次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
■■■スポンサーサイト
--/--/-- --スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■■■朧月の契り 第2章 13
2010/12/07 Tue朧月の契り
 この身は彼の模倣。ならばこの行いは彼の理想に反するものだ。故に、その為にあれ、と自ら望み、自ら定め、自ら選んだこの身にはそれは戒めへと変わる。故に、鉄の音がする。鉄を打つ音がする。
 間違うな、過つな、お前の行くべき道はそうじゃない。望むな、望めばそれは完全たり得ない。元より完全たり得ないならば、不確定要素は排除せよ。そう、お前は剣だ。お前は剣なのだ。
 鉄を打つ音の反響音が永続的に聞こえてくる。その音しか聞こえなくなってくる。その音以外に要らぬ、と。その音に続く道こそがお前の耳にすべきものだ、と。そう、剣、剣、剣、剣。聖剣、魔剣、神剣、宝剣…そこは無数の剣が集う丘。気づけば、そこに立っていた。


「…忘れないよ。でも、それでも、私は―――」





 * * *





 時は深夜。月が夜空にぼんやりと浮かぶ。その下にある衛宮邸の土蔵には士郎がいた。士郎の傍にはイリヤ、セラ、リズが付きそうように居た。士郎は仁王立ちするように立っている。
 すぅ、と息を吸い込む。丹田に力を込めるように息を吸い、そしてゆっくりと吐き出していく。緊張に包んでいた身をゆっくりとほぐすように息を吐き出し終われば、うっすらと、士郎は閉じていた目を開く。


「――投影・開始(トレース・オン)


 それは、衛宮士郎に許された一つの呪文にして、衛宮士郎の撃鉄を上げる言霊。己の世界の変革を宣言し、ここに神秘を生み出す宣誓。
 彼女は言った。彼女がそうであるように、自分たちは戦う者ではない、と。彼女はそんな自分たちが唯一、戦う術があるとすればそれは想像する事だけだ、と。現実で勝てないならば想像で打ち勝て、と。
 想像する。想像するのは何だ。衛宮士郎が最も信頼する勝利のイメージは何だ?
 …剣だ。真っ先に浮かぶのは黄金の剣だ。その剣には勝利が約束されている。そう、それは余りにも衛宮士郎の求むる物だ。現実で打ち破れぬ相手に想像でさえ打ち勝つにはそれ相応のものが必要だ。
 だから、この黄金の剣は特別だ。まだ朧気で見えないけれど、だけどこの剣は恐らくどんな剣よりも最も美しいだろう、と思う。それが衛宮士郎が今、真っ先に求めるものなのだから。
 手に取れれば、と思った事は一度や二度ではない。けれど彼女は言った。それはするな、と。それはあまりにも士郎の身に余る。だから、余るならば―――出来うる限りでそれをしなさい、と。
 ならば、やるべき事とは何だ。この黄金の剣を手に取る事は禁じられている。してはいけない、と。本当にそれしないのならばそれを手に取れば良いとは言われてたが、彼女の言葉からそれは本当はして欲しくないという思いがあるのだろう。
 …これはあくまで最後の手段。わかっている。衛宮士郎がこれを投影すると言うことは過ぎたる事だ。何故ならばこれは自分が感じ取ったように、それだけの歴史を積み、祈りによって編み上げられた剣だ。
 そんなものを衛宮士郎は作れない。…けど、ならば、それを用いずに超えるというのならば…。


 ――創造の理念を鑑定。
 ――基本となる骨子を想定。
 ――構成された材質を把握。
 ――制作に及ぶ技術を修得。
 ――成長に至る経験に共感。
 ――蓄積された年月を記憶。

 ――是、以てして。

 ――創造の理念を提起。
 ――基本となる骨子を空想し。
 ――構成される材質を構成し。
 ――制作に及ぶ技術を錬磨し。
 ――成長に至る経験を仮定し。
 ――蓄積される年月を蹴破し。
 ――あらゆる工程を凌駕し尽くし、ここに幻想を結び剣と為す…!!


