次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
■■■スポンサーサイト
--/--/-- --スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 08
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 舞い踊るように小太刀を両手に握り、舞うのは女剣士が2人。なのはと雪花。互いの獲物で相手を切り裂かんと振るう。
 だがその刃は互いに互いを切り裂こうとするが故にぶつかり合う。だが交錯は一瞬、すぐさま次の一手、次の次の一手、次の次の次の…。
 鍔迫り合いの音は連続して響き渡る。聴覚を狂わせるのではないか、という不快な音が奏でられる中、なのはは唇を噛み締め、雪花は執拗に攻める。
 いつの間にか雪花が一方的になのはを嬲る結果となっていた。なのはも必死に食らい付こうとしているが…彼女には雪花相手には決定的に足りないものがある。


「貴方は強いよ」
「ぃっ…! こ、のぉっ!」


 強く雪花が小太刀を振るい、なのはの握る小太刀を震わせる。その反動になのはは顔を歪め、何とか体勢を立て直そうとする。
 雪花は体勢を立て直そうとするなのはに対して、縫うようにして小太刀にて突きを繰り出してくる。小太刀は通常の刀より短いが故に出来る高速の連続突き。
 なのははそれを捌くしかない、が、また1つ、また1つとなのはの頬や肌には赤い線が走る。


「でもね。御神の剣士同士で戦うのならば――貴方はまだ素人も同然なんだよ」


 切り落とし。なのはの不破・雪花を真上から叩くようにして雪花が小太刀を振るった。衝撃の瞬間、なのはの手には強烈な衝撃が来て不破を取りこぼす。


「御神流――【徹】」


 なのははその衝撃に以前、自分の兄、恭也と行った模擬試合を思い出す。手が痺れる程の衝撃を受けた木刀による一撃。これの正体はつまり、これなのだ、と。
 痺れた手を振りぬき、握っていた雪花を振るう。だが、その雪花も今度は宙に舞い上げられる。甲高い金属音が鳴り響く。あ、と声が漏れたのは、半ば茫然とした声で。


「――これで、終わり?」


 ゾッ、と。なのはは言いようの無い悪寒に襲われ、痺れた腕を振り抜くようにして後方へと下がる。あ、と声が始まり、長く、細く、絞るように叫び声を上げた。


『Accel Shooter』


 なのはの叫びに答えるようにレイジングハートが光を放つ。浮かぶのは合計8つの誘導弾。現在のなのはが扱える最大限の誘導弾。それが一斉に雪花へと放たれる。


「恭也も使ってた「魔法」とやらね。――でも残念」


 響くのは静かな金属音。それは納刀の音だ。鞘に二刀の小太刀を収めた雪花に迫るアクセルシューター。


「御神流―――『虎乱』」


 正に一瞬、と言うべきか。なのはの誘導弾は一瞬にして雪花によって切り裂かれた。何が起きたのか、なのはは一瞬理解が出来ない。
 ふぅ、と雪花は息を吐く。だらり、と降ろした腕。力の抜けたような体勢。だがそれでいて隙が無い。なのはの吐息に震えが帯びる。


「――初見ならともかく、御神の剣士に二度同じ手が通じるとは思わない事ね。わかっていれれば避けられる。どうすれば良いかわかる。それを理解する為の神速であり、それを打破する為の神速よ。故に御神の名には最強の称号が与えられたのよ?」


 わかるかしら? とまるで教え説くように雪花は告げ、半ば茫然としていたなのはの腹部に強烈な蹴りを叩き込む。
 容赦のない蹴りはなのはの腹にめり込み、体の回転を惜しみなく使ったその蹴りはなのはの足を宙に浮かし、ジェイルが立っている入り口へとなのはを蹴り飛ばした。
 軽くバウンドする程の勢いでなのはがジェイルの足下まで転がり、口元を抑えて咳き込む。すぐさまジェイルが介抱するが、なのはの呼吸は落ち着かない。


「駄目駄目よ。駄目駄目。まだまだ。落第よ」


 なのはの落とした不破・雪花を握り、それをなのはの前に突き刺さるようにして投げる。なのはは痛みと呼吸の苦しさによって浮かんだ涙を拭う事も出来ずに小太刀を見つめる。
 雪花は再び部屋の中央に腰を下ろし、小さく口元に笑みを浮かべて軽くなのはに手を振った。


