次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 10
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 そこに至るまでの道のりは無言だった。白に染められる景色を抜ける。朽ちた屋敷を抜け、再び暗闇の道を進む。ただ響くのは2人の足音だけ。なのはとジェイルは進む。御神邸の屋敷跡を。
 再び2人でここを訪れる。ウーノ達は待機している。その間、なのはとジェイルにかわされた言葉はあまりにも少ない。2人は進む。その足取りに迷い無く階段を下りてゆく。
 なのはが先に最後の段を降りる。そこには閉ざされた扉がある。ジェイルもなのはに続くように降りて扉を見つめる。なのははふぅ、と息を吐き出してコートを脱いだ。腰には不破・雪花が指されている。首もとにはレイジングハートが揺れている。
 なのはが脱いだコートをジェイルは受け取る。そのコートのポケットには佐山から預かった獏が入っていた。獏はポケットから出てジェイルの頭の上へと乗る。獏を目で追っていたなのははジェイルと一瞬交錯し、そして互いの顔に浮かぶのは笑み。


「行ってきます」
「あぁ、行ってきたまえ」


 何でもないようにジェイルは見送る。なのはは黙って進む。そして扉が再び開かれる。扉の先にあるのは真っ白の概念空間。白一色しかない空間に立つのは2人。なのはと、雪花と。
 雪花はなのはに背を向けるようにして立っていた。そしてなのはに気付いたかのようにゆっくりと振り返る。その手には小太刀が既に握られていて。なのははそれを確認して不破・雪花を抜き放つ。


「…もう来たんだ」
「…えぇ」
「…ふぅん? たかが1日で私に勝つつもり? たった1日で何が出来るの?」
「何も。だけど…叶える為に、届かせる為に、ここに来たつもりです」


 なのはは構えを取る。射抜くように真っ直ぐに雪花を見据えてなのはは小太刀を構える。なのはが構える様を見せられれば、雪花はふふ、と小さく笑いを零して同じように構えを取る。
 それ以上の言葉は要らない。行くよ、とも合図の言葉も無く互いに、同時に一歩を踏み出した。そして互いの間合いに入った瞬間、小太刀が振るわれる。一撃、二撃、互いに刃を合わせる乱舞は衝突音を連続として奏で、その速度を増していく。


「っつ、ぁぁあっ!!」


 最初に引いたのはなのはだ。 いや、引かざるを得なかったと言えるだろう。なのはの技量では雪花と切り結ぶには実力不足。だがそこを雪花は情もなく突く。なのはへと繰り出された斬撃はなのはの私服を掠り、袖を切り刻む。
 なのははバックステップを踏んで雪花から距離を取ろうとするも、雪花が更に踏み込みを入れる。後ろに走るのと、前に走るのでは速度が違う。なのはは後退しながら斬り合うも、その体にはまた1つ、また1つと傷が刻まれていく。


「こんな様で私に勝つつもり!?」
「くっ…!」
「甘い甘い!! 考え方が甘いよ!!」


 雪花の言葉になのはが歯を噛み締め、雪花が振るう小太刀を受け止める。お、と雪花の関心する声が聞こえるが無視。雪花の小太刀と鍔迫り合いを続けながらなのはは息を吸い直して、キッ、と雪花を睨み付ける。


「…じゃあ…出し惜しみ無しで行きます!!」


 なのはが勢いよく雪花の小太刀を弾く。弾くのと同時になのはは不破・雪花を収める。それに怪訝そうな顔をした雪花の顔はすぐに驚愕へと変わる。それはなのはが懐から取り出した何かを握ったのを見てからだ。
 なのはが雪花の驚きの顔を見るのと同時に胸から浮かび出るのは光の球体。なのはは手の中のソレを胸へと押し当てるように当てる。


「リンカーコアに…! 貴方、気付いて―――ッ!?」


・――名は力を与える。


 雪花の驚愕の声と同時になのはは脳裏にその声が響く。それは概念条文。なのはのリンカーコアがまるで呑み込むように握っていた何かを呑み込む。それは――賢石だ。概念を封じ込めた結晶体。
 賢石を呑み込んだリンカーコアの光が急速に輝きを増していき、そしてなのはの体を包む。その光を纏い、なのはは身を震わせる。魔力の奔流が迸る。あ、とも、お、とも取れぬ叫びがなのはの喉から絞り出されるように上げられる。