 そう、己の手で、それを作り上げるしかない―――!!


「……歪だね」
「……歪ですね」
「……歪」
「……あぁ、歪だ」


 …士郎の手に握られたのは、かろうじて剣だとわかる「何か」。形状からして剣だというのはわかるのだが、ただそれだけだ。剣、何だろう。ただ歪なのだ。歪んでいる訳でもない。それは正しく剣。だけど、剣として存在が感じられない。


「…うーん、形状は確かに剣なんだけど、こう、なんだろ…」
「…そうですね。与えられた理念と、それに与えられる材質の不釣り合いによる互いの相互干渉による統合化によっての理念が材質によって歪められているようですね。結果、曖昧なものが出来たのでは?」
「後、技術、経験、年月の部分が不明確。…これで剣を作るなら、もっと明確にイメージを持たなきゃ駄目」


 イリヤとセラ、リズが士郎の作り上げた剣を手に取ったり、眺めたりしながら推察を述べる。そしてそれを士郎は実感していた。いくら理念を提起し、骨子から材質、その経験に至るまでの年月すらも想像しようとしても、ゼロから物を作るのは難解だ。
 …士郎の剣は模倣ではない、けれど模倣が故の失敗。わかっている。だが、それでも無駄じゃない。あの剣の投影を許されないのならば、それに迫る為の剣を打つしかない。だが、そもそも衛宮士郎は鍛冶師でもなければ、錬金術師でもない。たかが高校生なのだ。専門の知識しかない。
 故に囓った程度の衛宮士郎の空想はとても頼りないもの。出来上がるものはなまくらも等しい駄剣の一言に尽きる。あの黄金の剣の歴史に匹敵する歴史なんてすぐに浮かぶ訳もなく、出来たのはそれに影響を受けただけの妄想に過ぎない。


「…やっぱり、もうちょっとスパルタ教育にした方が良いかしら? よし、明日の講義の時間は増やしましょうかしら??」
「待てイリヤ、それじゃあ講義ばかりじゃないか!? また講義なのか!?」
「あら、講義の結果がコレなのよ? あまりにも情けないじゃない…? 貴方の頭には何を詰めているのかしら? 士郎。貴方が足りてるのは理念だけなのよ? ならばその他の所を補填しなきゃいけないじゃない」
「そうですね。それでは次回の講義内容は楽しい楽しい物理の授業となります。いくら基本的な事とはいえ、やはり物質の知識は必要ですからね。連想に関わるとなれば、例え無駄でも詰め込んでみましょう」
「その後は錬金術の初歩の復習テストね。あと、実技もいれようか」
「……ァ、俺、ナンダカ風邪気味ダナァ、明日ハユックリト…」
「あら? それなら頭に直接刻み込むから心配しなくて良いわよ? シ・ロ・ウ?」
「えぇ、何せ世話になっている身。この程度、やらなくては」
「シロウの為、シロウの為」
「………………神は死んだ………っ!」


 そうして、真っ白になった士郎は地面に両手両膝を着いた。そんな士郎の様子を楽しげに見ているイリヤ、無表情を装うとするも、にやり、という笑みが浮かんでいるセラ。そしていつも通りに無表情なリズ。
 どちらかといえば、部活、そして個人の生活の為に学生生活を費やしてきた士郎。彼の苦難の道はまだ始まったばかりなのかもしれない……。





 * * *





「……なにやってるんだか」
「あら、そう言いつつも楽しそうね」
「はは、士郎が苦労してるなぁ、って思うと、つい、ね」
「あら、貴方サディストの気でもあるのかしら?」
「むしろそっちがあるんじゃないの? 人にこんな格好させておいてさ」


