次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■朧月の契り 第2章 04
2010/11/11 Thu朧月の契り
 ――それは夢。
 幾多の剣を作り上げた。それは紛い物の剣製。
 幾多の人を救い上げた。それは借り物の理想。
 幾多の繰り返し、幾多の救済、幾多の戦場を越えて不敗、それすらも模倣。
 この身にただ一つとして自分(オリジナル)がない。だからそれは所詮劣化している。
 模倣の元たるかの身は10を救おうとして、救えずとも、それでも9を救えた。
 しかしこの身は、果たして9すらも救えたかわからない。だけど、模倣だからそれ以上もなく、ただそれ以下しかない。
 血反吐を吐き出した事なんてもう数え切れない。その身が朽ちるのは早く、彼が生きた生涯よりも早く、この身の崩壊は約束されていた。
 そこに何があった。そこに何の意味があった。ただ真似し続けた。そこに何の価値を彼女は見いだしていた。
 いつか、やがていつかは、劣化といえどもそこに辿り着けるのならばと願って、彼女は戦い続けた。
 その身を剣と為す。
 血潮を鉄に、心を硝子に。
 幾たびの戦場を越えて不敗。
 ただ一度も敗走はなく。
 ただ一度の絶望もなし。
 担い手となりて一人。剣の丘に夢を見る。
 ならば、この生涯に意味はなく。
 ただこの体は剣と成る。
 いつか、あの赤き丘に、焔灯るその世界にこの潤いを届けられるならば――この生涯に後悔なんてものは有り得やしない。





 * * *





 世界地図から見るならば、本当に小さな島国。その名は日本。
 かの地に降り立ったのは一人の少女。吐き出す吐息は白く。肌を刺す寒さは冬の証。日本の特徴である春夏秋冬。その傍らに立つのは栄えるような赤のコートを纏う女。彼女は少女の頭へと手を伸ばして。


「うん、寒いな。どこ言っても世界は寒いのかと思っちゃうよ。そう思わない? イリヤ」
「四季、だっけ? 日本は丁度寒い時期なんでしょ? なら仕様がないよ。カナデ」


 イリヤとカナデ。銀と白。一見すれば姉妹のように見える二人。それは微笑ましさを呼び起こす。その背から二人の女性が追いついてきた。その二人の手には多量の荷物。それを抱えながらやってきた二人の顔は対照的。
 一人は忌々しそうにカナデを睨み付け、不満そうに見ている。片や、もう一人は何の表情を現す事もなく、カナデの傍らへといるイリヤへと視線を向けて。


「こら、カナデ! 何故貴方は荷物を持たないのですか!? お嬢様はともかく貴方まで荷物持ちを免除した覚えはありませんよ!?」
「うぇ…面倒臭いなぁ、もう」
「イリヤ、寒くない?」
「うん、大丈夫だよ、リズ」


 荷物をカナデに押しつけながら対して怒鳴るのは白のコートを纏う女、セラ。アインツベルン城において纏っていたメイド服は最早無く、シンプルな白いコートを纏い、頭巾を外した彼女の容姿もまた、見ようによっては少女と女に似ている。
 それともう一人、短く銀髪を切りそろえた女、リズは同じくこれまた白のコートだったが、セラのに比べれば幼めのイメージを与える。そしてセラと違うのが下に掃いているのがズボンだと言うこと。ある種、中性的な感じを醸し出している。
 四人が並べば、やはりこれは姉妹のように見える。上から順番に並べるならば、セラ、カナデ、リズ、イリヤと言った順番だろうか。そんな騒がしい銀と白の四人組は目立つ事この上ない。


「あーもう、セラうるさい! 目立つのは嫌なんだからさっさとホテルに行くよっ!!」
「わっ、ちょっと、いきなり抱きかかえないでよカナデ!!」
「待ちなさいカナデ!! 荷物を持っていきなさーいっ!!」
「…やれやれ」


 荷物を押しつけて来るセラに辟易したのか、カナデは傍にいたイリヤを担ぐように抱きかかえて走り出す。それにイリヤは驚き、カナデに抗議するようにカナデの背を叩いている。
 そんなカナデの突然の行動にセラは当然の如く激怒して、周囲の目を引く事も気にしない程の声量で咎める。が、それも虚しく響くのみ。そんな三人の光景を見て、我関せず、と首を振るリズがいるのであった。





