次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 12
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 町外れの校外。寂れた橋の上。その橋に項垂れるようにして寄りかかる少女が一人。少女の名は戸田命刻。傍らには犬霊であるシロを置いて彼女はどうしようもなく空を仰いだ。仰ぎながら彼女は考える。どうして自分はここにいるのだろうか、と。
 高町なのはの姿を見つけた瞬間、思わずカッとなって彼女の後を追った。追いつける筈もないのに、息を切らせて追ったのは何故なのだろうか? 改めて考えてみる。さぁ、と吹く風が命刻の髪を優しく撫でて。


「…わからないのか」


 自分はどうしたいのか。自分は何を望んでいるのか。何を望みたいのか。どのような答えが自分には与えるべきなのか命刻は惑う。それは与えられぬ者。自ら選ばなければならないもの。
 だが、命刻の確固たるものだった信念は敗北を覚えた。守るべき者を失って、負け犬の烙印を押されてしまった。いや、まだ負けた訳ではない。だが導いてくれた人を失ったのは確かで。だからこそ、命刻は不安なのだろう。


『私、は…それでも…踏みにじってでも護りたいものがあるんです…その為に、覚悟は、決めてるんですっ!!』


 それはあの日、高町なのはが叫んだ言葉。何かを踏みにじってでも守りたいと思うもの。命刻には確かにあった。例え何を犠牲にしようとも得なければならない答えだった。そうであるのが正しいと思ってきた。
 だが、あの日、それは崩れおちた。行き着くのは敗北感。まだ負けたわけではない。だが命刻の心は確かに敗北したのだ。それはハジを倒した自分の偽物であり、自分を打ち破った高町なのはに。


「…なぁ、シロ。私はどうすれば良いんだろうな…? 私は、何のために戦えば良いんだろう…?」


 何のために。命刻はわからない。今まで、誰かに頼った理由で戦っていたから。今、一人になって命刻は何のために戦えば良いのかわからない。自分がどうしたいのかもわからず、何を得たいのかもわからず。
 はぁ、と吐息を吐き出して命刻は空を仰いでいた視線を降ろして橋の下の河へと視線を向ける。流れゆく河の姿は変わらない。ただ水は流れてゆく。ひらり、と1つの木の葉が水流にのまれて、流されて消えていった。
 私も、あの木の葉のように流された末に消えてしまうのだろうか、とどうしようもない思考が溢れてしまう。はぁ、と吐き出す息は重苦しい。
 そんな時だ。命刻は不意に聞こえた声に顔を上げた。耳を澄ませて命刻はその声を聞き取ろうとする。


 ――これは…悲鳴!?





    ●





 もう季節は冬だ。この時期、この周辺は滝などが凍り付き、名所とも呼ばれる場所が多数見られる。それを目当てとした観光客だった。ただそれだけだった。だから彼等は訳がわからなかった。
 目の前で、友達だった男が一人倒れている。彼は真っ赤に染まっていた。仰向けにひっくり返り、大の字で倒れている。腹から中心にまるで食いつぶされたように肉体が「無い」。
 当然だ。だって、何故ならば…――彼の腸は目の前の「化け物」に喰われてしまったのだから。
 あまりの光景に声が出ない。くちゃり、くちゃりと音が響く。ぽたり、ぽたりと涎のように垂れていくのは友だった男の鮮血。その真っ赤に染まる口が付いている顔はまるで人のようだが、あまりにも大きい。
 体は人のようにも思えるが、獣とも取れるような体つきをしている。だがあくまでそう見えるだけでその姿は鋼鉄で出来ていて、ロボットとも見れる。だからこそ現実感がない。あぁ、自分は夢を見ているのだろう、と。
 そして―――男の意識は頭から口に呑まれて消えた。くちゃり、くちゃりと肉を咀嚼する音がただ響く。


