次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■創魔の疾風 =A girl creates the world= Act.03
2010/02/01 Mon創魔の疾風
 集め、学び、残し、考え、理解し、自らの物とする。
 それは知識の収集行為。それを行うその者の顔には笑みが浮かんでいた。
 ここは海鳴市の図書館。そこにはやてはいた。無数の本をかき集め、積み上げ、その中で本を無言で読み続けている。
 その速度はその年齢からすれば、おかしいだろう、と思われる程の速度であった。
 本を閉じる音が聞こえた。閉じた本を近くの棚において、はやてが顔を上げ、ふぅ、と息を吐いた。


「ほんま本はえぇなぁー」



 こうしてはやては変わらない日常を送っているのであった。
 本を棚にしまい、図書館を後にする。鼻歌を歌いながら車椅子を押しながら帰り道を行くはやて。
 その様子はどこからどう見てもご機嫌な子供で、その顔を見れば思わず微笑ましくなってしまう。
 笑顔を崩さぬままはやてはいつのも道を通り、いつものように家に戻り、いつものように食事を作るのだ。


「ただいまー」


 誰もいない家でもはやては律儀に挨拶はきちんとする。
 何も変わらない日常。はやてはただ日常を静かに過ごしていたのであった。
 リストカットのあの事件からはやての精神は非常に安定した状態になっていた。
 知りたい。そう思う気持ちを抑制する事を止めたからだ。
 確かに嫌な事もたまには知るが、最近になってそういう嫌な事を知らなければいけない場合もある、という事を知ったのである程度割り切っている。
 後にその嫌な事も素晴らしい発見の為の材料になったりするので捨てたもんやない、とは本人の弁である。


「知識に無駄はない」


 それがはやての持論である。例えどんな知識でも無いよりはマシ。
 それを悪用するもしないも、結局は人。使う人次第でどうにでも変わるのだと。
 はやてはただ新たな知識を得る為に知識を集めるのだ。ある意味素晴らしい好循環な生活だと思われる。
 1人寂しい食事も、研究と実験にも思えてきて正直楽しい。時折失敗して死にたくなるような料理が出来てしまうがそこら辺は仕様がない。


「ご馳走様」


 挨拶が終わればすぐさま食器を片付ける。やるべき事はやってから己のやりたい事をやる。
 これは石田先生に言われている事だ。この前食器の片付けを忘れて徹夜で本を読みあさり放置。結局面倒になって放置していた所を石田先生が来訪。小1時間ほどの説教を受けた苦い記憶。
 かちゃかちゃ、と食器を片付ける音が響く。孤独な空間では非常に大きく、寂しい音になる。
 それでも少女は鼻歌混じりに洗う作業を行っていた。この後に待っている楽しみが待ちきれなくてそわそわしている子供。
 それが今のはやてに当てるべき最も相応しい表現であろう。
 水を流す音が響く。食器に付いた洗剤の泡を洗い流し終わり、軽く水を切ってから食器入れに入れて乾かしておく。
 明日になれば水も落ちているだろう、それを拭いて朝には片付ける。
 そして今日やらなきゃいけない事は終わった。それはつまりはやてが最も待ち望んでいた時間。


「終わったーっ! よーし、本読もう!」


 楽しそうにニコニコ笑いながらはやては図書館から借りてきた本を手に取る。
 そして、ページを開き、読み始めていく。この集中状態に入ればはやての耳には大抵の雑音は聞こえなくなる。ただ本のページを捲る音だけが部屋の中に響く。


「…しかし、現実的ではない本やねぇ」


 はやてが思わずぽつりと呟いた。それははやてにしては珍しい行動であった。
 本を読み始めたら一言も話さないのがはやてだ。だが今日は少し違った。
 少しだけ集中力が欠けているようだ。その呟き以降は呟きは漏れなかったが、笑みは浮かばない。
 だが不思議そうな顔を浮かべたまま本を読み終わり、本を閉じる。ふとはやては閉じた本を見つめる。
 その本は「気功」等について記された本であった。それを少し眉を寄せて見つめて。


「気、か」


 現在の世は科学的に色々な物が証明されている時代だ。
 故に理論も何もない力。あるかどうかもわからない力ははやてにとっては非常に不可解な物である。
 説得力、というのだろうか。こうであるから、こうであるのだ、という過程がなんだか曖昧のような気がして、はやてはどうも気などについてはめり込めずにいたのであった。


「まぁ、試してみるかな」


 興味が無いわけではないし、と呟いてから本を机の上に置いてから車椅子を動かす。
 集中出来る場所、少し広めの部屋の中心に行く。なんとなく気分的にこういった集中する作業をやる場合は広い空間でやりたい、というのがあったからだ。