 柳洞寺の一室。そこには魔女達が集う。その部屋の中央の台座に置かれた水晶玉。そこに映し出されるのは衛宮家の日常の一部始終だ。それを見ていたのはカナデ。だが纏っている服がその彼女自身の色とまるで正反対な漆黒のゴスロリだ。
 そのカナデにやや恍惚とした笑みを浮かべて、ほぅ、と息を吐いているキャスター。ぞわり、とカナデの背筋に寒気が走る。…まぁ、本人としてもこのような服装が嫌な訳じゃないが、どうにもキャスターの視線が恐い。たまに見かけるわきわきと動く手が恐い。


「あら、可愛いものは着飾りたいじゃない」
「…否定したい所なんだけど、そこら辺はキャスターの趣向とかそういう所で納得しておいてあげるよ」
「そういう所は可愛くないわね、相変わらず」


 キャスターが呆れ混じりに言った言葉に、ふん、と鼻を鳴らす事で返答とする。


「…で?」
「…現在確認したのは、全部で4騎。私と貴方を含め、そして私が召喚したアサシン、そして…」


 不意に、水晶玉の景色が歪んだ。そこに映し出されるのは新都の町並みだ。夜の暗がりも深まったとはいえ、それでも未だに眠らぬ街であるこの街の灯りは途絶えない。その中で、カナデは自身の目にしたものに歯を噛みしめた。
 それは女性だった。その女性は倒れている。その首筋には何かの痕がついていて、そこからは少量の血が流れている。瞳は虚ろで意志の欠片も見えない。…それは奪われた者の末路だ。
 そしてその女性の前に、異形が立っていた。地に着く程までに伸びた髪。眼を隠すようにつけられた眼帯。その体型を強調するかのような衣装。更に極めつけは彼女から発せられる魔力と、気配。


「…ライダー」
「…貴方の情報の信憑性はともかくとして、サーヴァントな事には間違いないわ」
「…そう」
「…何、今更悔いているの? 私たちとて似たような事はやっている。気づかれない程度に些細な、だけどそれでも生命力の搾取を」
「…わかってる。自分が良くて、誰かが駄目なんて事を言うつもりは無い」


 そういってカナデは背を向けた。そのままどこかへと向かおうとしていると彼女の背に、彼女に視線を向ける事無くキャスターは声をかけた。


「…貴方、よくやるわね。正気を本気で疑うわよ。――本当に持つの? そんな体で」
「……はは、やっぱり気づかれるか。流石はキャスター。神代の魔術師だ」
「…貴方、バーサーカーとして呼ばれるのは必然だったんじゃないの? そんなの正気じゃないわよ」
「………キャスター。大丈夫だよ。私は私の目的と遂げるまではこの歩みを止めるつもりはないから」


 そういって、今度こそ歩を進めていくカナデの姿にキャスターは溜息を吐き出した。


「…本当に、理解し難い狂人ね。どうしてそこまで歪になれるのかしら…?」





 * * *





 月夜の下、柳洞寺の山門へと向けてカナデはそこに立つ男を見た。長い髪をポニーテイルのように纏めて、陣羽織を羽織っている青年だ。その顔は整っている為に、素直に美しい、と世に出れば女性が放っておかないだろう容姿をしている。
 その彼の背には長い長い刀が背負われている。その刀は鞘へと収まったまま、青年は壁に背を預けるようにして立っている。不意に、彼は閉じていた片目を開けてカナデの方へと視線を向けた。


「月夜の散歩か? なかなかに良い趣味をしている」
「散歩、ね。まぁ、あながち間違ってはいないけどね、小次郎」


 小次郎、と呼ぶと彼は嬉しそうに笑みを浮かべた。その名で呼ばれる事がまるで心地よい、と言わんばかりにだ。
 彼の名は佐々木小次郎。日本人ならば知らぬ者はいない、と言っても過言ではないほどに有名な侍だ。…だが、この佐々木小次郎という存在の伝承はあまりにも信憑性が無く、現実にはいないのではないか、と囁かれているのが定説だ。
 故に、ここにいるサーヴァントは「佐々木小次郎」の役割が最も相応しかった「誰か」に佐々木小次郎という名と殻を与えたが故に召喚されたのがこの佐々木小次郎である。先程言った通り、キャスターがルール違反をして召喚したのだが、その召喚経緯故に媒体とした山門から彼は離れる事が出来ない。


