次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話 Apart
2010/02/28 SunOnly One Flowers
 ジーク・インプレッサが逮捕されてから1週間が経過した。
 ミッドチルダにある病院。フェイトはその病室にいた。ベッドの上から晴れ渡った空を見上げている。特に何かするわけでもなく、ただぼんやりと。
 そんなフェイトの耳に扉をノックする音が聞こえた。ゆっくりとした動作で振り返り扉の方へと視線を向けてノックの主の入室を促す。


「どうぞ?」
「失礼するでー?」


 フェイトの病室に明るい声が響く。軽く片手を上げて入ってきたのははやてだった。それにフェイトは若干苦笑を浮かべてから。


「もう、元気そうだね」
「勿論や。まぁ、リンカーコアの方はまだなんやけどな。身体はぴんぴんや」


 そう言って自らの健康を主張するかのように腕をぐるぐると回して見せるはやてに、フェイトはおかしそうに、笑みを零すのであった。




Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話「すみれ -Apart-」




 はやての手の中でリンゴが回る。はやてが果物ナイフでリンゴの皮を剥く音が聞こえる。その音を耳にしながらフェイトは自らの手を見つめている。暫し、互いに言葉は無く、リンゴの皮を剥く音だけが病室の中に響いて。


「…ねぇ、はやて」
「なんや? フェイトちゃん」
「…すみれ、どうしてるのかな?」


 小さく呟かれた言葉にはやては一瞬、リンゴの皮を剥く動きを止める。それから小さく溜息を吐き出して、天井を見上げるようにして。


「ティアナとか、ヴィータとか見舞いに行ってるそうやけど…アカンわ」
「…そんなに?」
「この前は喉を掻きむしろうとした、と言う話も聞いたで」


 再びリンゴの皮を剥く音が響く中、2人は沈痛な面持ちで俯いた。ジーク・インプレッサが引き起こした今回の事件での一番の被害者はすみれだろう。兵器として産み出され、彼の都合のままに捨てられた。
 同時にこの事件の加害者でもあり、被害者でもあるアネモネに失敗作と罵られながらも、彼女を救った矢先に…彼女を自らの手で殺した。


「…どこぞの悲劇物の物語やっちゅーねん」
「…はやて」


 はやてが小さく呟くように言う。それに、フェイトは些かはやての発言が軽率に思えた。故に目を細めてはやてを咎めるようにその名を呼ぶ。フェイトの声にはやては小さく溜息を吐いてから、悪かったわ、と呟いてからリンゴの皮剥きに戻った。
 再び2人の間に落ちる沈黙。リンゴの皮を剥き終わり、リンゴを食べやすいサイズに切り始めたはやてがぽつりと呟いた。


「そーいやフェイトちゃん。アネモネが、「風の花」って呼ばれてるの知ってるか?」
「…え?」
「アネモネはな…ギリシャ語の「アネモス」が語源っちゅう話やよ? ドイツの方でも何かしら風のなんたら~、って呼ばれてるらしいし…」


 そう言うはやての表情はその口調とは似合わぬ暗い物だった。


「まぁ…なんちゅう皮肉や、ちゅう話や。まるで…リインフォースやん」
「…ぁ…」


 確かに改めて言われればアネモネとリインフォースは良く似た消滅の仕方をした。
 それにはやては皮肉を感じていたのだろう。風の花、と名付けられた少女は…自らが祝福の風と名付けた人のように、残した者に全てを託して消えていったのだから。
 リインフォースは自身の存在を呪った。アネモネも…最後の時には自分を呪った、とすみれから聞いた話からそう解釈している。


「ある意味、この名前付けたジーク・インプレッサはジョークのセンスがあるわな。アネモネの花言葉もなかなかやで?」
「…どんなの?」
「「見捨てられる」「孤独」「期待」…。わかってて付けたんなら、これ以上の皮肉は無いわ」


 はやての言葉に、まったくだ、とフェイトは同意を示した。あの男の気紛れでつけたのだろうが、その気まぐれで踊らされた2人の…いや200人を越える子供達の事を思うと怒りが止められない。
 だが今、その仕事は自分の物ではない。自分は怪我の為、法廷に自分は立つ事は出来ない。クロノが代役を立ててくれる、という話だ。クロノが任せる人ならば信用がおけるだろう。ならば安心だと、自分に言い聞かせて。


「…すみれ…どうにかして持ち直すと良いね」
「…せやね」


 フェイトの呟きには…切なる願いが込められていた。はやてもそれに気づいたのか瞳を閉じて、同意を示すのであった…。




 + + + + +




 すみれは布団の中に潜り、ただ息を潜めていた。
 暗い。眼前に映るのは暗闇だ。淡く光は刺しているが無視。狭い場所故に、呼吸をする音が良く聞こえる。時折混ざる「声」にどうしようもなく泣きたくなる。
 だけど、もう涙は枯れ果てた。布団の中に蹲りながらすみれは自身の体を抱いた。
 深い悲しみが、心を引き裂いて…その引き裂かれた傷は癒えない。
 その時、扉をノックする音が聞こえた。すみれは無視する。誰が来ても、今は話したくない。会いたくない。眠っていたい。
 扉をノックする音はしばらくすると聞こえなくなった。代わりに聞こえたのは扉を開く音だ。誰かが入ってきたのだろう。どうでも良く思いながら、すみれは自らの身を強く抱きしめた。