「さて、と」


 気とは不可視の物で、流動的で運動して、作用を起こすという。よくはわからないが、その時は「イメージ」で補う。
 ゆっくり、瞳を閉じていく。はやてはこの感覚が好きだった。沈んでいく感覚、圧迫されるような、それでいて包まれるような、切り離されたような、繋がったような、この曖昧な感覚が好きだった。
 一種の集中状態だ。本を読んでいる時とは違う集中状態。何か思考に没頭している時になる状態。
 はやては今やろうとしている事を確認する。
 「想定」。気とは不可視の物である。情報を確認。
 「検索」、「該当」。気とは流動的で運動して作用を起こす。
 「不明確」。他の知識を応用。補強し、イメージを強固な物にする。
 補強、完了。


「気を身体に巡らせるように……」


 イメージした結果、生まれた「気」という想定した結果を身体に巡らせる。
 「試行」開始。
 ゆっくりと、何かを身体に通していく感覚。
 心臓から、脳を周り、右腕を周り、左腕を通し、身体全体を下っていくように想定する。
下り、下り、下、り、く、だ、り、く…だ…。
 エラー、試行を停止。


「…え?」


 それは、違和感だった。
 己の想定した物が、はじき返されるという謎の感覚。ただの勘違いでもない。
 確かに、感じた「力」のような物。暫し訳の分からない感覚に呆然としていた。
 今のは、一体何だ…?


「も、もう一度」


 確かめる為にはやてはそれを行使する。先ほどと同じイメージ。頭から、腕へ、そしてそのまま、下へ。下へ…。下…へ…。
 再びのエラー。


「――は、はぁ…はぁ…!」


 呼吸が乱れる。今の感覚は本当になんなのだろう?何故、腕が通るのに、足は通らない。
 まるで淀みのような物があって、それが流れをせき止めているような、そんな感覚。


「…なんやの? これ」


 自然と鼓動が早く、早くなっていく。それは恐怖と興奮。未知に対する恐怖と興奮。
 この足の淀みは一体なんなのだろう? 知りたい。だけど知ってはいけない。知ってしまったら何かが変わるかもしれない。


 構う物か。


 知りたい。そう決めたんだ、とはやては心の中で呟き続ける。
 と手首の傷を握り、恐怖を押さえつける。押さえつけた恐怖は収まっていき興奮が身体を満たしていく。
 知りたい、何かがわかるのか? 己のまったくの未知の領域だ。
 己の麻痺している部位というのが気になる。それが更なる興奮を呼び覚ます。


「何をどうしたら良いのかな?」


 考える。はやては更に深い場所へと潜っていく感覚。
 しばし、そのままはやてはぼんやりと漂っていた。そして、ゆっくりと思考を動かしていく。
 思考し、検索、該当、試行、失敗、破棄。
 再度、検索、該当、試行、失敗、破棄。
 再度、検索、該当、試行、失敗。


 それは、気が遠くなるような作業。だがはやては心の底から楽しんでいた。
 己の知識の広さを知ればそれに関心も覚え、更なる疑問が浮かび、世界が連鎖的に広がっていく感覚。そしてそこから更に想定し続けていく。
 足りない部分はイメージ、または他の知識から補う。


 そして、何度も、何度も試行、そして……成功。


「……ぇ…?」


 それは、最初は小さな違和感だった。無かった筈の物が、急に「戻ってきた」感覚。確かめるためにその「感覚」に従い「何か」を動かす。
 ぴ、く、と一瞬「足」が動いた気がした。


「…ぇ…?」


 嘘だ。
 思わず呟いた、もう一度確かめる為に「感覚」に任せて力を込める。ガタッ、と車椅子を「蹴る」音が部屋中に響いた。
 嘘だ。
 もう一度呟き、力を込める。ガタッ、と音を立てて「足」に込めすぎた力が車椅子からはやてを投げ飛ばした。


「あぅっ!」


 派手な音を立ててはやてが地面へと落ちる。はやては目を見開いたまま固まっていた。
 ゆっくりと手を使って、身体を起こして、呆然とした様子で足を見つめる。先ほどの感覚に従い、力を込めてみる。
 ぴ、くり、と。
 足の指が、動いている。己の意思を受けて、動いている。今、私がこの足を、動かしている。
 知らず知らず、はやては泣いていた。泣いている事も知らずに、呆然と足を見つめ続けて。
 そして、それから、顔を歪めて、大粒の涙をボロボロと、ボロボロと零し始めた。


「うぁ…、…あ、あ、ぅっ、ひっく…ぁぁっ…」


 静かに、声を押し殺してはやては泣いた。
 嬉しくて、叫び出したくなるのを必死に抑えてはやてはその心を占める感動にただ身を任せていた。
 動かぬ筈の足が動いた。その「奇跡」にはやてはただ、涙を零し続けたのだった…。
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