次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
■■■スポンサーサイト
--/--/-- --スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第8話 Bpart
2010/02/21 SunOnly One Flowers
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第8話「存在価値 -Bpart-」




 夜。ミッドチルダの空に浮かぶ双月は…不気味な光を放っていた。
 その光に照らされる病室。そのベッドの上に眠るのは一人の女性だ。
 女性の名は、高町なのは。3日前、彼女自身のクローンと交戦し、撃墜された。そして、今、ここにいる。
 彼女は眠っている。自身の体に受けたダメージを癒す為に、ただ、静かに…。


 その静かな病室に、1つの音が産まれた。
 それは、誰かの足音だ。その足音は、静かに、その病室へと忍び込んだ。
 息を呑む音がする。侵入者は、何かの感情を覚え、息を呑む動作をしたのだろう。
 月光が、侵入者を淡く照らす。それは、なのはに良く似た…いや、彼女とほぼ同じ容姿をした少女が立っていた。
 名は無い。あるとするならば、No.207。それが、彼女の名前。


「…っ……っ…」


 息が、次第に荒くなっていく。興奮しているかのように、少女は、眠るなのはのその横顔を見て、その表情を変化させていく。
 だが、その表情は実に複雑な物であった。一見、怒りにも見え、一見、悲しみにも見え、どれとも付かない曖昧な表情。
 少女は、まるで、幽鬼の如く歩き出した。高町なのはが眠るベッドに寄っていき、間近で彼女の顔を見る。
 そして、しばらくなのはの顔を凝視してから、彼女は窓へと寄っていった。
 窓に、僅かに映る自分の顔を見る。どれだけ見たか。暫しの時間をおいて、彼女は、そっと、自らの頬に触れた。当然、窓に映る彼女もまた、自らの頬に触れた。
 少女の瞳の色に、暗い色が宿る。それはマイナスの感情の物。怒り、悲しみ、妬み、怨み…。自らに、そして他者に害為す感情の色が、次第に、次第に彼女を侵していく。


(…ぐるぐる…回る…)


 ゆっくりと、歩き出す。立てた足音が、不気味に病室を満たす。先ほど、覗いていたなのはの元へと少女は歩いていく。


(…気持ち悪いぐらい…ぐちゃぐちゃで…わけがわからなくて…)


 少女の脳裏に思い出されるのは、ティアナとフェイトに告げられた自らの真実。
 この、目の前にいる高町なのはのクローンである事。そして、彼女を越える為に作られ、そして、失敗と判断され、捨てられた。


(偽物…? …私は…私じゃないの…でも、私は「なのは」じゃない…でも、誰でもない…)


 そして、先日。出会った少女は、自らと同じ存在であり、自らの成功作。知って、わかって、納得して、少女は理解していく。
 そして、否定が彼女の心を満たした。絶望、と言っても良い。何もかもが断たれたのだ。
 そして、何も分からなくなった。フェイトが優しくしてくれる理由も、自分が息をしている理由も、何もかもがわからなくなった。
 考えなさい、とティアナは言った。だけど、思考は、ただ空回りするだけ。


(…苦しいよ…辛いよ…)


――産まれて、来なきゃ良かった。



 初めて、彼女はそう思った。何も知らなかった頃は怖かった。だけど、今はもっと怖い。

 
(フェイトも、ティアナも、スバルも、あの子も、皆、皆、皆。怖い。怖い。怖い。わからない。偽物、失敗作、それは皆、いらない物。いてはならない物。だから、だから、どうして、私は生きているの?)


 空回り。空回り。幾度も無く、空回りを続けた思考は、自身の存在の否定を促す。
 そして、ベッドが軋む音がした。少女が、なのはのベッドに乗り、馬乗りになる。
 真正面からのぞき込んだ顔。安らかに眠る顔。ただ、衝動的にめちゃくちゃにしたくなる。殴って、引き裂いて、嬲って、潰して、壊したくなる。


(…苦しいのは…)


 少女の手が伸びる。そっと添えられるように、その手はなのはの首を掴んだ。


(全部…全部…お前が…いるから…)


 そして、掴んだ手に力を込めた。ゆっくり、ゆっくり、締め上げるように。


「…ぅっ…」


 首を絞められた圧迫感から、なのはが苦悶の声を漏らした。それに、少女の手が震えた。次第に、込めた力が抜けていく。手の震えが、全身へと至っていく。


(…わからない、わからないわからないっ!! 苦しい!! 辛い!! 何をどうすれば良いかわからない!! 怖いっ…! 皆、怖いよぉっ!! でも、でも、怖い…っ! 壊すのは、怖い、でも、壊したい、そうしなきゃずっと、ずっと怖いっ!!)