 * * *





 ――時は遡る。
 アインツベルン当主殺害後。アインツベルン城を離脱した後、森を抜け、近くの街まで逃げ込んだイリヤ達は適当なホテルを選んで、そこに泊まっていた。


「…さて、まぁ、これで私たちは目出度くアインツベルンの裏切り者となった訳だけど…現状、不満があるのはセラぐらいかな?」
「……」


 いつもの軽い調子で話を切り出したバーサーカーに対し、セラは視線だけで射殺さんばかりの殺気をバーサーカーに向けている。だが、決して言葉は発しない。ただ、睨むだけだ。
 そんなセラの調子にバーサーカーはわざとらしく肩を竦めてみせる。その度にセラの殺気が猛りを上げるので、同じ部屋にいるイリヤには正直、胃が痛い。この現状と、その経緯に不満はないとしても、こればかりは勘弁して欲しい。
 平気そうにしているリズが羨ましい、とイリヤはリズに縋った。イリヤに縋られたリズはよしよし、と言わんばかりにイリヤの頭を撫で出す。


「…セラは何が不満があるのさ?」
「…不満、という訳ではありません。ただ…」
「バーサーカー、セラは戸惑ってるだけ。イリヤに仕える事も、イリヤの為になる事も否定する訳じゃない。…けれど、私たちはそれ以外の生き方を知らない」


 セラはリズの顔を睨むが、何も言わない。それはリズの言葉を認めていると言外に告げているようだ。それにバーサーカーは首を傾げる。


「…いくら魔術の家に育ったからって、それ以外の生き方を知らないって…」
「私たちは人間じゃない。――ホムンクルス」
「……あぁ、そうだったんだ。うん、納得した。何となくその違和感は察してたけど、そういう事か」


 成る程、と言うようにバーサーカーは頷く。ホムンクルスとは錬金術の話に出てくるフラスコの小人、つまり本来の生まれ方とは異なる人工的に作られた人間を模した存在。つまりは人造人間。
 彼らには成長過程というものがない。赤子から生まれるのではなく、その姿のまま、予め知識を与えられた状態で誕生する。故に人間のように成長という道筋を歩む事はない。本当に人を模しただけの存在なのだ。


「私たちに与えられた知識はアインツベルンに仕える為だけの知識。それ以外の生き方なんて、知らない」
「そっか。なら教え甲斐があるってものだよ」


 うんうん、なんて頷くバーサーカー。それにセラはとうとう観念したようにため息を吐き出した。わかっている、今更バーサーカーを責めようが殺そうが、既にイリヤは当主を殺害し、逃亡した。もうアインツベルンには戻れない。
 ならばこの変化を受け入れるしかないのだ、と。これからはアインツベルンに仕えるホムンクルスとしてではなく、それぞれの個を以てして生きていかなければならないのだ、と。


「…わかりました。私はお嬢様に仕える身。どこに居ようがそれだけは変わりません。ならばそうするまでです」
「私も。イリヤと一緒に居たいから、そうするよ」
「なるほど。…んじゃ、今後の方針は……どうしようか?」
「…どうしよう、って言われても…」


 バーサーカーの問いにイリヤは言葉を濁す。これからの行く先には何の指針もない。既にアインツベルンとは袂を別った身ならば、この身が行くのは本人の意志にのみ委ねられる事になる。
 ならば、セラとリズはイリヤの傍にいる事を望むというのならば、彼女たちがイリヤに付いていくというのは必至。ならば、そのイリヤは何を望むのか? それを考えれば、あまりにも明確だ。それも、手を伸ばせば本当に届いてしまう。


「…そうね。じゃあ、日本へ行きましょう」
「…日本? なんで?」
「…バーサーカー。貴方、私のサーヴァントよね? だったら―――殺して欲しい人がいるの」


 殺して欲しい、という言葉にバーサーカーは目を細めた。イリヤはその瞳が何を考えているのか察せられない。バーサーカーの瞳を見ている。それは、あの透明感。自ら発した言葉はまるで鏡に映されるように返ってくる。
 それでも、イリヤはそれを心の底から望む。憎い、と。許せない、と。だから復讐するのだと。これは間違いじゃない。これが自分の願う事なのだ、と。だからイリヤは視線を逸らさなかった。ただ、真っ直ぐにバーサーカーを見つめて。


「…それって、何? 衛宮、って言う人なの?」


 だから、その問いにイリヤは目を見開き、睨むようにバーサーカーを見て。


「―――!? 貴方、やっぱり…っ!!」
「いや、知らないよ? だって、私の真名からそう思っただけなんだけど…」
「……ぁ」


 痛い程の沈黙。セラも、リズも何も言わない。イリヤ自身も何も言えない。バーサーカーはケロッ、とした様子でイリヤを見てる。そして沈黙する事、幾ばくか。その沈黙に堪えきれなくなったイリヤが全身を震わせ――。


「こ、この…紛らわしいのよ、この馬鹿ぁぁぁああっ!!」


 咆吼しながら、バーサーカーに飛びかかるのであった。






 * * *





 ――そして、時は冒頭へと戻る。
 日本へとやってきたイリヤ達。ちなみにそのパスポートなどは全ては偽造だ。いつの間にかバーサーカーが全てを用意していたのだ。いつの間に、や、どうやって、という疑問も勿論だったが、バーサーカーはただ微笑むだけで何も答えなかった。
 ともかく、そうしてイリヤ達は日本へとやってくる事が出来た。そして、その際にバーサーカーから提案されたのは、バーサーカーを真名で呼ぶ事であった。


