次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第9話 Apart
2010/02/21 SunOnly One Flowers
 最初は、ただ、何を言われたのか、理解が出来なかった。
 だけど、彼女は悲しそうな顔で、涙を流しながら、私に謝った。
 それが、ただ、ただ、わからなくて、戸惑うばかりで…。
 殺そうとした。だけど、殺せなかった。
 憎かった。だけど、憎みたくなかった。
 ぐちゃぐちゃに、ばらばらに、心と体が、別々に動き出す。
 ただ、ただ伝えたくて、叫ぼうとして、叫べなくて…。


「…っ…っ…!!」


 出て、と強く願った。切望する。伝えたい。ちゃんと、伝えたい。なのに、声が出ない。
 それが、悔しくて。悲しくて。辛くて。また、涙が零れる。
 伝えたい。だから、駄目だと言われた事を、私はしてしまった。


『ごめん、なさい…っ!!』


 ただ…伝えたいだけなんだ。だから、きっと、後悔はしない。



Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第9話「本物と偽物と -Apart-」





 なのはは、突然の念話に驚きを隠せなかった。念話で意志を伝えて来たのは、目の前で泣きじゃくる少女だった。大粒の涙を幾つも零しながら、彼女は何か、言葉を放つような動作をしながらも、声は出ず、代わりに念話を使った。
 そこから導き出せるのは、この少女は声が出ないという事だ。


「…っ…」


 それに、なのはは強く唇を噛み締めた。この子は、何故、こんなにも不幸なのだ、と。
 失敗作と罵られ、捨てられ、死すらも強要され、更には、声も出ない。
 一体、何故そんな不幸を彼女が背負わなければならないのか?


(それは…私の所為だ)


 なのはがいるからこの子は生まれた。恐らく彼女の生誕に使われたのはプロジェクトF。彼女の親友である、フェイト・T・ハラウオンと、その保護下のエリオ・モンディアルを産み出した「クローン」の計画だ。
 だがその計画とて完璧ではない。故に、声が出ないというハンデを持って彼女は生まれて来てしまった。
 だから、尚、比護されなければいけない存在の筈なのに…彼女は捨てられた。
 愛など受ける事無く、ただ、制作者の都合に踊らされ、捨てられた。
 だが、その原因を遡れば、そこには自分がいる。自分の持つ力がある…。


 なのはは、ただ、悲しかった。本来、謝らなければならないのは自分な筈だ。
 なのに、目の前にいる彼女は、自分に謝っている、と。
 彼女の憎しみも、悲しみも、全部、私が原因と言って良いのに、謝る必要など、無いのに。
 痛む身体を動かして、なのはは少女へと手を伸ばした。伸ばした手で、少女の頬を撫でて涙を優しく拭う。涙の熱が、触れた指に伝わってくる。
 少女は、涙を拭われた事に驚いて、なのはを見ていた。


「謝らなくて…良いんだよ…私が、悪いんだから…ごめんね…ごめんね…!!」


 今考えれば、想定出来なかった事態じゃなかった、となのはは思う。
 なのはの力は、良くも悪くも、世に知れ渡り、その力に魅せられる者も居るのだから。
 だが、その力に魅せられた者の全てが、善なる行いをするとは言い切れない。故に、なのはの力に取り憑かれた一人の男が、アネモネと、この少女を産み出したのだから。
 ただ、救いたかっただけだ。自分の力が誰かを救えるならと、なのははずっと手を伸ばし続けてきた。それを正しい事だと信じて。
 だが、なのはがどう思うと、どんな理想を翳そうと、なのはの力は理想だけを叶えるのではない。力は、また、新たな力を呼ぶのだから。
 それが、今、なのはに突きつけられた。自らの力の存在が、一人の少女の不幸を呼んでしまった。娘にも、危険な目に曝してしまった。
 悪い事ばかりだけではない。これは物事の側面でしかない。しかし、なのははそこに捕らわれてしまった。自らの力を責め、自らの存在を呪い始める。
 それは、奇しくも、目の前で泣きじゃくる少女と同じように、自らを呪ったのだ。
 まるで、それは鏡のように。なのはと少女は、互いに自らの存在を呪ったのだ。
 しかし、忘れてはなない。人は鏡を見て、自らを見て、過ちに気づく事が出来るという事を。
 それに気づいたのは、少女の方であった。彼女はなのはが自らを責め、自らを呪う姿を見て、そこに自分を見ていた。そして、それを彼女は否定しようとした。
 彼女が悲しむ事は無いのに。全て、自分が悪いのに。そう、思っていた。
 だけど、彼女は自らが悪いと言った。そして、今、自らを呪っている。
 わからなかった。自分は彼女の偽物で、生まれて来ちゃいけない物だったのに、彼女は私に謝っている。謝る必要など無いのに、と。
 そして、少女を突き動かしたのは、憎悪でも、悲哀でも無かった。ただ、ただ思ったのだ。彼女が泣くのは間違っているのだと。
 彼女は、なのはと同じように、手を伸ばし、なのはの涙を拭った。それに、思わず呆然とするなのは。
 それを見て少女の中に、何かが広がっていく。
 同じ、なのだと。偽物も、本物も、そこには関係が無かった。ただ、誰かを思い、涙する。その思いは、同じ物。ただ、泣いて欲しくないだけ。悲しんで欲しく無いだけ。
 本物か、偽物か。そんな物など些細にしてしまう、誰かを思う事。
 少女には、確かに、憎悪があった。だが、その憎悪の生まれた先は恐怖故に、だ。
 どこに居れば良いのかわからない。何をすれば良いのかわからない。ただ、それは闇の中と同じように。
 だが、彼女は…泣いてくれた。偽物である自分に、申し訳ないと、涙を流してくれた。
 ただ、それが嬉しかった。ただ、それが私をここにいさせてくれた。私を、自覚させてくれた。私は、ここに居て良いのだと思えた。
 私は…死ななければならない存在では無かった。なのはの涙が、少女の閉ざしかけた心を再び開いていた。
 今なら、フェイトの涙も、ティアナの言葉も理解が出来る。皆、私を思ってくれていたのだと。ここにいて良いと、許してくれていたのだと。
 許しの意味も分からず、自らを呪う時は、もう終わらせる。