「…なん、だ…あれは…?」


 その姿を命刻は見ていた。悲鳴を聞きつけて命刻が見たのは惨劇。まさに虐殺と言うべきその光景に吐き気を覚える。それを堪えながらも虐殺者へと視線を向ける。そこには武神と思わしき巨体がいる。
 くちゃり、くちゃりと肉を咀嚼しているその姿は醜悪だ。何だ、あれはと命刻は恐怖する。赤黒い装甲はまるで血の色を連想させて、醜悪さを加速させている。あれは何だ? あれは知らない? あれは武神なのか? だが自身が知る武神とはあまりにも異なりすぎている。
 命刻の思考は巡る。だが、その命刻が思考を止めたのは、その巨体が自分に気付いて振り返ったからだ。


「―――ッ!?」


 巨体が迫る。命刻を喰らわんとその口を大きく開く。命刻は咄嗟にバックステップを踏み、後方へと下がる。その瞬間、命刻がいた場所は一気に「喰われた」。岩、土、その全てを関係なく咀嚼する音が響く。
 あ、と命刻は声を漏らす。怖い、と。この存在は畏怖に値する。見たこともない。こんな残虐で、醜悪な敵なんて見たことがない。勝てる? 勝てない? いや、それ以前の問題だ。自分には、誰もいなくて。
 逃げろ、と本能が囁いた。自身の刀では武神は切れない。再生するのも喰われてしまえば意味がない。いや、捕まってしまえば、永遠に喰われる事を繰り返される? あのように何度も咀嚼されて、自分は―――。


「アァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!?!?」


 命刻は走った。命刻は駆け抜ける。命刻は再生の概念を司る賢石を埋め込まれている。故に死ににくい。いや、死なないとも言える。何故ならば命刻が得た賢石は彼女の両親が作り出した限りなく「不死」に近い概念なのだから。
 だから命刻は死をあまり恐れていない。どうせ死なないのだから。それが命刻の極限の力を出すのに躊躇させる要因になっていたのは確か。だが、今、彼女は死よりも恐ろしい未来を予想した。それはそう、正に地獄。
 だから命刻は何よりも、今までの自分よりも明らかに早く駆け抜けた。駆けて、駆けて。
は、は、は、と息が何度も短く漏れる。肺が締め付けられるように苦しい。だがそれでも走る。武神の巨体ならば探すのが困難になるように手近にあった森の中へと逃げ込んで。
 がさがさ、と木々を駆け抜けて命刻は進む。やがて音がそれだけになる。命刻は近くの木に手を添えて辺りを見渡し、耳を澄ませる。迫ってくる音はない。逃げられた? 疑問の後、間をおいても気配は感じられない。
 ほっ、と思わず息を吐いた。不意に辺りを見渡したらシロがいない。置いてきてしまったのか? と考えて、再び辺りを見渡そうとした時に命刻の眼前に絶望が降り立った。
 1つ、2つ、3つ…。合計で三体。それは、まったく同じ姿をした先ほどの武神だった。それは命刻を取り囲むようにして森を踏み荒らしていく。命刻が茫然とする中、武神達はその口を大きく開いた。まるで笑っているかのようだ。


「…ぁ…や……」


 がくり、と腰が抜ける。何のために戦えばよい? 何のためになら自分は戦える? 自分は弱いのに。誰かがいないと駄目なのに。ほら、こんなにも弱い。私は弱いんだ。だから、だから。


「…や…義父さん…詩乃…竜美…アレックス……だ、誰か…っ…や、やだっ…!」


 ぎょろり、と武神の瞳が彼女を見つめて。最早、悲鳴にならない声が漏れようとして―――。





『――Divine Buster Extension!!』





 武神の一体を桜色の閃光の奔流が呑み込んだ。命刻は、あ、と小さく声を漏らして空を見上げた。そこには桜色の翼をはためかせ、白の装甲服を模したバリアジャケットを展開したあの少女―高町なのは―の姿があった。





    ●





 なのははレイジングハートを構えながら上空から命刻を囲む武神を睨み付ける。デザインはまったく同じ。だが、良く見れば肩に記されているナンバーが違う。だがナンバーの他に書かれている漢字が同一な事から、おそらくは同一規格の量産型。
 しかし、あんなデザインの武神をなのはは見たことが無ければ、命刻を襲っている所を見るからに「軍」のものではない事はわかる。そもそも、なのはがここに駆けつけてこれたのは妙な概念反応を捕らえ、ジェイル達に先行してこの場に来たからだ。
 そして来てみれば命刻が襲われている光景。なのはは迷い無く武神の一体をディバインバスターで破壊する。地に倒れ付した武神は半身を砕かれ、地に転がっている。だが残った2体の武神がなのはを見上げた瞬間、武神の口から声が挙げられた。


