次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
■■■スポンサーサイト
--/--/-- --スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= プロローグ
2010/02/10 WedOnly One Flowers
「憧れとは、理解から最も遠い感情だ」


 誰かが、こんな言葉を残したという。憧れとは理解とは程遠い感情なのだと。憧れる故にその憧れの対象を美化し、肯定的に物事を見てしまう。故にその物の本質を見極める事など出来ず、故にただその一面でしか愛せないない。
 憧れ。それは誰しもが持つ感情だ。だが、それには程度の差があり、憧れを明確に持たない者もいれば、また、狂信とも言うべきほど憧れに対し執着を持つ人間もまたいるのだ。


 暗がりの中。そこで一人、虚ろに座りながら呟き続けていた。呟きの声からして、どうやらその暗がりの中にいるのは男のようだ。
 男の目の前には空中に浮かぶ光を放つ画面、空中ディスプレイが浮かぶ。そこには一人の少女の姿が映し出されていた。
 その少女は彼が属している組織の中で「エース」の名を欲しいままにした少女である。本来、自らが属している組織で一般的に使用されている技術、「魔法」が未発達の世界の産まれの為、本来こうしてこの組織に存在する事が無かったであろう少女。
 だが何の偶然か、この少女は「魔法」の力を手に入れ、この組織へと誘われ、そして、この男の目に止まる事となったわけだ。
 男は狂信者であった。魔法という絶対的な力に惚れ込み、持たざる故にその強烈な力に憧れ続けてきた。そんな彼の狂信の対象が彼女にすり替わるには、さして時間はかからなかった。
 その少女は誰もが「天才」と称するだけの才能を持っていた。そして、誰もが好くような、愛らしい少女であった。故に、多くの人が彼女を慕った。この男もまた。

 その才能に溢れた力と、誰にでも優しく接し、ただ、真っ直ぐに誰かを助けようとするその行いに、どれだけの人の尊敬や憧れが集まったのであろうか?
 それはわからない。わからないが、それは確実にゼロではなく、存在しているのは確かだ。
 何故ならば、少なくとも、この男はその少女を狂信しているからである。


 だが、所詮英雄と呼ばれた少女もまた、「人間」でしか無かったという話だ。
 何故ならば、現在多くの人が愛した「エース」の姿は戦場には無い。
 それは、何故か? …簡単な事だ。彼女は人間。当然、限界という物は存在する。彼女はその限界を超え撃墜された。
 男にとってそれは衝撃だった。絶対的な物が絶対的で無くなった時、男の少女への狂信は一気に冷めていった。彼が彼女に求めていたのは「完璧絶対無欠」だったのだから。
 故に、男は考える。自分の信じる物は一体どこにあるのだろうか?
 探し求めても、探し求めても見つからない。見つからないという不安と苛立ちから男は指の爪を噛んだ。

 何故。見つからない。闇の中、男は呟き続ける。自身の信じた物はまやかしでしか無いのか? 絶対的な力など無いのか? いや、そんな筈はない。男は思考を続ける。それはどこか歯車が狂ったような思考だった。

 魔法は絶対だ。その圧倒的な力は人の心を容易く支配する。持たざる者と持つ者を選民し、持つ者には栄光が与えられる。持たざる者はただ平伏すしかない。抗う事などできはしない。
 それが世の理の筈だ。そう、力さえあればこの世界の理は支配出来る。それは神にも等しい。いや、神そのものである。魔力とは、神の力の生まれ変わりであり、それを持つ者は神によって選ばれた支配者なのである。

 だが、今まで信じた者は皆「欠陥」ばかり。完全でもない。無敵でもない。絶対でもない。つまり、これはまやかしだ。偽物だ。欠陥品ばかりだ。
 何故、この世には「欠陥品」しかない。苛立ちが怒りへ、そして憎しみへと変わっていく。男にとっての、この世の不条理を憎み、憎みきって、怨嗟の声を挙げる。
 訴えているのだ。誰かがこの男を狂っていると称しても、男にとっては至極当然の事であり、それが叶えられない事はただの地獄の苦痛でしかない。
 現実が地獄である人間の心境とはいかがな者なのだろうか? 常人の思考からは、理解出来ないのかもしれない。
 ただ、わかるのはそれが酷く苦しく、辛く、悲しく、痛いという事のみだ。人は憎しみ、怒り、悲しみの感情を得るが、それを抱えるのにはその心は少々脆すぎる。だがこの男は抱え続けなければならない。
 故にその感情はまさに毒のようだ。その毒は彼の感情を蝕み、心まで病ませ、ついには、脳をも浸食し、彼に1つの「提案」を囁きかける。


