次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第3章 03
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 年代記は綴る。全竜法廷、その会議において何が誓われ、何が明かされ、何が生まれたのか。
 会議は佐山の世界の哀悼の意を捧ぐ事から始まった。今まで失ってきた全ての者達に。望んだ世界の為に尽くし、今、こうしてここまで我等を運ばせてきた先立達に敬意と感謝を込めて。
 初手は1st-Gだった。1st-Gの代弁者は問うた。今、他Gの住人が暮らす居留地からはいつ抜け出す事が出来るのだろうか? と。
 新世界において新たな居場所は確かに用意されるのか? 概念解放された世界、その先に本当の幸いたる世界は存在するのかと。
 それに応える佐山は言った。それは不可能である、と。だから、と前置きをして佐山は1st-Gの代弁者に問うた。ならばどうすれば良い、と。そして答えは返る。ならば馴染む為の賢石を。世界に馴染む為の。
 そうして作られた先の世界。第二世代が受け継ぐ世界が――真の意味で幸いな世界である事を望む、と。ならば、と佐山は言った。ならばもしもLow-Gが世界の担い手である事を認められたならば、その暁には新しき世界で1st-Gを異種族帰化推進委員会のリーダーに任命したいと。

 2nd-Gの代弁者は問うた。概念戦争中、2nd-Gは戦争の準備を進めていた際に暴走した概念核の対処としてLow-Gに対して救援を求めたが、それは間に合わず、結果として2nd-Gは滅びたという。
 世界が圧倒的に対処が間に合わない速度で滅びに向かったとき、その時、Low-Gはどのような対処を考えているのか、と。そして佐山は答えた。何も考えては居ない、と。
 だから、と前置きをして佐山は告げた。ならば世界に対しての滅びを想定し、行動しよう。そして何かが起きた時に諦めずに行動しよう。だから2nd-Gもまた共にあれ、と。そして歴史を残さないか、と彼は言った。今までの全ての世界の侵してきた愚を繰り返さぬように、それを伝える為の歴史を。そしてそれを纏めるリーダーには2nd-Gがなれば良い、と。

 3rd-Gの代弁者は問うた。この会議において佐山が語り、そしてこれからも語られるだろう世界の行く末に嘘はないのか。そしてそれが嘘だった場合、誰が責任を取るのか、と。この場でその証明をしてみせろ、と。
 佐山は言った。互いが互いにそう望むのであればこの会議の結果は裏切られる事はないだろう、と。だだ、それでももしもを考え、約を違えた際に制裁組織を設けるのはどうか、と佐山は提案する。だから、と佐山は前置きをして告げた。ならばその組織には休みを必要としない自動人形と武神戦力を持って関わって欲しいと。他のGからも人員を募り、オープンな組織を作れば良いのではないか、と。

 4th-Gの代弁者は問うた。おしごとほしいの、と。佐山は言った。それならば君たちの特性を生かした治療で奉仕して欲しい。だから、と前置きを告げて佐山は言った。ならば君たちを主体とした医療体制、医療機関の設置に尽力したい、と。
 …尚、この際に4ht-Gは何故佐山が会議において責め立てられなければならないのか、と問うた。それに答えたのは佐山ではなく風見だった。風見は言った。世界は滅び、居場所を失って残されたLow-Gに新たな居場所を求めている、と。
 だが、皆は等しく世界を失った痛みを得ているのに、Low-Gは世界を失っては居ない。だから、その痛みをこの会議として受ける事によって自分たちは等しくなっていくのだと。
 
 5th-Gの代弁者は問うた。いや、望んだ。与えられた平穏はいらない、と。平穏を得に行きたいのだと。誰かがもし泣いているならば、その誰かに対して手を差し伸べられるようでありたいと。その為に、機竜という一機であったとしても強大な力を持つ者に自由な空を預けて欲しいと。
 そして会議の者達の大多数からの賛同を受け、その願いは立件という形で受理された。そこで佐山は問うた。その為に恐らく使い走りになる可能性があるが、大丈夫か? と。5th-Gの代弁者であるヒオは、大丈夫にします、と笑顔で頷いた。

