次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■創魔の疾風 =A girl creates the world= Act.01
2010/02/01 Mon創魔の疾風
 今、ここに一つの物語を記そう。

 それは、一人の魔法使いの生誕の物語。
 それは、一つの魔法体系の誕生の物語。
 そして、少女が学んでいく世界の物語。


 今、全てが始まりの産声を上げようとしている。










 ふと見上げた空はただ青く、その空に手を伸ばせば届いてしまうのではないだろうか?
 そう夢想してからその少女は目を細めた。その少女の年は恐らくまだ6、7歳ほどであろうか。
 小学校に通い始めたぐらいのその少女は車椅子に乗り、家の中から外を見上げていた。
 時刻は9時頃を示していた。本来の子供ならば親に見送られ、学校へと登校していくという日常を送っていくのだろう。
 それが日本というこの国では当たり前の光景である。だがその当たり前はこの少女には適用されない。
 車椅子を動かし、外へと向けていた視線を外す。次に向けた視線の先には一人分の食事の食器。
 この家はかなり大きな家なのだが、そこに彼女以外の気配は無い。これもまた。当たり前ではない。
 そう、この少女は当たり前ではない生活の中を生きている。


 少女の名は八神はやて。両親を失い、原因不明の病を患い、足が麻痺しているという不幸な境遇にいる。
 八神はやては笑わない。その理由は到って単純明快。まだ両親が死んでから日が空けていないからだ。
 親戚は彼女を引き取らなかった。どうやら両親は駆け落ち同然だったらしく葬儀もそれは寂しい物だったそうだ。
 親戚もいたかどうかわからない葬儀。はやてに残されたのは誰もいない家と両親が残した遺産だけであった。
 はやてには保護してくれる人間がいなかった。その中で唯一、彼女の保護者として彼女の遺産を管理し、定期的に仕送りをしてくれる「グレアム叔父さん」がいるが、彼とは手紙でしかやりとりは成されていない。
 幼い彼女には死という物がよくわからなかったのかもしれない。両親が死んでから彼女はまったく感情を動かさなくなった。まるで親の迎えを信じて待つ子供のように。周囲の人達はそう考えた。
 だが真実は違う。八神はやてという子供は聡い子であった。死をきちんと理解し、受け止めていた。だが納得は出来ないのだ。
 どうしていなくなってしまったんだろう? 何故? どうして? 私にはわからない。
 両親に何が起こったのかを思い出そうとする。


「…ぃっ…!」


 頭に痛みが走る、思い出せない。いや、思い出したくないのか。
 ショックの為に残された記憶障害。両親が何で死んだのかは覚えていない。
 わかっているのは「交通事故」だと言う事。それしかはやてにはわからない。
 「真っ赤」という光景だけしか覚えていない。それだけは強く覚えている。
 わからない。もどかしさを抱えながらもはやてはぼんやりと天上を見上げた。
 ご飯は食べた。そうすればすることは何かあったかな? と考える。いつもなら母が遊んでくれた。父は仕事に出かけて帰ってきたら抱き上げてくれた。
 だけど、もうそんな温もりはこの身には無い。心にぽっかりと空いた穴は埋まらず、はやてはただぼんやりとしている。


「…なに、しよう」


 表情を動かさないままはやては呟いた。何もしなければ思考が止まらない。
 どうしてお母さんがいないのか? どうしてお父さんがいないのか? どうしていなくなったのか?
 そこまで考えてまた頭痛を引き起こすの繰り返し。それに顔を顰めてはやては重い溜息を吐いた。


「つまらない」


 何もすることもなく。考えるだけのは痛いし、つまらない。
 だが動かない足では出来る事は少ない。だからまた考えて最終的に頭痛へと発展する思考を繰り広げてしまう。
 はぁ、と溜息を吐いてはやては車椅子を動かしていく。何もかもが疎ましくなってこようとしていた。何もかもが鬱陶しい。
 座っているだけなのも疲れるので部屋のベッドで横になろうと車椅子を動かしていく。


 鈍い音を立てる扉がゆっくり開いていく、その扉の先は寝室。
 部屋に入り、車椅子でベッドまで近づいていく。そこからベッドに身体を投げ出して、天上を見上げる。


「はぁ」


 またも溜息。何も思いつかない。食器を片付けてしまえば本当にやる事がなくなってしまうのでそれは放っておいている。今はとにかく何かを考えていたい。
 そう。忘れたいのだ。はやては今ここにある現実を忘れてしまいたいと願っている。
 だが忘れるという事はいつか親の事を忘れてしまうのではないだろうか、という恐怖も伴っている。
 どちらにせよ、はやてにとっては未知であり、どちらも踏み込みたくない領域なのである。
 それに気づいているのか、いないのか。ただはやては考えている。何をしようかと。