「レイジングハートッ!!」
『accel Fin』


 再びなのはは不破・雪花を解き放つ。なのはの足下には飛行・加速用の翼が開く。そして――なのはは一瞬にして雪花の懐へと飛び込んだ。雪花が驚く顔が見れるのと同時に菜乃花は小太刀を振るう。当然雪花も対応してくる。
 だが、今度はなのはの両手にもアクセルフィンが現出する。それは強制的になのはの動きを加速させていく。今度は逆に雪花が歯を噛み締め、なのはの連撃を防ぐ形となる。


「…リンカーコア。それは周囲の魔力素を魔力へと変換する器官。言わば魔導師の心臓だ」


 その光景を見守っていたジェイルは不意に呟きを漏らす。


「リンカーコアという器官には謎が多い。その生成プロセスも謎に包まれ、情報などあってないようなもの。…だが、私はUCATにて「概念」という存在を知ったとき、思いついた」


 それは自分の考えを纏めるように。それは先日、なのはに説明したように。


「リンカーコア。意味は連結する核。連結先は世界。仮定に仮定を重ねるならば、魔力素とは世界から零れ出た意志。意志ならば無意識も含め、どの世界にも存在し、ある事が出来る。そこから適正量を抽出し、自らの力となす。それがリンカーコアの仕組みなのではないか、と。
 つまり、ならば、だ。ならば直接リンカーコアに「賢石」などの概念の結晶体を取り込ませる事が出来たのならば? それはつまり…概念を自らの物とする事が出来る。今、なのは君がそうしているように」


 なのはが取り込んだのは2nd系列の概念の賢石だ。名は力を持つという概念。故になのはのアクセルフィンはその意味からなのはの加速を手助けしている。その分だけ、リンカーコアの負担は跳ね上がっているだろう。
 それがなのはが全身から放っている魔力が証拠だろうし、このまま行けば自滅の可能性もあるだろう。だが、そのかわりに得られる力は絶大だ。まず概念空間の展開が不要だ。何故ならば彼女そのものが概念となっているようなものだから。
 故に、彼女は概念空間を必要としない。その力は自らの為だけに。それは正に世界すら喰らってみせる悪魔の所行。


「く、このっ!!」


 悪態を零しながらも雪花の速度は上がっていく。だが、なのはも翼を大きく広げて加速していく。光、それはそう、もう光だ。なのはは光と化していた。体は軋む、リンカーコアからは悲鳴のような音が聞こえている。
 そう、決して概念の吸収は魔力の供給ではない。賢石レベルであっても魔力素として適正である濃度を大幅に振り切っているのだから。だからリンカーコアに貯蔵出来る魔力はいつもより少ない。更に魔力素と概念を混ぜ合わせる事によってリンカーコアには負担がかかっている筈だ。


「なのは君だからこそ可能なのだよ。外部からの魔力を集束させる技能に特化した彼女だからこそ可能な芸当だ。呼称するならば…「概念魔法」と呼ぶべきだろうかね?」


 莫大な魔力量と、特化する才能。それ故になのはが可能とする魔法。
 なのはの加速に段々と雪花が付いて来れなくなっていく。なのはは一瞬の隙をついて雪花の腹へと蹴りを叩き込む。アクセルフィンによって加速した蹴りは雪花を勢いよく蹴り飛ばす。
 雪花が地面を転がるも、すぐさま体勢を立て直す。唇の端からは鮮血が零れ、決して軽く無いダメージだと言うのはわかる。だが、その雪花と対峙するなのはもまた顔色が悪い。肩で息を荒くし、魔力の奔流は揺らめき、安定していない事が見て取れる。


「…ぐ…ぁ…無茶、するじゃない…」
「…勝たなきゃ…駄目、ですから…」
「…そういう所、恭也にそっくりね」


 不意に、雪花は唇を緩めた。なのはに対して向ける瞳には慈愛と懐かしさが満ちている。


「無茶ばっかりして、一人で抱え込んで…最後には結局、ボロボロになって…」
「……」
「…ねぇ、なのは。貴方が知りたいっていう真実はね? 恭也が必死になって、ボロボロになって守ろうとしたものなんだよ。貴方がどういう道を選ぼうが、きっと貴方の勝手。だけどね…」


