次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 18
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 冬の町。その町を行くのは2つの影。それは飛場と美影だ。彼等は飛場の単車を押しながら町を行く。既に時刻は夜。バイクの音は嫌でも耳につくだろう。故に彼等は押して歩いている訳だ。
 飛場がハンドルを握り押して、美影は後ろからサイドカーを押すようにして歩いている。そんな美影を時々気にするように飛場は振り返る。そして決まったように少し眉を寄せて問いかけようとして、やはり何も口にしない。
 美影は特殊な出自の生まれだ。3rd-Gの数少ない人間であり、王族の一員である。3rd-Gは謎の子供の出生率の低下により、年々、その人口を減らしていた。美影はそんな3rd-Gの出生率を改善する為に「進化する自動人形」へと体を移された過去を持つ。
 ここ最近まで彼女の体は自動人形としての側面が強かったが、ご覧の通り人間としての進化を始め、今では歩くぐらいならば一人でも出来るようになり、料理にも手を付けているという。
 それは共に生活し、彼女の傍らにいる者として飛場は喜びを感じていた。だが、喜びを感じるのと同時に言いようの無い寂しさと違和感を感じていたのも事実だった。
 今までは美影は何をするのにも、飛場の存在が傍らにあった。だが、今の美影は飛場を必要としない場面が多くなってきた。それを飛場は嬉しさと同時に違和感を感じて、戸惑っていた。
 先ほどの美影を心配げに見て、何か言いかけてはやめるという行動もそれの現れなのだ。今の美影は一人で何かしようとしている。それを妨げてはならない、と。だからこそ気遣いは過ぎればただの害悪にしかならないと。
 やめてばかりだ。美影に尽くしていた時間が減っていく。それが美影との繋がりを薄くさせているのではないか、と飛場は考えて首を振った。まさか、と。そんな事は無い、と。


(変わろうとしてるんですね。美影さんは)


 新しい自分。新しいことを初めて新しく見えてくる自分。それを変化と呼ぶのだろう。美影は目まぐるしく変化している。自分だけと傍に居た頃と違い、全竜交渉の面々を始めとした多くの人に触れて。
 それは可能性の数々だ。美影には無い、だが美影にも持ち得るかもしれないという可能性の数々。それに触れ、見て、覚え、感じて、美影は変わろうとしているのだろう。
 ならば、と飛場は思う。自分はどうなのだろうか? これからどうすれば良いのだろうか? 自分もまた変わっていかなければならないのだろうか? そうでなければ美影の隣に居る事は出来ないのだろうか?
 思考は巡る。思考に気を取られていただからだろうか、飛場は一瞬、反応が遅れた。最初に気付いたのは美影で、え、と疑問の声を挙げ、そこでようやく飛場も顔を上げられた。そして上げた先に居たのは―――思いがけない人物で。


「…竜美、義姉さん?」
「えぇ。久しぶり。竜司君。ご無沙汰しているわ」


 そこには自分の義姉にして、Top-Gの残党であり、自分の対面存在である竜美が立っていた。
 反射的に飛場は身構えていた。後ろの美影も警戒するように竜美を見た。だが、竜美は構える事なく自然体のまま立っていた。


「争う気はないわ。時期じゃないもの。だけどね、それは遠くないわ」
「…僕は、争う気ないですよ。今も、これからも」
「…どうして?」
「戦う理由が無いじゃないですかっ!!」
「…そう。だから、理由を告げに来たわ。時間がないから」


 そう告げる竜美は笑みを浮かべた。だが飛場は思う。そこにいる竜美の笑顔はまるで、本心から笑っているようには思えなくて。
 …何故、そんなにも泣きそうなのですか、と。声に出したくて、だけど出したら彼女はきっと隠してしまう、だろうと。彼女はきっと泣こうとしない。泣こうとしない理由があるから。
 それは、何となく、もしかしたら彼女の言う戦わなければならない理由なんじゃないか、と思って。