「また来なさい。知りたいのなら。勿論、尻尾巻いて逃げても良いわよ? どうせ、どちらにせよ大局には変わらないかもしれないから」
「…っ…どう、いう…意味…?」
「答えられません。答えて欲しかったら私に勝ちなよ。なのは。それじゃあね」


 ひらり、ひらり、と揺れるその手をなのははぼんやりと見ていた。そして視界が急に高くなる。ジェイルがなのはを横抱きにしたのだ。
 普段のなのはならば振り解いただろう。だが、今は弱っている事もあって静かにしていた。ジェイルはなのはを横抱きにしたまま階段を上がっていく。
 かつん、かつん、と階段を上る音がなのはの耳に届く。ただ、歯を噛み締める程の悔しさと無力感を感じながらなのはの意識は闇へと沈んでいった。





    ●





 夜。月光に照らされているのは尊秋多学院。年末祭の準備に追われている学生達は夜遅くまで準備に勤しんでいる。
 その作業する中、休憩をするように肩を並べる2人の生徒が居た。佐山と新庄だ。佐山は何気なしに天に浮かぶ月を見上げている。その隣の新庄は不意に、ねぇ、と佐山に声をかけて。


「…何だい? 新庄君」
「うん…なのはちゃん、どうしてるかな、って」
「…自分の祖父の過去を追う、か。まるで私達がやったみたいだね」
「そこで、なのはちゃんは何を知ってくるんだろうね?」


 結局、あの後、衣笠書庫の準備室にある扉は開いてはいない。何か手段がある筈なのだが、それも思いつかない。それ故に過去の資料が欲しいが、祭りの準備と各国のUCATの牽制に遭い、それも難しい。
 その新庄の問いに佐山は、あぁ、と声を漏らした。空を見上げながら彼は気の抜けたように。


「…知った所で、私達には関係ない事かもしれない」
「…え?」


 何で? と問うように新庄は疑問の声を挙げながら佐山の顔を盗み見た。彼はいつの間にか視線を降ろしていた。自然と、新庄と佐山は向かい合う形になる。


「…どうしてそう思うの?」
「…何故だろうね。どうして不破恭也はわざわざ息子の高町士郎を概念戦争に関わり合いにならないようにしたのだろうね?」
「…え? それは…」
「真相はわからない。だが、何かが引っ掛かるのだよ。そこが。息子を危険な目に遭わせてたくない、という親心だったのかもしれない」
「…それがどうしたの?」
「新庄君。確かに私達はTop-Gという存在を知り、軍と戦った。…だが、考えてみたまえ。「龍」は私達の前に姿を現した事がったかい?」


 新庄は佐山の問いに眉を寄せる。そう言えば、と思い返せば龍という組織と接触したのはなのはと関わり合いになった時に一度だけ。
 それ以外にはUCAT全体を含めても「龍」という組織と接触したという情報は無かった。だが、それがどうしたというのだろうか?


「規模が小さかっただけかもしれない。だが、龍の手の者は何かしら御神家に拘っているようにも見えないかね?」
「それがどうかしたの?」
「――まるで、そうし向けているようじゃないかい?」


 ぴく、と。新庄の眉が跳ねる。それは不意を突かれた困惑。思わず脳が回らず、思考がこんがらがる。


「ま、待ってよ佐山君! それってどういう…」
「何。裏の世界ではそこそこ「龍」の名は知られている。だが、概念戦争には「龍」の名は余りにも出てこない。――まるで、「龍」を概念戦争から切り離そうとしているかのようにも思えないかね?」
「う、穿ち過ぎじゃない? どこにもそんな証拠は…」
「無いね。だが、思うのだよ。高町君の在り方を見ていると」


 ふぅ、と佐山は吐息を吐き出す。困惑する新庄を尻目に佐山は一息と共に告げる。


「必要以上に敵を作ろうとする。その中で、彼女は世界を害する全てを斬り捨てようとしているのかもしれない。もしかしたら、かもしれない。そんな曖昧な言葉だが、どうにも彼女の在り方を思い返すと、そんな考えが浮かんでしまうのだよ」