「…すみれ」


 声。その声は、聞き覚えがあった。この病室に入ってから始めての声だ。思わず布団から顔を出して、その顔を確認した。そこには…高町なのはの姿があった。


「…なの…は」
「…うん。私だよ。声が出るようになったって…本当だったんだね?」


 なのはは気遣うようにすみれの頭を撫でながら問いかけた。それにすみれは喉に手を伸ばしかける。喉を、声を潰したくて、時折仕様が無くなる。
 この声はアネモネの物なのに。どうして自分が声を出しているのだろう。どうして、アネモネがいないのだろう。どうして私が、どうしてアネモネが…。


「…うぁ…」


 目が熱くなる。乾いた筈の涙がまた零れそうになる。アネモネの面影を持つなのはを見ると、なのはの声を聞くと、嫌でも思い出してしまう。蘇ってきた悲しい記憶は、再び彼女の閉ざした心の傷口を開く。
 泣き始めたすみれを見て、なのははすみれの被っていた布団を寄せ、そっとすみれを抱き寄せた。すみれは抵抗する事無くなのはの胸に納まって。


「…良かったね、は、言わない方がよい?」
「…ぅん…」
「…でも、私は良かったと思うんだ」


 なのはの言葉にすみれの身体が震える。なのはの言葉に耐えられなくなりそうになる。
 自分はアネモネを殺して、この声を手に入れた。アネモネが託してくれた声は、アネモネの死を以て、私に与えられた。
 それが堪らなく苦しかった。彼女の事を思い出すだけで、心に罅が入り、涙が止まらなくなる。なのはに縋るようになのはの腰に腕を回して。


「事情は…ティアナから聞いてるよ…。ねぇ? アネモネは…最後、どんな顔してた?」
「…笑って…た…」
「…どうして?」
「…わかんない。だけど…忘れないで、って…怖いって言ってたのに…力になる、って、私の為、って…幸せになって…って…」


 震えながらアネモネの言葉を思い出しながら呟くすみれ。その度に涙が零れ落ちていく。
 すみれが落とした涙を拭い取りながら、なのははあやすようにすみれの背を優しく撫でながら。


「…すみれは…今、幸せ?」


 なのはの問いにすみれは首を振る。幸せなんかじゃない。辛い、苦しい、悲しい。
 アネモネがいないから。アネモネにいて欲しかったから。アネモネにもっと笑っていて欲しかったから。アネモネともっと話がしたかったから。もっともっと彼女と生きていたかった。


「…そっか…。じゃあ…アネモネも、安心出来ないよ?」
「…ぇ…?」
「アネモネは…すみれの幸せを願ってたんだよね? だったら…すみれが幸せじゃなかったら、ずっと、ずっと苦しいと思う」
「…苦しい…の?」
「アネモネはそれを願って消えた。それが叶わないのは…辛いよね? 願いが叶わないのは辛いよね?」


 願いが叶わないのは確かに辛い。だから…アネモネは、辛い? でも、もうアネモネはいない。もうアネモネの声は聞こえない。アネモネが苦しいのかもうわからない。
 だってもうアネモネは死んでしまったのだから、と。すみれはそう思う。そんなすみれのの頭を撫でて、そっとなのははすみれを強く抱き寄せて囁くように言う。


「…アネモネはすみれの中で生きてるよ。すみれが忘れない限り…ずっと」
「…嘘…」
「嘘じゃない。すみれ…アネモネも、そう言わなかったの?」
「……っ!?」






『私を…忘れないで。私はずっと…貴方の力になるから。貴方と生きてるから…だから…悲しまないで…』







「…ぅ…ぐぁ…っ」


 脳裏に蘇ったアネモネの言葉に、声を押し殺してすみれは震えた。なのははただ、すみれの震えが収まるように包み込むかのように抱きしめて。


「…辛いなら、私が一緒にいるよ」
「…っ…なの…は…」
「私にも責任があるから…。だから、貴方を…貴方達を守りたいんだ。すみれが辛いなら…ずっと、一緒にいるよ…すみれが、一人で歩けるようになるまで」
「なの…はっ…なのはっ…なのはぁっ…!!」


 すみれは、ただ泣きじゃくる。なのははそんなすみれをあやすようにただ抱き続ける。
 逝く者が…残る者に残した物。それは重いけど、きっと何よりも尊い物。アネモネはただすみれの幸せを願った。その願いは叶えられるべき望みだ。


「…重いよ…。苦しいよ…」


 それはとてつもなく重たい。それでもすみれは思う。幸せになりたい、と。アネモネの為にも、自分の為にも。
 だから少しだけ、もう少しだけ泣かせて欲しい。そう呟きながら、すみれはただなのはの胸に顔を埋め、震えが収まるまで泣き続けた。
 泣いた後…少しでも笑えるようにしようと、そう思いながら…。
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