次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 14
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
「――さて、一段落ついた所で良いかね? 2人とも」


 なのははMe-Ssiahを回収し、命刻もまた刀を収めている所にジェイルが声をかける。命刻となのはの視線は自然とジェイルへと向く。ジェイルはいつものどこか胡散臭いような微笑を浮かべながら腕を組んでいる。


「件の武神の件についてだが――私の推測が正しいならば厄介な存在だぞ?」
「…どういう事ですか?」
「武神の肩に名と思わしき漢字が記されていたね? あれは、蚩尤と読むのだよ」
「シユウ?」
「中国神話に登場する神ですわ。獣身で銅の頭に鉄の額を持ち、また四目六臂で人の身体に牛の頭と蹄を持つとか、頭に角があるなどと言われていますわね。砂や石や鉄を喰らい、超能力を持っていたと伝承が残ってますわ」


 なのはの疑問の声に答えたのはクアットロだ。指をぴん、と立てて得意げに説明している。それに捕捉を付け加えるように説明を引き継いだのはウーノだった。


「そして、蚩尤にはこのような伝承があります。―― 同じ姿をした兄弟が80人程いたと、と」
「…それって」
「同じ姿の武神が複数体。ならばその伝承を象っていると見るべきだろう。そして命刻君。先ほどの話を聞いていると、その武神は人を捕食していたのだろう?」
「……あぁ」
「つまり、かつての3rd-Gと同じだよ。――武神の部品として人間を捕食しているのだろうよ。その武神はね。伝承通りなら80人。伝承通りの数でなくても、部品として喰われるのは確定している」


 な、と声を漏らしたのはなのはだ。真っ先に心に浮かぶのは嫌悪感だ。そして次に許容出来ない感情が広がっていく。噛み締めた歯が鈍い音を立てて、誰もがなのはの怒気を感じ取った。


「…その目的はあまりにもハッキリしているだろう。――理解しているだろう? なのは君」
「…私を、殺す為ですか?」
「君は以前、恐らく王・偉を敗北させたのだろう? まぁ、その時の戦闘についてはトーレ達から報告を受けているから経緯を知っている訳なのだが…」


 そこでジェイルは言葉を切ってなのはを見つめる。それはまるでなのはに「どうする?」とでも問うようにも思える。なのはは暫し、答えを口にする事はなかった。何かに堪えるように俯いたまま拳を握りしめる。
 どれだけそうしていただろうか。沈黙を破る為になのはは動き出す。その瞳に揺るぎのない光を宿しながら。そしてなのはは答える。自らの答えを。


「――終わらせます。御神の因縁を。それが私に託された役目だし…それに、放っておけない。このままアレを放っておいてその存在がUCATにバレたらTop-Gの立場が悪くなる」
「高町なのは…お前…」
「どんな理由があってもTop-Gの人間が虐殺をしているだなんて知れたら結局それはTop-Gに対する心象を悪くするしかないし、それを行わせたLow-GひいてはUCATに怨みが募る。だから、全部私が持っていきます」


 それは凜とした声で告げた決意。だから、となのはは呟きを零して。


「…でもいずれ、きっと佐山さん達の耳にも届く。だから…―――」





    ●





 風が吹いている。そこは山の中の森だった。坂を削ってただ屋根をつけたような建物。そこは「軍」の拠点の1つ。そこにはUCATとの戦闘に敗走し、未だ捕らえられていない「軍」の残党が幾人か集まっていた。
 そこに足を踏み入れる存在がいた。命刻だ。彼女は悠然とした足取りで進んでゆく。そこにはなのはと出会う前の彼女の姿はない。そんな命刻の前に姿を見せたのは赤と青と白で彩られた機竜と白の巨人。
 機竜と、そしてその機竜の背に乗ってこちらに気付いたかのように視線を向けてくる女性に命刻は、ふっ、と笑みを浮かべた。


「久しぶり。竜美」
「えぇ、久しぶりね、命刻。元気になったみたいね」
「見ていたのか?」
「えぇ。見ていたわ。でも、見ていただけ。で? どうする?」
「どうする、とは?」
「ハジ様がいなくなった以上、「軍」の長は貴方よ。私はそう思ってる」
「―――」
「私は性分じゃない。アレックスじゃ自由が利かない。詩乃が居ない。運切は敵側。ならばTop-Gを背負うのは貴方よ。命刻」