 6th-Gの代弁者は問うた。それは確認にも近かった。6th-Gは全竜交渉以前からその交渉を終えていた形であり、その帰化した者達は3rd-Gや5th-Gの警護や救助を行う為の人材として世界に派遣されていくだろう、と。
 そして佐山は付け加えるように告げた。元々、帰化していた時間が長かった故に装備や設備の扱いに慣れている6th-Gの人間ならば士官待遇で迎えられるだろう、と。
 
 7th-Gの代弁者は問うた。いや、望んだ。これからも飽きない世界であってくれ、と。7th-Gは全竜交渉によってその全てをLow-Gへと継がせた。だから、その世界をずっと飽きさせない、楽しい世界にしてくれ、と。佐山は尽力する、と答えを返した。

 8th-Gの代弁者は望んだ。自分たちの居場所を。ソレはある種、4th-Gと同じ問いだった。ならば、と佐山は8th-Gの住人であるワムナビが住まう事の出来る中央官制システムを作り、超高速のネットワークを作ろう、と。
 8th-Gは熱エネルギーが生物化した世界だ。思考による熱量で自身を意地している為に、思考させる場を与えれば自然と生きていく事が出来る。更には民間のネットワークに繋げる事によって彼等に遊びの場を与えよう、と。

 9th-Gの代弁者は望んだ。それは6th-Gと同じ事であった。ただ違うのは9th-Gの住人の多くが「軍」の人員である事だ。だが、元々は同じUCATという組織に属し、その技術体系が多く違う事はない、ならば6th-Gと同様に士官待遇で迎えられるだろう、と佐山は言った。

 10th-Gの代弁者は言った。多くは望まない。どのような結果でも受け入れよう。だから私達の世界を大事に思い、これからも世界を楽しく、そして大事にしていってくれと。佐山は世界の意志の全てがそれを望むから安心したまえ、と告げた。それに誰もが同意するように頷いた。


 そして――――。





「Top-Gの代表、戸田命刻だ」


 最後に。全てのGの特性を持ち、盟主として相応しき世界であった筈の生き残りである彼女の番が来た。対峙する佐山と命刻。それは同時に本物と偽物、鏡合わせの存在の対峙でもあった。


「まず、前提として。私達がこの世界の終末に対してどのような手段を講じているのか、それはもう周知としているな?」
「あぁ。それは既に会議の前にも確認している。1ヶ月前。「軍」の襲撃によって明かされた話だ」
「ならば、決めよう。提示された手段は2つ。世界としてあるか、個々としてあるのか、だ。――私は感情となろう。敗北した者達の憤りとなって問いかけよう」
「――ならば私は理性となろう。そしてその2つを以てして60年と10年にわたる因縁に決着を付け、新たな世界へと進むために」
「「過去と、未来の話をしようか」」


 互いに顔に浮かべたのは笑みだ。


「まぁ、その前に提示しておく事がある。もしも、Top-Gの提示した手法において世界が作り替えられるならば、今まで全竜交渉において得られた諸権利は、UCATを解散せず、今の首脳陣を処罰し、我等が変わりに率いる事で継続とする」
「全竜交渉を肯定する、と?」
「お前達は確かに罪人だ。だが、それでもその罪を償おうとした事は認められるべき筈の事だ。それに世界が互いにぶつかり合い、本気で出し合った答えだ。ならば、尊重されるべき答えだと私は思う」


 命刻の言葉には意味がある。つまりそれはTop-Gが全竜交渉を肯定する事によって全竜交渉によって得られる諸権利はそのまま残り、Low-G側に有利に働くという事が無くなった事。
 ならば純粋に残るのは、理性か、感情か、だ。仕方なかった、だから前に進もうという理性か、悲しかったな、辛かったなと慰め合い世界を動かそうとする感情。


「しかし、Top-Gの手法では、我等とは前提条件が異なる為に全竜交渉を続行出来ないと思うが?」
「その時は私達の代わりにLow-Gに補正を行ってもらうさ。間違いがあったならば正せば良い。そういう事だろう?」


