次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■朧月の契り 第2章 01
2010/11/02 Tue朧月の契り
 ――望みは叶えた。ならば契約に従い、この身を汝に預けよう。

 ――そして我が身を望むならば、この身の英知を以てしてその望みを叶えよう。




 
 * * *





 ――英霊。
 過去に偉業を為した英雄達の霊である。彼らは死語、信仰の対象となり、崇められる存在となる。人々の理想で編まれた存在である彼らの本体は「英霊の座」と呼ばれる時間軸から外された世界に存在している。
 座。そこに一人の女性がいた。背は低く、女の起伏は見えるが、目立つとも言えない。よく言えば平均的、悪く言えば中途半端、と言えば良いのか。そんな彼女は赤色の外套をはためかせながら立っていた。
 座は時間軸より切り離された世界だ。そしてそこに時の流れは無い。過去も、現在も、未来もそこに全てがある。そして全てが無い。ここは動かない世界なのだ。だがそれでも心は生きている。
 不思議な感覚だ、と思う。イメージすれば世界は変わる。イメージすればそこには何もない。思い出せばいつだってそれを再現する事が出来る。だが、それまで。そこから新たに何かを作る事はない。時折「外」に呼び出される自身の分身が積み重ねた情報こそ得られるが、劇的に何かを変えるという訳でもない。どうせ「後始末」の結果報告だ。
 不意に、女性は顔を上げた。光が満ち始めている。そこに引きずられるような感覚が一瞬、光はそして映像を映し出す。未だ光が満ちていて良く詳しくは見えないものだが、それを見ながら女性は口元に笑みを浮かべた。


「――召還、か。珍しい。「守護者」としての召還以外の召還は初めてだなぁ」


 女は笑う。まるで良い暇つぶしが出来た、と言わんばかりに。さぁ、さて。見守ろうじゃないか。これから「自分」が歩むだろう道筋を。変わらぬ世界で、変わらぬ時の中で、見守り続けよう、と。





 * * *





 

『――――告げる』


 それは正に神秘。神秘と言わずしてこれを何を神秘というのか。


『汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』


 流暢に紡がれる詠唱。それを詠う少女。身に纏うのは愛らしいドレスで、その背丈はまだ幼子のもの。銀の髪が魔力の高まりによってゆらり、とわずかに宙に浮き、蠢いている。
 その足下に敷かれた魔法陣から放たれた光が少女を照らす。淡く、だが確実に。光が鼓動するようにその光を明暗させている。


『誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――、ッッ!?』


 が、そこで神秘の光景は掻き乱された。魔法陣の点滅がその速度を速め、その力に抗うかのように光を増していったのだ。風が吹き荒れ、詠唱を唱えていた少女に襲いかかる。
 少女の顔には動揺が広がる。が、しかし少女は気丈にも立ち直った。召還の儀式によって高められた魔力が暴走を始めようとしている。いけない、と少女は仕方なしに詠唱を続けた。


『――ッ、な、汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』


 光が爆ぜる。魔法陣の中心にいた少女はその爆風に堪えきれず風にその身を浮かせた。あ、と少女の声が空しく響く。そのまま少女の身は浮き上がり、その先にある天井に叩き付けられ――る事はなかった。
 代わりに感じたのは暖かな温もり。誰かに包まれているような感覚に衝撃に備えて強ばらせていた体の力を抜いた。そしてゆっくりと瞳を開く。
 人工の灯りに照らされた部屋。淡い光に照らされて見えたのは自分と似た、だが違う色の白の髪。色を抜き取ってしまったかのように人形めいた白い肌。茶混じりの漆黒の瞳。
 そこに居たのは紅き衣を身に纏った女性だった。その女性はやや呆れたようにため息を吐いて。


「――ふぅ、随分なマスターね。いきなり「バーサーカー」目当て? 随分と切羽詰まってるのかどうなのか知らないけれど、それで引き当てたのは私なのは、果たして運が良いのか悪いのか…」