 竜美の問いかけに命刻は息を呑んだ。その動作を観察するように竜美は見る。そこには今まで、命刻には感じられなかった気配があった。そう、それはきっと昂ぶるもの。身の底から湧いてくるような感情。
 決めたのね、と竜美は思った。決めたのだと悟ったとき、竜美は心の底から笑みを浮かべた。それに答えるように命刻は顔を上げた。そこにはやはり、竜美が今まで見たことのない命刻の顔があって。


「なら、好都合だ。竜美。アレックス。協力してくれるか?」
「えぇ。何を?」
『我が輩に何を望む?』
「答えと、終わりと、始まりと。それがどんな物になるか私にはわからない。私達の望むものなのか、私の望むものなのか。――それとも、UCATが望むものなのか。私にはわからないけれど…」


 ふぅ、と。命刻は息を吐き出して。


「前に、進むための時間は今からでも遅くないんだ。だから、私は今から歩こうと思う。走っていきたいんだ。そして―――詩乃に会いに行こう。答えの先、始まった新しい世界で。私は、そこで詩乃に会いたいんだ」


 だから―――。


「だから手伝ってくれ。竜美、アレックス。あの日、失ってしまったものを取り返すつもりで。それは決して手に戻らないもので、凄く悲しくて、自分一人じゃ支えきれないものだけど。だから――私達なら、きっとそれ以上のものを得られると思うんだ」


 願うのだ。命刻は、願う。それは一人では届かないものだと教えられたから。それは一人では得られないものだと理解したから。だけども、それでも、きっとそれは自分が何よりも望める、幸いなものなのだろう、と。
 詩乃がいて、竜美がいて、アレックスがいて。そして――運切もいる。両親はもう居ない。あの世界は、故郷はもう無いけれど、良く似た世界がある。違うけれど、同じ物がある。それは慰めにしかならないけれど、だから思い出が大切になってくれる。
 思い出はただ自分を軋ませる。痛いよ、と。悲しいよ、と。だけどだから伝わって欲しい。お前達が奪ったのはそんなもので、それを得ているお前達は幸せなのだからと。だから私達の悲しみをわかってくれよ、と。
 だから、と。護りに行きたいのだ、と。だから、と。知らしめてやりたいのだ、と。だって私の世界は―――そう、正に盟主に相応しい世界だったんだから、と。私達の両親が作ろうとした世界はそんなにも輝いていたものだったんだと。


「そうして積み重ねていけば、いつか誰かが答えてくれる」


 そう、彼女が言ってくれた。そして彼女は実際に応えてくれた。
 その時の胸の震えを命刻は忘れられない。叫びたくなって、泣きたくなって、だけど心の底から笑い出せるような曖昧で、ちぐはぐで、矛盾が篭もっている答え。だけどそれは自らが感じた1つの答え。


「世界を揺るがしに行こう。私達の世界を壊したこの世界に罪を突き付けて、そして、全てを受け継ぐ世界が―――最高も、最良も越えていけるような究極の世界になるように」


 そう。


「私の感情は――今、それを望むんだ。理屈とか何も関係なしに、私は、そんな世界が欲しいんだ」


 だから。


「だから、私に力を貸してくれ。私と一緒に戦ってくれないか?」


 彼女は問うた。
 風が髪を靡かせる。風の吹く音はざわめきを呼び起こす。


「えぇ、勿論よ」
『共に戦おう、命刻』


 答える声は2つ。


「…言うようになったじゃねぇか。命刻。今のお前なら手貸してやろうと思うぜ?」


 続くように聞こえたのはテュポーンとアレックスの整備を行っていた老主任の声だ。「軍」の自動人形の整備も彼が手がけている。命刻にとっては頼りになる目上の人の一人で。その人が手を貸してくれると言ってくれた。


「俺も!」
「なら、俺もだ!」
「じゃあ、俺もだっ!!」


 それは、3つ、4つ、いや、もっと増えていく。と答える声は連声する。命刻の問いに答える声は重なり、重なって続いていく。了解、と、応答を示して。その意志は命刻と共にあると告げるように。
 あぁ、と命刻は答える。再度、あぁ、と声を震わせて命刻は答える。あぁ、と全身を振るわせて命刻は強く答える。


