次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第3章 04
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 ――世界よ。世界よ。今までお前の流した涙は地に落ちた。





 夜だ。漆黒の空には宝石箱を散らしたように瞬く星の数々。その星を見上げるのは竜美だ。竜美が座っているのはアレックスの背の上だ。足を曲げ、両手を後ろに支えとしておいて、背を曲げて見上げるようにして空を見上げている。


「…ねぇ、アレックス」
『何だ? 竜美』
「明日には、答えが出るわ。世界の、そして、私の…私達の」
『…怖いか?』
「怖い?」


 アレックスからかけられた言葉に竜美は鼻で笑う。怖いのか? あぁ、と竜美は声を出して笑う。その身を抱きしめるようにして竜美は瞳を閉じる。閉じればそこには一人の少年の顔が浮かんで。


「――怖い、のかしら?」
『…竜美』
「…でも、行くわ。そうしないと私…もう、―――待てないもの」





 ――世界よ。世界よ。今までお前が叫んだ痛みは世界を揺るがした。





 同じ時刻にして、空を見上げる少年が居た。自宅の屋根の上に上がり、少しでもその空にある星に近づこうとするかのように。少年が、手を伸ばす。だがそれでも星は手に届く事はない。


「…リュージ君」


 不意に、呼ぶ声がした。竜司、と呼ばれた少年、飛場は振り返る。そこには屋根の上を四つん這いで移動するようにやってきた美影の姿だ。驚きが飛場の目に宿る。だが、それもすぐに笑みの色へと変わって。


「…ここは、冷えますよ? 美影さん」
「…ん…。でも、リュージ君の傍に居たいから」
「…なら、戻りましょうか」
「うぅん。リュージ君はここに居たいから。だから、私もここに来た」
「―――」
「迷惑なの、わかってる。でも…リュージ君が答えが出せるまで、ここで、一緒に考えよう?」


 そっと、飛場の頬を撫でるように美影がその手を伸ばす。その手の感触に飛場は、あ、と掠れた声を漏らして。


「リュージ君を、わかりたい。悲しみは分け合えば半分、喜びは二倍、って聞いたよ。悲しみは重たいから…だから、リュージ君?」
「…美影さん…」
「リュージ君の傍まで、行くよ?」





 ――世界よ。世界よ。だが誇るが良い。





 マンションの一室。眠れぬのか、電気の灯りが消えた部屋で天井をぼんやりと見つめるのはヒオだ。ここは原川のマンションで、ヒオが下宿している場所だ。ヒオの部屋と言うべき場所は押入の下段の部分で、天井はすぐそこだ。


「…眠れませんわ…」


 緊張しているのだろう、とヒオは自らの状態をそう断ずる。駄目ですわね、と想い、ヒオは自分の体を包んでいた毛布をくるめて纏うようにして押入から出た。目指すのはキッチンだ。
 冷蔵庫の中には冷えたミネラルウォーターが入っているだろう。それを呑んで少し体を冷やせば眠れるかもしれない、と。


「…ぁ…」
「…ヒオか?」
「原川さん…も?」


 キッチンに辿り着くと、そこには冷蔵庫を開いていた原川の姿があった。それを確認したヒオは少し驚いたような目で彼を見て、彼の名を呼ぶ。眠っていない彼を見ていると、まさか自分と同じ理由なのではないか、とヒオは思って。


「…緊張か?」
「…多分、そうですの」
「気負う事はないさ。君が駄目でも、佐山の馬鹿を始めとした奴らがいる。負けるとか考えるなよ、ヒオ・サンダーソン。君は君のやるべき事を果たせば良い。全力でやった結果で負けたら仕様がないだろう? ヒオ・サンダーソン。そこで君は泣くのか?」


 原川の言葉にヒオは身を竦ませた。そして、小さくその首を振って。


「泣きませんわ。だって、泣くのは悔しいからですもの。この決着に―――悔しさなんて、残してはいけませんものね」
「だったら、どうする?」
「全力で。持てる全てで、行きましょう。私のままで、私の全力で。認めさせて、認めていけるような戦いにするために」
「――良い答えだ。ヒオ・サンダーソン。なら、寝ろ」