 震えた手に、力を込めようとした。それは、怖いから。
 でも、手には力が入らない。それは、怖いから。


(…フェイト…ティアナ…スバル…)


 脳裏に浮かぶ、出会った人達を思う。あの人達は、なのはが傷付いて、泣いていた。苦しんでいた。悲しんでいた。私が、彼女を傷付けたら、また、泣いて、苦しんで、悲しむのだろうか?
 それは、怖い事だ。それは、いけない事だ。だから、私のしている事は、いけない事だ。
 でも、苦しいんだ。辛いんだ。怖いんだ。


「……っ……!!」


 ぽたり。…ぽたり…。ぽたり、ぽたり…。
 それは、落ちていく。少女の両目から、頬を伝って、落ちていく。
 涙。その名の雫が、落ちていく。彼女の悲しみを秘めて。彼女の苦しみを秘めて。
 叫びたかった。泣き叫びたかった。なのはの首にかけた手に、もう力は入らない。
 目を覆い、声なき叫びをあげる。ただ、喘ぐように息を漏らしながら、涙を零し、嘆き、叫び、泣き続ける。
 だから、彼女は気づかなかった。ゆっくりと、なのはの瞳が開かれていく事に…。





 + + + + +





 覚醒の初めは、圧迫感からだった。意識が覚醒するのと同時に、なのはは圧迫感を感じ、不快感を覚えた。


(…な、に…?)


 身体中に痛みが走る。一体、自分はどうしたのだろうか?目覚めたばかりの頭は目覚める前の記憶を中々呼び出さない。
 そして、訳もわからぬまま、彼女は自らの身体の異変を悟る。首と、そして腹部辺りにかけて、異様な圧迫感があったのだ。首の方は、まるで締められているような感覚もある。
 だが、その感覚も、なのはが何か理解する前に無くなった。首の圧迫感は無くなったが、腹の圧迫感は未だ消えない。
 なのはは、ゆっくりと、その重たい瞳を開いた。時刻は夜。辺りは薄暗く、月光が辺りを照らしていた。良く見れば、ここは病室のようだ。
 そこに一人の少女がいた。自分の上に馬乗りになり、全身を震わせながら泣く少女がいた。
 喘ぐように呼吸を繰り返し、大粒の涙が零れて、それを何度も、何度も拭って、泣いていた。


(…何、が…?)


 どうなっているのか。なのはは訳もわからないまま、状況に直面する事となった。
 何故、自分は病室にいるのか?何故、この少女は私に馬乗りになりながら泣いているのか?
 そこで、ようやく、自分の身に何が起きたのか、なのはは思い出すに至った。
 誘拐された愛娘。幼い頃の私に良く似た少女。少女との戦い。敗北。撃墜。そして、白桃色の魔力光、拒絶と否定の言葉、かつての部隊の同僚の少女達の顔…。


(…そっか。私……負けたんだ)


 なのはの胸に悔しさが宿った。勝たなければ取り戻せなかった愛娘を思うと目が熱くなる。今頃、どうしているだろうか? 無事でいるだろうか? 泣いていないだろうか?
 心が、締め付けられるように痛い。泣きたいぐらいだ。叫んで、喚いて、泣き崩れてしまいたい程に。
 そこで、なのはは思い至る。目の前で泣いている少女は、私を助けてくれたあの少女であるという事に。その彼女は、今、泣いている。
 そして、改めて彼女の容姿を見て…自身の過去の姿を思い浮かべた。


(…この子も…私の…)


 なのはを撃墜させた少女は、失敗作と彼女を称した。つまり、彼女と、なのはを撃墜した少女、アネモネは同じ存在と推測出来る。
 つまり、それは、彼女もまた、なのはのクローンであるという事実。そして、先ほど、首に感じた圧迫感は…自らを、殺そうとしていたのではないか、となのはは気づいた。


(…私が…憎いのかな?)


 彼女が産まれた原因は、なのは自身にある。理由や、経緯はわからない。だが、それでも彼女が産まれたのはなのはがいたからだ。想像すれば、なのはの力が目当てと考えるのが妥当か。なのはも、それに行き着いた。
 アネモネの様子から見て、戦闘力に固執していた様子からも、それは推測出来る。ただ、なのはの力を求めて作り出された子供達。
 アネモネは、なのはに対して明らかな憎悪を抱いていた。ならば、この少女も、なのはに怨みを抱いていても、仕様がない。


「…ごめん…ね…」


 それは、なのはの口から不意に零れた言葉だった。それに、泣いていた少女は顔を上げた。何を言われたのかわからない、と言った呆然とした顔を浮かべ、なのはを見ている。
 なのはは、恐らく、と言った所だが、少女が自らに殺意を抱いているのだろう、と。
 きっと、余程辛い目にあったのだろう。失敗作と言われる程だ。それは、フェイトやエリオの過去を知るなのはも、想像する事が出来る。
 なのはは考える。そんな彼女に、今、自分は何をしてやれるのだろうか?
 そんなの、わからない。だから、だからせめて、謝りたかった。
 そして、なのはの瞳からも雫がこぼれ落ちた…。
スポンサーサイト
トラックバック(0)+ +コメント(0)
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第9話 Apart ≪ BACK ≪ HOME ≫ NEXT ≫ Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第8話 Apart

管理者にだけ表示を許可する
HOME
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
ブログ内検索
リンク
カテゴリー
最近のコメント

 
 
 
 
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。