次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 04
2010/03/01 MonOver World Flower
〈side:士郎〉




 俺、高町士郎にとって彼女は不可思議な存在であり、同時に目を逸らしたい、だが逸らしたくない、ともかく複雑に入り組んだ感情を抱いている。
 高町なのは。それは自分の娘の名。そして高町士郎が愛していると胸を張っているのと同時に、どのように接すれば良いのか、その距離感を掴めない相手である。
 その原因はなのはが元々、あまり物事に感心の無い子供だと言うのもあったが、何よりも自分が負った怪我によってなのはを1人にしてしまった事が原因だ。
 それからなのはとの距離感は更に開いてしまった。人をはね除けこそはしないものの、近づこうともしない無関心さに恐怖を抱いた。
 あの子は実は俺を嫌っているんじゃないか? と。だがなのはにそんな素振りは見られない。
 だがそれは本当なのか? 大きく削ってしまった時間。それが何にも代えがたい時間だったと気付いた時には後の祭りで。
 嫌われてもあの子を正しく導けるならばそれでも良いと思う。それが親の務めだ。
 だが、その務めを果たせなかったのは何よりも自分の所為だ。嫌う、嫌わないそれ以前にあの子の目には俺は入っていないのではないか、と。
 どうすればあの子を正しく育てられるのだろうか、と士郎は戸惑っていた。
 恭也と美由希という前例があったが、あの2人となのはは大きく違う。更に開いてしまった時間が何よりも痛い。
 何かしてやりたい。だけど何をしてやれば良いのかわからない。そんな士郎だからこそ。


「…父さん? えーと、気持ちよい?」
「あ、あぁ。もう少し強くしても良いかな?」


 唐突に肩もみをしたい、と言ってきたなのはに驚き、戸惑うのは至極当然な事なのかもしれない。





+ + + +





 この世界において私と血を分けた父である高町士郎。
 だが私の魂は彼の魂を受け継いではいない。子とは親の魂を少なからず受け継ぐものだ。姿形だけが似るんじゃない。私はそう思う。
 …本来、「高町なのは」として生まれる筈の魂を喰らったのか、それとも上書きしたのか、取り込んだのか、どうなのかはわからないが私は高町なのはを乗っ取って此処にいる。
 私にとって高町なのはとは障害だった。乗り越えなければいけない存在だった。コンプレックスというのだろう。
 どこまで言っても私は「高町なのは」という存在に縛られる。
 戦闘力で高町なのはに勝った所で、私という「個」は高町なのはよりも優れている訳ではない。
 そんな私が高町なのはとして生きている。成長して、気付いた事実。
 私は高町なのはに縛られている。生まれたその時からその魂に深く染みついた「オリジナル」の影。私がコピーだという事実。
 諦めていた。私は高町なのはに成り得ない。私は高町なのはよりも優れてはいない。
 だが…すずかに出会い、アリサに出会い、認められ、暖かさに触れて…。
 それは私が得たもの。決して「高町なのは」だから与えられたものではない。私という「個」が得たもの。
 友にという、共に時間を共有し合える関係。
 心地よかった。愛おしかった。今、何よりも大切だと胸を張って言える。
 優れているとか、優れていないとかじゃなくて、どうしたくて、どうありたいかで。
 捨てられる事の恐怖は拭えない。愛想を尽かされるのは怖い。
 だから手を伸ばす事を恐れていた。その距離を詰めるのが恐ろしかった。どう思われているのか知るのが恐ろしい。
 でも…背中を押してくれる人がいる。大丈夫だよ、と笑ってくれた人がいる。
 だったら…信じてみても良いだろうか。


「父さん、背中大きいね」
「そうか?」


 だから肩もみ。生活をする為には働かなきゃいけない。私が今、ご飯を食べられていて、学校に行けるのも全部、士郎と桃子のお陰。
 それに報いる事が出来る1つの手段。これの発案は実はアリサだったりする。それで実行して見たのだがやはり緊張する。
 言葉は素っ気ないものに感じられる。あぁ、本当に可愛げの無い子供だと思う。
 せめてマッサージだけはしっかりしようと士郎の要求に応えるように頑張る。