「良ければ、カメラでも買ってきて写真でも持ってこようか?」
「むぅ、かめらなるものや、しゃしんと言われてもパッ、とせん。まぁ、退屈紛れになるばらな是非も無いが」


 からから、とここから動けぬ、とわかっていても彼は笑う。それは正直カナデにとっては理解し難い感覚だ。自分から動かない、という事は変化を受け入れる、という事だ。それがどのような変化であっても、だ。
 故に、その立ち振る舞いはまるで柳のようだ。その性格もどこか柳に例えてしまうような気軽さや機転が利く事から。それはずっと駆け抜け続けてきたカナデにとっては「何もせずに落ち着け」というのは正直に言えば無理だ。


「それじゃ、キャスターの事、お願いね。小次郎」
「うむ。しかと留守番は任された。行ってくると良いぞ」


 最後に小次郎に一言をかけ、カナデは冬木の街を駆ける。向かう場所は既に定められている。それは水晶玉に映し出されていた場所へと。そこにはやはり、先程見せられた映像と何ら変わりのない光景があるだけだ。
 すっかり血の気を失い、生命力すら奪われた女性。その命の灯火は消えゆくのみだ。そんな彼女に手を翳し、小さく何事かを呟く。そうしてカナデの手に握られたのは何かの布。それを女性の手へと巻き付け、その手を握りながら瞳を閉じる。


「投影完了、”人魚の羽織”」


 呟きと共に、布から淡い光が零れる。それは女性へと流れ込むように吸い込まれていく。すると女性の首筋についていた牙の痕は消え、その顔色も徐々に生気を取り戻していく。
 それをどれだけ続けたか、カナデは女性を抱きかかえて歩き出す。そして近くの公衆電話に小銭を入れて救急車を呼ぶ。その間、カナデは女性の傍に立ちながら、ふぅ、と小さく溜息を吐いた。


「…っ…こほ…こほ」


 不意に、咳き込む。それは本当に些細な咳き込みだった。まるで風邪を引き始めたような軽い咳。だが、サーヴァントである彼女の身にはそれは異常だ。現に、その咳を押さえた手には――。


「…っと。救急車が来たか」


 手を握りしめて、ゴスロリ装束の上に羽織ったコートで掌を拭う。そのまま、救急車から降りてきた人に女性を引き渡し、その救急車が走り去っていくのを、ただ、カナデは見送った。


「…わかってるさ、所詮は偽善だ、って。自分のやってる事がどんな事なのか、わかってる」


 所詮、それは意味の無い事だと。もうとっくの昔にわかっている。それで軋む。だがその軋みには屈する事はない。屈するのならばとっくの昔に屈しているのだから。
 だから、この体はまだ折れない。まだ倒れない。まだ戦える。まだ前へと歩ける。ならば、歩かなければ。進める限り、ただ、前へと。


「…おや?」


 不意に、カナデは視線を向けた。その瞳に魔力を込めて遠くを見据えるように。そこに見えたのは鮮烈なる赤の色。その色を見つけて、カナデはその口元に小さく笑みを浮かべた。


「…釘刺した所で止まる訳ない、って思ってたけど、でも、時期じゃない。それでも黙ってられない、か」


 流石、と小さく呟いたカナデは楽しそうだ。そのにはと身が見据える先。そこには――赤のコートを纏った少女がビルの上に立っていた。見下ろすように街の状態を見ている彼女は、どこか厳しい眼差しだった。
 その少女の名は―――。


