次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 13
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 その空気はひたすらにまで重かった。なのはと命刻。正面に向かい合うように座る2人の間に流れるは重い。思わず息苦しい、と皆が思ってしまう程までにその空気は重かったのだ。
 なのはの隣にはジェイルが座り、逆隣にはクアットロ、ドゥーエと座っており、ジェイルの隣にはウーノ、トーレ、チンクと続く。更にドゥーエの隣では犬霊であるシロが寝そべっている。
 沈黙がただ重い時間が流れるだがそのままではいられない。そう思ったのは、なのはか、命刻か、或いは両方か。不意に顔を上げて声を挙げる。互いの視線が向き合い、まず最初に口を開いたのはなのはだった。何を言えば良いだろう、と悩むかのように唇が動き、言葉が紡ぐ。


「…お久しぶり、ですかね?」
「…久しぶり、という程、時間を置いたか? …まぁ、良い。それより…」
「?」
「何故、私を助けた?」


 命刻の問いかけになのはは一瞬、目を瞬きさせる。それから特に間を置く事無くなのははさも当たり前のように命刻へと告げる。


「だって、殺されそうだったし」
「…いや、あのな? 私はお前の敵だぞ?」
「敵だから殺さなきゃいけないんですか?」
「…お前…」
「別に命刻さんが弱いとか、相手にならない、とかそういうのじゃなくて、私はただ死んで欲しくないって思ったから助けただけですよ」


 何でもない、と言うようになのはは告げる。そのなのはの態度に命刻は思わず唖然とし、はぁ、と溜息を吐き出した。力を抜くような吐き方だ。疲れたような、呆れたような顔をして命刻はなのはを見る。


「…今、私がお前に刃を向けないとでも?」
「向けるつもりならどうぞ。全力で叩き潰しますけど」
「……つくづく、変な奴だな。お前は…」


 だが、と命刻はその呟きを心の中で零す。だが、その在り方はきっと強い。強者の在り方なのだろう。他者を気にせず、自らの在り方を突き進めていけるその姿は。それに命刻は羨望を覚えてしまう。自分などとは違うのだ、と思わされてしまう。


「…それで? 私をどうするつもりだ?」


 命刻は軽く開き直りにも近い気持ちでなのはに問うた。彼女はUCAT側の人間だ。先ほども言ったとおり、本来であれば敵対している間柄だ。更に相手は複数人。こちらは一人。抗いようがない。特に、一度敗北している相手を前にするとだ。
 命刻の問いかけに皆の視線がなのはへと集う。つまりは命刻の処遇はなのはに委ねられたと言う意志の表れだ。なのはは皆の視線が自分に集まった事に気付いているのか、気付いていないのか、ゆっくりと瞳を伏せて。


「…どうしたら良いんですかね?」
「…は?」
「いや、そりゃ私は確かにUCATに協力している身ではありますけど…でも、今のところ、実際Low-Gがしてきた事を考えるとTop-Gの方が正しい、って思う訳ですし。それに今、UCATはごたごたしてますから、なんというか面倒くさくなりそうですし…」


 すぅ、となのはは目を細めて。


「それに、厄介事が起きてますしね」
「厄介事? …さっきの武神の事か? お前はアレが何か知っているのか?」
「命刻さんこそ、心当たりありませんか? Top-Gの生き残りで、不破・御神家に怨みのある人って」
「…な…ちょ、ちょっと待て! あの武神はTop-Gの生き残りが作った…!?」


 命刻が明らかに驚いたような表情で立ち上がってなのはを見る。なのははそんな命刻をただ静かに見つめ返す。暫し沈黙していた命刻だったが、ふと腰を下ろして両手を握り合わせて。


「…どういう事なのか、説明してくれないか?」
「…わかりました」


 命刻の問いかけになのはは静かに語り出した。自分と「龍」の関係。御神と不破に纏わる概念戦争関係の話。自分と不破恭也の関係。知りうる限りの事を話した。そのなのはの話を命刻は黙って聞いていた。
 そしてなのはの話が終わる。なのはの話を聞き終えた命刻は、そうか、と小さく呟きを零す。俯いた彼女の顔からはその表情が伺えない。だが、どこか気落ちしているように聞こえるのはなのはの錯覚なのか。
 そんななのはの疑問は解消される事はなく、命刻は顔を上げてやや躊躇うように口にした。


