次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
■■■スポンサーサイト
--/--/-- --スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■■■朧月の契り 第2章 11
2010/11/30 Tue朧月の契り
 ――開幕の音が鳴る。多くの歪みと、多くの願い、思い、その全てを抱いて。
 さぁ、語るべくして語ろう。これは、意味のない、されど、ならばそこに意味を与える為の物語なのだから。





 * * *





「――告げる」


 夜。神秘の時間。夜とは人が踏み得ぬ領域の中。科学という光を得ようが、闇から完全に逃れぬ術はなく。その闇にこそ見えぬもの、そう、そこにこそ真理が宿る。我等、その真理の探究者にして体現者なり。
 今宵、ここに神秘を一つ、お見せしよう。これは儀式。聖杯という器を満たすべく、その証を競い、殺し合う。その果てに得られたものこそ究極の願望機、これこそつまり聖杯である。
 その戦争の勝者となるべく、召喚に臨むは過去、英雄として祭り上げられた英霊と呼ばれるこの世界から逸脱した存在。かの身を自らの従者として従え、目指すは無限への頂。


「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」


 床に刻まれた魔法陣が光を放つ。それがゆっくりと浮かび上がり、周囲に力を満たす。風が吹き荒れ、呼び出す召喚を招き寄せるように、風はその勢いを強めていく。まるで空気がこれから呼び出される者に畏怖するように。


「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」


 そして此処に、神秘の降臨へと至る―――。





 * * *





「…問おう。貴方が、私のマスターか?」


 凜とした声。月光に照らされて光を吸い、その美しさを際だたせる金紗の髪。纏う銀の甲冑に青のドレス。小柄な体躯ながらも、その身から感じられる威厳は確かに騎士として申し分ない姿だ。
 正直に言えば、その姿に見惚れていた。英霊という存在がどういう存在なのかは知っていたが、だが、彼女とは異なる美しさ。彼女の美しさが硝子細工なのだとすれば、こちらは金細工のような美しさというべきか。
 いや、比べるものではないとしても、比較として知る対象が彼女が真っ先に来る訳で、だけど、ちょっと、一寸待って欲しい。


「…あ、あぁ。俺が君のマスターだ」
「…そうですか。確かに私のラインは繋がれている。疑いようもなく、貴方は私のマスターだ。…改めて、サーヴァント、セイバー、召喚に応じ馳せ参上した。今宵より我が身は貴方の剣となる」
「そ、そうか…と、ところで一つ聞きたいんだが…」
「はい。何でしょうか? マスター」


 ごくり、と。唾を飲む音が響く。自分のものだからなのか、余計にそうだったのか、自分でもよくわからないぐらいに緊張、というより混乱していた。だって――。


「…君みたいな女の子が、本当にアーサー王なのか?」


 ――あのアーサー王が、こんな可愛い女の子な訳ないじゃないかーっ!!





 * * *





「――アッハッハハハハハハハッ!!!!」
「笑い事じゃないぞ! 知ってたらなら最初から教えてくれても良いじゃないか!! 凄い失礼な事言ったぞ、俺!!」
「ひぃ、ひぃ、いや、だって、士郎が「女所帯に男が増える」と思ってたみたいだから、その期待を裏切っちゃ悪いな、と、ひぃーっ、ひっひっひっひ!!」
「こ、このぉ、あくまめぇ…!!」


 ――これはどういう状況なのか、と私は、正直に言えば困惑していた。
 私はセイバー。聖杯の導きに従い、その聖杯を手に入れるべく、聖杯戦争と呼ばれる魔術師達の殺し合いにサーヴァントとして呼び出された。サーヴァントとは英霊と呼ばれる偉業を為した英雄の御霊が召喚される。
 そう、今、目の前でからからと笑っている女性に抗議するかのように叫んでいるマスターが呼んだように、我が身はアーサー。かのブリテンを納めた王だ。
 とにかく、私が召喚されたのは聖杯を得る為だ。その為には他の魔術師、そしてサーヴァントを全て蹴落として、その手に聖杯を手に掴まなければならない。…それなのに、そう、その筈なのに…。


「…マスター、説明していただきたい。何故、そこにサーヴァントがいる…?」


 そう、目の前でマスターである少年、彼はエミヤシロウ、と名乗ったか。その名に少々思うところが無い訳ではないが、それよりも今は気になる事がある。それが少年の前にいる存在。そう、彼女はまさしく私と同じくサーヴァントに他ならない…!