 ひょい、と原川は冷蔵庫から取り出したペットボトルをヒオに差し出しながらそう告げた。はい、と小さく頷いてヒオはペットボトルを受け取って笑みを浮かべた。





 ――世界よ。世界よ。お前の流した涙は恵みとなりて大地を潤した。





「ねぇ、覚?」
「ん?」
「これ」


 夜の外灯が照らす街中、それをゆったりとした歩調で歩きながら風見が隣を歩く出雲へと問いかける。出雲は単車を押しながら風見の方へと視線を向ける。
 風見の手には1つの宝石がぶら下がっている。その宝石を目にして、覚は再度、風見の方へと顔を向けた。そこにはやや、不安げな表情を浮かべた風見が居て。


「なんかさ、終わるんだなぁ、って思っちゃうよ。コレ、渡されるとさ」
「明日がそういう戦いなんだから仕様がねぇだろ」


 そう言う覚の胸元には風見の持つものとは異なる宝石が揺れていた。一度だけ、その宝石へと視線を降ろして、出雲は小さく溜息を吐く。


「…お別れね。近々」
「あぁ、でも違ぇよ、千里」
「…ん?」
「形が変わって、それで一緒にいるって確かめ辛くなるだけさ。――それに、俺たちがいれば、アイツがいたって言う証拠になる」
「――それも、そうか」


 はは、と出雲の言葉に風見は小さく笑い声を零して。


「…そっか。そうだよね…ただ、変わっていくだけなんだ。世界も、未来も、今、この手に握るものも、ね」





 ――世界よ。世界よ。お前の揺るがした世界は人々の行動の先駆けとなった。





 連続とした金属音が響き渡っていた。そこはUCATの地下にある訓練室の1つだった。そこに戦闘服を纏った2人が対峙していた。対峙した2人がその手に持つのは同じ獲物だ。
 それは鏡あわせのように同じ攻撃で、同じ攻撃を返す。弾き、突き、凪ぎ。振るわれるのは槍だ。その槍を振るうのは片目に眼帯を付けた初老の男、ハジだ。
 ハジの相手を務めるのは――命刻だった。


「――シッ!!」


 体全体を使った撓りを使った突き。もはや突撃と言うべき突きにハジが、お、と驚いたように声を出す。ハジの持っていた槍が命刻の槍を受け止める。


「…やるもんじゃないか、命刻。うん、やるもんだ」
「…ずっと見てきたからね。だから、見様見真似ぐらいはね」
「そうかね? うん。…だが、直々に私にこうして教わるという事は、そういう事か?」
「あぁ」


 だってさ、と命刻は槍をくるり、と回すようにして持ち直して。


「私は義父さんの娘だからさ。――背負って、戦いたいよ。そう決めたんだ」





 ――世界よ。世界よ。見ているか。お前は見ているだろうか?





 夜の闇。そこを照らすのは蝋燭の淡い光だ。その淡い光に照らされて闇の中に象られる顔は新庄と佐山の顔だ。蝋燭の光が照らすもの、それは小さなお堂だった。そこには一枚の写真立てが置かれている。
 それを手に取るのは新庄だ。写真に移っているのは一人の女性。それを見て新庄は淡く微笑みを浮かべる。新庄は佐山の手を握りながら、ねぇ、と問いかけから佐山に声をかけた。


「ねぇ、佐山君」
「何だね? 新庄君」
「…ボク、ね? ずっと一人だと思って生きてきたよ。心細くて、寂しくてさ。…でも佐山君と出会ってからいっぱい頼ってきて…。でも、ね? ボクは一人じゃない。お父さんがいて、お母さんがいるからボクがいて。何分かの一の確立で父さんと母さんでこの世界は出来てるんだと思う」


 きゅっ、と。握る佐山の手を離さないようにして。


「もう、姿は見えないけど、言葉は交わせないけど、でも、この世界がある限り、お母さんやお父さんのしてきた事は生き続けていくし、ボクもそこに加わっていく。…世界ってさ。ボク達の体じゃなくて、ボク達がしたことを刻んで生き続ける生き物みたいだね。ボク達がいなくなっても、ボク達はそこにいる」
「――言うならば、世界の遺伝子かね。私達は」
「そうだね。…ボクはこの世界を大事にしていきたい。皆が残してきた世界だから。もう会えない、だけどその会えないから、会いたいと思う気持ちを大事にしたい思いに変えて。…だから、届くよね? ボクのすることは…お父さんや、お母さんに」


