次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 03
2010/03/01 MonOver World Flower
 アリサとの見舞いから数日。私の周りは特に変化はない。つまり良くもならなければ、悪くもなっていないという事である。
 誰も私を腫れ物を扱うように扱い、目が合いそうになれば即座に逸らす。
 すずかがやはり心配そうにこちらを見てくるが敢えて無視をする。この中で私に近づくのは悪影響でしかない。
 ふぅ、と嘆息を吐いて空気の悪い教室から逃げ出すように廊下を歩いていたがすぐ次の授業の時間が迫っていた。
 軽く憂鬱な気分のまま教室に入ろうとした時だった。


「高町がわざと私を怪我させた!? アイツはそんな事する奴じゃないわよっ!!」


 ドアに手をかけた所で動きが止まった。中から聞こえてくるのはアリサの声だ。
 一体何を言っているのか、と視線を教室の中へと向けると皆の視線が集中している。集中しているその先にはアリサがいる。
 退院して来たのか、と若干の驚き。がしかし何故こんな状況になっているのかわからない。


「アイツは確かに無口だし、何考えてるかよくわからないけど、アイツは誰かを傷付けようとするような奴じゃないわよっ!!」


 …いや、本当、何、してるのか。


「だからアイツはそんな事してないの! 勝手に決めつけるなっ!!」


 …アホだろ。わざわざそんな事言う必要なんて無いだろう?
 なのに、何でわざわざそんな事をしてる…?


「…訳わからない」


 嫌いな相手だ。あっちもこっちの事を好いてくれているとは思えない。
 なのに何故アリサは自分を助けるような事を言ってくれるのか? 皆の前であぁも言えるのは何故なのか?


「…私もそう思う」
「…月村」
「だって…なのはちゃんは私を助けてくれたから。凄い不器用だけど…優しいから。困ってた私を助けてくれたから」


 …あぁ、すずかまで…。
 あぁ、何だろう。凄く胸が苦しい。だけど決してそれは深いな苦しさじゃなくて。
 頬が熱い。胸がぽかぽかと暖かくなってくる。自然と口の端が持ち上がる。
 あぁ、馬鹿だ。馬鹿が2人いる。
 こんなに、こんなに思われて良いのだろうか? 私は特に何もしていない筈なのに。
 私が「高町なのは」だからだろうか? いや、この世界で高町なのはは私だけだ。
 だから「私」は愛されてると思って良いのだろうか? きっと…そうなのだろう。


「…あぁ、もう…」


 止めて欲しいな、と思う。これじゃ教室に入れない。笑む顔が押さえられない。
 こんなにも嬉しい。こんなにも認めて貰える事が嬉しい。こんなにも誰かに思われる事が嬉しい。
 あぁ、あれだけ疎ましく、そして妬ましく思っていたものがこんなにも暖かいものだったなんて。


「…ふぅ…」


 震える吐息を吐き出す。真っ直ぐ前に視線を向ける。
 こんな情けない顔じゃダメだ。普通にしていよう。そうしよう。
 そっと手にかけていたドアに力を込めてスライドさせる。皆はどんな顔をしているだろうか?
 想像がつかない。アリサは、すずかは、皆はどんな顔をするのかな?
 高鳴る鼓動を抑え、私は教室へと足を踏み入れた。


「…ぁ…」


 そんな呟きが私の耳に届く。私はそれに気を留めた風も無く、軽く肩を竦めてアリサを見据える。
 アリサと私の目が合う。アリサは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしながら私を見ていた。思わず笑いが込み上げてくる。


「…退院したんだ?」
「え? え、えぇ…」
「そんなに叫んでると、また入院するよ?」
「なっ!? な、な、あ、あんたねぇっ! 人がせっかく心配してやったってのに何よその言いぐさはっ!?」
「心配してなんて言ってないよ?」
「くぁーーーっっ!! あんた、ムカツクっ!! やっぱりムカツクわっ!!」