「――…どの世界でも、どんな時代でも、貴方は貴方なんだなぁ。……ねぇ、凜」





 * * *





 それはまだ士郎達、つまり学生が冬休みへと入る前の時期の話の事。士郎は気づいていないようだが、魔術回路を正しい手順で起動出来るようになった彼は魔力を纏う事が出来るようになっていた。
 故に、彼の魔力が残滓として僅かに残るという事を魔力の察知に疎い士郎は知らない。そして、それはこの冬木の街においては不貞不貞しい態度に他ならない。それは何故か? その理由は至って明確。
 神秘の秘匿を主眼としておいている教会が何よりも懸念するのがその神秘が漏洩されたその時だ。故に、魔術的に価値が高い地には「セカンドオーナー」と呼ばれる魔術師がその土地の魔術に関する事柄における責任を取るのだ。
 そのセカンドオーナーこと、遠坂凜は自分自身以外の魔力が僅かに学校内で残滓として残るようになっていたのに勘づいた。それを気のせいだと放置していると、錯覚は疑惑へ、疑惑は確信へと変わっていった。
 士郎はその父親、衛宮切嗣から魔術師としての心構え程度の事しか教えて貰っていない。そして切嗣自身、魔術師に忌み嫌われる存在であった。そんな存在がどうして協会側の人間、つまりセカンドオーナーである遠坂の者と友好関係を築けるとは思えない。
 更に言えば、衛宮切嗣が聖杯戦争に参加していた、という事は聖杯戦争の仕組みを作り上げた御三家の内の一つ、遠坂の家系の者ともまた生死のやり取りをした間柄だ。ならば、その真実を知るにせよ、知らないにせよ、衛宮と遠坂は相容れない筈だ。
 だが、今、事を荒らげる事だけは避けたかった。せめて時が来るまで。それが例え、彼の召喚の機会を失うのだとしても。それでも同時に彼を護る為には仕様がない、と。故に、カナデは極秘裏に遠坂凜と接触している。その時の事は、両者互いにとっても印象深いものとなっていた。





 * * *





 眼下、ビルの上より見下ろす。その街は夜の灯りによって宝石を散りばめたように瞬いている。その灯りの中、その中に一人の影を見据えて遠坂凜は眉を歪めた。その表情には憎悪の色が見えている。


「…バーサーカー…」


 ぎり、と。歯を噛みしめ、凜はその姿に背を向けるようにして歩き出す。凜はバーサーカーと接触している。聖杯戦争の知識を持っていた凜にとって、理性を持つバーサーカーの存在は正に未知の存在と言っても良かった。
 しかしながら、彼女が知るのは聖杯戦争の知識のみ。実際にそんなイレギュラーもいるかもしれない、と思考を切り替えるのは容易かった。
 彼女達の出会いはとある冬の日。学校の帰宅路を凜が歩いている所に前触れも無く彼女は現れたのだ。


「やぁ、こんばんわ?」
「…ぇ?」


 通行人だと思い、意識を留めなかったが故に凜は、そこでようやく彼女の姿を認識したのだ。まるで色を抜いたかのように白い髪と肌。纏う服が赤の外套だから、それもまた逆に目立っていて。
 その存在を認識した時、世界がまるで違うような感覚。威圧感、と言えばいいのか。凜はそれに圧倒された。いくら優秀な魔術師であろうと、凜は未だ実戦を経験はしていない。が、それでも凜は気丈にも敵を睨み付け。


「…貴方、何者?」
「バーサーカーのサーヴァント、と言えば良いかな? 遠坂の」
「!? バーサーカー…ッ! サーヴァント…貴方が? それにバーサーカーなら何で…」
「それにはノーコメント。まぁ、宣戦布告をしてやろう、と思ってね」
「…宣戦布告、ですって?」
「呼ばないのか、呼べないのか、どちらかは知らないけれど―――早くサーヴァント、召喚しないとこの街の人間がどうなっても知らないよ?」