 あぁ、と佐山は頷く。それに命刻は頷き。


「ならば、――確認しておこうか。Low-G代表、佐山御言」
「何だ、Top-G代表、戸田命刻」
「もしもLow-Gが世界に認められ、これから概念解放を行うとするのならば、どうしても確認しておきたい事がある」
「それは何かね?」
「問題を解決する。それは未来があるものの選べる手段だ。だが、最早死んでしまった者には望めないものだ。ならば死者が何を望むのか、お前はわかるか?」
「―――」


 はぁ、と息を吸い命刻は佐山を見た。会議の誰もが命刻の言葉を予測した。簡単に予測できる事だった。それはあまりにも簡単すぎる言葉だったから。


「――私の親は、死んだよ」
「……」
「多くの人が死んだ。それは返らないものだ。―――返してくれれば泣く事もない。全てが蘇れば無かったことになる。それが一番簡単な解決だと思わないか? 佐山」
「不可能だ。が、その不可能を語る貴様は何を問いたい」
「簡単な事だよ。佐山。――お前は、失った感情に対して何を提示する! 私達は失った! 親、家族、世界、その全てをだ! お前達が奪った! 保身の為に、だ! そのお前達が失った私達に何を与えてくれる!? お前は確かに解決の手段を提示してきた。世界の問いに答えてきた。だが、私は全世界の感情の代弁者と問う! 全てを返せ、などとは貴様が言うように不可能だ! ならば最低の世界よ!!」

 すぅ、と命刻は勢いよく息を吸い、叩き付けるようにして佐山へと問いかけた。叩き付ける拳がテーブルを叩き、音を立てる中、命刻は問いを発した。


「失った悲しみは癒えない。それによって涙を流す我等の涙をお前は何によって止め、何をこの世界で産みだしてくれるのだ!? そしてそれは本当に、我等の感情を癒してくれるものなのか!?」


 命刻の問いに会議の場が静まり返った。それは誰もが問わず、だが、誰かが代表して問わなければならなかった事。そしてそれはTop-Gだからこそ問う事の出来る問いかけ。全ての損失に対して、新世界はそれを越える新たな何かを作り出していけるのか、と。


「それに対して、Low-Gとしての答えを返すのと同時に、私はこれからTop-G崩壊の真実をここに述べたいと思う」


 何、と会議に参加していた者達から動揺を表す声がした。Top-Gの崩壊の真実。今まではそれがLow-Gが保身の為にTop-Gを崩壊させたというハジの弁がある。だからこそ、Low-Gは非難される側に居たわけだが…。


「Top-Gの崩壊とは、Low-Gによる一方的な制圧劇などではなく、滅びるべくして滅びたのだと私は知った」
「ほぅ? しかし、今までの資料からはLow-Gで概念創造の研究をしていた新庄由起緒がTop-Gに亡命した事により、Low-Gが実質上、概念創造が出来ず、その報復としてTop-GがLow-Gの居場所として受け入れようとしたマイナス概念の情報を改竄したお前の父、佐山浅犠がそうし向けたからだろう?」
「新庄由起緒は欠けているプラス概念の損失分を、今あるものから逆算することすら出来る人物だった。それが可能な人物がマイナス概念の創造が出来なかった? 疑問に思わないかね。更に、新庄由起緒は1つの謎を残している」


 謎? と命刻は佐山の言葉に眉を寄せて問う。あぁ、と佐山は命刻に応えるように頷き。


「Low-Gには、Top-Gには無い3つのものがある、と。鏡面存在である筈なのに、Low-Gだけにあるものがある。その1つは、聖書神話。2つは、バベルの塔。そして最後に―――新庄君だ」
「…新庄だと?」
「そうだ。今、この会議に参加している者達は知っているだろう? 新庄君が異なる、対となる性別をどちらも有している事を。そしてそれは―――矛盾だ。あり得ない。あり得てはならない。だがあり得てしまう。それが何を意味するのかわかるか? それこそがこのLow-Gを存続させているもの…!」