「…心当たりが無い訳じゃない。…「軍」がまだ纏まっていなかった時期があってな。いわゆる過激派という存在が居た訳だが…その過激派の筆頭と言えたのが王・偉(ワン・ウェイ)という男で、SPの仕事を主にしていた一族で、御神家、不破家とは半ば商売敵というか、険悪な仲だったのは知っているが……」
「だけど、過激派は佐山さんのお母さんを襲撃した後、ハジさんが処罰したんですよね?」
「あぁ。…悪いが、そこら辺は私はよく知らない。義父さんが王・偉をどうしたのかなんて聞いた事がなかったからな」


 命刻の返答になのははそうですか、と呟くように返す。2人の間に沈黙の時間が流れる。
その沈黙を破ったのはなのはだ。命刻さん、となのはは命刻の名を呼ぶ。命刻は自らの名を呼ばれた事で顔をあげてなのはと再び視線を交わし合う。


「…命刻さん。ハジさんが言ってましてたよね? ハジさんはLow-Gの人も大事だと思ってる、って」
「…あぁ」
「命刻さんは、さ。…Low-Gの人が憎い? …Top-Gの人でありながらもLow-Gを守ろうとしたお爺ちゃんを許せない?」
「……憎いのかな?」
「…ねぇ、もう一回聞かせて貰って良い? 命刻さんは何のために戦うの?」


 なのはの問いに命刻は答える術が無い。何のために戦うのか、その戦うべき理由を命刻は失ってしまっている。だから刃に力は無い。無力だ。無力な故に彼女に為せる事は何一つとしてない。
 そんな命刻の考えが顔に出ていたのだろうか。なのはは不意に、もう一度命刻の名を呼んだ。命刻はそのなのはの声に先ほどとは違う雰囲気を感じた。なのはは、ジッ、と自分を見ていた。真っ直ぐに澄んだ瞳だ。


「ねぇ、命刻さん」
「…な、何だ?」
「…どうして、答えてくれないの? ねぇ、命刻さん、あの時、私と刀を合わせたよね? 互いに譲れないものがあったから、戦わなきゃいけなかったんだよね? じゃあ、今はもう無いの?」
「…そ、それは…」
「じゃあ、もう私は命刻さんと戦わなくて良いの?」


 何故、と命刻は思わずそう言いかけた言葉を呑み込んだ。不意に、なのはが下がれ、と言うようにジェイル達に手を振る。なのはの意図を察したのか、ジェイル達はなのはと命刻から距離を取った。シロもまた距離を取っている。
 何故、と命刻は訳がわからない。だが、訳がわからないでも体は反応する。なのはがMe-Ssiahを起動して命刻へと斬りかかった。命刻は咄嗟に袱紗に収まっていた刀を抜く。同時に甲高い音が鳴り、鍔迫り合いが始まる。


「な、きゅ、急に何を…!?」
「何故。そう思う?」
「…っ…!?」
「私だって思うよ。何故、って。何故戦わなきゃいけないのか、って。何故ってわからないんだよ。私は命刻さんじゃない、だから命刻さんが何を考えているのかわからない。だからわかろうと思う。ねぇ、命刻さん。きっとね、そうやって理解していけるんだと思う。自分も、相手の事も。ねぇ、命刻さん。私ね、何故って思うよ? 命刻さんは、私と戦いたいの?」


 戦いたいの? という言葉に命刻は思う。戦いたいのだろうか? と。


「命刻さんは何を望むの?」


 鍔迫り合いから斬り合いへ。
 何を望むの? という言葉に命刻は思う。何を望みたいのか? と。


「命刻さんは何が欲しいの?」


 甲高い金属音が連続して響く。手に衝撃が走る。
 何が欲しいの? という言葉に命刻は思う。何が欲しかったのか? と。
 衝撃が来る。押されていると理解する。何故押されているのだろうか? 考える。考えて、命刻はごく当たり前の答えに辿り着く。それはきっと、なのはと戦う理由を見いだせずにいるからだ。
 刀を向ける理由はある。敵だから。詩乃を傷付けたから。だけど、それは自分が無力だったからで。


