次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第3章 06
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 空を駆ける戦乙女。互いにその手に握るのは異世界の技術を導入した新世代の武装。元よりそれを操る悪魔を象るなのははこの戦争の最中で得た力を巧みに振るう。それに長年、親しみ続けてきた魔法を使用する事によって補助している。
 対して、戦女神を象る風見はその手の武装にある利点をある一点において要点においている。それが本来の彼女のスタイルであり、新世代の武装であるが故にそのスタイルを実現させている。
 それは異なる経緯で育まれたものであり、異なるものではあるが―――限りなく類似した戦闘スタイルだ。
 要は簡単だ。ぶっ飛べ、と。
 風見が短い呼気と同時になのはに対してヴァルキュリアを振り下ろす。なのははMe-Ssiahで受け止める。その瞬間、互いの背後から魔力弾が形成され、互いに互いを殴りつけようと放たれ衝突。
 衝撃が空気を振るわす。なのはと風見は斬り合いを結びながら魔力弾による射撃戦を同時に行う。花火が連続として散るように2人の周囲には光が瞬き、破裂していく。それに消されるようではあるが、連続として刃と刃を打ち付ける音が響いて。


「エゲツ無い戦い方を!!」
「どっちがッ!!」
「そっちがでしょ! まんま悪魔じゃないの!!」
「言いましたね、エイプキラーさん! ご自慢のコング☆パンチはどうしたんですか!?」


 切り結びに射撃、そして悪態の応酬。3つの応酬を繰り返しながらなのはと風見はぶつかり合う。体力的にはなのはの方がやや有利。長年魔導師として戦い続け、飛場道場にて鍛えられ、覚醒した身体能力は風見を越える。
 だが体格的に風見が有利だ。実際、なのはは受け止める度にその重みに顔を顰める。エイプキラーと呼んだのは誰だったか、あながち外れていない名前を付けたものだ、となのはは思う程だ。
 だが、互角と言われれば互角ではない。風見がやや不利な状況だ。だからこそ風見は接近戦を仕掛けているのだ。そこがなのはの領域だとしても、なのはの中距離戦が相手では風見はまだ魔法という概念に不慣れだ。そこに差がある。


「そんなに喰らいたきゃ、一発貰っていきなさいよッ!!」
「だれ、がッ!! そんなの喰らったら再起不能になりますよ!!」
「人を何だと思って―――ッ!!」
「エイプキラー」
「…えぇ。わかったわ。――潰す」


 風見は突撃する。全身を捻る渾身の突きの一撃だ。早い、となのはが思う。ガードが出来たがそれで精一杯。更には重い、と来る。だが、それでもなのはは揺るがない。負けない、負ける訳にはいかない、と。
 2人は落下していく。そしてそのまま墜落。大地になのはを叩き付けるように風見が押し抜く。が、なのはも大地を砕きながらも着地し、互いに睨み合う。風見が押し、なのはが堪える拮抗とした時間。
 だが、瞬間世界が切り替わる。なのはは全てへの理解が消失したのだ。理解が出来ない。自分は触れている。だが何を触れているのか。世界はどうなっているのか。理解が、出来ない。


(これは、7thの――――)


 打撃が通る。が、となのはは潰されるような息を吐き出す。腹を横から殴りつけられるような衝撃。地を滑るようになのはは転がっていく。なのはは息を吸う。は、と息を吐き出して歯を噛み締める。
 歯軋りの音が口の中に響く。ギリリッ、と不快な音は思考をクリアにする。世界は未だに理解が出来ない。己という情報しかない。だが、己は確かに握る者がある。それは理解が出来ずとも。


「私の、力だ…!」


 世界はわかりあえないという概念に満たされた。それは7th-Gの概念核、四神の宝玉の1つの効能。ならばこの戦場に7thの概念核を持ち込んで乱入してきた存在。それはその概念核の傍にはなんの概念核があったか。それを考えれば理解が出来て。


「出雲さんかッ!!」


 7thに隣接するのは6thだ。V-Swを回収に行った出雲がそのまま7thの宝玉を回収していたとしても不思議ではない。しかし、ならばこの状況下をどうする。自分は世界の全てを理解が出来ない。わからないから、攻撃がどう来るのかもわからない。
 ならば? どうする、となのはは自問して。そして彼女はその口元に笑みを浮かべた。そんな思考など意味が無いな、と。