 ふと、ぐるりと視線を部屋に送り、はやては、あ…、と小さく呟きの声を漏らした。
 そこにあったのは物を置く棚だ。そこには幾つか物が置いてある。その中の一角にある物が置いてあった。
 それは本だ。母が己に読ませてくれていた本だ。


「本、かぁ」


 はやては足が動かなかった。だからこそパズルや、ブロックなど、そういった物に触れた遊びが好きだった。
 だが、それ以上に好きな物があった。それは本であった。本の物語を想像するととても楽しい、とても心が躍る。だから本は好きだった。
 クスッ、と笑みを浮かべてはやては再び車椅子に乗り、食器を片付けに行った。


「図書館に行こう」


 それが、今のこの状況を打破する為にはやてが選んだ選択肢であった。





++++






「うわぁ」


 思わずはやては感嘆の息を漏らした。
 車椅子を押してやってきた町の図書館は己の背丈は余裕で超えた大きな大きな本達の住処であった。
 所狭しと本達が無数に置かれ、それにはやてはようやく小さな表情を見せた。
 楽しげ笑みだ。ゆっくりと車椅子を押しながらはやては無数の本をキョロキョロと視線を這わせながら見つめる。
 何冊か気に入った物を選び、読む。読んでから片付けて、また別の本を読む。
 新しい物語を知ってはやてはまた笑う。一つの物語を知る事ではやての笑みは少しずつ深まっていくのであった。


「もっと読みたい」


 そう願う事がまた新たな笑顔を産み出していくであった。はやてはそれからここに毎日通おう、という事を心に決めたのであった。
 結局その日、はやては閉館の時間になるまで本を読み続けていたのであった



++++



 はやてが図書館に通うようになってから後日の事だ。彼女の主治医である「石田幸恵」はそんなはやての様子に安堵の息を吐いていた。
 病院に検診に来た時は図書館に居たほどではないが笑みを浮かべていた。
 それに石田医師は酷く驚いた。両親が死んでから人形のように感情を揺らぎもさせずにいた少女であったから心配していたのだ。
 だが、今少女は少しだが感情を見せるようになっている。それが酷く嬉しかった。

 どんな本を読むの? と問いかければ童謡の名前が飛び出す。それにあぁ、子供なんだな、と石田は笑みを零した。
 それから嬉しそうに物語の内容を語るはやてに笑みを零し、相槌を返してコミュニケーションを取っていく。
 時にこんな本が良いよ、と教えたり逆に教えられたり。それがゆっくりと、穏やかにはやての感情を取り戻させていったのだ。
 それと同時にはやての両親の事に悩む時間もゆっくりと少なくなっていくのでった。





++++





 時が流れ、早1ヶ月の時を越そうとしていた…。





「ふわぁー、もうこんな時間かぁー」


 月明かりが照らす夜の下。その夜の下にある一つの家。その一室にはやてはいた。
 ベッドの横に備え付けたスタンドライトの灯りをつけて図書館より借りてきた本を読んでいたのだ。
 それははやての年齢で読むのは少し難しいと思えるような内容の本であったが、それでもはやては気にした様子は無く読んでいた。
 あれからというもの、はやての図書館通いは日常になっていた。食事を取れば図書館にお向き、本を読みあさり、借りてきて家でも読む。
 そう、はやては常に本と共にある生活を送っていたのであった。
 新たな物語を知るごとに、新たな知識を得る度に楽しくなっていくのが止められない。
 疲れも無いように、はやては一心不乱に本を読み続けたのであった。
 一冊読み終わったのか、ぱたん、と本を閉じてはやてはふぅ、と溜息を吐いた。


「魔法、かぁ」


 はやてが読んでいたのは童謡。魔女が出てくるお話だ。
 魔法使い、そして魔法。はやては魔女という存在が好きだった。
 物語の中で誰かの願いを叶えてくれるその存在に強い憧れをはやては感じたのだ。


「魔法が使えたら良いのになぁ」


 はやての呟きはそのまま部屋の空気の中に消えて誰にも届く事は無かった。
 無論、その言葉に隠された真意にも、まだ誰も気づく事は無いのだ。
 次第ゆっくりとに、闇が彼女の心を再び蝕み始めていたのは、まだ誰も知らない…。
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