次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 07
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 さく、と雪を踏みしめる音が響く。音が響いた周囲は雪に埋もれている。雪化粧される街並み。その中で、ただそこだけが異質な空気を放っていた。
 その建物とは――御神家屋敷跡。寂れたその屋敷はその経緯故にか住む者もおらず、ボロボロとなって打ち棄てられている。
 なのはは屋敷を見上げていた。かつて祖父と祖母が居たのだろうこの屋敷を。父も暮らしていたのかも知れないこの屋敷を。姉が、兄が、少しでも時間を過ごしたこの屋敷を。


「酷いものだね。近隣の住人からは幽霊屋敷として噂されているそうだよ。肝試しの格好の的じゃないか」
「本当に出そうだから怖いですけどね」


 ジェイルと軽口をたたき合いながらなのはは屋敷の門をくぐり抜けて屋敷の奧の方へと向かっていく。なのはと共に来ているのはジェイルだけだ。他の面々は車で待機している。
 邪魔はしない、となのはに気を使ってくれたようだった。それは有り難いと思う。ならば、何故ジェイルがいるのかと聞かれれば彼は不破恭也を知っている者だから。


「興味があるだろう? 過去に遡った知人がどのように生を終えたのか」
「…そうですね。滅多にある事じゃないですからね」


 きしきし、と玄関から中へと入っていく。中は流石に汚れていたので靴は脱がない。土足のまま家へと上がっていく。
 廊下が軋む音を聞きながらなのはとジェイルは屋敷の中へと進んでいく。その道中、見えるのは生活の面影を残す家具や壁の傷など。
 それになのはが思うのは寂しさだ。ここにはかつて人が住んでいた。だが、それは一瞬のウチにして無くなったのだ、と。失われて、もう二度とは得られないのだと。
 胸に宿るのは痛み。そっとなのはは胸を抑える。僅かに呼吸を乱し、ふぅ、と深呼吸をする。


「大丈夫かね?」
「大丈夫です」


 軽いやり取りの後、2人は再び沈黙する。軋む音は止まず、寂しさによって生ずる痛みは止まらない。ここには悲しさしか残ってない錯覚に陥りそうになる。
 そのまま無言で進む中、なのはは長く続いた廊下から出る両開きの扉を開いた。その先に広がっていたのは道場だった。自分の家にもあるような道場。あ、と思わずなのはは声を漏らして。


「…道場だね。まぁ、あって当然か」


 そう言ってジェイルは中へと進んでいき、壁に立てかけられていた木刀の1つを握る。だがそれは腐っていたのか、少し壁を殴っただけでぽっきりと折れてしまう。
 昔はその木刀で誰かが訓練に勤しんでいたのか、と思うともの悲しい。なのはは何気なしに道場の中央まで来て、コートの下に隠していた不破・雪花を抜く。
 一振り、そこから始まるのはただ一人の剣舞。今まで為してきた動きを再現するかのようになのはは小太刀を振るう。なのはの表情には何も浮かんではいない。ただ無心で小太刀を振るう。


「かつては、ここで誰かが、こうして、いたんでしょうか?」


 小太刀を振るい、舞うように動きながらなのはは問う。傍らにいるジェイルに対して。


「そうだろうね。誰もが自らの流派に誇りを持って訓練を挑んでいたのかも知れないね。または仕様が無いという思いでやっていた者もいたかもしれない」


 ジェイルは答える。何かを求めるように小太刀を振るうなのはに対して。
 なのはは一歩、踏み出す度に床が大きく軋む音を奏でる。なのははそれを振り払うように不破・雪花を振るう。剣閃の軌跡は描かれ続ける。は、となのはは短く息を吐き出して。


「どうして、失われなければならなかったんでしょう?」
「さてね。それはテロを起こした龍にでも聞いてくれたまえ」
「…消えるべくして、消えたんでしょうか?」
「既に起こった事実に仮定は意味を成さない。そうだと思えばそうなのだろうし、当事者から話を聞かなければ真実は得られない。それは、君が選べば良いものじゃないか?」


 だん、となのはが強く一歩を踏み出して小太刀を振り下ろした。風が動きを止めたように静けさが戻ってくる。なのはは僅かに乱した息を吐きながら天井を見上げた。


「…もう、起こってしまったから変えられない。だけど、だからって忘れて良い訳じゃない。捨てれば良いってものじゃない」


 手に握った不破・雪花を強く握りしめながらなのはは呟く。どんなに認めたくなくとも、どんなに否定したくとも、それは既に起こってしまった変わりの無い事実。
 だからそれをどうするのか。怨むのか、憎むのか、受け入れるのか、それは人それぞれで。きっと概念戦争もそうなのだろう、と。
 だからぶつかりあっていかなければいけない。だからこそ、正しく変えていく為に、後悔が無い、皆が納得出来る答えを得るために過去が知りたい。