「…あぁ、そうだったな。セイバー、誤解する前にちゃんと説明する。彼女はカナデ、俺と同盟が組んでいる魔術師が召喚したサーヴァントだ」
「ちなみにクラスはバーサーカーね。あぁ、でもちょいと反則みたいなもの使ってるものだからクラス名では呼ばないでね? セイバー」
「…同盟? それに、バーサーカーだと?」


 正直言って、信じられない。同盟の下りも魔術師を知るならば、なかなかに想像しがたい上に、バーサーカーのクラスは理性と引き替えにその能力を向上させるクラスだが、彼女が狂戦士だという面影はまるでない。
 まさか、という予測。彼は既に敵のサーヴァントのマスターの手中に収められ、自分はまんまと敵の手の内に墜ちてしまったのではないか、と。その考えに至り、思わず聖剣に手に握ろうとして――。


「――そうだよ。騎士王、安心するといい。私の目が黒い内は、このエミヤカナデ、士郎に関わる厄災をはね除けると誓っても良い」
「…エミヤ? …まさか、そんな事があるのか…!?」


 エミヤ、この極東の地の名の仕組みは聖杯の召喚の際に与えられる知識によって得ている。それはつまり、彼女が私のマスターである少年と縁を持つ英霊だという事。…しかし、それでもまだ納得が出来ない。
 例えサーヴァントがそうであっても、魔術師たるマスターが外道であるならば、サーヴァントを律する令呪を以てすればその意志すらねじ曲げてしまう事が可能だ。…その為に、あの苦渋を舐めたのだから。


「その心配は要らないわ。セイバー。私とシロウはいわば兄妹みたいなものだもの。操り、操るの関係にはならないわ。それは誓うわ」


 だが、今、室内へと入ってきた少女の姿に思わず眼を見開く。…似ている、と。かつて仮のマスターとはいえ、共に戦場を駆け抜けた彼女と。そして同時に過ぎる面影がもう一つ。まさか、あり得ない、という思考が脳裏を塗りつぶしていく。


「…その様子だと、本当に覚えてるみたいね。――10年ぶりね。セイバー」


 だが、あり得ない現実が目の前にある。彼女とは面識がある。あの雪に閉ざされた城、そこで父親と戯れ笑みを浮かべていた幼子の姿を。その姿には共に戦場を駆け抜けた彼女の面影も見えて。
 …ならば、エミヤとは、彼は、と、その推測が一本の線へと繋がっていく。かつての記憶、その時の縁、10年という時を経て、再びこの地に召喚されたまるで誰かが描いたように都合の良い巡り会い。
 複雑な感情がセイバーにのしかかる。召喚早々、いきなり訳のわからない事態になったと思えば自身にまつわる因縁が纏めてやってくる。これに困惑を覚えずにして何を覚えろというのか。沸き上がる疑問も収まらぬまま、セイバーは頭を抱えた。


「…そう、10年振り。貴方が前回の聖杯戦争、我がアインツベルンが満を期して送り出した筈の最強の手駒。…まぁ、それでも裏切られたけどね」
「―――っ、あれは私では! あれは…」
「こらこら、いきなり喧嘩腰にならないの、二人とも。イリヤはセイバーを刺激しないの」
「あいたぁっ!?」


 ごつっ、と鈍い音と共にイリヤに拳骨が落とされる。それにイリヤが小さく悲鳴を上げて蹲った。余程痛かったのか、そのままぷるぷると震える。そんなイリヤを心配げに声をかける士郎の姿が見える。
 やれやれ、とカナデと名乗るバーサーカーがこちらへと視線を向けた。その顔にはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべて。


「ごめんね、ウチのマスターが無礼をして」
「…いえ…。…バーサーカー、彼女は本当に…」
「…カナデで良いって。…えぇ、貴方を召喚した衛宮切嗣と、その妻であるアイリスフィールの娘である事は間違いないわよ」
「…貴方が私を知っているのは、私のマスターが切嗣の縁者だからか…? では、彼は…」
「士郎は切嗣の正当な後継者じゃないわよ。だから、貴方が心配するような事は無いわ。騎士の誇りを踏みにじったりは、ね」


 …解せない。どこまでこの女はわかっているのか、と睨み付ける。そしてどのような意図を持っているのかも読めない。だからこそ警戒心を剥き出しにして睨むのだが、それを物ともせずに彼女は笑みを浮かべて。


「私が知っているのはあくまで概要程度。詳しい所までは知らないわ。貴方が第四次の聖杯戦争で聖杯を手に入れ損なった事。その時のマスターが切嗣で、アイリスフィールと共に戦ったって事。精々その程度。イリヤは…まぁ、今はアインツベルンとは袂を別ってるからアインツベルンとは何の繋がりもないし、士郎も切嗣には魔術師として育てられていないから彼の後継という訳でもない。…まぁ、こんな所。何か質問は?」
「……」


 どこまで信じれば良い。そもそも、こうして同盟を組むという事はどちらかが聖杯を諦めなければいけない。ならば、この同盟は一時的なもの。だが、どうにもマスターであるシロウとイリヤには互いに殺し合いを臨む雰囲気は無い。
 では聖杯はどうなるのか、と、私の疑念がそこまで辿り着いた時、不意に気配を感じた。それは徐々にこちらに近づいてくる。その気配に私は瞬時に聖剣をこの手に構え――。


「あーっ! こら待て、セイバー! 違う違う、敵じゃない!!」
「敵じゃない!? 何を寝言を言っているバーサーカー!! 今、この屋敷にサーヴァントの気配が二つも―――」





「夜分におじゃまするわよ、坊やにイリヤスフィール、カナデ」
「…邪魔をする」
「あ、先輩、ちゃんとセイバーの召喚に成功したんですね、おめでとうございます」
「…サクラ、労うのは良いですが、荷物を置きたいので先に部屋にいれてもよろしいですか?」
「こんばんわ、キャスター、葛木先生。あと、おかえり。桜、ライダー。よし、じゃあちょっと遅いが、今日は豪勢に仕上げるぞ。ちゃんとセイバーも召喚出来たしな」
「シロウ…貴方はセイバーを召喚したばかりだから無理はしちゃ駄目なんだからね?」





 ……………そろそろ、状況に、頭が、追いつかない。何故、サーヴァントたる私たちが! どうして! こんなにも! 和んで! いるのか!! しかもキャスターとライダーと! 私の召喚を前提として!! 話が進んでいるし!! 一体何がどうなっているのか!?