「1つ、聞きたい」
「何?」
「詩乃は、元気か?」
「うん、元気だよ」


 そうか、と命刻は答える。剣舞は続いていく。やや命刻はやはり押されている。刀に乗せる力が鈍い。対して、なのはが振るう刀の勢いは留まらない。何故なのか、と命刻は考える。考えて、何となくそれに気づき始める。


「私は、詩乃を守りたかった。詩乃の居場所を用意してやりたかったんだ」
「そう」


 上段から来た小太刀を打ち払えば、回転するかのように逆側の小太刀が迫る。


「私は臆病者だから。だから、戦う事しか出来ないんだ」
「そう」


 それをなんとか受け止めて、今度は受け止めたまま、柄で迫ってきた小太刀を柄を狙って肘鉄を打つ。なのはは咄嗟に手を止めて拳で受ける。彼女の顔が苦悶に歪んだ。


「だから、私は戦うんだ。でも――もう、戦う理由はないのかな?」
「じゃあ、どうしたいんですか?」
「どうしたい?」


 足が来た。桜色の光を放っている翼がはためく。いつぞやの蹴りを思い出す。手を上に上げて防ぐ。骨が折れるのではないか、と言わんばかりの衝撃が命刻を襲う。


「私は、わからないんだ」
「わからないんですか」


 じゃあ、となのはは呟く。再び剣舞が始まる中、なのはの言葉は紡がれる。


「私は思うんです。きっと貴方は優しい。戦いに向いてない」
「そうかな?」
「私は思うんです。きっと貴方はそれでも戦える人なんだと」
「そうかな?」
「私は思うんです。だけどやっぱり貴方は弱い人なんだと」
「そうだよ」
「私は思うんです。だから貴方は前に進めない人なんだと」
「そうだよ…」
「だから、私はこう言います」


 交差させるように小太刀が重なり、命刻へと迫る。命刻は振り下ろすようにして刀で受ける。


「だから、きっと貴方は望めば強くなれると」
「なれないよ」
「きっと貴方は誰かに優しくする事が出来る、と」
「出来ないよ、私には出来ないよ」
「傷付ける事を恐れる人は、きっと誰かの痛みを理解してあげられるから」
「私には詩乃の痛みがわからなかった!」
「自分の痛みにしか目を向けていない貴方に―――わかるもんかっ!!」


 命刻の刀に強い衝撃が走った。半ば勢いだけでなのはは命刻の刀を押し切った。迫る、なのはが迫る。命刻は受ける。下がる、受けて、下がって。


「言葉にしようとしましたか!? 詩乃さんに伝えようとしましたか!? 自分の痛みを伝えましたか!? わからない、わからない!! わからない事ばっかりじゃ怖いでしょう!? じゃあ、どうしてわかってやろうとしなかったんですか!!」
「―――」
「わかってって。わかってって! 言うだけじゃわからないんですよ! だから、言葉にしていきます! 言葉で届かないなら、別の何かでも良い!!」


 だから、となのはは吐き出すように声を荒らげ、踏み込みと共に命刻の刀に小太刀を振り下ろす。命刻の手には今までにない衝撃が走り、命刻の顔が苦痛に歪む。


「だから、問います!」
「くぁ…っ!」
「貴方は詩乃さんに戦わされていたんですか!?」
「!?」


 なっ、と声が出かけて小太刀を受け止める為に歯を噛み締め堪える。


「詩乃さんが貴方に戦わせなければならなかったんですか!? 詩乃さんはそんなに弱くて、手を引いてあげなければならなかったんですか!?」
「あぐっ…!」
「そんな詩乃さんは、最低な人だって言う事で良いですか!? 救われるべきもない、愚かな人!! それが、田宮詩乃って言う人間ですか!?」
「―――違うッ!!」