 やれやれ、と言いながら手に抱いた少女を下ろして肩を回し、首を回し、体を慣らし始めるように動かしている。その女を見つめていた少女は呆然としたように…。


「…ヘラクレス、じゃない…? 失敗、した?」
「…ヘラクレス? アレをバーサーカーとして召還するつもりだったの? とんでもない無茶をしようとする子だね」
「あ、貴方…何なのよ!! 私はバーサーカーを召還したのに!!」
「え? あぁ。この身は確かにバーサーカーだけど…私の特性で狂化をキャンセル出来る訳で、まぁ、私が狂ったところで有効性無いし? キャスターぐらいにしか該当しない私をバーサーカーとして召還しようなんて、ね。まぁ、キャンセルしたのはちょっとした裏技だと思って良いわよ?」


 ぺらぺらとよく口の回る女性に、少女はただ唖然とする事しか出来ない。いまいち理解が出来ない。バーサーカーだというならばなぜこんなにも「普通」に会話しているのかが理解出来ない。しかし自分の感覚は誤魔化せない。
 彼女の身は確かにバーサーカーとして召還されている筈なのに、だが理性を奪っている筈のそのサーヴァントは明らかに理性を持った瞳でこちらを見つめてくる。唖然した表情で見上げてくる少女に、女はどうしたものか、と肩を竦めて。


「…まぁ、これも何かの縁だと思って、仲良くしてくれないかな? 小さな私のマスターさん?」


 冬に閉ざされた城。千年という長い年月、失われた根源へと至る道を追い続ける魔術の系譜が一つ、アインツベルン。その城にて召還されたのは異端なる狂戦士。そしてそれを召還したマスター。
 ここから全ての物語が始まる。銀と白の出会いはこうして果たされた…。





 * * *





 そこは豪奢な部屋だった。石造りの壁、だがそこを飾るのは正に豪奢、と言うべき装飾。ふかふかのベッドに愛らしい人形が置かれている。その傍らに勉強をする為の机だろう。それが置かれている。部屋を暖めるのは暖炉。灯した薪が音を鳴らす中、一人の少女と一人の女が向かい合っていた。
 少女はベッドの上に座り、睨み付けるような視線で女を見ている。少女から睨むような視線を受けている女、バーサーカーは腕を組み、壁に背を預けながら、どうしたものか、と言わんばかりにため息を吐き出して肩を竦めている。


「マスター。別に敵って訳じゃないんだからそんなに睨まないで欲しいんだけど?」
「……睨みたくもなるわよ。あぁ~もうっ、ヘラクレスを呼ぶつもりが何でこんなの召還しちゃうのよ! しかもバーサーカーの癖にぺらぺら喋るし!? 何で!?」
「狂化をキャンセルしたのは私の特性だって。…ってか、こんなの、って、私自身が召還されたのは私の責任じゃないんだけどなぁ…」


 怒りを露わにして怒鳴る少女に、バーサーカーは苦笑を浮かべて頬を掻いた。どうしたものか、と言うように困っているようだ。その仕草もまた少女に苛立たせるものだった。どうにも目の前の女は軽いのだ、その態度が。
 それが腹が立っている少女には気にくわない。彼女を呼び出したのは、何もお話相手を欲していたからではない。これから彼女は戦に向かうための武力を召還する筈だったのだ。だが、蓋を開けてみれば、与えられたクラスに反した奇妙な女。
 狙った英雄は呼び出せず、一体何が原因でこうなったのかわからない。あーもうっ!! と苛立たしい、と少女はジタバタと足を踏みならし、髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。


「…まぁ、良いわ! 呼び出したものは仕様がないわ。――で? 貴方どこの英雄?」
「出身は多分東洋の方だけど。恐らく日本人」
「…日本人? 貴方、東洋の英雄なの? …おかしいわね。聖杯で召還される英雄は東洋の英雄なんて召還されない筈なのに…イレギュラー? …聖杯がおかしくなってるのは何となく気づいてたけど…それが原因?」


 ぶつぶつ、と少女は腕を組んで考え始める。その少女の黙考の時間をバーサーカーは邪魔をしないように、自らの髪を指でくるくると巻き取りながら時間を潰す。暫くすると、少女はようやく現実へと戻ってきたのか、眉を寄せたまま、女へと視線を向け直して。


