次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
■■■スポンサーサイト
--/--/-- --スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 16
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 なのはが使者を務めたことによってUCATも大きく動きを見せるようになった。他国のUCATの反応が気になる所ではあったが、今はそれを押してでも進めるべき事があると佐山の主張からそれぞれがそれぞれの為に動き出した…。





    ●





 佐山と新庄はある家を訪れていた。その家は田宮家と良い、佐山が幼少の頃、育てられた佐山の家と言える場所である。ここには佐山の母である論命もまた過ごしていた部屋がある。そこは今は開かずの間として閉ざされているという。
 2人は、今日、その部屋を開けに来たのだ。田宮家は佐山達の住まう秋川市付近を治める自警集団を勤めている。簡単に言えばヤ○ザな訳だが。そんな家の住人もまた常人ならざる人が住んでいる訳で…。


「いらっしゃい。若、切ちゃん」
「やぁ、ご無沙汰しているよ。遼子」
「お久しぶりです。遼子さん」


 佐山と新庄を迎え入れたのは遼子と呼ばれた女性だった。和服を着こなしたその姿はとても魅力的に思える。浮かべる笑みも邪気の無い愛嬌のあるものだ。和服美人、と言っても過言ではないだろう。
 だが、この遼子という女性は只者ではない。どのように只者ではないのかは、佐山が「遼子を家族と呼ぶには自分はまだまだ未熟」と言う程の人物なのだ。
 さて、そんな遼子と呼ばれる女性に案内されながら2人は進む。時折、遼子が和服の裾を踏んで倒れそうになったりという事態もありつつも、3人は「開かずの間」とされた部屋へと迫っていた。


「でも、遼子さん驚きだなっ。久しぶりに来た若が、いきなり昔の部屋を開けて欲しいなんて言い出すなんて。それに切ちゃんも一緒だなんて」


 遼子は嬉しそうに、無邪気に笑いながら言う。切、と呼ばれた新庄はやや照れたような笑みを浮かべている。彼女の切、という呼び方は佐山と新庄がまだ出会った頃、新庄は自らの体の秘密である「時刻によって性別が入れ替わる」という奇特な体質を隠す為に「運切」という名を別けて名乗っていた頃の名残だ。
 今でも、概念戦争に関わりのない遼子には新庄は「切」として通っている。それに対して僅かながら罪悪感を感じている訳だが、それを振り切るようにして新庄は前に出る。


「もう、見てもいいだろうと思ったのだよ遼子。そこに踏み込ませてくれた理由の1つは、新庄君との生活もあってね」
「そうなんだ」


 佐山の言葉に遼子が嬉しそうに言う。新庄は思い出す。遼子はかつて、母が死んだ佐山に対して慰める為に一緒に寝た事があるのだという。遼子は死んだ佐山の父に恋していた。それ故の結果だったと遼子が以前語っていたことを新庄は思い出す。
 その結果、今の佐山を形成する要因の1つにもなったという事を新庄は知っている。佐山の母がいつか佐山に語った「いつか、何か出来る人になれば良いね」という言葉。それが佐山を悪役へと至らせた理由。遼子との諍い、自分が望まれていないのではと言う不安。そして、今、彼が得た場所。


 ――なのはちゃん。


 思わず新庄はその名を呼んだ。自分を除けばきっと佐山が一番に関心を置いている人。佐山と同じでありながら、また別の道を行った彼女。佐山と同じであるが故に世界に大きな影響を与える。
 だがそれは佐山にとって良い影響を及ぼしていると新庄は知っている。それを時に嫉妬する事もある自分に対して自己嫌悪を覚えたりもしたりするが、佐山となのはは自分のような感情は無いだろう、と思っている。


 ――あれはどちらかと言えば戦友みたいな、競い合うみたいな、同種みたいな…。


「ところで切ちゃん」
「ふぇ!? は、はい!?」
「あれ? どうしたの?」
「え、いや、その、考え事してて! だ、大丈夫です! そ、それで何ですか?」
「? そう? …まぁ、いいや。切ちゃん、お母さん見つかったんだって?」
「…はい。新庄由起緒って言います」
「…へぇ、そうなんだぁ」