 だんだんっ、と床を踏みならしながらこちらを睨み付けて怒鳴るアリサ。
 私は、どうどう、と手で抑えるようにアリサに示しながら笑うのであった。
 あぁ、これが笑わずにはいられない。何故だかはよく私にはわからないが。


「…なのはちゃん?」
「…すずか」
「…えと、その…」



 小さく、少し怯えたように縮こまりながらも声をかけてきたすずかに更に笑みが深くなる。
 本当に、まだよくわからないけど、嬉しいから。こんなにも嬉しいから。


「ありがとう、すずか。それと…ごめん」
「……うぅん、良いよ。良いの」
「ん。ありがと」


 互いに微笑み合う。そしてそれはいつか笑い声も混じってきた。
 そうして笑っていると、クラスメイトの1人がオドオドとしながら近づいてきた。
 暫し何か言い淀むように唇を動かしていたが、ふと、意を決したように。


「あ、あの、避けたりしてごめんなさいっ!」


 思わずその謝罪に面食らう。暫し呆然としていが、別に気にしてない、と告げる。
 それを皮切りにしたのか、クラスメイトが次から次へと謝ってきた。
 謝られる、という事に慣れていない為、思わず戸惑う私。そんな私をすずかが少し離れた所から笑いながら見ている。正直、助けて欲しい。


「ほらほら、そこでウジウジしてる奴も謝ってきたらどうなの?」


 そしてアリサ。何、更にこの集団を増やそうとしている。正直迷惑だから止めて欲しい。
 そうこうしている内にベルが鳴る。それでようやく席につけると思ったが謝る声は収まらず、先生が来て注意されるまでこの謝罪は止まらなかった。
 ようやくぐったりとしながらも私は席に着く事が出来た。ふと思わず視線はすずかとアリサに向く。
 すずかは目が会うと微笑んで来る。アリサは目が合うと不敵に笑みを浮かべる。
 私は想像してなかった。この2人が私にとって大事な人になるだなんて。
 この時はまだ自覚していなかったから。まだ、この時は…。





+ + + +





 時は流れるのは早い。あれから…あれ、というのはアリサが私の弁護をしてくれた時からだ。
 私は前のようにアリサと張り合い、すずかと穏やかに時間を過ごしていた。ただ変わった事と言えば、私とクラスの連中との距離が縮まった事。
 そして…何かとアリサが私とすずかと連むようになった事くらいだ。


「くぅーっ!! 何だってアンタあんなに算数の成績良いのよぅっ!!」
「出来るから」
「くのぉ…っ!! でも、あんた漢字ダメよね?」
「…覚えにくい」
「なのはちゃん、国語の成績パッ、としないからね。主に漢字方面とか」


 昼食をつつきながら談笑する。今日の話題は今日、返却されたばかりのテストだ。
 アリサはほぼパーフェクト。優等生の名は伊達ではない。
 すずかもそこそこと言った所だ。つまり可も不可も無い。
 そして私はどうか? 私は算数や理科は得意なのだが、国語が絶望的に不味い。
 中身が私だからだろうか。日常的に使っているので話すのは問題は無いが、いざ書いたりするとなると漢字というのはなかなか頭に入ってこない。
 正直、英語の方が気楽だ。あれはミッドチルダの言語と類字している為に読み書きは日本のものよりは楽だ。
 その影響か、私は本が好きではない。よって姉の美由希の読書好きには理解が追い付かない。文字だけのものの何が面白いというのか。