 佐山が腕を振り抜くようにしながら、勢いよくその正体を叫んだ。


「―――矛盾許容の概念だ!!」





    ●





「本来、概念創造などという神の所行は我等、人には不可能だ。だが、Low-Gならば矛盾許容の概念があるが為に可能となってしまう。だからこそ新庄由起緒は去ったのだ。Low-Gの強硬派がそれによって兵器を作り上げぬように。傲慢な神へと居たらぬ為に。
 だが、亡命した先で新庄は求められた。マイナス概念の概念創造を。だがそれを彼女は拒否した。矛盾許容概念には新庄由起夫氏も、私の父も把握しているようだった。だが、それでもTop-Gは滅びた」
「何故だ?」
「それは――君が一番わかっているだろう? 戸田命刻」
「――…あぁ。そうだ。私達が、盟主に相応しい最高のGだと自負していたからだ」
「そうだ。だからこそTop-Gは止まらなかった。だが、その責任をTop-Gのものにしない為に…」
「佐山浅犠が自ら罪を被る為に改竄した資料を送った、と? それは何故だ?」
「―――佐山の姓は悪役を任ずるからだ」


 いいかね? と佐山は前置きをするように告げた。


「私が境に行き、得た情報は、新庄由起緒が概念創造をLow-Gにさせない為にTop-Gへと渡った。そしてそこで新庄由起夫にマイナス概念の創造の為の技術協力にも頷く事は無かった。代わりに彼女は教会を作ろうとしていた。戦うのではなく、欠けた物を、持つものを等しくして同じになっていこう、と。
 だが世界はそれを望まなかった。故に、誰かが痛みを世界に知らしめなければならなかった。滅びという形で。両者が大事なものをそれぞれ守ろうとして。Top-Gは自らの誇りを以て。Low-Gは自らの世界を思って」
「だが、そんな証拠がどこにある? 確かに納得は出来る。だが、明確な証拠はあると癒えるのか?」
「ある。それが―――高町なのはの祖父の不破恭也の存在であり…」


 すっ、と、佐山が隠すように両手を下げる。そうして再度、上げられた両手を露わにした。そこには――――。


「この、ゲオルギウスだ」


 そう。曝された佐山の手に収まっていたのはゲオルギウスだ。―――左右一対の。佐山の両手に収まるその武装に誰もが目を奪われる。


「先日、私は知った。Low-Gの概念戦争のそもそもの発端、異世界の存在を確認した衣笠天恭が―――マイナス概念を暴走させた概念創造施設、ノアを逆封印という手法によって「何もない時代」へと送り防ごうとした際にその余波に巻き込まれ、過去へと遡った私の父、佐山浅犠であるという事を」
「それが、ゲオルギウスが何の証明となるという?」
「片方のゲオルギウスは私の母が持っていた。そしてもう片方のゲオルギウスは衣笠天恭がこの衣笠書庫の奧に封印していた。2つの時代をまたいで存在しているゲオルギウスがその証拠だ」
「それぞれが別の時代に開発された可能性は?」
「無い。それは…高町君の持つ武装、Me-Ssiahと同じく…このゲオルギウスは―――人体をその素材としているからだ」


 沈黙が響き、誰もが息を呑んだ。何、とその言葉の意味をわかる事が出来ず、問いかけを産む声が聞こえた。


「ゲオルギウスはあらゆる概念を増幅し、また破壊する武装だ。だがそれ故にその素材は概念に囚われないものを必要とする。それは何か? それは高町君が実証している」
「…何だ、それは?」
「意志だ。あらゆる概念を統べ、操るのは意志だ。高町君の持つ内臓器官「リンカーコア」は残留思念と呼べるような微弱な世界に散布された意志を吸収し、それを出力と変えている。その器官は概念を吸収し、力とする事も出来る。
 …武神や機竜を思い出して貰えばわかるが、人の意志を機械に込める事は出来る。だが、それは同時に部品に人を持ち要らなければならないという事実だ。そしてゲオルギウスはある人物が部品となっている」
「それは?」
「高町君の持つMe-Ssiahが、教えてくれたよ。ゲオルギウスの部品となったのは…―――新庄由起夫その人だ」


 瞬間、佐山の頭の上に乗っていた獏が両手を広げるように立ち上がった。過去が来る。





     ●





 上昇していくリフト。過去へと呑み込まれた者達はそれをリフトの上から眺めているような形となる。そこには2人の男が居た。一人は佐山浅犠。一人は新庄由起夫だ。佐山浅犠は拳を握りしめながら、腰を床に落としている新庄由起夫を見た。
 由起夫の手は口元に添えられていた。そこからは鮮血が吐かれていた。だがそれでも由起夫の顔には苦痛が無かった。そこには力を抜いたような表情が浮かんでいて。