 遼子の声には、どこか懐かしむようなそんな声があった。普段は無邪気で天然が入った遼子は時としてその雰囲気を大きく変える時がある。新庄はそれを肌で感じ取っていた。


「やっぱりなぁ…。何となく、そんな気がしたの」
「…遼子さん」


 遼子は佐山の両親を知っている。――そしてそれは、かつては共にいた由起緒の事を知っているという事を意味していると。


「いい? 切ちゃん? 尊秋多学院の校定の西側にね? 卒業生が手形のオブジェを残してるの。…そこに由起緒さんの手形もあるんだけどねっ? ――知ってた?」
「い、いえ。知りませんでした…。……教えてくれて有り難う、遼子さん」
「いいのいいの。罪滅ぼしみたいなものだから。遼子さんも尊秋多の卒業生じゃないのに何でそんな事知ってるんだかね。それに、いろいろな事情とは無関係に切ちゃんに良くしてあげたいから。――だから、行こうか。この奧に。遼子さんが案内してあげる。――少しでも知ってる遼子さんが」


 段々と廊下が狭くなっていく。佐山が少し横に身をずらして3人は奧へと進んでいく。新庄の位置はちょうど遼子と視線をあわせられる位置にある。不意に、遼子が新庄と視線を合わせてきた。その眉はやや下げられているのに新庄は気付く。


「いい? 切ちゃん。ずっと昔ね? 遼子さん、すごく嫌な子だったときがあるの。自分が相手にされていないことを逆恨みして、自分を良くしようともせず、プライドから恥ずかしがって相手を追いかけようともせず、ただただ他人を隠れて怨んだときがね。――そんな風にしてたら、皆、周りからいなくなっちゃった」


 それは、普段の遼子とは結びつかない口調だった。悔やむような、それでいて突き放されたような口調で語る遼子の過去。それを語る遼子の口調がそうなるのは、それが突き放された過去だったからだろうか。


「そ、それは遼子さんのせいじゃないよ! 関東大震災で…」
「それでも、遼子さんは悔やむんだなぁ。…どうして最善の遼子さんを見せることが出来なかったのかって。だけどまぁ、そんな思いすらも、恨みの後から出てきたもんなんだけどね。…由起緒さんがいなければ、私達…、浅犠さんと論命さんと私なんかの、家族みたいな付き合いって変わらなかったんだろうなぁ、って」


 その言い方に新庄は想像する。それってつまり、と。過去、佐山の父である浅犠の隣に居たのは…。


「あの…僕のお母さんと、佐山君のお父さん達って、…どういう関係だったんですか?」
「由起緒さんと浅犠さんの手形オブジェは2つ並んでるの。…論命さんhば1つ離れてね。――自身を持って、若。浅犠さんは論命さんを最後には選んだものっ。そりゃ由起緒さんがどっかに行って、結婚報告を送ってきた後だったけど、でも、遼子さんはこう思ってるもの。―――浅犠さんは、残り物みたいに人を選ぶことはないって。遼子さんがそう思ってるくらいなんだから、若ならもっと思って良いよね?」


 新庄は遼子の言葉を受ける佐山へと視線を向けた。佐山の手は左胸へと添えられている。狭心症は彼の体に軋みを与える。だがその軋みを押さえ込むようにしながらも佐山は真っ直ぐに遼子を見る。
 それがまるで返答したかのようだった。きっと佐山はそうした形で遼子に伝え、遼子もそれをしっかりとわかっているのだろう。少し羨ましいな、と言う思いが新庄の胸に宿る。


「切ちゃんは安心してね?」
「え?」
「遼子さんは、切ちゃんと若における由起緒さんいはならないから。昔、若が子供だった頃にそうしようとして、無理だって解ったから。責任とか、面倒だもんねっ」
「…色々と苦労をかけるね。遼子」


 遼子の言葉に佐山は静かに返す。遼子はいいのいいの、と手を振る。彼女の告げた言葉の為だろうか。その言葉がどうしても自分を納得させるかのような言葉にしか新庄には聞こえなかった。
 だが、それを敢えて問うような事はしない。だから、新庄はまだやや震えを帯びていた佐山の手を握るように手を伸ばした。狭心症を抑え付けていた名残のある手を握りしめながら、3人は進んでいく。
 そうして、彼等が辿り着いた先。そこは屋敷の離れにある一部屋。廊下の突き当たり一杯に木の引き戸があり、その前に鍵束を握った遼子が立って振り返る。彼女の普段は浮かべられている笑みは消え、そこには真剣に2人を見つめる瞳があって。