「流石にサーヴァント、魔術師相手には誤魔化せないかもだけど、どうせ私の真名なんて知る人なんていないし。だから今度からはカナデって呼んでよ。一般人相手にはその方が丁度良い」


 と、今までの聖杯戦争のルールに喧嘩を売ってるとしか思えないバーサーカー、もとい、カナデの言からイリヤ達はカナデ、と呼ぶようにしている。
 そんな経緯もありながら、イリヤ達は日本の地を踏みしめる事が出来たのであった。そして冬木に向かうのはまた後日、と空港から降りた後、ホテルに泊まる事にしたイリヤ達だったのだが…。




『 出かけてきます。心配しないでください。後、お金借りてきます。お土産期待しててね! byカナデ』




 と。書き置きが残されていた。そして姿が見えないカナデ。その書き置きを前にしてイリヤはただ立ち尽くし…。


「…っ、あぁっんの馬鹿サーヴァントォォオオオオオッッ!!!!」


 と、咆吼の声を上げるのであった。その後、令呪を使ってカナデを呼び戻そうとしたが、セラの必死の説得によって思いとどまる等の事件が起きたそうな…。





 * * *





 そうして数日後。使い魔やラインを伝ってのカナデの捜索も虚しく、カナデは見つからなかった。主との繋がりであるラインから辿ってみても、カナデの方から意図的にシャットアウトしているのか、カナデからの情報が伝わってこない。
 本気で令呪を使ってやろうか、と我慢の限界に達していたイリヤ、それを押しとどめながらもカナデへの恨みを募らせるセラと、我が道を行くかの如く、ホテルの食事を楽しむリズ。
 そうして―――。


「ごめん、すっちゃった」


 たはー、と空っぽのトランクケースを持って帰ってきたカナデにイリヤとセラの怒りが爆発するのは当然のことだろう。


「すった? すったってどういう事? 勝手に私の下を離れるだけじゃなくて、お金まですっからかんにしてくるってどういう事なの? ねぇ? 何? 死にたいの? 死にたいのかな? むしろ殺して良いのかしら?」
「お嬢様、先ほどまで令呪の使用はあれほど、と申しましたが…今はあれは私の気の迷いだったようです。こんなサーヴァントは今にも自害させるべきです、えぇ」
「いや、待った。待って、落ち着こう。違うんだよ、イリヤ、セラ、良い調子だったんだって! もう、このトランクケースがもう10倍になるぐらいに最高についてたんだって!! …まぁ、引き際誤ってこの様だけどねーっ!!」


 あっはっはっは、と軽快に笑うカナデに、ぶちん、と。イリヤの頭からそんな音が聞こえた。すぅ、と息を吸うのと同時に高まり出す魔力。そして輝き出すイリヤの体。それはイリヤの体に刻まれた魔術刻印が光り出しているからだ。
 そしてそれは令呪の兆しだ。そしてカナデが待ったをかけるよりも早く―――。


「令呪を以て命ず、バーサーカー! 今後、私の言うことに逆らうなぁぁぁあああっ!!!!」


 ――正に咆吼と言うべき声でカナデに令呪の縛りが施されるのであった。





 * * *





「いや、自業自得だけどさー、令呪の縛りってきついねー。いや、イリヤの力量もあっての事なんだと思うけど、うん、こう、イリヤの命令に逆らおうとすると体が重くなっていくみたいな…」
「…黙りなさい?」
「…はい、黙ります」


 ギロッ、という音が似合う勢いでカナデを睨み付けるイリヤ。そのイリヤに完全に身を竦めてしまっているカナデ。そんなカナデを冷たい眼差しで見つめているセラと、カナデの頭をよしよし、と撫でているリズ。


「うぅー、リズだけだよ、私の味方はー!」
「どうしようもない愚か者…哀れむのは当然。ふっ…」
「うわ、なんか凄い馬鹿にされた!!」
「黙れ、って言ったのが聞こえなかったのかしら…カナデ…?」
「…いや、今のはリズだって…はい、すいません、私が悪かったです、黙ります…」


 まったく、と言わんばかりにイリヤはため息を吐く。今は交通機関の中だ。先ほどからちらちらとこちらを見てくる視線は非情に鬱陶しいが、移動の為には仕様がない。そしてイリヤは外へと視線を向ける。
 窓から見える景色が流れていく。その景色の中、次第に見えてくる町並み。その町並みを見つめてイリヤは万感の思いを込め、小さく呟きを零した。




「…あれが、冬木市―――」





 幕開けの報せは、近い。





 
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