「――Top-Gの崩壊の日、私は一人の敵を殺した。たった一人、されど一人。最初に殺した一人。今でも記憶から離れない人…」


 ぞくり、と飛場は背筋を震えさせた。直感だった。耳を塞げ、と。ここから話す話は自分は聞いてはいけない事なのではない、と。だがそれでも耳を塞ぐ事が出来なかったのは、その理由を知りたかったからという矛盾したもので。


「――飛場竜一。貴方のお父さん…。そう、竜司君。私ね、貴方の仇なんだ」


 そして、飛場は表情を抜け落とした。どこかに置いてしまったかのように飛場は表情を失った。告げられた情報が脳の中に入ってこない。殺した、仇、父、一気に入ってくる単語をようやく噛み砕き、理解出来たとき。


「…嘘だ」
「……」
「…嘘、ですよね? あんな強くてエロかった父さんが殺された? 殺した? 竜美義姉さんが? …嘘だ…嘘だっ!!」


 何でこんなにも自分が否定しているのか飛場にはわからなかった。荒く吐き出した、ひ、と声にならない声と共に吐息を零す。涙が浮かんでくるのがわかった。泣きたい訳じゃない。だが、きっと泣きたいんだろう、と思う。
 だが泣いてしまったらそれは認めてしまう事になるんじゃないか、と飛場は涙を堪えた。そして、見て、見てしまった。気付いて、気付いてしまった。
 竜美は笑っているのだ。それは自分と同じように涙を隠すように笑っているのだと気付いたのは何故なのか。何故、と。何故っ、と。飛場の心は加速して。


「僕と、戦わなきゃいけない理由は…」
「――待ってるわ。竜司君。もう、時間はない。だから…もう少し、我慢するから」
「竜美義姉さんっ!!」
「だから……また会いましょう」


 飛場の問いを遮るように答えて竜美は飛場と美影の横をすり抜けるようにして行ってしまう。待って、と飛場は言いかけて、声が引き攣って出ない事に気付いた。ひっ、と喉を引き攣らせるような声が漏れて、ハンドルを握っている手が尋常じゃない程の力になっている事に気付いた。


「リュージ君…」
「…ひっ……ぁ…っ…」
「……リュージ…くん…」


 あ、と伸びた叫びが飛場の喉から上げられた。ただ、泣きたかった。堪えるように小さく、だがそれでも確かな力が込められた震えた声。零れる涙を拭う事も出来ず、震える体に力を込めて飛場は泣いた。
 その飛場の背に、美影は手を伸ばそうとして、けれど出来ず、唇を噛み締めてようやく彼の手に手を添える事が出来た。だが飛場はそれを意に介さぬまま泣いていた。それが、ただ歯痒くて、寂しくて、怖いと美影は感じた。
 変わっていかなければならないのだろうか。変わらなければ、と急かすように飛場は追い立てられる。理由を得てしまった彼は今は泣く事しか出来なかった。そんな彼に、ただ手を添える事しか出来なかった美影もまた震える事しか出来なかった…。





    ●






「1st、6thは決着は付いた。残るGだが、2ndはその状況から前者の2つのGのように自らの庇護を訴える厳しい。5thはヒオ君を残すのみとなっている。7thもまたこれに準ずる。8thと9thは未交渉。残るは3rd、4th、10th…」
「でも、残ったGの全てが出てくる訳じゃない…」


 ジェイル・スカリエッティの私室。そこのベッドの上に腰を下ろしながら作業机に座り、キーボードをタイプしているジェイルと会話をするのはなのはだ。仕事をする時の癖なのか、ジェイルは作業をしている時は部屋の灯りをつけるのを嫌う。
 だからこそジェイルの私室はパソコンのモニターから零れる灯りのみとなっている。ジェイルのキーボードを叩く音が響き、ほぅ、と言う音が漏れた。


「高町君、2つ、動きがあったよ?」
「何ですか?」
「長田君が飛場君と接触したようだよ。どうやら、彼の父を殺したのは彼女らしいね」
「…もう一つは何ですか?」
「原川君がヒオ君を置いて出て行ったそうだ」
「…原川さんが?」