「理解なんて、しなくて良い…」


 答えは、いつだってシンプルだ。


「全部、吹き飛ばせば良い!!」


 リンカーコアが駆動する。回る、回る、回る。魔力が体中に巡る。リンカーコアに刻まれた構成式を叩き出す。自身の足下には魔法陣が形成されているだろう。放つ魔法はシンプルに。
 ――動作するものを無差別に攻撃、と。


「アクセルシューター…ジェノサイドシフト!!」


 条件を絞れば当たらない。ならば、条件は広げる。吐き出される魔弾は既に100を越える。だがそれでも足らないとなのはは魔力を湯水のように汲み上げて放つ。放つ、放ち、破壊し、砕き、そしてその果てになのはの理解は戻る。概念が解除されたのだろう。
 周囲は魔弾によって打ち砕かれていた。その中で立つのは風見と出雲だ。苦笑を浮かべている。出雲の周囲には4つの玉が浮かび、その手にはV-Swが握られている。やはり、となのはは1つ頷いて。


「…こんの破壊魔め…」
「破壊は、創造と表裏一体。私が勝つ道を作る為なら―――敗北への道を潰せば良い。そして立ち塞がる貴方たちを砕けば良い」
「…悪魔じみてるわね、その考え方」
「悪魔に、なりたいとって心の底から思うよ」


 なのはは瞳を伏せる。その手に握るMe-Ssiahの感覚を確かめるように強く握り。


「それが、この世界に新しい光を灯すなら。私が、私らしいままに生き続ける世界なら―――何て呼ばれたって構わない」


 汗が浮かぶ。先ほどの魔力の消費は大分体に来た。だが、歯を噛む。まだだ、まだだ、と。


「望みが、あります」


 は、と息を吐き出し。


「欲しい世界が、あります。望めば叶う。伸ばせば届く。諦めなければ何かが得られる世界。届かぬばかりじゃなくて、いつか、きっと最後には良かったな、って思える世界」


 Me-Ssiahを握り直し、2人に向け。


「それはきっと多くのものがある世界じゃないと、得られないものだから…!! 全てを受け継いで、新しい世界を作っていく!! その為の引き継ぎに!! この戦いは必要だから!!」


 風見は見た。自らに放られたそれを。風見はそれを掴んだ。それは慣れ親しんだ相棒の感触。G-Sp2だ。それを投げはなったのは一人の女性。それは先ほどまでなのはと共に居た筈のレイジングハートで。
 レイジングハートの両手には二本の剣が握られていた。それはグラムと十拳だ。1stと2nd。それを手にしている意味を風見と出雲は理解する。魔法という概念に触れた彼等だからこそわかる。そして―――ここからが本番だ、と。


「…ヴァルキュリア。サポートに戻って」
『…Tes.』
「私の相棒になりたいなら憶えておきなさい。私と、その相棒であるG-Sp2の在り方。確かに性能で言うならアンタの方が使い勝手が良いのかもしれない。でも今の貴方にG-Sp2は越えられない。だからこそ、見せてあげるわ。その最高の相手が目の前にいるから。―――ねぇ、G-Sp2?」
『ガンバルヨ』


 光が生じる。光の中から現れるのは白の悪魔。鋭利な装甲に、角を模したような髪飾り、翼もまた大きく開き、桜色の翼を広げ、背部には尻尾が揺らめく。なのはのサタンモードだ。そのなのはの手にはグラムと十拳が握られている。
 合図もなく、宣誓もなく、ただ一歩。なのはと風見、出雲は戦闘を再開させた。





    ●





 空を行く。空を制するのは鋼の巨体。竜を象りし概念兵器において最強の単体戦闘力を誇る兵器、機竜。概念核を有した2つの機竜は空気を震わせる速度で空を駆け抜けていく。サンダーフェロウとアレックスだ。
 その戦いは正に一方的に近かった。それは偏にアレックスの所持している概念核が不味かった。アレックスが所持していたのはワムナビ。熱に命を与え、その熱を得る為に高度な計算能力を有した世界の概念核。
 その高度な計算から得られる攻撃の数々。予測され、逃げ場を潰され、サンダーフェロウには幾つもの損傷が見られていた。サンダーフェロウの持つ武装は固定装備であるヴェスパーカノンだ。つまりサンダーフェロウの性能に変動は無い。
 つまり概念核の恩恵を受けているアレックスに対し、サンダーフェロウを駆るヒオと原川は自らの力のみでアレックスを撃退しなければならない。故にヒオは踏み込む。更に速度を。予測を超える速度を、と。
 それは常に最新の自分を見せ付ける事。果て無き限界、短距離走において距離を縮めなければ生き残れない。だから常にハイペースだ。ヒオはただ全力で駆け抜ける。


