次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■朧月の契り 序章「空白の目覚め」
2010/10/16 Sat朧月の契り
 ―――目覚めは、空白と共に。





 

 * * *





 目覚めはいつも突然だ。気がついたら、既に始まりは過ぎている。それに疑念を覚えたのはいつからだ。いつからだろう。思い出せない。
 思い出せない? …違う。思い出せないんじゃない。気づいた時から思い出すという事は意味がない。そう、何故ならば思い出す事もない。思い出せるのは仮初めの残滓だけ。当たり前に仕立てられていた虚実。それを確かにするのは警鐘のような頭痛。
 気がつけば、そこは何もかもが曖昧だ。自分も、他人も、世界も。存在そのものが曖昧で出来た空虚にして無意味な世界。何も為さず、何も為し得ず、まるで絵の中にいるような変わる事のない偽りの日常。

 ――ただ、意味がない。

 当たり前だと思っていたものが崩れ落ちていく。日常も、記憶も、自分自身さえも。それは確かな現実であったのに、それは自分の居場所だと思っていた。だがそれがまるで紛いものになってしまったような感覚。
 果たして、それは自分自身が間違いなのか、それとも自分が居場所だと思っていたその場所こそが間違いになってしまったのか。あぁ、ただここにいるだけで吐き気がする。気持ち悪い。

 ――何も、わからぬまま。

 ただ崩れ落ちていく現実。剥がれ落ちるように露わになっていく世界。ただ答えが欲しくて、ただ意味が欲しくて、崩れ落ちる世界の中を駆け抜けた。ただ、ただ欲し、求め、救いを求めていた。確かな場所が欲しい。確かな自分が居られる場所へ。

 ――ただ、揺らいで。

 自分という存在がわからなくなる。自分はどこに居て、何をしていて、何を思い、何を願っていて。自分というパーソナルは既に信じられない。どことも知れぬ闇を抜け、剥がれ落ちた世界の向こうに何かあるのだと信じて。

 痛い―――。

 そして崩れ落ちる。世界はこうも呆気なく砕けていく。溢れ出る赤は広がっていく。自分という生命の原動力。自分というものがこぼれ落ちていく。意味もなく、誰がためになる訳でもなく、じわり、じわりと。
 崩れ落ちた体は地に倒される。それを無慈悲に見つめるのは無機質なる執行人の姿のみ。執行人は黙して語らず。語る意味などない。消えるべき者が消えた。ただそれだけの事。それ以上も意味もなく、理由も与えられない。やっとたどり着いた場所もただ無意味な死地に過ぎないのか。
 …ふと気がつけば、それは自分だけでは無かった。他にも多くの屍が転がっていた。彼らから流れるものは既にない。彼らの流した物は、私の流した物と同じように地へと吸い込まれ、ただ、消えゆくのみ。
 そう、広がった先に何かある訳でもない。染みいった先に何かが残せる訳でもない。こんな中身のない自分自身が広まった先に何もある訳でもない。なら、…ならば―――零してはいけない。
 無意味な死だ。これは無意味だ。何の意味も持たず、何の為にもならず、ただ無くなっていく。そこにあった理由もなく、そこで死した事にも意味はなく。何も無い。ただの無だ。無、そう、無い、何も無い。無い、無い無い無い無い無い無無無無無無!!


 ――……だ。


 脳裏に走るのは燃え広がる焔。呑まれ消えゆき、黒に染まり、消えてゆく。建物も、人も、何もかもが燃え尽き、ただの灰となる。争いの声は絶えず、死に行く者の悲鳴もまた絶えず、怨嗟、憎悪、悲哀、絶望…。ただ負の色だけが埋まってゆく。染まってゆく…。


 ――…ゃだ…。


 それは今、見ている光景とはまったく別の、だが限りなく今の光景と同じ意味を孕む光景。なんと、なんと醜い光景だ。何故こんなにも無意味な死がそこにある? …死が無意味なのか? それともこれが本当にただの無意味な死の固まりなのか? どちらにせよ、あまりにも無惨だ。


 ――…ぃ…だ…

 意味無く消えていく。何もかもが呆気なく。そこに意味を見いだす事も出来ず、理由も失われ、終わり、何もかもが無くなり、消えて。これが死―――?


 ――嫌だッ!!