「…で? 東洋の英雄ってのはわかったけど、真名は? どんな宝具を持ってるの? 狂化をどうやってキャンセルしてるのかも聞きたいわね」
「私の真名はエミヤ。宝具は…持ってない、って所かな」
「…は? もって、ない?」
「まぁ、それに該当するのはあるけど、形としては無いんだな、これが」
「…そういえば、キャスターぐらいにしか該当しない、って言ってたわよね? ってことは、貴方の宝具は…」
「そ。魔術の極意そのものが宝具扱い、って事でよろしいかな?」
「へぇ…どんな魔術なの?」
「固有結界だよ」
「……へぇ、固有結界」
「うん」
「……固有結界? 固有結界ですって!?」


 固有結界、それは最も魔法に近き魔術の到達点。彼女はその境地に至った者だと言う。それに少女は驚くのと同時に、英雄なんだ、という納得を得ていた。固有結界は人の身では分相応の魔術。
 本来は悪魔が使う禁忌の技。それこそが固有結界なのだから。それを扱いこなせるのは確かに英霊ならでは、と言った所だろう。ヘラクレスこそ引き当てられなかったが、これは悪くはないのでは? と少女は考えて。


「私の固有結界は「"無限の剣製"(アンリミデット・ブレイドワークス)」。その名の通り、私は剣というカテゴリーに含まれる物ならばほぼどんな物でも作り出す事が出来る。例えば、宝具もね?」
「宝具も!?」
「ランクこそ下がるけれど、でもこの身は幾千、幾万の宝具を納めているよ。その意味が理解出来るかな? 我がマスター」
「…それって相手の正体さえわかれば、有利な宝具を作り出す事も出来るって訳でしょ?」
「そういう事だね。まぁ、それがわかれば、の話だけどね」


 凄い、と少女は素直に感想を抱いた。正体さえわかれば相手に有利なものを持ってくる事が出来る。しかも、剣に限定されるとはいえ宝具さえも作り出せる事が出来るという事は戦略の幅は大きく広がる。


「…後は、まぁ、ちょっとしたオマケ。私の特性、なんだけど」
「何? そういえば貴方の特性って狂化をキャンセル出来るんだっけ?」
「えぇ。私はある物と意識を接続してて、そこから「情報」を送受信する事によって本来この身にはあり得ない「自我」と「理性」を得ている訳よ」
「…そのある物って何?」
「…そうだね、私の生まれ故郷、っていえば良いかな。私の記憶、私の生前の記録、その全てが納められている物と接続しているの。私が生まれ、育ち、私が手に入れた物。…聖杯、って言えば通じるよね?」


 ――今度こそ、私の思考は停止せざるを得なかった。
 口を唖然と開けて固まってしまった少女に、バーサーカーは、やっぱりね、なんて言いながら肩を竦める。





 * * *





「月にある魔術的概念により実現されている自動書記装置、ねぇ。そんなものが本当に存在しているの?」


 ようやく驚愕から戻ってきた少女は胡散臭そうな目でバーサーカーを見ている。バーサーカーはいつの間にか壁から背を離し、いつの間に持ってきたやら、椅子に座り、顎を背もたれに乗せるよにしてリラックスした態勢を取っていた。


「あるみたいだよ? 少なくとも私は接続を果たしているし」
「…地球の歴史を修めた自動書記装置、人の願った「IF」の世界すらも記録するなら、確かに願望機としては叶っているわ。その「IF」の世界を現実化すれば良いのだから…確かに聖杯として叶ってる存在ね。それと意識を接続してるですって? 貴方、馬鹿じゃないの? それってつまり「根源」に至った魔術師って事でしょ?」
「まぁ、ねぇ。辿ろうと思えば根源へと至る事だって出来たんだね?」
「な、あ、貴方、魔術師でしょ!? 根源に興味が無いの!?」


 根源は魔術師にとっての辿り着く目標だ。それを今、手に出来るという位置にいながら彼女はそれを選ばないという。それは魔術師としては異端というのも優しい。それは魔術師として認められない。


「私にとって根源なんてどうでも良いし。それに魔術なんてただの手段だったし。使えたから使っただけ」
「それでも! なら尚更じゃない! 根源を使えばどんな事だって叶う…」
「と思う?」
「……え?」
「少なくとも、私の願いは根源なんかじゃ叶えられないんだ。私の願いは人じゃなきゃ辿り着けない。人だったから辿り着けた願い。根源が一から何を作れる万能の力だったとしても、そんなものじゃ作れない。だから、私は興味は無いし、これからも根源に至ろうとも思わない」