 新庄は軽く俯きながら呟いた。佐山の手は気付く。新庄の手がやや震えている事に。佐山はその手を握りしめて、大丈夫だ、と言った。


「届くとも。私達の思いが世界に届かぬ筈がない。新庄君、世界を軋ませよう。私と君なら二倍、いや、新庄君は2人分だから私も頑張れば四倍だ」
「そ、そんなにいらないよ」
「なら、残りの分は私と新庄君の為に使おう」
「…うん。ありがとう、佐山君」


 ねぇ、と新庄は佐山の手を握りながら、もう声の届かないだろう、だけど届けたい人へと声を向けた。


「ボク、――ボクの全てを認めてくれる人と一緒になるよ。幸せになる為に」





 ――世界よ。世界よ。さぁ、なら、では、見せようではないか。





 空を舞う光が走る。桜色の残光を残して空を舞うのはなのはだ。彼女は今、バリアジャケットも無しにただ空を飛んでいる。上へ、下へ、右へ、左へ。無尽蔵にただ空を自由に舞う。


「マスター」


 それを追うようにして飛ぶ影があった。それはレイジングハートだ。金色の髪を靡かせながら彼女はなのはへと追い付いて。レイジングハートに気付いたのか、なのはは空中で制止し、レイジングハートを見て。


「…何? レイジングハート」
「…いえ。マスターは本当に飛ぶのが好きなのですね」
「そりゃ…夢だし。誰でも一度は憧れるんだよ。空を自由に飛ぶ事を」
「…今なら、わかる気がしますね」


 クスクス、とレイジングハートは笑う。人の身を得て彼女は多くを得た。その多くは彼女を人らしくさせていく。そんな彼女の姿をなのはは嬉しそうに見つめて。


「ねぇ、レイジングハート。飛ぼうよ。高く、早く、どこまで。私達を縛るものなんてどこにもないからさ」
「寝ましょうよ。もう遅いですよ? 明日は決戦なのですから」
「いーやーだ。だって…今日はこんなに星が綺麗なんだよ? だから飛ぶよ。私は」
「マスター…」
「…じゃあ、レイジングハートが私を捕まえたら寝るよ。それじゃ、バイバイッ!!」
「あっ、コラッ! 待ちなさい、マスターッ!!」


 そうして2つの桜色の残光が夜空に舞う。幾多もの軌道を描きながら空を走る二対の桜の光を見つめるのはジェイルだ。彼は見惚れるかのようにその光を見つめ続けるのであった。





 ―世界よ。世界よ。お前が産みだしたその奇跡を。






    ●





 告

 全竜交渉会議の結果、先年より因縁のあるTop-GとLow-Gの支持率は同率であると判断されん。
 就いては両者の同意の上、Top-G五名、Low-G五名の代表による戦闘にて禍根の戦に決着をつけられたし。


 一枚の模造紙に墨字で書かれたものの序文だ。そこからTop-G側の代表者と、Low-G側の代表者の名が連ねられていた。
 Low-Gは佐山を始め、出雲、風見、飛場(美影)、ヒオ(原川)と名を連ね。
 Top-Gは命刻を始め、竜美、アレックス…そして――なのは、レイジングハートと名を連ねていた。
 代表者達は東京タワーの下へと集っていた。そこには既に概念空間が展開されており、人は居らず、ただ静まり返っている。


『――よろしいですか? 両代表者』


 概念空間に声が響き渡る。それは概念によって届けられた大城至の侍従であるSfの声であった。彼女は彼女の特性故に全竜法廷の会議議長を務めていた。そして現在の進行もまた彼女によるものから始まる。


『これより、Top-GとLow-Gの代表者決戦を始めます。再度、ルールの確認をします。この概念空間は東京の全域を範囲としております。その概念空間の10カ所に概念核武装を設置してあります。
 両代表者はこの概念核を集め、より多くの概念核を保有出来た代表側が勝利とします。集めた概念核を再びこの東京タワーに集め、奉納する事で奉納した代表側に1ポイントとします。
 無論、概念核武装を用いた戦闘も可能とします。相手から概念核を奪取し、それを奉納する事も可能です。…よろしいですか?』