「どー…、してもこのドアの奧を見たいの? 若も切ちゃんも」
「どう答えたら見せてくれるかね?」


 佐山の問いに、遼子は答えない。今度は笑みを浮かべて、ただ沈黙する。新庄は思わず不安を抱く。まさか開けてはくれないのだろうか、と。そんな不安を過ぎった新庄は思わず佐山を見た。
 佐山は真っ直ぐに遼子を見つめている。そんな中、遼子から不意に視線を逸らして伏せた佐山は新庄に向けてこう告げた。


「新庄君。いいかね? ――ここは新庄君の出番なのだよ」
「…ぇ?」


 どうして、と佐山の言葉に新庄の心の中に浮かんだのがまずそれだった。そうして佐山と遼子の顔を交互に見合わせて、そして新庄は思い出す。思い出して、それがまるでパズルのように組み上がっていく。
 どうして、が、まさか、に変わる。思いの変化と共に新庄は言葉を口にする。真っ直ぐと遼子を見据えて。


「――開けて、そして見せて遼子さん。佐山君の許可はもう取ってあるんだから」
「もう取ってある? …切ちゃん、まるで若より偉いみたいだし、まるでこの屋敷の持ち主みたいな言い方するんだね?」
「こういう言い方は嫌だし、今の嫌みったらしい言い方は僕を試しているのだと信じてるからね? 遼子さん。――来たよ。新庄の姓を継ぐ者が。…そう、遼子さんが僕のお母さんに一歩引いたのも、このせいかもしれないよね」


 それは、何故ならば。


「――新庄要あってこその田宮家だったんだから」


 新庄は一息と共に更に言葉を続けた。
 それは過去のお話だ。まだ概念戦争が起きていた頃、つまり戦時中の最中の話だ。遼子の先祖である女性が居た。名を田宮僚という。彼女は戦火に巻き込まれた際、ある一人の男に避難用のバスを譲られ、その命を救われたという。
 その男こそ――新庄要。佐山薫の親友にして、新庄の曾祖父。


「…開けて遼子さん。田宮家の当主が気遣いで封じている過去を、佐山の当主は痛みを感じてても見たいと思っていて、新庄の当主も開け放ちたいと思っているから。…今まで有り難う。新庄という姓を、大事に思ってくれていて」
「――それは、至極当然のことにございます」


 凜、と。遼子が今までの態度を更に変え、着物の袖を左右に払う。風を払うように袖を払えば彼女は身を低く、正座をする。ドアの前で遼子は座した身を一度正して、深く、深く土下座した。


「新庄の先代様は私ども田宮家の由来を知っておられませんでした。後々、どこかへ去った後で佐山翁から聞いたようではありました。ゆえに…田宮家先代、先々代以来、新庄様と向き合うのは初めてになります。――何なりとご命令を、新庄家当主の御方」





    ●





 夜の闇に沈む尊秋多学院。未だ学祭の準備が行われているのか、ところどころ光が灯っている。だが、その世界は偽りであり、だが正しくもあり、やはり偽りである。そこには1つの概念空間が展開されていた。概念空間では震えが世界を揺るがす。
 響く音。それが全ての震えの原因。震えの原因たるのは槌だ。半ば鉄塊と呼ぶべきそれを振り回すのは黒肌の禿頭の男、名をロベルト・ボルドマンという。UCATの一因であり、6th-Gの帰化二世である。その彼の手にある槌の名は「ヴィーマ」。その破壊力は並ではない。彼が槌を打ち付けた先には痛々しいまでの破壊の跡しか残らない。
 そのボルドマンに対峙するのはV-Swを構える出雲だ。出雲の出で立ちは学生姿のままだ。装甲も何もない。代わりにあるのは趙が残した肉体強化や加速の為の符が所々に貼り付けられている。
 出雲の健在の姿を見据えて、ボルドマンは地を蹴った。地を蹴るのと同時に彼は声を張り上げるようにして叫んだ。


「――勝負だ! 六十年前の絶望と、二年前の決着を再びつけ直そう!!」


 破砕する。何もかもが破砕され、飛沫となって吹き飛ぶ。出雲はその飛沫を身に受けながらも回避する。そして破砕されかけた大地を踏みしめて前へと出る。お、と発音から始まり伸びてゆく声は咆哮。V-Swがヴィーマと衝突し、金属音を奏でる。