(泣かないで…)


 ただ、なのはの涙を拭いながら、思う。悲しまないで欲しいと、ただ、それだけを。
 恐怖も、憎悪も、悲哀も。もう、いらない。もう、怯えない。もう、震えない。
 私は、今ここにいる。それがわかったのだから。


「何、で」


 涙を拭われたなのはは、呆然と、そう呟いた。それは、少女がまだ、なのはの事を怨んでいるのだと思っているから。
 だが、少女は、もうなのはを憎む必要は無い。彼女は生まれた事を否定したわけではない。ただ、否定されるから、否定しなければならないと思いこんでいたに過ぎないのだ。
 だが、否定する理由などどこにも無い、と気づいた彼女は、もはや、なのはを憎む必要など無い。
 彼女は、ただ、自分はどうして生まれちゃいけなかったのか。その理由を、ただ、自分に無理矢理見いだしていたに過ぎないのだ。
 でなければ、彼女は自分がわからなかったから。何を望まれているのかわからなかったから。ただ、明確な居場所が欲しかった。
 だが、今、自分が良く見える。合わせ鏡のように、なのはを見えたから。
 ただ、思っていたいのだと。そして、思われていたいのだと。だから、初めて、フェイトと出会い、一人の時に、あんなにもフェイトの存在を待ち望んで居たのだから。
 もう、十分な程、思って貰った。なら、今度は返す番だ。だから、涙などいらない。
 少女は、なのはの上から降りて、ベッドの傍に立つ。
 そして、ベッドの中にあったなのはの手へと、手を伸ばし、優しく握りしめる。
 もう片方の手で、なのはの頭へと手を伸ばし、何度も、何度も撫でる。
 自分がそうして貰って、嬉しかったように。嬉しいと思った事を返したかった。ただ、彼女も嬉しいと思って欲しかったから。泣いて欲しく無かったから。


「…慰めて…くれるの?」


 なのはが、震えていた。少女は、震えて欲しくなど無かった。だから、頷いた。
 わからない、と顔をするなのはに、少女はもう一度、念話を行使した。


『ありがとう。私の為に泣いてくれて』


 ただ、胸の底からわき上がってくる歓喜を、そのまま、表情へと変えた。
 満面の笑み。まさに、そう称するに相応しい笑みを浮かべて。


「…許してくれるの? 私が、貴方を苦しませたのに…」


 少女は頷く。許す事など、当然だと言うように。


「私がいなければ…」


 少女は、首を振る。それは違うというように。


「…何で…」


 少女は、なのはを落ち着かせるように、何度も頭を撫でる。


「良いの…? 本当に…?」


 勿論、と告げるように、頷いて。


「……っ…ぁ…」


 なのはの涙が、更に、落ちていく。それを拭いながら、何度も、少女は頭を撫でて、手を握る。悲しまなくて良いのだと、伝える為に。
 だが、なのはの流した涙は、もう悲哀の涙ではないのだと彼女はわからない。
 だから、なのはは、少女の握ってくる手を、強く握り返した。離さないように、繋がりを求めるように。


「あり、がとう……っ! ……ごめん、ね…ごめんね…っ!!」


 許してくれるなんて、思っていなかった。なのはは、本当にそう思っていた。
 許される筈など、無い。そう、思っていたのが許された時、彼女はただ、内にある感情を隠す事無く吐き出した。
 それは、悲しみ。そして、悲しみを塗りつぶす程の歓喜。
 どれだけ、辛かっただろうか。想像も出来ない痛みを与えられながらも、許すと言う彼女に、なのははただ、感謝と謝罪の言葉を紡ぎ続ける。
 いくら、言葉を重ねても足りないぐらいに、届けたい思いがある。少しでも、伝われば良いと願い、なのはは、何度も、何度も言葉を重ねる。
 そんななのはを、少女はただ、あやすように、何度も、何度も頭を撫で続けた…。
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