「…にわか仕込みでは、どうにでもなるものでもないな」
「…マイナス概念にはいつから侵されていた?」


 浅犠の静かな問いかけに由起夫はふっ、と笑みを浮かべる。いつの間にかだ、という投げやりな答えが返ってくる。それに浅犠は明らかに歯を噛み締める。悔しさ故にだろう。握られた拳が震えている。


「…彼女も、か?」
「…彼女に問えば良いだろう? 私が答える義務はない」


 由起夫がそう告げた瞬間だ。上昇するリフトを追い抜くようにして飛翔する光があった。暗い蒼の光だ。浅犠が自然と身構え、その光を睨み付ける。光は由起夫の隣に膝をつくようにして降り立った。現れたのは――不破恭也だ。


「…由起夫さん…」
「…恭也か。…負けたよ」
「…そうか」


 浅犠が恭也の出現に警戒する中、恭也は浅犠へと視線を向けて首を振った。


「俺には、戦う理由がない。俺の目的はもう終わった」
「…どういう意味だ?」
「俺は、由起夫さんと由起緒さんの望みを叶える為に足止めしていたに過ぎない。少しでも、俺なりのやり方で誰かが救えるように」
「…これが、救いだと言うのか…?」


 拳を振るわせながら浅犠は恭也へと問うた。それに、恭也は浅犠から視線を逸らす。問いから逃れるように視線を逸らした恭也を浅犠は見つめ、静かに、そうか、と呟きを零して。
 そんな浅犠を見て、由起夫は、はは、と小さく笑いを零した。すると自然と浅犠と恭也の視線は由起夫へと向けられて。


「面白いな。彼女から聞いていたよりも、君は、随分と感傷的だ」


 そう言いながら由起夫はゆっくりと体を起こした。そうして由起夫が向けた視線の先に浅犠と恭也も視線を送る。そこには無数の武神と機竜、自動人形が収められた格納庫がある。それを鋭い視線で見ながら浅犠は問う。


「これは、ノアの兵員か?」
「否。実際には――新世界のお手伝いだ。全Gを併合したとき、各Gには世界の警備や救助組織、または警軍としての仕事や持ち場を与える事になる。だが、彼等に役職を与えても、その下部組織の人員が足りなくなる。人がいないGも多いからな」
「だから、人員の代用として、または、一般人が参加する手助けの為に、これらの力を?」
「そうだ。…全て、全プラス概念の恩恵を受けた機械達だ。進化もすれば、治癒もする。だが、この力をもって、Low-Gを攻め落とせという案もあった」
「何故、そうしなかった?」
「これは新世界のものだ。――Top-Gは最高のGとしての誇りを持つ。Low-Gという、最低のGとの戦いにこれらを出すことはない。…まぁ、これらを出すよりも世界は傾いてしまった訳だがな」


 自嘲するように由起夫は笑った。すると、由起夫が咳き込む。そこからは夥しい血が溢れ、咄嗟に恭也が由起夫を支えた。恭也に支えられる形で由起夫は何度も咳き込みながら溢れ出す血を抑えようとする。
 その姿に、浅犠は静かに俯き、すまない、と呟いた。すまない、ともう一度呟く浅犠を制するように由起夫は声を上げた。


「私に言うべき台詞ではないし、謝る所もないさ」
「しかし―――」
「試作段階のものを強引に量産したものだが、武神と機竜の数を大小合わせて三千を超え、自動人形は天使型を基礎に万軍を越える。――これがTop-Gの用意していたものだ。君たちの世界が概念を創造出来るならば、私達は全ての技術力を使って世を豊かにする事で対抗しようと、ね」


 浅犠は、由起夫の言葉を聞いて顔をあげた。彼の体を労るように、だが戸惑うように、由起夫の肩へと手を添えた。すまない、と由起夫は言いながらも恭也と浅犠に体を預けて歩き出す。
 3人が向かうのは上昇するリフトの、その奥側へ。浅犠は前を見据えるように顔を上げて。