「そんなにこのV-Swが欲しいのかよ? 人が年末祭の準備してんの邪魔してまで!」
「当たり前だっ!! 6th-Gの決定だ。…1ヶ月前の「軍」突入で解ったこのLow-Gの罪と真実に対し、6th-Gは二年前の交渉の再度執行要求を決定した!!」
「それで二年前と同じように戦うってのか? 丁寧に言うけど短絡じゃねぇですかよ!?」


 出雲がV-Swを上段から振り下ろすようにボルドマンへと向ける。それに対して打ち上げるようにしてボルドマンがヴィーマを振り下ろす。衝撃が走り、周囲に再び衝撃が吹き抜ける。
 出雲は思い出す。まだ全竜交渉が始まる前の話だ。その前に交渉を終えていた6th-G。彼等が恭順する経緯となった戦いに出雲は参加していた。6th-Gは10th-G残党と協力してG-SpとV-Swを強奪しようとしたが、結局、自分と風見の妨害に遭い、自決用の試作型ヴリトラも破壊された事でLow-Gに恭順した。
 当時のボルドマンとも出雲は戦った記憶がある。だからこそわかるのだ。今、目の前に相対しているボルドマンは本気なのだと言う事を。


「Low-Gは、Top-Gという重大な大前提を隠して我々と交渉した!! 二年前の決着と条約は、その大前提が間違っていた! 貴様等Low-Gは我々の庇護者や協力者ではなく、その振りをした大罪者だった!! 我々は大罪者には準じぬ!! 大罪者は大罪者として交渉の場につき直すといい!!」
「ったく、よぉっ! Top-Gが態度を表明したからって慌てすぎじゃねぇのかこのハゲがっ!! だからもう一度って事かよ! あの時の戦いってのを!!」
「全居留地が、その閉鎖の奧で何を考えているか解るか!? このまま大罪者によって不自由な生活を強いられるより、…改めて戦争被害者として訴えた方が得だと!!」


 打撃が再び来る。出雲はそれを押し留めるようにV-Swで防御する。今度はボルドマンの猛烈なラッシュだ。出雲を責め立てるように槌を振り回しながらボルドマンは叫ぶ。


「六十年前、我々はLow-Gに滅ぼされ、多くの仲間達が服従した。それは、もはやこの世界しか住む場所がないということと、もはや戦争を避けるべきだという思いからだった。――また戦争を行えば、この世界と、何も知らずに住む人々を失うことになると。だが、貴様等は、この世界よりもいい世界があることを隠し! 更にはその世界を滅ぼしたことまで隠した! …もしもそれを知っていたならば!!」
「知っていたら、どうなってたって言うんだよっ!!」
「我等は戦う事を止めなかっただろう!! 大罪者に拾われるくらいならば滅びを望むのが6th-Gの心意気! 我等の世界の概念が大罪者を守るために使われるのなど、見ていきたくない…!!」


 ボルドマンが叫ぶ。その声には憤りがあった。あぁ、確かに許せぬだろう。納得がいかぬだろう。だからこそ彼は戦う。それは理解しよう。
 だが、彼の叫びに対してまた憤りを感じる者がいた。吠える。彼は吠えた。そう、今正にボルドマンと応対している彼は腹の底から吠えるように声を挙げてV-Swを振り抜いた。ヴィーマを握っていたボルドマンの手に衝撃が来る。


「おい、ボルドマン。てめぇ、軍の襲撃時の事を覚えてるか?」
「何?」
「ふざけないでくださいってよぉっ!! 叫んだガキがいただろうっ!!」


 出雲の速度が跳ね上がる。何故、とボルドマンが疑問に思う。だが体は咄嗟に槌の柄を短く持ち、コンパクトに振るう事で対処する。V-Swは第二形態へと変じ、加速用の符は腕へと貼り付けられている。それによって動作を高速させているのだ。
 ちぃ、とボルドマンは舌打ちする。その中で出雲は叫んだ。大地をしっかりと両足で踏みしめて振り抜くように大剣を横に凪ぐ。


「俺は難しい事はわかんねぇけどよぉっ!! だけどよぉっ、アイツの言った事が、そうなんじゃねぇのかよっ!!」
「っ、どういう、意味だっ!!」
「認めるぜボルドマン。俺たちが悪かった。俺たちの世界がアンタの世界を滅ぼしたさ。だけどな、俺たちは、それでも生きてぇんだよっ!!」


 出雲の叫びと共に振り抜かれた一閃はボルドマンの両手を痺れさせる。どこにそんな力があるのか、とボルドマンが歯噛みする。加速用の符によって出雲の速度は跳ね上がる。再度、次の攻撃の動作に移りながら出雲は更に叫ぶ。