『負けません…! 負けませんのよっ!!』


 それは相手がもう一人の自分だ、とか、世界の命運がかかっているとか、ヒオにはそんな思考は最早無かった。この戦いが始まり、相手の攻撃が予測にある事に気付き、何度も損傷を受けた事によって気付いた事実。
 自分は変わっていかなければならない。自分は今の自分を越えていかなければならない。足を止める事は許されない。前へ、前へ、ただ前へ。明日へ。未来へ。勝利の為に。
 故にヒオは踏み込む。息が切れそうになる。だがそれでも、それでもとヒオは加速を続ける。相手の残弾とて無限ではない。ならば切れるまで走り続ける。常に最高の自分で、そして勝利をもぎ取る。


『敵ながら、天晴れである! ヒオ・サンダーソンよっ!!』


 逃げるサンダーフェロウを追いながらアレックスはヒオに対して叫ぶ。ヒオの飛翔はただ全速力で駆け抜けるだけの事。当たらない。どれだけ予測しようとも、どれだけ追い詰めようともヒオは止まらない。
 自分すらも無視している。アレックスはそう感じた。お前なんて眼中にない、そう言われたと解釈しても何らおかしくない戦場。アレックスが追いかけ、ヒオはただ自分に夢中で走る。だが――その先に2人の決着がある。


『貴方も、何も変わらないですのよ!』
『何がだ!』
『貴方も、私と! 同じだと!』
『吾輩は正義である! そして貴様は悪であり、吾輩の敵だ! 吾輩の正義を阻む者!!』
『貴方の正義とは何ですの!?』
『涙を止める事…! 悲しみの涙を止める事! それがヒーローを為す事だ!!』


 アレックスのミサイルポッドが開く。そこから放たれる大量のミサイルがサンダーフェロウの進路を塞ぎ、逃げ道を奪うように展開される。だがサンダーフェロウは更なる加速を試みる。純粋にその速度で包囲網を抜いていく。
 予測を、想像を超えていく。勝利のイメージは遠ざかる。だがそれでもアレックスは食らい付くかのようにサンダーフェロウを追う。


『涙は、停めるものではないですわ!』
『!?』
『涙は、流すものですわ! 流して、流しきって! そして選んでいくんですの!!』
『何を選ぶというのだ、ヒオ・サンダーソン!!』
『――全てを!! 決める事を!! 泣いたままでいるのか、涙を止めて歩み出すのか!! その全てを私には、私達には与えられているんですのよ!!』


 ヒオは走る。駆け抜ける。だが、その体は限界に近い。常に全力。緩める事も出来ない体は疲弊し、意識を点滅させる。だがその意識は強靭なまでに鋭く集中している。駆け抜ける、ただそれだけの為に。


『故に貴様は疾走を選ぶか! 何もかも無視し、自らで決めていくと!! 何と独りよがりな!!』
『自分の事ですもの! 自分で、決めます!! 誰かに決められるのではなく…自分で!!』
『吾輩は…それでも涙は見逃せぬ!! 故に、ヒオ・サンダーソン!! 貴様はここで落とす!! 落とさなければならぬ…!!』


 来る、とヒオが身構えようとした。その瞬間だった。
 ――僅かな、一瞬。
 ヒオの意識が点滅が長くなった。黒の意識が白の意識へと切り替わるまでの時間。それは何秒かの差。だが、世界は止まらない。ヒオは、サンダーフェロウは止まらない。止まらなかったサンダーフェロウはバランスを崩す。速度が、緩む。
 あ、とヒオが声を漏らした時は遅かった。それはまるで倒れ込む瞬間にも似ていた。疾走の途中で転んでしまう。受け身を取らなければ、などの思考も全て吹き飛ぶ。放心する。心がどこかへと飛んでいく。
 負ける――――?
 そう。敗北だ。それが、放心したヒオが唯一わかる事。このまま倒れ込めば自分は死んでしまう。速度を失ったサンダーフェロウは敵の攻撃を受けて沈む。それはもう目に見えてわかる予測。
 駄目だ、とヒオの心に諦めが満ちる。どうしようもなく涙が浮かび上がってくる。あ、と、伸びた声が喉から絞り出される。嫌だ、と叫ぶ心。それはまるで悲鳴にも似ていて。いやだ、と心は叫んでいて。