 それに、狂化を抑えてる今はさして使えもしないしね、とおどけて言う。


「ズルして作った結末なんてね、私は嬉しくない。努力した過程も、その結果も、どれだけ不出来で、不格好でも、自分の力で作り上げたものだから胸を張れるんだ。少なくとも、私は、ね。…どんなに好き勝手な、都合の良い世界を創ったって、そこはつぎはぎだらけの、ただの夢。叶ってしまえば、何もかもが全て無駄になる。…そうだ、無駄になんて出来やしない。彼の生涯も、私の生涯も…」


 最後の方はとても小さな呟き。聞き取れる事のないほどの小さな声。だけれど、彼女が呟いたその顔は、あまりにも透明で、あまりにも透き通っていた。今にも消えてしまいそうな程の儚さに少女は何も言うことが出来なかった。





 * * *





「…今日はもう疲れたわ。また、話は明日にするわ」
「別に構わないわ。――…あぁ、ちょっと待った。マスター」
「…何よ?」


 もう色々と驚きすぎて疲れ果ててしまった少女はもうベッドに飛び込んで寝てしまいたいと思っていた。そこで呼び止められれば自然と反応は尖ったものとなる。それを気にせずにバーサーカーは笑みを浮かべて。


「私は名を名乗った。だけど、貴方の名は聞いていないよ。どうかその麗しき姿に相応しき御名前をお教え願いたい、我がマスター?」
「…イリヤスフィール。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ。イリヤで良いわ。バーサーカー」


 少女は女の口上に軽く呆れたようにため息を吐いた後、投げやり気味に自らの名を名乗った。少女、イリヤの名を聞いた女、バーサーカーは何度か頷いた後、笑みを浮かべて。


「…イリヤスフィール。うん、君によく似合った名前だね。イリヤ、うん、良い名前だ」
「ッ、……ぁ……」
「…? マスター?」
「…ありがと…バーサーカー」


 自らの名を褒められた事に、イリヤは思わず頬を染めた。その透き通るような笑みと共に名を褒めるのは、ちょっとした反則なんじゃないだろうか、と。本当にバーサーカーらしくない、とイリヤは心の中で文句を並べ立て。


「じ、じゃあ今日はもう眠るわ。おやすみ、バーサーカー」
「うん、おやすみ。イリヤ」





 * * *





 雪に閉ざされた城。アインツベルンの本拠地である夜城の頂点にバーサーカーは立つ。吹く風は冷たく、雪交じりの風は容赦なく体温を奪っていく。風によって翻る外套。外套を揺らせながら空を見上げる。
 夜の空は雪に閉ざされ、暗黒。僅かに見える月光のみが淡い輝きとなる。それをただ見つめる。そうして口元に浮かぶのは笑みだ。


「…気まぐれだなぁ、世界は。まさか私にかの大英雄の代わりをしろだなんて」


 くくっ、と喉を鳴らせる。この身は「エミヤ」。その情報は参照として見る事が出来る。それはあくまで情報。かの身がどのようにして生きてきたか、ただそれだけを知る事が出来る。
 これはいずれ来るだろう未来への道。既に私という差異が現れている以上、変化は避けられない。けれども、この因縁を、いや、この絆の繋がりは否定は出来ない。きっと「彼女」ならば―――。


「…ねぇ、この現世で、貴方と会えるかな?」





 * * *





 鉄を打とう。鉄を鍛えよう。この身を剣となし、その血潮を折れぬ錬鉄へ、その心を透き通る硝子へ。
 鉄を打て。鉄を鍛えよ。この身の頂きはまだ遠く、この身には為し得ない。されど、ならば、故に、鍛えよ。
 錬鉄の音が響く。それは、かの錬鉄の音と共に響き合う。鉄を打ち付ける音は連続として、共鳴し、呼び合うように。
 さぁ、始めよう。それは意味の無い生涯の終着。最後には何も残さない、されど意味を求めた錬鉄者達と、それに連なる英傑達の御伽噺。
 導きしは聖なる杯よ。さぁ、その奇跡をその器に注げ。さすればこの神秘、その杯を満たすのに相応しき彩りを得ると知れ。






 
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