「復讐したきゃ勝手にしろ! 死にたきゃ勝手に死ねっ! でも、言ってやるぜハゲッ!! 俺は、テメェが嫌いじゃないんだぜっ!!」
「ッ!?」
「だから―――くだんねぇ事に傲っていつまでも後ろ向きになってんじゃねぇぞクソハゲがぁぁああああああっっ!!!!」


 打撃が行った。V-Swとヴィーマが正面からぶつかり合う。その衝撃によって長い間、衝撃に曝されていた出雲とボルドマンの両手からそれぞれの武器が落ちた。
 ヴィーマが地に落ちて飛沫が上げられる。まるで出雲とボルドマンを遮るかのように。そしてボルドマンは見た。打ち上げられたV-Swがゆっくりと自分の方に向かって落ちてくるのを。
 ボルドマンは、無意識に手を伸ばしていた。求めるように、だ。2年前、仲間達と共に欲して求めた世界。そして手に入れる事が叶わなかった世界。それが、今、目の前にある。
 そして、ボルドマンは掴んだ。――だが、ボルドマンがそれを持ち上げる事は叶わなかった。出雲が軽々と振り回していたはずの大剣はまるで信じられないような重量を自分に与えてくるのだ。


「なっ…?」
「6th-Gの概念核の意志は、まだ俺の事を主人だと思ってくれているんだよ。――ボルドマンよぉ、6thの概念核は6th-Gが大好きなんだよ」
「…なら、何故…!?」


 出雲の言葉に疑問をボルドマンは叫ぶ。ならば何故、V-Swはこんなにも重い。自分ではまるで持たれる事を拒絶されているようで。


「お前等の思考は心中で終わり。二年前からそうだ。そして今や、都合悪いことあったら横に逃げようとしてやがる。だがよ、6th-Gの破壊と再生ってのは――死んで終わりとか、横に逃げて誤魔化すことなのか?」
「――――」
「でも二年前はまだ死のうってつもりがあったわな。しかし今やそれもねぇ。二年前なら死んでは駄目だとV-Swが力を貸したかもしれねぇが、今のアンタ等にゃ力を貸すわけもねぇ」
「…それは、二年前、自決しようとした我等を救ったのは…」
「さてね。それは自分で考えろや。…ついでに言っておくと、あの時、俺を連れ出してくれたのは千里だぞ?」


 まるで自慢するかのように出雲は口の端を吊り上げてボルドマンへと告げて。


「俺は千里と生きる。将来設計はバッチリだ。俺の妄想だけどな。だけどよ、俺はその未来を生きる。世界と死ぬつもりもねぇ。悪いところは直して、変えていくんだよ。変わらなくて駄目なら、変わって行かなきゃいけねぇんだよ。ハゲ」


 ぐっ、と出雲は拳を握るのをボルドマン半ば放心して見ていた。そして、出雲が拳を振り上げて――。


「ガキでもそうしてるんだ。だったら大人の俺達がやらなくてどうするんだよ、ボルドマンよ。アイツも――なのはも、そうしてるんだぜ」


 ――拳が振り抜かれた。頬に衝撃が来てボルドマンは吹っ飛んだ。そして手からV-Swが抜けた感触があった。重さが消えた手を宙に彷徨わせながらボルドマンは思う。


(それが、6th-Gのやり方、か)


 自分はこのまま消えたくないと思った。Low-Gに帰化してしまえば自分たちの世界も、何もかもが消えてしまう、と。
 だが、それは違うのだな、とボルドマンは思った。それはきっと、伝えられるもので、消えてしまうものではなく、1つになっていくものなのだろう。
 それは目には見えないかもしれないが、だが、どこかで確かに息づいているものなのだろう。――あの少女が、全ての罪と罰に向かいながらも立ち塞がった姿をボルドマンは思い出す。
 あぁ、確かに、大人げないな。地に仰向けで叩き付けられたボルドマンの顔には苦笑とも取れるような笑みが浮かんでいた。





 

スポンサーサイト
トラックバック(0)+ +コメント(0)
リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 17 ≪ BACK ≪ HOME ≫ NEXT ≫ リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 15

管理者にだけ表示を許可する
HOME
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
ブログ内検索
リンク
カテゴリー
最近のコメント

 
 
 
 
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。