『タカマチナノハ!』
『ミカミノムスメ!』
『ミツケタ!』
『ミツケタ!』
『ミツケタミツケタ!』
『コロスコロスコロセコロセコロセクラエコロセクラエクラクラクラエッ!!』
『ミツミツケミツケタコロスミツミツケタ!!』


 その声に、なのはは目を見開かせる。まさか、と口の中から声が出かかり、脳裏に一人の男の姿が浮かぶ。


『タカマチ、ナノハァァアアアアアアアアアアアアッ!!』
「ッ!? 後ろ!?」


 眼下の2体とは違う、口元を真っ赤に染めた武神がその背の翼を広げてなのはに迫る。なのはは咄嗟にレイジングハートを構える。レイジングハートがなのはの意志に答えてなのはの周囲にバリアを展開する。


『Protection!!』


 そのバリアに阻まれ、なのはへと振り抜かれた武神の拳は防がれる。なのはは器用に打撃の瞬間、バリアを弾くような角度に展開し、攻撃を受け流す。だが、今度はなのはを噛み砕かんと口が迫る。
 アクセルフィンを羽ばたかせ、なのはは勢いよく宙を舞う。ガチン、と勢いの良い音が響き渡る。後方に羽ばたきながらなのはは叫ぶ。


「貴方…! 『龍』の!?」
『シネヤァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』


 なのはの声に返ってきたのは狂った機械音声の叫び声のみ。なんとかアクセルフィンを羽ばたかせて逃げようとするも、今度はなのはを取り囲むように2体の武神がなのはの進路に立ち塞がる。


『シネシネ!!』
『コロシテヤル!!』
『ココデクタバレッ!!』


 3つの方向から同一の声が聞こえる。それはなのはを殺そうとその拳や、戦斧を振るう。なのははそれを巧みな飛行技術で回避しながらも、その額に汗を浮かび上がらせた。そして三機の武神の動きが巧みな連携でなのはを追い詰めていく。


「この、ままじゃ!!」


 じり貧だ、となのはは唇を噛み締める。そして一瞬の集中力の断絶。なのはがハッ、とした瞬間には遅い。なのはの眼前に迫るのは武神の拳。不味い、と思った瞬間だ。防御魔法を展開しようとしたその瞬間――掻っ攫われるような衝撃がなのはを襲う。


「だらしないぞ、高町」
「ッ! トーレさん!!」


 なのはが自分を抱きかかえて高速で離脱したトーレの姿を確認して驚きと喜びの声を挙げる。そして次の瞬間、武神を取り囲むように現れる無数のナイフ。ナイフはなのはとトーレの眼下、命刻がいるその傍にチンクが投げたもの。そこから無数のナイフを上へと目指してばらまくように投げるチンクの姿がある。


「砕け散れッ!! ランブルデトネイターッ!!」


 そして、轟音が響き渡る。3機の武神はチンクの能力によって爆裂したナイフの爆発に呑まれてゆく。爆風がなのはとトーレへにも襲いかかり、2人の髪を勢いよく掻き乱す。


「…やったか?」


 トーレが小さく呟く。なのははそれに答えず、ただジッとチンクが巻き起こした爆発の後を睨む。そして次の瞬間、各部をボロボロにされながらもなのはとトーレへと全速力で迫る三体の武神。


「ッ! いかんっ!!」


 トーレが両手両足にエネルギー刃を展開させ、それを肥大化させていく。トーレの腕の長さを超えるだけのエネルギー刃が展開され、それが武神へと向けて振り抜かれる。それは武神の拳を受け止めるが、すぐにトーレが力負けして流される。だが、確実に1体は受け流した。
 トーレが止められたのは一体。残る2体がなのはへと迫る。なのはは意を決したように握っていたレイジングハートを待機状態へと戻す。そして、掴むのはレイジングハートとは違う、色の無い結晶体を握る。