「…作ろう」


 そう。無いのならば…この手で産み出そう。


「完全無欠絶対の存在を…作ろう、そうだ、作ってしまおう。そうだ! 素晴らしい!! 作るのだ!! この世界の「神」を!! 私の信じる「神」を!!」


 狂い、笑う。狂い、叫ぶ。狂い、狂い、その男は歓喜する。答えは出てしまった。今までの地獄は何だったのだろうか? 今ではここは最高の極楽だ。あぁ、世界がこんなにも眩しく、美しく、輝いている。
 暗がりの中、男は立ち上がる。空中ディスプレイと共にあったコンソールを手に取り、一心不乱にキーを打ち込んでいく。
 男は、凡人だった。だが、非才では無かった。凡人ではあったが、非才では無かった。魔法こそ持たなかったが、それ以外の面では明らかに、秀才、あるいは天才とも言っても良い才能があった。
 そして、男には学習する力が何よりも強かった。それが現在の性格の歪みを形成してしまったのは皮肉とも言えるが、今ではその皮肉も喜ばしい物だ。世界がこんなにも輝いているのだから。


 男が為したのはハッキング。抜き出したデータは…ある「計画」のデータ。それは闇に葬られる筈の、世には出てはいけないデータ。
 「運命」。その名を冠した禁忌の計画に……彼は、その手を伸ばした。


 数日後。次元を隔てて存在する「次元世界」。その次元世界の平定を理念に結成された「時空管理局」から、とある男の容疑が浮かび上がった。
 ハッキングによる、管理局データベースへのアクセス。内部からの犯行により、発見、対処が遅れ、容疑者は現在逃亡中。ハッキングされたデータは、違法とされている「クローン」を研究した計画。その名を「プロジェクトF.A.T.E」。現在、とある執務官と執務官候補生がその事件についての調査を開始しているが、吉報は上がっては来てはいない……。




+++++



 次元世界の中の1つ「ミッドチルダ」。その首都クラナガン。時空管理局の発足の地として名高いその世界の首都。その一角に一人の少女がいた。長い金髪の髪を先の方でリボンで結び、黒の制服を纏っている。その制服は時空管理局では「執務官」の職に就く者が纏う制服である。年の頃はおよそ十代前半。まだ幼げな印象を覚えるその顔つきは眉が寄り、顰められた表情であった。


「……駄目だ。完璧に出遅れたかな」


 苛々と。その少女は明らかに怒りを込めた声で呟いた。それは自身に対しての怒りと、そして現在、彼女の苛々の原因となっている「者」へ向けた怒りが相乗して込められていた。
 手元に置いたのは、空中に浮かぶコンソールとモニター。そこから表示される情報を目で追っていくが、少女の求めていた物は遂には捕まらず遠い彼方へと消え去ってしまったようだ。
 今思えば冷静では無かったのかもしれない。彼女の近況は極めて不安定であったからだ。
 まず「エース」と呼ばれていた親友が撃墜された事が大きい。彼女に絶対に近い信頼を持っていた故に。
 彼女が撃墜された時にはまさに目の前が真っ暗になったか、と思う程だ。
 さらにそこに追い打ちをかけるかのように己の「出生」に深く関わり、忌々しいとさえ思ってしまう「計画」のデータが何者かにハッキングされ、そしてそのままその「何者」かを逃がしてしまったという現状。苛つくな、という方に無理があるだろう。
 ふと、少女は空を見上げた。そこには、ただ青い空が広がっている。風に乗り、雲は流れていく。