「――ありがとう、皆」


 不意に、命刻は詩乃、と声なき呟きを紡ぐ。
 私は、もう大丈夫だ。だから、きっとお前も大丈夫なんだろう、と。だから――次会う時は2人とも新しい私達なんだろう、と。それはきっと、とても素晴らしい事なんだろうな、と。





    ●





『――というわけで、こっちは上手く纏まったよ。なのは』
「うん、わかったよ。ありがとう命刻さん」
『良いさ。――礼だと思って受け取ってくれ。それじゃあ、クリスマス前には会おう』
「…うん、それまで元気で」


 ぴっ、と。なのはは通信機の通信を切った。使い終わった通信機を傍に置いた。不意になのは周囲を見回す。そこは地球には見られない光景。そこは「ミッドチルダ」。なのはは今、ミッドチルダにいる。
 ミッドチルダと言っても管理局などとは一切関わりのない―――非合法の研究施設。そこになのはがいる理由。それは至って簡単だ。その研究施設の主が他ならぬ彼なのだから。
その彼がいるだろう部屋を目指してなのはは歩く。
 自動ドアがスライドし、その部屋の中央で指の動きが最早残像が出来ている勢いでキーボードを叩いている狂喜の顔を浮かべたジェイルへとなのはは近づいていく。ジェイルはなのはに気付いたのか、キーボードを叩く指を止める。


「…ジェイルさん。命刻さんからの連絡が来ましたよ」
「そうか。なら…計画は予定通りに?」
「えぇ。…準備は出来てますか?」
「あぁ。―――さて、世界の終末まで残す時間は2週間。行くのかね?」
「えぇ。決着を。それぞれの決着を、私の望む形を得るために」





    ●





 高町なのはからの連絡が音沙汰なくなってから約1ヶ月の時が流れていた。佐山達は学園祭の準備とUCATの雑務に追われる生活を続けていた。その間にUCATには大きな動きがあった。
 まず第1に各Gが全竜交渉の正否を巡って、それぞれの居留地に閉じこもってしまった事。第2に各国のUCATが日本UCATに責任問題を迫っているという事だ。
 これによって各国UCATとの協力体制が取れず、日本UCATは米国UCATの協力を得て復興に当たっていた。その状況下では佐山達は当然身動きが取れずにいた。本来ならばすぐにでも8th-Gと全竜交渉と、新庄の母である由起緒の過去を追いたかったのだが、それも叶わなかった。
 ただ時間だけが過ぎてゆく。そんな彼等の前に彼女が再び現れたとき、事態は大きく動き出す…。


 その日、佐山はUCAT本部にいて今までの資料を纏めていた。少しでも手がかりを得るためだ。あの日、なのはから得た情報によって明らかになったもう片方のゲオルギウスの在処。だがその鍵を開く為の材料が足らず、結局は放置されている。
 それを開けるための情報が手元に無いのか、佐山は今までの情報を検証していたのだ。それを手伝っているのは新庄だ。新庄は手に持っていたレポートを一度机の上に置いて。


「…なのはちゃん、なかなか帰ってこないねぇ」
「そうだね。何か手こずっているのかもしれないね」
「…無事だと良いけど」
「無事だろうさ。彼女ならね」


 新庄が佐山の返答に何かを言おうとして、結局唇を閉ざして何も言わず、別のレポートへと手を伸ばした。そんな時だった。佐山と新庄がいる部屋にノックと共に8号がやってくるのは。侍従服を揺らせながら彼女は佐山へと視線を向けて。


「佐山様! 大変です!!」
「何事かね? 8号君?」
「高町なのはが帰還しました。――Top-Gの暫定代表、戸田命刻からの親書を預かっているそうです」





    ●





『 全竜交渉部隊交渉役、佐山御言にTop-G暫定代表、戸田命刻は要求する。
 世界崩壊時刻である12月24日に備えて、その前に全G代表を集めての会議を開催する為の場を用意する事。そこでLow-Gの裁判会議を開きたい。
そこで全世界の意志を1つに統一したい。Top-Gは先ほどの戦闘の際にも告げたように「マイナス概念の活性化に対して全概念を消失させ、各GがUCATの支配を逃れることで自由な新世界を生きること」を望む。
 会議開催の為の対価としてTop-Gは可能な限りの情報をそちらに提供し、その妨害を許しはしない事をここに戸田命刻の名に誓う。Top-Gは逃げも隠れもしない。だが、私達はTop-Gの意志を継ぎ、「全てのGが共存出来る」事を望む。無論、Low-Gにもだ。
。そして私達、Top-Gが交渉役の相手として選ぶのは全竜交渉部隊交渉役、佐山御言であり、それ以外の者の交渉は取り付けない。
 世界に数々の思惑がある事から我等は姿を明かす事はしないが、その使者として高町なのはに託す事とする。
   戸田 命刻 』