 Sfの問いに答えは無い。それは無言の肯定だ。
 東京タワーを境目にして、両陣営の代表者達は構えを取る。Low-G側にはゲオルギウスを装着した佐山が腕を組み、構えている。その左右には出雲と風見が並び、その後ろに竜司と腕を絡めるようにした美影が立つ。その更に背後では既にヒオと原川がサンダーフェロウのスタンバイをしている。
 Top-G側には命刻が自然体で立っていて、その隣には竜美がいる。竜美の背後には白い武神、テュポーンが刀を地に突き立てるようにして立っている。その背後にはアレックスが構えを取っている。
 命刻の隣、竜美側とは逆の方ではなのはがMe-Ssiahを鞘に収めてLow-G側を見ている。レイジングハートはなのはに付き従うように一歩引いた場所に立っていて。


『それでは、両陣営。―――良き戦いを。ここに最後の全竜交渉の開始を宣言いたします』


 Sfの開戦の合図と共に動きが始まる。それぞれが散っていったのだ。それぞれが、それぞれのものを得るために。
 佐山は開始宣言直後にサンダーフェロウの背へと飛び乗った。それに続いて風見、出雲が飛び乗り、サンダーフェロウが空へと飛翔した。周囲の建物のガラスを砕きながら空を舞うサンダーフェロウが向かうのは概念核の下へと。


「原川、ヒオ君、急ぎたまえよ」
『全力で飛ばします!!』
『振り落とされるなよ』


 空へと昇り、加速していくサンダーフェロウ。その雄姿を見送ったのは命刻だ。ふん、と鼻を鳴らして。


「――考える事は同じ、か。行くぞアレックス」
『承知!!』


 そして命刻もまた同じだ。彼女はアレックスの背に飛び乗る。瞬間、アレックスもまたサンダーフェロウと同じように空を行った。佐山達とはまた別の方角へと、だ。
 それを見送るのは飛場と美影、竜美となのは、レイジングハートだ。飛場の視線は竜美へと向けられていて、竜美の視線もまた飛場へと向けられていて。


「…なのはちゃん」
「わかってます。――レイジングハート」
「はい。―――行きましょう」


 視線を向ける事無く、竜美はなのはへと声をかけた。それになのはは1つ頷き、瞳を閉じた。そして両手を広げるようにして、まるで何かを受け入れるかのように。
 そのなのはを抱きしめるようにレイジングハートがなのはを包み込む。そして―――閃光。光が周囲を照らしていき、そしてその光を破るようにして飛び出す者がいた。
 白金色の髪を靡かせ、赤紫の瞳を真っ直ぐに前へと向け、黄金の槍を構え、背に桜色の翼を広げ、装甲服の上に甲冑を纏う者、レイジングハートがそこに居た。


「A.C.S…Stand By……OK…Full Boost Count…3、2、1…」


 黄金の槍の一部が開き、そこから桜色の光が溢れ出す。レイジングハートの背のバックパックから広がる翼が光量を増し、撓るようにその翼をはためかせて。


「――Go Ahead!!」


 ――空気をぶち抜いた。加速したレイジングハートが向かう先はサンダーフェロウが駆け抜けていったその先へ。その加速は先に行ったサンダーフェロウを追って加速を続けていく。
 桜色の光の軌跡を見送った竜美が飛場へと視線を向けた。あぁ、と竜美は熱に浮かされたような吐息を吐き出して。


「…ねぇ、竜司君?」
「…何ですか?」
「どうして、ここに?」


 その問いに、飛場は一瞬口を震わせた。それによって体が震えそうになったが、その手を美影が優しく握った。飛場は視線だけ美影へと向ける。視線を向けられた美影は大丈夫、と呟いて頷く。
 飛場も、頷く。そこには笑みがあった。だが、それは竜美と向かい合った瞬間に消えて。


「貴方に、勝ちに来ました」
「……」
「貴方を、倒すために」
「…ぁぁ…」
「貴方と、戦う為にっ!!」
「あぁぁあああっっ!!」


 叫び、吠える。飛場が思いを叩き付けるように叫び、竜美が応えるかのように叫ぶ。竜美の目尻から一筋、涙が零れ、彼女の背後に控えていたテュポーンが動きを見せる。突進の動きだ。
 その突進を止めたのは――概念空間より召喚され、飛場と美影を取り込む事によって完成される武神、荒帝だ。荒帝が刀を振るい、テュポーンもまた刀を振るう。甲高く響く金属音。軋む身と刀と。


『行きます。―――行きます!!』
『うん。――行こう』
「来て、みなさいよっ!!」


 再度の金属音が、高らかに開戦の合図を告げた。





 
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