「……世界は、ただ、平和か」


 平和とは言い難いかもしれない。だが、少なくともここは平和そのものでしかない。例え何か事件が起きようとも、それを知らなければ、ここはただ平和でしかない。
 その平穏に自分がいる事がなんだか無性に腹が立つ。誰の手にも渡ってはいけない「計画」が再び、誰かの手によって持ち出されてしまったのだから。


「…絶対捕まえてみせる」


 もう「自分」のような悲劇はこりごりだ。そう自分に言い聞かせるように少女は心の中で強く呟いた。
 そうしてから何かを思い至ったように少女はコンソールを操作した。操作に応じ、モニターに1つの情報が提示された。
 それは彼女が現在追っている者についての情報だ。顔写真と、大まかなプロフィールがそこに掲載されていた。


「ジーク・インプレッサ…」


 そのモニターに表示された男の顔をその瞳に焼き付けるかのように凝視し、その男の名を心に刻み込むかのように、やや低音の声で呟く。
 知らず知らず、拳が握られ、痛い程までに力が入っていた。
 その手はやや汗ばんでいた。それを制服で拭ってから、ゆっくりと溜息を吐いた。
 焦ってもどうにもならない。なってしまった物は仕様がない。今後をどうするか、その方が建設的だ。
 やや気疲れをしたように少女は怠そうに再びコンソールを操作した。開いていたディスプレイが全て閉じられた。最後に残ったディスプレイはしばらく消えずに残っており、それからやや間を置くと一人の少女の顔が表示された。


『はい、こちらアースラ。どうだった? フェイトちゃん』
「ごめんエイミィ、完璧に出遅れた。もう逃げられたと思う」
『…そっか。クロノ君の方も…駄目だったみたい』


 駄目だったみたい、と聞いてフェイトと呼ばれた金髪の少女は明らかに落胆の色を見せて溜息を吐いた。
 その様子にディスプレイに表示された少女、エイミィは気遣う様に笑みを浮かべて。


『えと、あんまり、気を落とさないでね?』
「うん。大丈夫だよ、エイミィ」


 エイミィの言葉に、フェイトは苦笑いにも似た表情を浮かべて返す。その表情にフェイトの様子を察したのだろう、エイミィは取り繕ったような笑みを浮かべる。
 この二人、フェイト・T・ハラウオンとエイミィ・リミエッタの関係は同僚であり、そして姉妹のような関係が最も近いだろうか。そんな二人は特に気負う事なく現状を確認し合う。


『とにかくこっちに戻って来なよ。少し休んでから…なのはちゃんのお見舞いに行こう?』
「…うん。ありがと、エイミィ」


 エイミィの気遣いに気づいたのか、フェイトがやや照れくさそうに笑って返した。それを聞いてから、エイミィは満面の笑みを浮かべて「待ってるからねー」と一言残して、通信を終わらせた。後に残るディスプレイは、ただ黒い画面だけだ。
 それを確認してから、フェイトは最後のディスプレイを閉じた。それを確認してから、空中にあったコンソールを仕舞い立ち上がった。
 もう一度だけ何事もない平和な空を見上げる。眩しそうにその空を見上げた後、重たげな溜息を吐いてフェイトはその場を後にしていった…。





 もしもこの時フェイトがこの男を捕まえていたら。
 フェイトは後にこの事を悔やむ。もしも自分がこの男を捕まえていたら、この後に起こる「あの悲劇」は起きなかっただろう。
 だがその「IF」の可能性は既に、もうあり得ない。歯車は回り出してしまった…。
 それはもう止まらない。だから始まるのだ。


 始まりは一人の男の狂信から……。そこから先へと続く物語…。




Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来=



 貴方が選び取った、貴方だけの未来…。それはどんな未来なのでしょう…。
スポンサーサイト
トラックバック(0)+ +コメント(0)
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第1話 Apart ≪ BACK ≪ HOME ≫ NEXT ≫ 創魔の疾風 =A girl creates the world= Act.13

管理者にだけ表示を許可する
HOME
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
ブログ内検索
リンク
カテゴリー
最近のコメント

 
 
 
 
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。