 佐山はその手紙を読み終え、そっと封を閉じた。その手紙を丁重に仕舞ってから佐山はなのはへと視線を向けた。なのはは淡い笑みを浮かべて佐山の前に座っている。佐山の隣には新庄が居て、その後ろには全竜交渉の面々がいる。


「…さて、なるほど。親書の内容は理解したよ。高町君」
「えぇ。で? その返答は?」
「――快諾しよう。これは私としても望む方向だ。そこで世界の答えを得ようじゃないか」
「…そうですか。良かった」


 なのははホッ、としたように笑みを浮かべた。だが安堵を浮かべるのはなのはだけではなかった。佐山達もまた安堵していた。これで相手が正式に自分たちと認めた以上、他国のUCATと言えど妨害は難しくなってくるだろう。
 交渉相手に全竜交渉部隊を選ぶというのは当然の帰結だ。それは今まで彼等が過去を追って来た人物であり、相対してきた当事者なのだから。だからこそそれを情報としてしか知らぬ他のUCATに任せる事をしないとTop-Gが自ら告げたのだ。
 そこでもしも他国のUCATがTop-Gの存在を抹消などと言う動きを見せた場合、それこそ各Gはそれを認めないだろう。結局待つのは世界の滅びだ。だからこそ、全竜交渉部隊が動くしかないし、それを認めざるを得ないだろう。
 もしも抹消を望むならば全Gとの戦争になるだろう。例え物量で上だったとしても質が違う。決して勝利は得られないだろう。――犠牲は大きいだろうが。それでも世界さえ救ってしまえば概念核の利益は無くなる。争う意味がなくなるのだ。


「…まぁ、そもそも、概念核の利権を得ても、それももうすぐ解放にせよ、対消滅させるにしろ、意味のないような事もするんですけどね」
「だけども国はそれでも利益を求める。国という生き物はそういうものなんだよ。高町君」
「厄介なものですね。でも――それすら越えていくのが全竜交渉部隊でしょう? 国なんて枠組みは小さすぎる。スケールが違うんですよね」
「そういう事だ」


 はは、と笑う佐山となのは。その笑いに皆の笑いも自然と浮かんでくる。それは未来に見いだせた希望の一筋だった。
 皆は笑う。だが、佐山は笑いながらもその視線をなのはへと向けていた。そして誰にも気付かれぬように佐山は溜息を吐くのであった。





    ●





「これで良かったのかい?」
「えぇ」


 UCATの廊下を歩きながらなのはとジェイルは言葉を交わす。UCATの空気は慌ただしく動いているように思えた。それもそうだろう、なのはがもたらしたTop-Gの親書によって正式に交渉役として定められたのだから。
 だからこそ世界の滅びに関しての再検証を行わなければならなくなったからだ。だから皆が慌てて動き出している。その人の動きの流れを見ながらなのははふぅ、と一息を吐く。


「時計の針を早める、か。Top-Gが正式に交渉の態度を示したことで―――他のGも黙っていられなくなるだろうね。だからきっと彼等は来るだろう。再交渉の為にね」
「緊張して動きが取れなくなると言うのなら、だったらその緊張を解決させてあげれば良い。ただ、それだけの事です。そうすれば動くことが出来る。――そうすれば、目を逸らす事が出来ますから」


 そうしてなのはが足を向けた先、そこは以前、なのはが訪れた場所。以前は別の人と出会う為にやってきた場所だったが、今の目的はまた別の人と出会う為だ。
 こんこん、とノックをする。その音に気付いたのか、その部屋の主は来訪者にこう声をかけた。


「ん? どちら様かな?」
「どうも。ハジさん。高町なのはです。貴方に聞きたい事があって来ました。――お時間頂けますか?」


 軍の総大将、ハジがそこに居た。彼は眼帯に隠されていない瞳でなのはを興味深そうに見つめるのであった。





 


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