「――力を貸して! Me-Ssiah!!」
『――Get Set』


 それは男の声。恭也の声だ。それが応えると共に結晶体が光を放つ。結晶体は2つに別たれ、その中心にパーツが現出し汲み上げられていく。花弁を開くようにシリンダーがリボルバーに装填される。柄をなのはが握るのと同時に刃が現出し、二刀の小太刀を形成する。
 なのはは迫る2体の武神を睨み付ける。どうすれば良い、と思考は一瞬。なのはの思考を察知したようにリボルバーの1つ、シリンダーが深く差し込まれ、輝きを放った。


・――名は力を持つ。


 2nd-G系列の概念が封入される。名は力を持つ。ならば、となのはは選択する。小太刀を包み込むかのように桜色の魔力刃が展開されていく。それはディバインセイバー。神聖なる剣を意味するその剣は神を断つ剣となる。
 つまりそれは「武神」を断つ剣と。解釈によってその能力は変わる。故になのはは意識する。この剣は神断つ剣なのだと。なのははそれを構え、武神へと向ける。だが、これだけじゃまだ足りない、と。なのはは桜色の魔力を全身に纏わせる。概念魔法を行使する際に漏れ出した魔力だ。


「まだだよっ!!」


 なのははシリンダーの1つに賢石を詰め込んだ。2nd-Gの概念を展開している小太刀とは逆の小太刀のシリンダーに詰め込んだ賢石はシリンダーの中へと吸い込まれ、シリンダーがリボルバーに装填される。


・――光とは力である。


 それは風見の飛行ユニットである「X-Wi」にも用いられている概念。それが姓名に力を与える概念と相乗し、力を増幅していく。神を断つ剣は光を力と定義する概念によってその刀身を大きく肥大化させていく。
 それはそう、武神すらも真っ二つに断てる程の大剣。重さは無い。何故ならば、これは光なのだから。怖いな、となのはは一瞬思う。もしMe-Ssiahがなければ自滅しているだろう魔法。Me-Ssiahの補助があっても発動を意地するのは難しい。飛行魔法を浮遊程度の意地が限界。バリアジャケットオフ。これで、何十秒かは展開出来る。
 ―――短い。だが、それで十分。一太刀で終わる。


「――行くよッ!!」


 マルチタスクでディバインセイバーの展開を意地しながらアクセルフィンを羽ばたかせてなのはは小太刀を振るう。だがいつもの調子で振るうだけでなのはの巨剣は軽々と振り下ろされる。
 それは武神の一体を捕らえる。一体、肩のナンバーが「00」と記された武神がもう1つの武神を盾にしたのだ。音はない。すっ、とまるでバターを斬るように抵抗なく武神のボディを切り裂いていく。
 ゴォオン、と。鈍い音と共に武神が真っ二つとなる。崩れ落ちていくパーツ。盾にした武神も無事ではなく、片腕を失ったようだ。その片腕を失った武神をトーレが相手をしていた武神が抱えて飛翔する。


『アァァアアアアアアアアアッ!?』
『ウデガ!? ウデガァァアアアアアアアアアアアッッ!?』
『マップタツニサレタァァアアアアアアアアアアッッ!? イタイシヌシナナイデモイタイイタイァァァアアアアアアアアッッ!?!?』
『オノレオノレオノレェェエエエエエッ!! タカマチナノハァァァアアッッ!!』
『ミカミノムスメメェェェエエッ!!』


 二機の武神が交互に同じ声で悲鳴と悪態が混じり合ったような機械音声を響かせて逃げていく。なのははディバインセイバーを解除する。その瞬間、シリンダーがリボルバーから排出されて勢いよく蒸気を吐き出す。
 なのはの額にはうっすらと汗が浮かぶ。息は荒く、肩は上下している。一気に魔力が奪われたのと、Me-Ssiahの予想以上の力。だがその代価としてのリンカーコアへの負担。恐怖と疲労がなのはを襲う。


「…高町、大丈夫か?」
「…トーレさん。私は、大丈夫。…それよりも」


 不意に、なのはは視線を降ろす。そこには唖然とした表情で自分たちを見上げてくる命刻の姿があった。命刻の姿を確認しながらなのははぁ、と溜息を吐き出した。何だか、面倒な事になってきなぁ、と。