「なのは…」
「…何?」
「…急にどうしたんだ? 肩もみだなんて」


 不思議そうな士郎の声が怖い。私はおかしく見えるのか。そう思ってしまう。
 …ここには「高町なのは」はいない。だけど…「高町なのは」だったらどうしてたんだろう。
 わからない。怖い。踏み出せない。身体が固まって、息が苦しくなりそうだ。
 だけど、大丈夫だって言ってくれた。皆、優しいからって言ってくれた。そして私も知っている。
 なら、大丈夫。


「…したくなっただけだよ、父さん」
「…そうか」
「うん。…ありがと」
「はは、お礼を言うのは俺だろ? ありがとう、なのは」


 士郎のお礼の言葉に震えてしまった。それは本当に? と。
 よくわからない感情がごちゃ混ぜになる。不安なのか、歓喜なのか、理解が追い付かない。
 身体が震えないようにしようとして、身体が自然を前屈みになった。強ばった身体が士郎の背中に抱きつく形で触れる。


「…また…しても良いかな?」


 縋り付くように私は問いかけた。これで良いのかわからない。本当に士郎は喜んでくれたのだろうか?
 わからないから言葉を重ねる。でも届かない。どうすればもっと心が通えるのだろうか?
 それはすずかが、アリサが教えてくれた。それは真っ直ぐに言葉を伝える事。
 だから私は問いかける。少しでも知りたいから。少しでも、この距離を縮めたいから。



+ + + +





〈side:士郎〉





「…また…しても良いかな?」


 …俺は馬鹿だ。愚かだ。どうしようも無い程までに。
 こんなにも身体を震わせて肩もみをしてくれた娘が愛しくて堪らない。
 距離を取り合っていたのは、お互い様だったのだ。
 この子は無関心だった。それは今思えば聡いからこその無関心だったのではないか。
 あぁ、触れ合えばわかる。手に取るようにわかる。理解していく。
 この子はこんなにも怯えていたのか。こんなにも俺に怯えていたのか。
 距離を取ろうと計らなければならない程までに俺はこの子に接してあげる事が出来なかったのか。
 愚かだ。何が親だ。親を名乗る資格が無いと言われても仕様がない。それほどまでに俺は不甲斐なかった。
 身体を反らして背に抱きつくようななのはをそっと抱き寄せる。自分の胸元にすっぽりと収まる娘は驚いたような、それでいてどこか不安げに自分を見つめていた。


「…また、頼むな? なのは」


 ありがとう。怖かったよな? 傍にいてやんなきゃいけない人が傍にいなくて不安だったよな。
 本当にごめんな。ごめんな、なのは。俺ももっと頑張るから。親として頼られるようになるから。
 だからもうそんな顔はしなくて良いんだ。そんな顔はもう、二度とさせないから。


「…ぅん…また…するよ」


 消え入りそうな声でなのはが呟いた。あぁ、と俺は頷いて、ただ愛しい末娘の頭を撫でてた。





+ + + +





 高町家の長男、高町恭也と長女、高町美由希の朝は非常に早い。
 剣術家の家に生まれた2人は今まで積み重ねられてきた剣術の稽古に勤しむ。
 その訓練の最中、そろそろ終わりの時刻が迫っていた時だった。そろそろ上がろうかと恭也が思った時だった。
 道場の扉が開き、そこに1人の少女が入ってきた。それは彼等の妹である高町なのはの姿であった。
 思わず2人は驚いた顔でなのはを見た。何故なのはがここに? と疑問符が浮かぶ。
 ここで3人の関係がどのような関係か挙げておこう。恭也と美由希はこの妹の事を嫌ってはいないが、苦手な存在である。
 性格が悪い訳じゃない。ただ苦手意識を過去に持ってしまったのが今になっても引き摺っているのだ。
 高町士郎の入院の際、恭也は数々の無茶を重ね、美由希もまた落ち込んだりとなのはを構う事が出来なかったのだ。
 いつしか我が儘もコミュニケーションも取ってこない妹に2人が苦手意識を持ってしまうのは仕様がない事なのかもしれない。
 だからこそ、こうしてなのはが道場に来るのは本当に珍しい。