 すぅ、と雪花は小太刀を構える。その構えから先ほどとは違う威圧感をなのはは感じた。まるで空気をビリビリと震わせるかのような威圧感がなのはへと叩き付けられる。


「だから、全力で私は守るよ。私が認めないと、恭也が守ろうとした夢に触れさせない」
「……お婆ちゃん」
「なのは、全力で来なさい。これで決着にするわ」


 雪花が宣言する。それは、この戦いへの決着へ。




「―――御神流奥義之極『閃』」




 そして、雪花の姿が掻き消えた。少なくともなのはにはそう思えた。そして感じるのは死の予感。あぁ、これは防げなかったら自分は死ぬな、という直感的な感覚。死の感覚はなのはの背筋を大きく震わせた。
 本気だ、と肌が、いや、なのはという存在すべてが感じる。雪花が込めた想いが伝わってくるようだ。ここまで、彼女は恭也を愛して、そして望んできたのだろう。自らに課した役割を果たす為に。
 故に、なのはは、思う。


(――全部、受け止めたい)


 だから、負けたくない。だけどどうすれば良い。もう既に彼女は迫っている。止めなければ、防がなければ。でも、方法が思い浮かばない。アクセルフィンでは駄目だ。プロテクションやバリアジャケットでも無理。
 なら、相殺するしかない。これから繰り出されるだろう彼女の最大の攻撃を。だけど、どうすれば相殺出来る? わからない。どうすれば良いのか。だから、ならば、いっそ忘れてしまおう。


(私は、全部、受け止めたいんだっ!!)


 そして、なのはの手に握っていた不破・雪花に衝撃が来た。同時に不破・雪花に罅が入ったのをなのはは感じた。今は無力と化した概念刀は、同じ概念を持つのであろう雪花にその力を封じられている。それ故になのはの力にも耐えられなくなってきているが故に罅だったのかもしれない。
 だが、そこにある力は確かに変わらない。不破は砕けない。雪花は望むための力。砕け得ぬ思いを、望む為の力へと変えて。そして―――。


『―Go Ahead!! My Master!!』


 絶対に挫けぬ、最高の相棒の励ましがある。不屈の心はこの胸に。故に、怯えもしない。引くこともしない、と。
 そして、次の衝撃で不破・雪花が砕け散ったのをなのはは感じた。迫るのは刃の感覚。なのははその感覚に死を感じながらも叫んだ。


「負け、られないんだぁぁああああああああああっっ!!!!」


 不破の名は、一切の破を許さず。
 雪花の名は、希望を力へと変えて。
 不屈の名は、諦め得ぬ力となりて。
 集束する。なのははその身の内に砕けた不破・雪花の欠片を取り込む。故に手にあった感覚はもう無い。ならば―――作れば良い。


『Divine Saver』


 なのはの魔力と、不破・雪花の概念と、名は力と持つ概念。その全てが混ざり合わさる。聖なる剣はなのはの両手に光り輝く。それは刃の形などなしていないただの光。だがそこにある感覚は確か。
 迫る感覚に対してなのはは光を振るう。衝撃音が聞こえる。次の気配が迫る。それをまた光で斬り返す。白の空間の中でただ光だけが走り巡る。なのはは叫ぶ、そして聞こえる。雪花の叫びが。そして、最早何かが見えるという領域を彼女達は突破した。
 まさに光と光の激突。光速の世界で光と小太刀は切り結ぶ。音を置き去りにして光となった2人はただ斬り合う。外部から見ていたジェイルにとってそれはもはやただ光が走っているにしか見えないその光景にも決着の時が来る。
 雪花はもはや感覚だけで切っていた。そう、この感覚こそ御神流奥義之極「閃」。神速すらも越える超連続の斬撃。最早頭は何も考えていない。ただ斬る事だけしかない。だから斬る。斬る、ただそれだけの為に。
 そして、その感覚に終わりが来る。雪花は衝撃を感じた。そして、理解した。―――自身の持っていた小太刀が断ち切られたのを。刀身の半ばから綺麗に折れてしまった小太刀の姿を見て雪花は理解する。


(――あぁ、そうか。なのは、貴方は、私を越えていけるんだ)


 そして―――雪花の体に衝撃が来た。
 衝撃波が走り、雪花の体が吹き飛ぶ。白の空間をバウンドしていく度に彼女の腕から零れた鮮血が白の空間を汚していく。そのまま暫く転がっていた雪花は仰向けに倒れるように大の字に体を広げた。
 なのはの魔法は非殺傷設定が施されている。だが、いくら非殺傷設定とはいえ雪花の受けた魔力ダメージは尋常ではない。小太刀を砕かれた瞬間に腕も破片で切ったのか血が溢れて力が入らない。それ以前に体の痛覚そのものが麻痺しているようだ。
 雪花は天井を仰ぐ。白しか無いその空間で聞こえるのは彼女の吐息と、もう一人の少女の吐息。