     ●





 海鳴市、ハラウオン家。そこでコーヒーを啜る音が響いた。コーヒーを飲んでいるのはクロノだ。彼はマグカップに注いだコーヒーをゆっくりと口に含み、ふぅ、と小さく息を吐いた。
 そのクロノの隣に座っているのはクロノの恋人であるエイミィだ。彼女もクロノと同じデザインで色違いのマグカップを手にし、それを両手で軽く弄ぶように握り直したりしながらクロノと同じように溜息を吐いた。


「…フェイトちゃん、塞ぎ込んじゃったね」
「…あぁ。仕様がないさ。なのはが行方不明になったんだからな」


 エイミィの呟きにクロノは思い声を漏らし、リビングから各自の部屋へと繋がる廊下へと目を向ける。フェイトの部屋はその奧にある。フェイトはそこから出てこようとはしない。管理局の仕事も休みを取っている。当然、学校にも行っていない。
 今の精神状態ではマトモに仕事することは出来ない、とリンディに半ば強制的に有給を取る事になったフェイト。幸いというべきなのか、彼女の有給はほとんど消化されていなかったので長期間の休みを取るには何も問題は無かった。
 だが、学校は違う。なのはが心配なのはわかるが、まさかここまでフェイトがなのはに対して依存しているのだと気付いたとき、クロノは将来の危機感を感じられずにはいられなかった。


「…はやては学校こそ休んでいないが、それでも堪えてるみたいだな」
「酷いのはヴィータちゃんだよ…。全然元気がなくなって、フェイトちゃんと半ば同じ状態だよ」
「…ユーノの奴も、おかしくなったみたいに仕事してたしな。何でもない、と言う奴がシャマルに強制的に入院させられる訳がないだろうに。あの馬鹿は…」


 なのは。たった一人欠けただけで上手く回っていた輪が崩れてしまったようだ。クロノはそう感じていた。フェイトとヴィータが塞ぎ込み、はやてとユーノが影を帯びるようになってしまった。
 それに引き摺られるようにしてクロノやエイミィ、そして八神家ではシグナムとシャマル、ザフィーラも吊られるようにして暗くなってしまう。あの家にはまだ生まれたばかりのリインフォースⅡがいる。それが悪影響にならなければ良いが、とクロノは溜息を吐き出す。


「…今思えば、何かと僕たちはなのはに支えられていたんだなぁ、と改めて思うよ」
「…特にフェイトちゃんは、ね…」


 フェイトが少し度が過ぎる程、なのはに好意を示しているのはクロノとエイミィとて知っていた。それが友情の範疇から越えなかったからあえて注意しなかっただけで、それはある種、恋慕にも近い感情であったのは認める。
 フェイトにとってみればなのはとは初めての友達であり、自分を真っ直ぐに見てくれた救世主のような存在だったのだろう。それがいなくなってしまった。それはフェイトにとって彼女の親であり、全てであったプレシアを失った時ほどの衝撃だろう。


「……どうして、なのはちゃん、あんな目にあっちゃったんだろう。私達がもっと見てあげれば…」
「…僕たちは、忘れていたんだろうな。彼女がなまじ優秀な魔導師だから。だから、大人として扱ってしまった。大人びていたのもあるが、だけどもそれでも彼女は子供だった、という事を、本来は僕たちがフォローしてやらなきゃ駄目だったんだろうな」


 うん、とクロノの言葉にエイミィが小さく頷く。2人の間に沈黙が降りる。残されるのはただ、重たい空気のみで。


「…あ、クロノ君。ちょっとテレビ入れてくれる?」
「ん? あぁ、構わないよ」


 ふと、空気を変えるようにか、エイミィが話題を変えてテレビを示す。エイミィの意図に気付いたのか、クロノはテーブルの上に置いてあったリモコンを手にとってニュース番組のチャンネルを開く。
 そして……その流れる映像にエイミィの手からマグカップが滑り落ちた。目を皿のようにまんまるに見開き、息を引き攣らせている。クロノも震える手が隠せない。特集番組で組まれたのだろう番組の内容はこうだ…。


『世界各地で起きる猟奇殺人事件』


 それは、2人に不安を呼び起こさせるのには十分すぎる程の内容だった…。





 
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