「…説明しなさい、バーサーカー、今すぐに、簡潔に、私にわかるように、即刻に、迅速に…!」
「貴方の混乱はわかるけど、その見えない剣の切っ先が額を割ろうとしてるってちょっと落ち着いて話し合いましょう…!?」
「望む所だ。さぁ、早く…!」
「だったらその剣仕舞えー!!」





 * * *





 暴走しかけたセイバーを諫め、なんとか話し合いの場まで持ってこられた衛宮家。その面々の様子は様々だ。
 ぐったりとしているのはカナデだ。その隣には彼女を射殺さんばかりの視線で睨んでいるセイバー。そんなセイバーにやたらと熱っぽい視線を向けているキャスター、それに我感せずとしているライダーと葛木、イリヤ、そしてそれに呆れるように苦笑を浮かべている士郎と桜。
 そして皆の分の茶を用意したセラとリズが席に着いた所で、セイバーは皆を見渡して、小さく咳払いをした後。


「…さて、それでは説明して貰いましょうか。何故こうもサーヴァントが一同に介しているのか、と」


 セイバーが疑問を切り出す。その瞳は真剣で、ふざけた事を言えば、先程のカナデの再現になる事は目に見えてわかっていた。そして皆の視線が集まるのはセイバーの隣でぐったりとしているカナデへと向く。
 視線を集めているカナデは、まぁ、そうなるよねぇ、とどこか諦めた顔で溜息を吐いている。


「…ほぅ、つまり貴様の姦計か、バーサーカー…」
「姦計って、そんなんじゃないよ。失礼だね」
「…では、どのような経緯で、こうして我等が一同に介しているのかを説明していただこうか」
「…あー、わかったよ。とりあえず、まずは私の自己紹介からいこうか。私はもう1ヶ月ほど前から、そこのイリヤスフィールに召喚されたバーサーカー、真名はエミヤカナデ。名の通り、そこの衛宮士郎の縁者。だから、この聖杯戦争に関しての知識を持っている。で、この状況に持ち込んだのは、確かに私の提案だ」
「……しかし、どうやってキャスターとライダーを停戦に持ち込ませたのだ? 私たち、サーヴァントは聖杯を得る為には他のサーヴァントを皆、倒さなければ聖杯は得られない」
「それも含めて話をしようか。…セイバーにも無視出来る問題ではないだろうからね」


 そうして、ぐったりとしていた態勢からカナデは身を正し、一度深呼吸をし、呼吸を整えてからセイバーを真っ直ぐに見据えて。


「それじゃ、事の起こりから話そうか―――」





 * * *





 クリスマスが過ぎ、新年が明ける。そんな時だった。カナデが話を切り出したのは。


「イリヤ、士郎、セラ、リズ」
「ん?」
「何だ?」
「どうかしましたか?」
「なんかあった?」


 皆でのんびりと茶をすすっている時だ。学校が冬休みとなり、士郎が家にいる機会が多くなった為にこうして皆で茶を飲む機会が増えた訳で。そんな中で話を切り出したのはカナデは真剣な表情を浮かべて。


「…私は、そろそろ本格的に聖杯戦争の為に動こうと思ってる」


 その言葉に、士郎が息を呑む。聖杯戦争、それは間近に迫っている魔術師達が聖杯という万能の願望機を得る為の戦争。その戦争に対しての備えをすると、カナデはそう言ったのだが、イリヤ達は眉を潜めている。


「…動こう、と思ってるって、まだサーヴァントも揃っていないのに、気が早いんじゃないの?」
「イリヤ。私は真っ当にこの聖杯戦争に参加する気はないんだよ」
「…どういう意味ですか?」
「―――私には、この聖杯戦争に召喚されてから目的があったんだ。その目的を叶える為に」


 一度、瞳を伏せる。そうして再び開いた瞳には確かな意志の光を込めて。





「――私は、聖杯戦争そのものを破壊するつもりだ。私の目的の為に。その為に、ここまで来たんだ」





 

スポンサーサイト
トラックバック(0)+ +コメント(1)
時間ェ……。 ≪ BACK ≪ HOME ≫ NEXT ≫ 幻月の乙女 最終章「Unlimited blade works」
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/12/02 Thu # [ 編集 ]

管理者にだけ表示を許可する
HOME
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
ブログ内検索
リンク
カテゴリー
最近のコメント

 
 
 
 
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。