「兄さん、姉さん、ご飯だって」
「あ、あぁ。ありがとう、なのは」
「気にしないで。待ってる」


 いつもは自分たちが来るまで大人しく座って待っていた妹からの言葉に2人は暫し見つめ合い、そして首を傾げた。
 一体どうしたのか? と言いたげな顔をしながらとりあえずリビングへと向かう事にした。タオルで汗を拭い、リビングへと向かう。
 そこでは士郎と桃子、そしてなのはが朝食の準備をしながら待っていた。


「おぉ、来たか。恭也、美由希。おはよう」
「あぁ、おはよう」
「おはよう」
「はい、おはようー。さぁ、ご飯にしましょう?」


 桃子がやけに上機嫌に2人に声をかけてくる。2人は桃子に急かされるままに席について目を丸くするばかりだ。
 何やらニヤニヤと笑っている士郎と桃子。ふとなのはの方に視線を移すといつものように食事を始めている。
 恭也と美由希はとにかく何が起こっているかはわからないが食事を摂る事にした。学校もある、ここで呆けている場合では無いのだ。


「…あれ?」
「…む?」


 ふと、2人が味噌汁を飲んだ時だった。普段呑んでいる味噌汁とは若干味が違うように感じた。
 気のせいか? と2人は思いながら再度味噌汁を口に含む。するとニヤニヤ顔で笑っていた桃子が。


「おいしい?」


 と問う。何かある、と感じた2人は桃子に逆に問い返す。


「お味噌でも変えた?」
「味が違うな…」
「えぇ。そのお味噌汁はなのはが作ってくれたのよ」
「………え”?」


 恭也、フリーズ。美由希は眼鏡がずり下がった。なのはは2人の反応を特に気にせずに食事を続けている。
 どういう事なのか、と混乱する2人に士郎がニヤニヤと笑みを浮かべながら。


「おいおい、せっかく妹が母親の手伝いをするようになったって言うのに褒めてやらないのかよ?」
「え? な、なのはが? え? 何で?」
「別に。気分」


 簡潔になのはは美由希の疑問に答える。今まで家族に対して不干渉気味だったなのはの行動に美由希は呆気取られるばかりである。
 恭也もまた同じだ。そんな2人に士郎は笑い声を上げて「修行不足だな」と呟いた。
 なのははふぅ、と小さく溜息を吐いた。どうやら食事を終えたらしい。彼女はそのまま食器を下げて片付ける。


「…急がないと遅れるよ?」


 なのはの呟きに呆気取られて硬直していた恭也と美由希はすぐさま食事を再開するのであった。





+ + + +





 学校へと向かうスクールバス。私はそのバスの背もたれにもたれかかりながらアリサとすずかと話をしていた。内容は勿論、士郎、いや、父さんとの事だ。


「それじゃ、上手く行ったんだ」
「うん。多分ね」
「最初は驚かれるかもしれないけど、すぐ慣れてくれるでしょ」


 すずかが嬉しそうに笑い、アリサもまた同じ顔で笑っている。その2人に吊られるように私も笑った。あぁ、こういう日常は悪くないな、と心の底から思う。


「ありがとう、アリサ、すずか」
「ふん、別にお礼なんかいらないわよ!」
「そうそう。別に私達はお礼がしたくてやった訳じゃないしさ」
「それでも、だ。ありがとうな、2人とも」


 今はこれで良い。そう思う事は許されるだろうか? と私は思いながら空を見上げた。雲1つ無い、快晴の空だった。
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