次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■創魔の疾風 =A girl creates the world= Act.02
2010/02/01 Mon創魔の疾風
 時刻は深夜。灯り無く闇に沈んだ室内の中のベッドの上。そこにはやてはいた。
 何をするわけでもなく。ただ、ぼんやりとそこにいた。
 眠っているわけではない。現に闇の中、ハッキリとその瞳は見開かれている。
 そのベッドの周りには乱雑とおかれた本達。カバーなどが外れている様子から乱暴に落としたような印象を受ける。
 はやては己の思考がぐるぐる、ぐるぐると空回りしているのを感じている。
 考えているのは自分の筈なのに、まるでそれが誰か他人が考えているような第三者の視点であり己の視点じゃない。
 それは逃避だ、考えているのは己。だがその答えは出ることがなく、ぐるぐると巡るだけだから。
 はやては理解する事を放棄し、悩む自分を嘲笑う。


「望むものばかりが手に入る訳やない…」


 闇の中、天井に手を伸ばして、ぽつりと呟いた。
 知る事は好きだ。新しく世界を知っていく事が出来る。広がっていく世界は楽しい。
 だけど、知ってしまうんだ。それが己の望む物ばかりじゃないって。
 目を逸らしても必ずそこにあるんだ。楽しいという思いに反する、つまらないという思いが。
 知れば、知るほど。重ねれば、重ねるほど。それは次第に重くなっていく。
 あぁもう手放せない。捨てられない。知りたくもない事も知ったとき、人は現実を否定するのだろう。
 図書館に通い、様々な知識を得て、はやては生きてい。それが生きる楽しみだった。
 だがはやては知ってしまう。読めば読むほどに。知れば知るほどに。世界が広がるその度に知りたくもない現実を知る事に。
 夢なんかこの世には無い。あるのはただ現実だけ。理想を掲げようとも現実でそれを叶える為には何かを捨て、諦めなければならないという現実。
 英雄が英雄たる理由は、栄光の影で大量の人殺しを為していた上になるのだと言う人の歴史という醜い現実。
 病に苦しむ人に対して救える術があるのに自らの欲と保身の為に救われない人がいるという現実。
 知りたくもない、知りたくなかった現実を知った時から。それを理解した時から再びはやては壊れ始めていた。
 夢が見たいだけだった。逃げたかっただけなんだ。それに気づいた時、はやては感情を失った。また人形のように表情一つ動かさなくなった。


「どうして、こんな」


 辛い事ばかりなんだろう? 物語のお姫様のように誰かが助けてくれるわけがない。それが現実。
 物語のがんばり屋さんに神様が必ず幸せをくれるわけがない。それが現実。
 知りたくもない。夢が壊されて、現実が顔を出す。


「眠りたい」


 でも眠れない。体調が優れない。まるで重りをつけたかのように身体の動きが鈍く、身動ぎするだけでも疲れてしまう。
 動く事に疲れたんじゃない、生きる事に疲れただけだ。それは子供にしては早すぎる早熟故にこの世の仕組みを理解してしまった子供の悲劇。
 はやては余りにも無力だった。だからこそこの現実が納得がいかない。だが抗う術も無い。英雄でも、お姫様でも己は無いのだから。
 ただの人間という、なんでも無いちっぽけな存在。


「……別に、生きてたいわけやない」


 だけど死ぬのは怖い。ただそれだけ。辛い事より、怖い方が嫌だ、だからこそはやてはこうして生きている。
 だけど、それも終わりが来てしまう。終わりが来る前に忘れてしまい、そして笑えてれば良かったかもしれない。
 だが、それも恐怖だ、今の己を無くしてしまったらどうなってしまうのだろう?
 耐えて生きるか、乗り越えて死ぬか、逃げて忘れるか、はやてに残された余りにも辛い選択肢。





 そしてはやてが選んだ1つの答え。





 ゆっくりとベッドから身を起こし、車椅子へと乗る。
 きし、きし、と車椅子の軋む音を聞きながら。はやてが向かったのは机の引き出し。
 雲が払われ、月明かりがはやての部屋を照らした。はやての手には、鈍く銀色の光を反射させた物。それはカッターだった。
 はやてが手の中のカッターの刃をぼんやりと見つめたまま、ゆっくりとカッターの刃を出していった。
 刃がその身を表し月光を更に反射させる。それにどこか生気の無い瞳ではやては見つめたまま、ゆっくりとカッターを握りなおした。
 ぴと、と、手首にそっと、カッターの刃を置いた。手が、少し震えた。


「ッ」


 チクッ、とした痛み。皮が一枚切れたようだ。そのじわり、と己の中で浸透する痛みにはやては口元を歪めた。
 何がおかしいのか、という程に口元を歪めて笑う。そしてカッターを握る力を強めた。
 ひゅっ、と音が鳴ったかもしれない。もしかしたら鳴っていないのかもしれない。
 だが、意識を刈り取りそうな痛みがはやてのした行動の結果を表れであった。





