情はまるで何かを定めたような表情だ。


「あの、佐山さん。新庄さん。私からも少し良いですか?」
「何かね?」
「どういった経緯から私が狙われたかはまだ詳しくはわかりませんが、狙われているのは事実ですよね?」


 それに佐山が頷く。新庄が心配げに見てくるが、なのはは表情を動かさない。ただ、ひたすらに真っ直ぐ、佐山と新庄を見つめて、彼女は口にした。


「私も…UCATに入れて貰えませんか?」


  
  
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