 なのはが眉を寄せる。恐らく疑問を覚えたのだろう。それは原川とヒオの今に至る関係を知らないからなのだろう。故に、ジェイルは簡単な説明をなのはにした。
 ヒオと5thの関係。5thの全竜交渉の一連の流れ。その中で出会った原川とヒオの関係についてジェイルはなのはに語った。そして恐らく、と前置きを置くようにして。


「大方、ヒオ君に釘を刺したのだろう。幸いな事に彼女は守られるべき立場にある。故に今、Low-G側として立つのは彼女の身を危険に曝すだけさ」
「だから、関わるな、と?」
「ヒオ君はメンタル面に少々難ありだからね…」


 ジェイルの言葉を聞いていたなのはだったが、不意に立ち上がった。目指すのは扉だ。それにジェイルは視線を向ける。


「関わるつもりは無いんじゃなかったかい?」
「えぇ。関わりませんよ。信じてますから。だけど…ジッとしているのが辛くて」


 訓練してきます、と言い残してジェイルの私室を後にしていくなのは。そのなのはの背を見送ってジェイルはふむ、と呟いた。


「…変わらないところは変わらない、か。いや、それがなのは君の本質か。いやはや…本当に憧れるものだね」


 くくっ、と喉を震わせるようにしてジェイルは笑う。そして新たに開いたウィンドゥにはある1つの情報が記されていた。それはまた新たなもう1つの動き…。


「…出雲に境、か。これが最後の過去を巡る旅になるのか」


 そこには佐山と新庄が田宮家を出て、そのまま8th-Gの交渉と新庄由起緒の足跡追う旅に向かったという連絡事項であった。





    ●





 海鳴市、ハラウオン家。暗い室内の中、一人の少女がベッドの中で体を丸めるようにして動きを止めていた。
 息は浅く、その髪には艶が失われ、半ば人形のようにも見える少女の名はフェイト・T・ハラウオン。彼女の瞳は光を移す事無く、ただ暗い部屋を映すのみ。
 彼女は確かに光を失ったと言っても過言ではないのだろう。彼女を救い、導き、共に歩んできた友達を彼女は思いがけぬ形で失ってしまったのだから。そしてその行方も知れず、自分は残された。


「…なのは…」


 わかっている。彼女だけが特別じゃない。自分を思ってくれている人がたくさんいるのをフェイトはわかっている。だが、それでも、それでもなのはが居ないと苦しくて、どうしようもなくなる。
 フェイトにとってなのはという存在はフェイトの心にかなりの存在を置いていたのだ。だからなのはという存在を失った心は一気に欠けて、半ば崩壊へと向かっていたのだ。
 故にフェイトは動かない。繰り返すのは思い出の回想と、後悔の連鎖。このままではいつ自殺してもおかしくないほどまでにフェイトの心は落ち込んでいた。


(――予想通り、と言った所ですか)


 そんな時だ。フェイトの脳裏に誰とも知れぬ声が響いた。え、と思うのは一瞬で、次にフェイトが思ったのは「誰?」という疑問。闇を見つめて反応が無かったフェイトはようやくそこで反応を見せて。
 念話。しかし誰? と疑問に思う。この声の主は自分の知るものではない、と。


(…貴方は、誰ですか…?)
(名乗れません。ただ1つ、フォローはしないとと思いまして)
(…フォロー…?)
(大丈夫。高町なのはは戻ってきますよ)
「えっ!?」


 フェイトは勢いよく身を起こした。すぐに飛び出すように窓へと視線を向けた。だがそこには誰もいない。ただ月が浮かぶ空が見えるだけだ。居ない。だが、でも念話は聞こえていて、確かになのはは帰ってくると伝えてくれて。


(どこに、どこに居るんですか!? 貴方は何を知ってるんですか!? なのははどこに居るんですか!? なのはは無事なんですか!?)
(申し訳ありませんが、ただ帰ってくるとしか言えません。――だから、もう泣いていないでください。高町なのはは望みません。だから、立ち上がってください、フェイト・T・ハラウオン)
(……貴方は…)