「くっ…それでもなのはには国語しか勝ってない…算数はもう負け確定だし、他はだいだい同じぐらいだし…」
「国語さえ出来ればねぇ…」


 アリサに負けたくないという影響の為か、私の成績はかなり上位の方にある。
 家でもよく勉強するようになってきた。だがやはり国語は漢字が多いのでやる気が失せるのだが。
 その代わりと言ってはなんだが、算数と理科の成績は学年トップと言っても良い程の成績になっている。魔導師としては知っておかなければならない事項だし、これは刷り込み教育によってアネモネであった時から理解している。
 ただ漢字だけはどうにもならない。出来れば刷り込みして欲しかったなぁ、と父親であった科学者、ジーク・インプレッサの事を思い出す。
 …あの人はあれからどうなったのだろうか? 今ではもう純粋に「父」として思えない相手であったが、あれも父親だったのだ。私にとっては。
 …私が士郎と馴染めないのもあの人の影響があるからなのだろうか、と考え込んでしまう。
 その時、額に軽い衝撃が走り、小さな呻き声と共に額を抑えた。


「~~っ、すずか…?」
「ふふっ、だってなのはちゃんがまた悩んだ顔してるから、ね?」
「素直に悩ませてくれ…」
「私達に相談できない事?」


 アリサとすずかの視線が私に集中する。こうしてジッ、と見られるのは苦手なので思わず呻く。
 …相談、か。あまり相談などした事がない。ダメならダメとキッパリ諦めてきた。私はそうやって生きてきた。
 だが、それではダメだ、とアリサやすずかとの付き合いの中で思った。諦めたくない事と、諦めてはいけない事がある事を。
 諦めたくない事というのは、まだ見つからないが、諦めていけない事は…なんとなくわかる。
 士郎は良い人だ。それは私の嘘のない本音だ。
 だが…私は士郎に愛されているのだろうか? 私はあの人の子供だが、愛して貰っているのだろうか?
 多分、愛してくれてる。桃子も、恭也も、美由希も、皆。
 …それが、少し怖い。私は「なのは」じゃない。だけどなのはだと言う事実。
 私は私しかいない。この世界のなのはは私で、「なのは」はいない。
 だが、それでも私は私よりも優れた「私」を知っている。だからこそ、愛想を尽かされるのが怖い。
 ――もう捨てられるのは嫌だ。
 そんな事はしない、と思ってもこの恐怖からはなかなか逃れられるものではない。これがトラウマという奴なのかもしれない。


「…なのはちゃん? 困ってるなら力になるからね?」


 そう言われては私は弱い。すずかは狡い。その言い方は私を弱くする。
 こういう時、アリサが茶化してくれれば誤魔化せるのだがアリサはこういう時には沈黙してこっちを見てくる。頼むから空気を読んでくれ…。
 暫しすずかの追求の視線に曝される事となる。私は思わず溜息を吐いて。


「…ちょっと、家族とどう付き合えば良いかわからないだけだよ」
「え?」
「はぁ?」


 私の話した内容がそんなに意外だったのか、2人は目を丸くしている。


「…なのはちゃんのお兄ちゃんって恭也さん、だよね?」
「それに翠屋の士郎さんに桃子さん。あとお姉さんに美由希さんだっけ?」
「うん…」
「…優しい人、だよね? 皆」
「うん」
「じゃあ何で?」
「……理由は、よくわからない。苦手なのかもしれない」


 答える訳にも行かず言葉は濁す。私の返答を聞いたすずかとアリサは何かを悩むような表情でいたが、ふと、すずかが顔を上げて。


「…なのはちゃんの思うままで良いんじゃないかな?」
「思うまま?」
「うん。なのはちゃんがどうしたいかで良いと思うよ、私は。難しい事もわからないし」
「…そうね。まぁ好きにしてれば良いんじゃないの? 私だってそうしてるし」


 …そんな簡単な事で済むのかな?
 …思うまま、か。今度、そうしてみようかな。


「あ、そうだ。もし話辛いとかだったら良い方法あるわよ?」
「え?」


 ふとアリサが思いついたように視線を上に上げながら呟きを漏らす。
 それは何かと訪ねると、彼女はフフン、と言いたげに微笑んで。


「それはね…肩叩きよ!!」
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