「案内してくれ。彼女のところに」
「…それは、恭也に頼んでくれ」
「…何?」
「私にはすることがある。そう、佐山浅犠。君を越える事、だ。今、由起緒は君たちの世界を壊さぬようにとマイナス概念の余波をギリギリまで抑えている。その最後の時まで、ね。そして君も、余波で破壊されぬよう、ノアを封じに来た」
「…なら、どうするというのだ?」
「君に出来なかったことをして、未来を護りに行く」


 由起緒の言葉と共にリフトが上昇を止めた。正面には巨大な壁に見える隔壁があり、その向こうにフロアが見える。そこには搬出大気用の小型格納庫がある。恐らくは概念核を収める為のものだろう。
 左手側が艦橋側。対する艦尾側には、壁の半分ほどの大きさの隔壁扉がある。艦尾の扉がリフトが停止するのと同時にゆっくりと開いていく。その奧にあるものを見せ付けるかのように。
 青白い証明が照らされた広い部屋。そこにあるのは床に設けられた1つのハッチと、奧にある射出機らしい白い機械。その機械を見た反応は様々だった。由起緒は淡く微笑み、浅犠は驚きに眉を顰め、恭也は瞳を逸らした。


「これは…ゲオルギウスの鋳造施設!?」
「そうとも、私が独自に作り上げたものだ。条件が1つ整わず、未だゲオルギウスは作り上げられていない。制作には―――人の身が1つ必要だという条件が」


 浅犠は由起夫の襟首を掴み上げ、自分へと振り向かせるようにして彼の瞳を睨み付けた。彼の言葉の意味は、もう嫌でも理解が出来た。だからこそ、浅犠にはそれが許せなかった。


「…彼女はどうなる!?」
「…言ったろう? 私は君に勝つのだ、と」
「!?」
「由起緒は今までの世界に対して救いの音を鳴らす鐘となる。君はこれから世界を護る手になる。ならば私は、これからの世界、そこに起こる竜達の咎を止める為の槍となろう」


 力を抜いた笑みで由起夫は浅犠へと告げる。襟首を掴んだ彼の手を血に濡れた手で振り解くように外して。


「…運切を頼む。君に会えて良かったよ。会いたくなかったが、…だが会えて良かった」
「…っ! 何故、何故、君は止めないっ!?」


 浅犠は不意に由起夫の肩を支える恭也へと視線を向けた。恭也は瞳を伏せたまま、浅犠と視線を合わせないまま。


「それが、俺の望んだ役割だ。佐山浅犠」
「それで良いのか!?」
「あぁ。――そうだ」


 瞳を開き、恭也は真っ直ぐに浅犠を見据える事で告げた。その瞳に浅犠は何を悟ったのか、力無く腕を落とした。俯いて、あ、と声を出すのを噛み殺すように隠し、拳を振るわせた。
 その浅犠に背を向けるようにして由起夫は歩き出した。恭也も、既に彼に手を貸してはいない。ゆっくり、ゆっくりと鋳造施設に近づきながら由起夫は言う。


「憶えていてくれ。必ず、憶えていてくれ。新庄の姓は、佐山の姓をいつまでも、永遠に想い続けていると。それを憶えているならば…永遠に新庄の意志は佐山とともにあるのだと」


 あ、と浅犠の叫びが抑えきれなくなったように伸び出した。その叫びを聞きながら、由起夫は振り向かず言葉を続けた。


「恭也。…君がこれからどうするのか、私にはわからない。だが、私は君の幸いを、願っているよ」
「…由起夫さん。俺はアンタに、そして由起緒さんに救われた。だから俺は、アンタとの約束を、新庄と交わした約束を違えない。御神の姓は…新庄を守護する事を誓う、と」
「…なら、運切をよろしくな。君にも、頼むよ。―――ありがとう、恭也」


 そして、過去がそこで終わった。――しかし、過去は続いた。





    ●





 向かい合う男が2人居た。そこは山奥だった。月夜が照らす中、ススキが広がるその場所で向かい合う男は衣笠天慶、いや、年老いた佐山浅犠と、また同じく年を重ねた恭也であった。