「―――いいさ。ヒオ」


 え、と。ヒオが思った瞬間。全ての力が意味をなさなかった。


『何ィッ!?』


 サンダーフェロウが脱力したようにその速度を放り出したのだ。一気に減速と共に軌道を変えたサンダーフェロウにアレックスの一撃は通らない。アレックスの放ったミサイルの包囲網と主砲の一撃を回避したサンダーフェロウは落ちていく。


「君は、立てる事を知っている人間だ。だが、君は立つのには時間がかかる。一度の失敗でくよくよする。――だが、いつの間にかまた必死に走ってる」
『原川、さん!』
「ただ、今は時間が足りない。君に倒れる時間は足りない。――そうだろう? ヒオ」
『―――』
「そうだろう?」
『原川、さん―――ッ!!』


 点滅した意識を振り払う。白へ、それは無意識の領域へ。何も思考しない、無我の境地へ。ヒオの踏み込んだ足が大地に触れる。それは深く地を沈み込ませるように力を込めて。


「まだ、やれるか?」


 問いが来る。いつだって、自分が悩んで、最終的に出す答えをわかってくれるように。原川はその時間を短くしてくれる。原川はわかってくれる。原川は―――信じてくれる。
 歓喜が身に走る。見ろ、とヒオは思う。見てください、とヒオは思う。それは原川に、そしてもう一人の自分に。


『行きます…』


 確かな決意を以て。


『行きますッ!!』


 再び、雷の名を持つ機竜は息を吹き返した。
 上る。昇る。地面への落下を続けていたサンダーフェロウは強引にその身を持ち上げる。徐々に角度は上へと向いていき、真上の空を目指す。重力に抗うように。雷が落ちる法則に抗い、空へと帰るように。
 それは途中に居たアレックスすらも追い抜いていく。アレックスは歯噛みする。また無視するのか、と。お前はそうして全てを置いていく。涙を置いていく。それはアレックスには許してはいけない事。


『人の涙を見過ごしてはいけないのである…!』
『人はそこから立ち上がる事が出来ますわ!』
『それは強い者の言える台詞だ!!』
『ヒオは強くなんかありません! ただ…ヒオを強くしてくれる人がいるから!!』


 サンダーフェロウが反転する。それは速度だ。予測された。だが、アレックスにはそれが限界だった。いくら計算しようとも、いくら予測しようとも、サンダーフェロウの攻撃を防げない。
 敵の攻撃は純粋だ。速度による衝撃波による攻撃。加速、加速、加速! ただそれのみを追求した速度の打撃。アレックスは身を捩る。全身に与えられる痛みを感じながらも空を見る。
 空は自由だった。だが、空には何もない。手を差し伸べてくれる人も。自分を抱きしめてくれる人も。それが自由。何もないのが、自由。何もかもを自分で選んでいかなければいけない自由。
 冷たい、とアレックスは思う。空は冷たい場所だ、と。だからアレックスは叫ぶ。


『この冷たい自由を浴びろと、貴様はそう言うのかヒオ・サンダーソン!!』
『自由こそが…全てを選択させるものならば!!』
『泣きたい者には泣けと、泣き続けたい者には泣き続けろと、それを認める事は吾輩には―――!!』
『それが、貴方の自由です!! もう一人の私!!』
『ッ!?』
『手を、差し伸べてくれるその温もりは優しい、嬉しい…! 私は、貴方がもう一人の私である事を誇ります!! 泣き続けた私だから、その手を差し伸べてくれた暖かさを知っています!! それを与え続けられる貴方に―――敬意を!!』


 ヒオは歌った。その歌は――星条旗。彼女の母国の歌にして、正義と自由を求めた国歌の歌。その歌に意味を。その歌に思いを。乗せる。乗せた歌を加速の原動力としてサンダーフェロウは力となる。
 サンダーフェロウの最大の加速が始まる。アレックスへの打撃への回数が、威力が跳ね上がる。アレックスはただ身を捩る事しか出来ない。いや、それしかしなかった。思ってしまったのだ。思って、知ってしまったのだ。
 あぁ、彼女は敗北者だったのだろう。強くもない。弱かった、ただそんな存在。無力で、泣き続けて――だからこそ隣にいてくれる幸いな者を得て、そしてそこから今の強さを得ていったのだろう。
 敗北して知っていく。そして、自分は敗北する。何故か? それは自分は知らなかったから。


『――同じか、ヒオ・サンダーソン。貴様の幸いは…吾輩の幸いと同じか!!』


 その答えは―――アレックスの意識を奪う、アレックスの敗北にして、サンダーフェロウの勝利を示す強烈な一撃だった。





 
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