 それは、佐山とは異なる悪役。佐山の悪役はそこに新たなる正義を産み出す為の悪だ。正しき間違い。過つ正しさを穿ち、新たに未来を切り開く、それこそ佐山の姓が任ずる悪役だとする。
 ならば、高町なのはが任ずる悪役とは何か? それは全てに怨まれ、全てに疎まれ、全てに憎まれる。だが同時に、それは全てに思われ、全てに敬われ、全てに愛される。
 正も、負も、全てを受け止め、そしてその先に自らの意志で世界を作っていくという彼女の在り方はまるで世界の意志を束ねているかのようで。


「もしそうなのだとすると…戻ってきた時の彼女は私達の味方ではないだろう」
「…え? ど、どうして…?」
「――彼女は、味方であり、敵であり、何にでもなり得るが、しかして何にもならないからね」


 だからこそ、と佐山は呟いて。


「彼女は誰よりも正しく、だがそれでいて間違えていなければならないのだから」


 佐山が、悪役を自ら任じ、率先して世界を作り替える開拓者、「正しき悪役」だとし。
 新庄が、夢想に近い正義を望み、それ故に世界の理の反逆者、「過つ正義」だとするならば。
 高町なのはは、率先して世界を作り替える「正しさ」を持ちながらも、夢想に近い正義を語る。間違いながらも、だが正しい。だが、あまりにも夢想すぎる者こそ彼女なのだ。


「…私と新庄君が対面の存在だと言うのなら、彼女はその中間にいるのだろう。正しくも過ち、悪でありながら正義である。矛盾を抱えながらも突き進む事を良しとする。傲慢にして清廉。誰もが理解しえない孤高の存在」
「……そう、なのかな? 大袈裟だよ」
「大袈裟かな?」


 自らの言葉を確認するように呟いた佐山に、新庄は言葉を返す事が出来なかった。反論出来ないのだ。彼女はやろうと思えばUCATにすら敵に回すのだろう。
 あの軍の戦いの時、確かに彼女はそうしたのだから。どんなに願いを踏みにじっても、どんなに疎まれ、憎まれ、刃を向けられてようとも。
 折れず、屈せず、媚びず、その胸に抱いた不屈の心を貫き通す。きっとそうして行く。新庄はわかっているのだ。佐山の言いたい事が。


「…佐山君」
「…何だね?」
「…そうだとしたら…なのはちゃんは…」


 だからこそ、わかってしまうのだ。新庄は自らの体を抱くように両手を回して呟くように告げた。


「…いつか、消されてしまいそうだよ」


 灰は灰に。塵は塵に。そして…夢は夢に。彼女の存在はあまりにも夢想過ぎる。だからこそ彼女は拒絶されてしまいそうだ。この現実から。
 いつか自らの抱える矛盾を肥大させて、周囲を巻き込み、その果てに排除されてしまう。余りにも正しく、あまりにも間違っているからこそ。


「…新庄君」
「……何?」
「夢は、追えば消えないものさ」


 それはまるで安心させるように。佐山は新庄の肩を抱き寄せながら呟いた。新庄は佐山にされるがままに彼に肩を寄せて。


「彼女の夢は私達の夢だ。だから…消させないさ。なのは君の夢は――私と新庄君の交差点に等しいのだから」





    ●





 ゆっくりと目を開ける。ぼんやりとした思考の中、目を開いたなのははただ天井を見上げる。見上げた天井は自分が乗ってきた車内だ。
 ふと窓の外へと視線だけ向ければ暗いのがよくわかる。夜、と小さく呟いてなのはは自分がどうなっているのかを確認した。自分の頭はどうやら何かの上に乗っかっている状態で自分は寝そべっているようだ。
 なのはは目を上へと向ける。そこにはシートに背を預けて、肘をついて手に顎を乗せながら空を見上げているジェイルがいた。どうやらなのははジェイルの太ももの上に頭を乗せているようだ、と気付いた。


「…ジェイルさん」
「…ん? あぁ、気がついたのか。気分はどうだい?」


 ジェイルは今、ようやく気付いたと言うようになのはへと視線を降ろした。何気なくジェイルの手がなのはの髪を撫でる。なのははそれに対して何も言わない。
 ただ、何も言わずに天井を見上げている。ぼんやりとした瞳にはまるで光が無いようにも見えて、ジェイルはその瞳をジッ、と見つめている。