 リストカット。それは自ら命を絶つ愚挙。





 どろどろ、と血が溢れ、痛みがはやての身体を刺激し続ける。思わずカッターを落とした。ぎゅっ、と傷口に手を当てる。
 どろり、とした触れているのが気持ち悪い水の感触。それにはやては背筋に冷たい物が走るのを感じた。
 だが笑みは消えない。すっ、と傷口から手を離し口元へと運ぶ。ぬちゃ、と音を立てて、頬に血が付く血をと舌で舐め取る。
 鉄の味がする。そう思考し、手の平にべっとりと付いた血を舐め取る。
 舌に血が付く度に口内で広がっていく鉄の味にはやては顔を歪める。ただ無邪気な笑みに。
自分でもわかっていない。何故笑っているのか? それは恐怖による物か、開放感による物なのかまったくわからない。だがはやては笑っている。
 ぐらり、とはやてが崩れ落ちそうになる。貧血?血が抜けているのだから当然。
 ドロリ、ドロリ、と血は止まらない。それに乗じてはやての意識が段々と黒く染まっていく。
 まるで闇の中に溶け込むような、そんな感覚にはやてはまた思考を廻していた。


 怖いのか? 嬉しいのか? 何故私は笑っている?
 想定し、思考し、解答し、はやては答えを出そうとする。
 ぱちり、とピースがパズルの中に嵌るように、答えは出た。


「知ったんや、私は」


 死の感覚。それを知った。そうだ、それが嬉しい。今ここで背筋が冷え、身体から力を失い、意識が落ちそうなこの感覚を知ったのが嬉しい。
 これは己にとって未知の領域であった。ただ、単純にそれを知って嬉しいと思う自分がいる。


「あぁ、そうか」


 私が恐怖していたのは痛みだ。痛いのは怖い、だけど痛いのはいつか慣れてしまう。
 そう、私は解放されたいわけではなかった。ただ、恐怖し、一歩を踏み出す事が出来なかったのだ。
 何が怖いのか?それは、死だ。
 最も人が恐怖するのは死だ。
 はやてが両親の死により感じた恐怖。はやては最初、それを理解する事など出来なかった。だがその時と状況が違うのだ。
 はやては知ってしまった。この世界は現実であり、夢物語など所詮夢でしか無いのだと。
 知れば知るほど、はやては喜びを、楽しさを、怒りを、悲しみを、世界を知っていった。
 知る事が怖くなったんじゃない、知る事によって恐怖してしまう事が怖かった。
 そしたら、己の世界はそこで終わってしまう。これで終わりを迎えてしまう。



-そんなの、嫌だ-



 だからこそ、はやては無意識的に最も己が恐怖していた物を知る事を選択した。
 それが死。そして今「死の痛み」が身を浸し、はやてに一つの解答を与えた。


「あぁ、そうか」


 ぽつりと呟く。


「失うって」


 闇の中で少女の声が響く。


「また、新たに何かを手に入れる為の術なんや」


 それは、解答。少女の中で出た答え。
 失う、それは己の器の中から無くなってしまう。だがそれでは不安定だから、それを埋めようとする。それはごく自然な事だ。
 失って必要になったから手に入れるんだ。最初から人は持っている。持っている物がなくなるから求めて生きているんだ。


「そうか。そうなんや」


 知った事への満足感がはやてに現実を取り戻させてきた。瞳に力が戻り、そしてようやく手から感じる痛みと不快感に顔を歪めた。
 車椅子の手すりは、血に塗れていた。これはまずい、とはやての脳が警告を訴えていた。
 己はこのままでは死ぬだろうな、と。何故か? それは血が溢れているから? どこから? それは手から。
 何故手から血が出るの? それは血管があるから。血管とは何? 血を運ぶ管、己の身体の中に這う機関。それは一体どんな物なの? 想定する。
 想定し、思考し、解答。それは身体全体に血が巡っているからだ。何故巡る? 
心臓があるからだ? 血管はどれだけ緻密な物なのだろう? 知りたい、知りたい、知りたい。
 知るためには生きる。だがこのままでは死ぬ。ならば血を止める必要がある。しかしどうやって? 知識の中から検索、該当。


「止血せなあかんな」


 切羽詰まっている筈なのにどこかのんびりとした声ではやては呟き、行動を始めた。
 本で学んだ方法の手順の通りに必要な物を持ってきて治療を始めるのであった…。





++++++





「フゥ…」


 ようやく治療が終わった頃には酷く頭が重く具合が悪かった。車椅子の上から動く気がしない。
 血は拭き取ったが、少しだけ痕が残りそうである。血落ちにくいんやなぁ、と思いながらはやては笑った。
 知りたい、ただそれだけ。それがはやての中で最もシンプルで、最も強い願い。


「明日は、何の本読もうかなぁ」


 だからどれだけ辛くてもはやては知識を集め続ける。
 知りたくない現実を知って、この身が削られても其れは無駄じゃない。また新たに求める術になる。
 傷すらも抱えて行こう。それが明日に生きる希望になるんだ。
 だからはやては笑った。ただ、無邪気に。



 後日、病院にてはやてのリストカットを知り石田医師が卒倒するという事件が発生。
 意識を取り戻した石田医師がはやてを4時間ほど説教をし、最後には泣き出してしまい、それを怒られて半ば泣いていたはやてが慰めるという奇妙な事態になっていた。


「私、心配されてるんやなぁー」


 そう言ったらまた怒られた、とはやては後に語っていたそうだ。
 はやての手には一生消える事の無い小さな傷が出来た。それは、彼女の原初の願いを思い出させた「傷」。
  それは、これからも消えないで刻まれ、彼女に思い出させ続けるのだろう…。
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