「…もう、いくのかい?」
「…あぁ。限界だ」


 浅犠の問いかけに恭也は力を抜いた笑みで答えた。その髪の色は既に薄く、肌の色の健康的な色ではない。色が無くなっていくかのような恭也が纏う黒衣が更にそれが際だたせている。
 そうか、と浅犠は無くした片腕を撫でるように触ながら。


「…君も、アイツと同じ道を選ぶのか?」
「俺は竜の咎を止める槍なんかにはなれないさ。俺が出来るのは切り開くだけだ。護るために。それが御神であり、不破である俺の選んだ定めだ。御神の姓は新庄を護り、不破の姓は佐山を想う、と」
「…ならば、君は何のためにその身を捧ぐ?」
「…もしも、いつか、俺を継いでくれるこの世界の俺がいてくれるなら…その願いを叶えてくれる力になりたい。そしてソイツが護りたいと思うものを守り通せる為の力に。誰かの救いに、俺はなりたい。護る事も、不完全だった俺が、護って、救える為の力になれるなら、それは幸せだろう?」


 恭也の言葉に、浅犠はそうか、と小さく呟いた。


「…よく、保ったよ。ノアに居た時からもう君もマイナス概念に侵されていたんだろう?」
「…あぁ。だが、俺にはリンカーコアがあった。そこで矛盾許容概念を取り込む事でなんとか抑制してみたいだが…まぁ、それも限界だな」


 それがこの結果だ、とやせ細った腕で髪を撫でながら恭也は言う。それに浅犠は辛そうに眉を歪めて。


「…寂しくなるな」
「…あぁ。すまないな」
「…いいや」


 いいさ、と浅犠は力無く首を振って答える。そうか、と恭也は小さな呟きを零して。
 2人で空を見上げる。満点の星空だ。そこは山奥があるが為に空気が澄み、星の瞬きが美しく見える。それを見つめながら、浅犠は、なぁ、と問うように声をあげて。


「…御言や、運切は、あれから続く世界は幸せになれるかな…?」
「…なれるさ。なる為に俺たちがこうしてここにいる。そして…俺を継いでくれる奴がいるなら、それは俺の偽物だ。だからきっと―――俺の出来なかった事を全て叶えてくれるよ。俺と同じで、でも、俺と逆だから、俺を越えて、俺を従えて行くから」





    ●





 なのははMe-Ssiahが移していた記憶の表示を止めた。ぎゅっ、とその胸の中央でMe-Ssiahを握りしめながらなのはは空を見上げて。
 その隣に立つジェイルはなのはを見つめる。ふぅ、と息を吐いて視線をなのはから空へと向けて。


「…この世界は、面白いね。かつてはTop-Gの対面存在として生まれ、しかし、過去、Top-Gの崩壊の際に原始の時間へと飛ばされたノアによって産み出され、Top-Gを産みだした、子にして母なる矛盾した世界。一度はループし、そして矛盾を抱えながらも未来へと進む世界」
「…その面白い世界を護ろうとして戦い続けてきた人達がいる。今も、戦い続けている人がいる」


 なのはは、振り向いた。そこには佐山が居た。新庄が居た。命刻が居た。高町君、なのはちゃん、なのは、とそれぞれ3人から名前を呼ばれて、うん、となのはは頷いて。


「続けていこう。面白い世界が面白いままであって、このまま、もっと面白くなる為に」


 行こう、となのはは誘うように、誘われるように呟き、佐山達の方へとゆっくりと歩を進めていった。





    ●





 花がある。それは造花だ。それは全竜裁判の決着を示すものだ。世界はどのような答えを望むのか? Low-Gの概念を解放によって作られる新世界か、Top-Gの概念を消失させることによって護られる世界か。
 そのどちらかを定める投票結果を表す花がある。白はLow-Gで、紅はTop-Gに賛同する者達の票が入れられている。白と赤の花は―――均等に12の花を咲かせていた。そう、それが世界の答えだった。
 均衡からの決着を望もう、と。世界は最早、どちらの答えでも受け入れる、と。――Low-GとTop-Gの出す答えを選ぶ為の、最後の全竜交渉を。世界はそう願い、誰もが応えた。





 ――さぁ、決着を望みに行こう。





   

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