 こぼれ落ちる鮮烈な赤を塞ぎ止めるように、こぼれ落ちる滴を掬い取るように傷口を押さえた。力が籠もらない、だがそれでもその肉に爪を突き立てるように立てて抗う。抗って、抗って―――!!
 こんなのは駄目だ。こんな事で終わる事なんて許せない。こんな意味の無い死だけは認められない。朽ち行く自分も、既に先に朽ちた彼らも、その死は何の意味が無いままではいけない。何もわからないままではいけないのだ。
 意味が欲しい、理由が欲しい、死には正当性な理由が必要だ。そうしなければ納得が出来ない。これが定めなのだと言うのならば残酷過ぎる。そうだ、残酷なのだ。認められない程に。
 ならば抗え。抗う事に意味がある。この死だけは無意味にしてはいけない。そうしなければ、それが本当に不明で、無価値になってしまう。死は終着。死は終焉。ならばそこに意味が無ければ何故この魂は痛みを感じている。
 そうだ、意味を、理由を。何もわからぬまま、何も知らぬまま、何の納得もないまま、何の答えも出せぬまま、この地で朽ち果てるのだけは嫌だ―――ッ!!!!
 だから―――どうか、意味を。
 だから―――どうか、理由を。
 無意味な現実から解放されたこの覚醒を、無意味しない、その為ならば―――。





 ――ほぅ。その強い疑問、■■の代行として聞き逃せないな。

 ――君は、死に瀕しながらも己が生に疑問を抱き、死に呑まれながらも自らの不明を恥じた。

 ――よろしい。その心の在り方に期待しよう。君のような人間に相応しい■■■■■■が残っている。

 ――無名の■■■には、無銘の■■が似合いだろう。





 それは、出会いの記憶。その出会いは、なんと言い表せば良いのかわからない。
 余りの衝撃にして、感動。驚きを通り越した先にあったのは言いしれぬ興奮。胸が熱く高鳴る。不明に怯え、無意味に歯がみし、理由を求めて足掻いたこの心は強く惹かれた。


『…酷い話だ。間違っても呼ばれるコトなぞないように祈っていたが、まったくの徒労とはな』


 それは、脳裏に告げた声と同じ声の筈なのに、言っていることは真逆。だがそんな疑問は「今」になって覚えるもの。ただこの瞬間は、鼓動が昂ぶり、ただその存在から目を離せずに居た。


『選定の声に応じ参上した。オレのような役立たずを呼んだ大馬鹿者はどこにいる? …ふむ、認めたくないがこの場にいる人間は君ひとり』


 自信を持って言える。この出会いは、例えこれから何に出会おうとも薄れる事なくこの胸に有り続けるだろうと。この感動を、この鼓動の胸の昂ぶりが簡単に意味を無くして埋没する事などあり得ない、と体が、魂、この存在全てがそう告げている。


『念のため確認しよう。――君が、私のマスターか?』


 忘れはしない。この出会いだけは、絶対に。何故ならば、この瞬間、今、この時を以てして、この身は―――。





 * * *





 ―――不鮮明な夢を、見ていた。
 ぼんやりとした意識は見ていた夢をなぞろうとして失敗する。それは手からこぼれ落ちて形を崩してしまう。崩してしまった形はもう二度とは戻らない。仕方なしに、と閉じていた瞼を開いた。
 差し込む光は眩しく、光に慣れていない瞳は光を拒絶するかのように再び瞼を閉ざす。だが力を込めているのは多大な苦痛だった。ゆっくりと、今度は光を慣らすように瞳を開いた。今度は体の方も拒絶を起こさない。視界は徐々に開いていった。
 目の前に移ったのは、白い天井だった。無機質で、清潔感のある天井。それをどれだけ見つめた事だろう。何も意味もなく、ただ天井を見つめていた。訳がわからない。何もわからない。ただ、白い…。


「――ようやくお目覚め、って訳ね」
「…?」


 不意に、声がした。それは少女の声だ。
 聞き覚えの無い声だ。/聞き慣れた声だ。
 これは一体誰の声だろう。/良かった。無事だった。
 今目の前にいる彼女は誰だろう。/■、また……――。
 二重に重なる思考。それが何を意味するのかわからない。しかも片方は擦れてよくわからない。だから、顔は自然と変になっていたのだろう。それを教えるように彼女は笑って言った。


「…何よ、変な顔しちゃって。…元から変な顔してたけど、今はもっと変じゃない」
「…失礼…だな…。誰が変な顔、してるのさ…」
「…アンタよ。…自分の名前ぐらいは言える? どこまで覚えてる?」
「…名前…」


 ―――………。
 遠くで、呼ばれるような声がして。


「…衛宮 奏。私は…衛宮 奏」


 かち、と。何かが嵌る音がどこかで聞こえた。それは軋みを上げて音を鳴らしていく。音はゆっくりだ。だが、次第に加速していくだろう。歯車は次々と回り出しているのだから。そうして、彼女の物語は始まった―――。





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