 それは忠告じみた言葉。それをしなければ、この街の人間がどうなるか、それをまるで知っているような。その言葉の確信の意味を探ろうとしても、凜とカナデの人生経験、実戦経験の差は埋まらない為に、その確信を読み取る事は出来ない。


「あぁ、ちなみに。アインツベルンは前回同様、「衛宮」をこちらに引き入れさせて貰ったから。まぁ、彼の意志はどうかは別として、ね?」
「!? …そう、そういう事なの…貴方、衛宮君を…!!」
「流石は遠坂。話が早い」
「…目的は何なの? わざわざそれを告げに来た意味は?」
「ただの宣戦布告さ。サーヴァントがいない君と、サーヴァントを連れた士郎。さて、どっちに勝ち目があるだろうか? ね? まぁ、同じ手札があれば、互角以上かもね、なんて」


 そう言い残し、彼女はまるで最初からそこにいなかったかの如く、消え去ってしまった。その消え去った姿に、凜は何も言えず、ただ唇を噛みしめるのであった。
 そして年が明けた頃、続々と召喚されているサーヴァント。それは聖杯戦争の予兆に他ならない。他のマスターも積極的に戦闘に臨もうとしている。その気配を凜は肌で感じ取っていた。


「…このままじゃ、いられないのはわかってるわよ」


 密かに行われている生命力の搾取。それは街全体から少しずつ集めているものだ。その症状として疲れが抜けないなどの弊害を起こしている。それは凜の通う学校にもその影響が出ている。
 本来ならばこの生命力の搾取は街の人間から生命力を絞り尽くす事も可能だろう。だがそれをしないのは神秘の秘匿の義務がある故か、もしくはそれを行うだけの技量、条件がないのか、原因がなんなのかは定かではない。
 ただ一つ言えるのは、殺さなければいいというものでもない。疲労が溜まったままでは人の心は荒み、疲労によって出来た油断や判断ミスがその人の人生を思わぬ形で狂わせることもあるかもしれない。


「………」


 時間は、ない。いつ、何が切欠でこの街が戦場になるかはわからない。だからこそ、もう態勢は整える時期だろう。遅かったと言っても良い。


「…令呪の兆しは出てる…問題は触媒だけど…こうなった以上、出たとこ勝負か…」


 本来、英霊を召喚するならば、その英霊をシンボルとする遺物があれば良いのだが、あいにく凜はそのような触媒を持ってはいない。それで召喚が出来ない、という訳ではないが、英霊にとって知名度はそのまま己の力に変わるのだから出来れば名の高い英霊の触媒があれば良かったのだが、そんなものはなかなかに手に入る訳がない。
 ならば、残ったのは触媒無しでのランダム召喚。それが吉と出るのか、それとも凶と出るのか。ただ、どちらにせよ結果は変わらない。今、動かなければただ状況は悪化するだけなのだから。
 そして、サーヴァント達は着実と揃い出す。巡るは聖杯、異端なる狂戦士を招いてのこの戦争の行く着く先は何処になるか…。
スポンサーサイト
トラックバック(0)+ +コメント(2)
疲れた…orz ≪ BACK ≪ HOME ≫ NEXT ≫ コメントレスのみ
ついに、『こっち』の凛が登場しましたか。
これは……そろそろ、アーチャーが来るということですが。
カナデはどこまで知っているのか、分からなくなってきます。

あと、さっそく趣味爆発のキャス子奥様。
2010/12/08 Wed URLmise#- [ 編集 ]
未来の聖杯戦争でクーフーリンとの縁ができているから、ランサーが召喚されることもあるかと…
2010/12/08 Wed URLkero#- [ 編集 ]

管理者にだけ表示を許可する
HOME
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
ブログ内検索
リンク
カテゴリー
最近のコメント

 
 
 
 
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。