 そして、念話が途切れた。あ、とフェイトの呆けた声が漏れ、フェイトはしばらく空を見上げる事しか出来なかった。
 その中、フェイトは見た。空を走る流星を。あ、と声を漏らして流星を見送った後、フェイトはぎゅっ、と胸元に手を置いて、強く握って。


「なのはは…帰ってくる…?」


 それは、希望の言葉。だけど確証も無い言葉。だが、それでもフェイトの心には1つ、響いた言葉がある。
 涙を拭う、拭って、深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。そして勢いよく両手で頬を叩いて瞳を閉じる。自分を落ち着けるようにしてフェイトは息を吐き出して。


「…なのはは、私が泣いたら困ってくれるかな?」


 …きっと、困ってくれるんだろうな。だけど、それは嬉しいけど…。
 嫌だな、と思う。自分は泣いてばかりじゃきっと駄目だ。なのはに頼ってばかりじゃ駄目だ。弱くて、泣き虫で、すぐにふらついてしまう自分だけれども…。


「…なのは…なのはは、今、何してるの…?」


 どこに居るかもわからない親友。だけど、なんとなく想像出来るのは何かに対して一生懸命に、真っ直ぐ向き合っているだろうその姿。
 並びたいな、と思う。その背中に追い付きたいな、とフェイトは思う。自分と向かい合って、助けになってくれたあの時から、彼女と肩を並べたい。友達でいたい、と。


「…頑張らないとね」


 帰ってくる、と。それなら、信じよう。信じられるものじゃないけど、でも、なのははきっとここで足を止めていると喜びはしないだろうから。それは、やっぱり自分も嬉しくはなくて。
 よし、と思うとフェイトの腹から抗議を上げるように腹の虫が鳴いた。しばらく立ち尽くしてフェイトは頬を朱に染めた。そういえば最近、まともにご飯を食べていなかったか、と。
 朝食はもう少ししたら母さんが作ってくれるだろう。あぁ、その前にお風呂にも入ろう、と自分の腕やら髪の匂いを嗅いでフェイトは思う。自覚すると羞恥心が湧いてくる。そうしてようやくフェイトは動き出すのであった。





    ●





「あまり勝手な事をされても困るのだがな…」
「これぐらい良いでしょう?」


 海鳴の空を行く影がある。それは金髪の女性と、それに並ぶようにして飛翔するトーレだ。トーレの顔にはやや呆れの顔があったが、すぐにふぅ、と溜息を吐き出して首を振った。


「主人と良い、お前と良い…何だかんだ言って強情だな」
「主従というのはきっと似るものなんですよ」
「それはペットの話だろう」


 トーレはやはり呆れたように女性へと告げる。女性はそれに、はは、と小さく笑い声を漏らしたが、すぐに前を向いて。


「私なりの誓い、です」
「誓い?」
「えぇ。必ず…主は彼女の、彼女達の元へ帰らせる、と。それが私の誓い。だから私はマスターを守ります。それが、この体を得た意義であり、変わらぬ私の願いでもありますから」
「…その再確認、と言った所か?」


 えぇ、と女性は笑って返す。そうか、とトーレも笑って返して。2人は前を見据える。もうすぐ夜は明けようとしている。その光を見つめながら女性とトーレは目を細める。


「…行くぞ、もう少しで私達の出番も来る」
「えぇ、決着を付けにいきましょう。居場所を、守るために」
「あぁ、そうだな…――」





 ――レイジングハート。





     ●





 闇に紛れる影があった。もう少しで日が明けるだろう、という時刻。その姿を隠すように闇の中に向かうのは鋼鉄の巨人だ。
 鋼鉄の巨人が去った後には惨たらしい血の後が残る。そして足音は響く。1つ、2つ、いや、もはや数えるのも億劫な程の鋼鉄の巨人は歩いていく。ただ1つの目的を求めて。


『モウスコシダ』
『コロスノダ』
『コロサナケレバ』
『コロソウ』


 呟かれる言葉は1つの意志を以て纏められ、闇に紛れていく。世界は着実に決着への道を歩み始めていた…。





 

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