「…負けた」
「…あぁ、君は負けたんだ」
「…負け、ましたか」
「あぁ、完膚無きにまでね」


 そうですか、と声がする。なのははその言葉を境に言葉を発さない。そのなのはの頭をジェイルはただ撫でる。髪を梳くように、頭を撫でるように。優しく、優しく…。
 つぅ、と。なのはの瞳から涙が零れた。ぼんやりとしていたなのはの表情が一気に歪み、歯を噛み締め、目を擦るように手を顔に持っていき、顔を覆い隠す。


「負け…ました」
「…あぁ。負けたね」
「…勝てる気、しないです」
「…君は弱かったね」


 なのはは、負けた。
 不破雪花に負けたのだ。完膚無きにまで。そして見せ付けられたのだ。概念刀の力も無く、魔法も中途半端にしか使えなかったとはいえ、それでも負けた。
 負けて、そして思わず見えてしまったのだ。――自分の敗北する未来が。どう足掻いても勝利出来る未来が無いのだ、と。
 どんな魔法を使おうとも避けられれば終わりで、雪花と斬り合えば相手に良いようにされてしまう。
 完全に魔法が使えようとも、どんな強固なバリアジャケットを作ったとしてもあれは防げない。雪花は明らかにそういう領域の存在なのだ。


 だから――なのはは悔しかったのだ。


「…負けちゃった…よぉ」
「……」
「…わからないままだよ」


 なのはにはどうすれば良いのかもうわからない。雪花に勝つ為のヴィジョンが見えないのだ。だからこそなのはは悔しくて涙を流す。止め止めもなく溢れていく。
 勝ちたい、負けたくない。だからこそ、勝つ未来が見いだせない自分が歯痒くて。だから、涙が止まらないのだと。
 そのなのはの涙を拭う手があった。なのはは涙に濡れる瞳で見上げる。そこには自分と視線を合わせるジェイルがいて。


「足を止めたくないのかい?」
「当たり前、じゃないですか…っ…」
「でも、どう勝てば良いのかわからないのかい?」
「私…わからないよ」





「なら、聞けば良いじゃないか」





 そっと。ジェイルの手がなのはの頬を撫でる。ジェイルは淡い微笑を浮かべて。


「…聞く?」
「不破雪花は君を待っている。それは君はわかっているだろう?」
「…ぅん」
「君に勝って欲しいんだ。だから突き放しもするし、期待もする。ならば、不破雪花は君に何を求めているんだい?」
「…強くなって欲しい」
「そうだ。じゃあ、高町君はどうすれば勝てると思う?」
「…わからない」
「そうだ。わからない。――なら、私が教えてあげようか?」


 なのはとジェイルの視線が絡み合う。


「…教えて…くれますか?」
「君が望み、私が望むなら。君は望んでくれるかね?」
「…どうして?」
「私も知りたいからね、不破恭也の事は。――今は、それで良い」


 そっとなのはの頭を撫でて。


「今は休むと良い。君も緊張したんだろう? ――何せ、相手は君のお婆さんだ。私にはわからないが…きっと、そういうものなのだろう?」
「―――――」
「だから、今は休むと良い」


 ぽん、と。ジェイルは優しくなのはの頭を叩いた。そのまま撫でるような感触になのははゆっくりと瞳を閉じていく。
 すぅ、と。寝息が聞こえ始める。なのはの瞳は閉ざされ、小さな寝息が一定のリズムで吐き出される。
 なのはの髪を梳くように撫でていたジェイルは瞳を閉じながら、子守歌のように1つの歌を歌い始めた。
 その歌の名は「清しこの夜に」。その歌は聖なる歌。静かなこの夜に、神の子を祝うその歌を。


(…君はこんな所で終わる筈がない。きっと目が覚めれば君は歩き出すだろう? そう、だからこそ私は君と共にここに来たのだから。全ての興味の先に―――君がいるだろうから)


 だから、と。ジェイルは聖歌を口にしながら瞳を閉じる。思い馳せるのはただ一言。


(頑張れ、高町君。――でなければ、面白くないだろう?)


 あぁ、あぁ、聖なるかな、聖なるかな。静かな夜に聖なる歌は静かに、小さく木霊した…。
スポンサーサイト
トラックバック(0)+ +コメント(0)
リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 09 ≪ BACK ≪ HOME ≫ NEXT ≫ リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 07

管理者にだけ表示を許可する
HOME
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
ブログ内検索
リンク
カテゴリー
最近のコメント

 
 
 
 
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。