「…お婆、ちゃん」


 青白い顔で、体を引き摺るようにして雪花の傍に腰を下ろすなのは。その両手は痺れているかのように力を失っている。だが、その手でも尚、雪花の手を取ろうとなのはは手を伸ばす。
 雪花の手と、なのはの手が触れ合う。雪花はなのはの顔を見て淡く微笑む。なんとか手に力を入れてなのはの頬をそっと撫でた。


「…強いね、私と、恭也の孫は…。もう一人の恭也は…」
「……私、全部受け止められた?」
「…うん。…もう、満足だ。凄い、安心してる」


 ほぅ、と力を抜いたように雪花は息を吐き出す。一度瞳を閉じて全身から力を抜く。なのはは雪花の手を握る。離してしまえばまるで雪花が今にも消えてしまいそうに感じたから。いや、既に、雪花の体は消えかけている。
 足下からゆっくりとその体が光の粒子となって消えていく。なのははそれをジッ、と見つめていた。自分がゆっくりと消えていく感覚に雪花はふっ、と笑みを浮かべて。


「…大丈夫、私は、もう本当は死んでる筈で、ここにいるのは幽霊みたいなもので、これで成仏出来るの」
「……」
「だから…泣かないで? なのは…」


 なのはの頬には雫が流れて行っている。涙だ。なのはは泣いている。それを雪花は自分が消えていくからだろう、と思った。だが、なのはは小さく首を横に振った。涙を流しながらも、なのはは微笑んで。


「…嬉しいの。だから、泣かせて?」
「…嬉しいの?」
「…うん。受け止めて、安心してくれたんだよね? だから、凄く、嬉しいよ」
「――――」
「…お婆ちゃん…もう、良いんだよ…。後は、私が…」


 なのはの言葉に、あぁ、と雪花は声を挙げた。なのはの言葉を遮るように声をあげて雪花は手を伸ばす。最早億劫な感覚でも、それでも彼女はなのはの頬を撫でる。慈しむように、優しく。


「…良い、孫を持ったなぁ…」
「…おばあ、ちゃん…」
「なの…は…。私が消えたらこの空間は消える。…そうすれば…後は……全ての…真実があるわ。…それを、どうするかも…全部…なのはが決めて良いわ…」
「…おばあ、ちゃん…っ」
「…ありがとう。私と、恭也の思い、全部、全部…受け止めてくれて」


 ありがとう、ありがとうと何度も雪花は告げる。そして、雪花の姿がもはや透ける程にまでなっていき――。


「恭也…今…逝くよ…」


 ――最後に、彼女は微笑んでその姿を掻き消した。
 なのはの手から感覚が消える。そこにあった存在は今やもう夢幻の如くいなくなってしまった。
 不意に、からん、と音が聞こえた。なのはがそちらに視線を向けるとそこには指輪が転がっていた。2つの指輪だ。それは同じデザイン。婚約指輪だった。
 なのはが手を伸ばす。なんとか震えてる手でそれを握ってなのははそれを見つめる。恐らく2人の指に嵌っていたのだろうその指輪をなのはは握りしめ、胸に押し当てるようにして握る。


「…おつ、かれ…さま…っ…」


 ただ、それだけ言うのが精一杯だった。なのははそのまましゃくりを上げて、何度も涙を堪えようとする。だが、声は収まらない。
 そんななのはの肩をそっと抱くように手を伸ばす人がいた。ジェイルだ。彼はなのはの隣に腰を下ろすようにしてなのはを抱きしめる。なのはは何も言わずにジェイルに体を預けた。


「…凄い、強かったよ」
「…あぁ、そうだね」
「…それだけ、凄く、思ってたんだ」
「そういう事だろうね」
「…凄く、重たいなぁ…」
「だけど、君が背負うと決めた」
「…うん」
「…なら、私はそれを肯定しよう。…だけと疲れたら、休んでも良いさ。だから今は、休め。なのは君」


 うん、と小さくなのはは呟いてその瞳を閉じた。その瞳の裏には恭也と雪花の姿が浮かぶ。彼等から託されたものは決して軽くはない。そして尋常じゃない程の思いが込められている事も、雪花との戦いで痛いほどわかった。
 だから、少しだけ休みたい。走って、走って、走り続けてきたから。今は、ほんの少しだけ。次に走り出せる為に。





 

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読み直してふと思ったんですけど、ジェイルを何歳くらいと考えているのでしょうか?
2011/04/07 Thu URLtomo#- [ 編集 ]

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