 今度は、命刻が返した。打ち払うようになのはの小太刀を押し返し、踏み込む。


「詩乃が私を戦わせた訳じゃない!」
「いいえ、詩乃さんが弱かったから貴方が戦わなきゃいけなかった!!」
「違う!!」
「いいえ、違わない!! 実際に貴方は戦った! 誰のため? 詩乃さんの居場所の為! 詩乃さんを守るため!! 詩乃さんは貴方を利用していた!!」
「違うっ!! 詩乃は、そんな奴じゃないっ!!」
「じゃあ、答えてみてくださいっ!! 否定してみてくださいよっ!!」


 なのはが強く踏み込み。それに応えるかのように命刻もまた前へ出た。


「詩乃は、優しい奴だ! 気遣いも出来るし、料理も出来る、優しくて、私なんかと違う!! だから私は戦ったんだ!! そんな詩乃が不等な扱いを受けるのは間違いだろう!?」
「それは、本当に?」
「そうだ! そもそも、私達の世界もそうだ!! 私達の世界は何か悪い事をしたのか!? 私達の世界は全ての世界を受け入れようとしたのに!! なのに、何で滅ぼされなきゃいけなかったんだ!!」


 もし、あのままだったら自分はどんな生活を送っていたんだろう? 普通に学校に通って、詩乃と、竜美と、アレックスと楽しく生活していたかもしれない。あぁ、もしかしたらそこに佐山御言などと言った面々もいたのかもしれない。
 それは、きっと幸せな世界だったのだろう。自分が今、こんな辛い思いをすることもなく、こんな事に悩む事も無かった筈。なのに、現実としてTop-Gはもう滅びてしまって無くて、その未来はもう無い。あり得ない。


「それは、わかりませんっ! でも…それを求めようとしている人達がいます!!」
「全竜交渉部隊の事か!?」
「命刻さん。私達に、いつも正解だけの人生なんて無いんですよ!! だって、絶対間違えるんだ!! 知らないから!! だって私達が知れる事なんて、本当に些細な事だから!!」


 だから、となのはは踏み込む。鍔迫り合いが再び。刃を押し合いながらなのはは命刻を見て。


「だけど、それを積み重ねればそれが広がっていく! 誰かに届く!! 誰かに届けよう、って思わなくても、知ろうと思えば、それは絶対何かに影響を与えるよ!! だから、命刻さんっ!!」
「っ、くぁ…っ!?」
「諦めるなんて……本当に最後まで取っておいた方が良いと思います!! じゃないと勿体ないじゃないですか!! 諦めて、諦めて、諦めてっ!! そんなの、何か残せますか!? 後悔だけじゃないですかっ!! 後悔しかなくても、後悔だけなんて嫌だっ!! そんなの、本当に何も無いじゃないですか!!」
「…っ…!!」
「ねぇ命刻さん…教えて欲しいという私の思いは、どうすれば貴方に届きますか? 知って欲しいという思いはどうすれば貴方に届きますか!? 何で示せば良いですか!? 私は私が望む限り、貴方に届けるからっ!!」


 鍔迫り合いで、なのはは押し込む。命刻が蹈鞴を踏む瞬間になのはは命刻の刀を握る手に小太刀の柄を叩き込む。溜まらず命刻は刀を握っていた指を解く。骨が折れたのを命刻は感じて顔を顰めた。


「私は! 戦う事が好きな訳じゃない! 誰かを傷付けるのも好んでやってる訳じゃない!!」
「―――あぁ、私もそうだ!」
「でも、私譲りたくないものがあるんです!!」
「あぁ、私にもあったよっ!!」
「じゃあ!!」
「あぁっ!!」


 命刻の折れた指は再生される。なのはと命刻が一度、距離を取った。そして再び互いに同時に踏み込み行く。


「同じですねっ!!」
「同じだったなっ!!」


 刀と小太刀が交錯し、


「命刻さん! 皆、きっと同じですよね!!」
「きっと、同じだったんだなっ!!」
「だから! ねぇ、命刻さんっ!!」
「何だっ!?」


 言葉と言葉が交わされ、


「私のお爺ちゃんも、佐山さんのお父さん達も、命刻さんのお父さん達も、同じかな!!」
「―――きっと、そうだろうなっ!!」


 意志と意志が通じ、


「私も、誰か傷付けるのって怖いですよ!!」
「お前も、同じなのか?」
「同じじゃないですか?」
「いいや。―――きっと、同じだっ!!」


 2人の顔には、笑みが浮かんだ。そして、小太刀と刀が同時に宙を舞った。それは音もなく大地へと突き刺さって、向かい合うなのはと命刻は。


「知りたいって、思って良いですか?」
「あぁ。だから、私も良いか?」
「えぇ。知り合いましょう。私はそうしたいと思います。命刻さんは?」
「きっとそうすれば良い。私はそう思う」
「そうすれば、どうなりますか?」
「そうなれば、きっと」
「笑える世界がありますかね?」
「うん。だって――もう、笑ってる」


 そして、命刻は体をくの字へと曲げた。込み上げてくるのは笑いだった。腹の底から吐き出してしまうような笑い声だった。


「なぁ、高町なのは」
「何ですか?」
「きっと―――簡単なんだな」
「いいえ。―――貴方が馬鹿なだけです」


 そうか、と。命刻は笑った。笑って、笑って、涙を流すまで笑っていた。


「なぁ、高町なのは」
「何ですか?」
「私、馬鹿だな」
「えぇ。馬鹿です」
「うん、馬鹿だ」


 何が一人なんだろう? 一人にさせてくれない人がいてくれたじゃないか。その人はどうしてここにいる? 自分が詩乃を守ろうとしてくれたから? いいや、きっと存在しているその時からなのだろう。
 それはあまりにも単純明快な事実。だけど、今、ようやくにして命刻が得たシンプルな結末。


「…私は、私の理由が欲しかったんだな。戦う為の理由が」
「…理由は、ありますか?」
「あぁ」


 私は、と声が漏れて。


「私は、もっと、望める人になりたいな」
「どうして?」
「それは、望めるお前が生き生きしてるから。そうすれば、私ももっと生き生きしてられるだろうか? 詩乃に嫌われる事なんて無かったのかな…?」
「…ほら、後悔してる。だから言ってるでしょ。やろうよ。後悔してしまったけど、きっとまだ間に合うものはあるから」


 地味に生きたいと思っていた。それはそうすれば煩わしい思いをしなくて済むと思っていた。いっそ空気のような存在になりたかったのかもしれない、と命刻は漠然と思う。自分は何も出来ない。それは、まだ変わらない。
 だけど――――変えたいと願った。望める場所にいて、望める事をして。そして…望めるように追われるように。


「…ねぇ、命刻さん?」
「…何だ?」
「私は、命刻さんにもっと解って欲しい」


 ニッコリと。満面の笑顔でなのはは告げた。あぁ、と命刻は思う。話をしよう、と。それだけで自分は言葉を交わすという意志を示す事が出来る。示された道。だけど、それを今度は自分で示せるようになれれば。


「…そう、だな。…あぁ、そうだ。分かり合おう。少しずつでも、きっと、いいや、私は…そうしたいんだ」


 そうすれば…私は少しでも変われるだろうか、と。
 そうしたら…今度は詩乃を泣かせるような事はないだろうか、と。
 …あぁ、そうか。私は、詩乃が泣くのが嫌だったんだ。だって、詩乃は…。


「…笑った方が、可愛いからな」
「? 何がですか?」
「詩乃が、だよ」
「…あぁ、なるほど。それは、そうですね」


 同意が来れば頷いて。そう、笑って欲しかったんだ。そうすれば、自分もまた笑っていられるような気がするから。
 そんな当たり前で、そんなごく普通で、そんな簡単な事を今日という日に命刻はようやく理解出来たのかも知れない。
 なぁ、詩乃。命刻は呼びかける。きっとこの声は届かない。だけど、届いて欲しいと思うから口ずさむ。


「私は、お前の事を、もっと知らなきゃいけないんだな。じゃないと…何したって、守れないんだな」


 通ずるという事を。繋げていくという事を。分かり合っていく事を。他者に怯えて、自らの意志を伝えようとしなかった。他者の考えを本当の意味で理解しようとしなかった。そんな臆病な自分を変える一歩。


「じゃあ――――お話しようか?」


 彼女が導いてくれた、そしてこれから、きっと自分の足で選んで行ける未来の選択肢なのだろう、と。命刻は、小さく笑って頷いた。





 

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