「変化のキッカケは何だと思う? 高町君」
「…変化の、キッカケ?」


 不意に、隣に立ったジェイルになのはは疑問を浮かべる。変化のキッカケ、と呟いた彼の意図は何なのか、と。
 ジェイルはなのはを見下ろす。ふっ、と口元に笑みを浮かべるようにして見せて。


「動く事だよ。だから今、世界は変化し続けている。いや、不変などはありはしない。いつか必ず変わってゆくものだ。だから望んで歩くしかない。自分が得たい何かを得る為に。だから君はここに来たし、私もここにいる」
「…ジェイルさん」
「なら、行こう。高町君。君が得たい答えを得る為には探さなければいけないのだろう。君が得たい未来を得るための真実を。世界を変化させる為の術を」


 喉を震わせるようにジェイルは笑う。それになのはは一瞬、キョトンとする。暫しそうしていたなのはだったが、小さく体を震わせて吹き出した。それはまるで笑いを堪えきれない動作にもよく似ていて。


「そうですね。足を止めてても何も変わらないなら、前に進みましょうか」


 なのはが笑いながら言葉を紡ぐ。―――瞬間、なのはの足下が抜けた。恐らく腐っていたのがなのはの動きによって限界だったのだろう。そしてなのはが浮遊感に、あ、と声を漏らした瞬間、なのはの脇に両手を差し込むようにしてジェイルが抱きかかえる。
 そのままジェイルはなのはを両手で抱いたまま、なのはの足下が抜けた穴を見つめる。そこには何かの蓋があった。


「…これは何だろうね? 高町君」
「…あの、とりあえず降ろしてくれませんか?」


 やや頬を赤らめてなのはがジェイルに言う。助けてくれた為に過激な反応は返せないが、正直振り払いたい。この体勢は恥ずかしい事この上ない、となのはは身を揺らして。
 それにジェイルがなのはを自らの隣に立たせるようにして降ろして、膝を床に降ろして蓋へと伸ばす。軽く叩いてみたり、揺すってみるもその蓋は固く閉ざされている。


「…ふむ。何だろうね、この蓋は?」
「さぁ…」


 ジェイルが疑問を零し、なのはもまた見当が付かずに蓋へと伸ばす。なのはが蓋へと触れる。その瞬間だ。変化が起きたのは。その変化はまず淡い光だった。
 何、とジェイルが零すのと同時に光は強くなっていき、がちり、と言う音が鳴り響き、光は消え失せる。その一連の流れを見ていたジェイルとなのはは思わず顔を見合わせて。


「…どうやら、君に反応したようだね」
「…という事は」


 ここにこの蓋を残したのは必然的に一人しか考えられない。――不破恭也、彼しか。
 なのはは蓋を押す。すると蓋は小気味よい音を立てて開く。蓋の下には地下の奥深くへと伸びるような階段が見えた。なのはは体を滑り込ませて蓋の下へと入り込む。


「…この地下には何があるのだろうね?」


 なのはと同じように蓋の下へと身を滑り込ませるジェイルはなのはに問う。なのははわからない、と言うように首を振る。だ、なのはの答えは決まっている。なのははジェイルへと視線を向け。


「…行きましょう」


 ただ一言。その一言と共になのはとジェイルは闇へと呑み込まれるように続く階段を下りて行くのだった。





    ●





 かつん、かつん、と2人の階段を下りる音だけが静かに反響して消えていく。暗闇に沈む階段を照らすのはジェイルが取り出した懐中電灯だ。本人曰く「こんな事もあろうかと!」だそうだ。
 階段を下りていくなのはとジェイルの間に言葉は無い。ただ彼等は無言で階段を下りていく。しかし、長く続く階段に無言の時間は途切れる。


「一体どこまで降りるんだろうね?」
「さぁ? わかりませんよ」
「この先には何があるのだろうね?」
「だから、わかりませんって」


 そんなどうでも良いようなやり取りを続けながら2人は階段を下りていく。ただ階段を下りていく足音だけが反響する音が響くだけ…。
 どれだけ降りただろうか。階段が終わり、少し間が広がった場所へと出る。そしてなのはとジェイルの前に現れたのは鉄製の扉だ。古くさい、やや錆びている扉。その扉には開ける為の取っ手などが見あたらない。
 ふむ、と呟きを零したのはジェイル。彼はなのはへと視線を向ける。なのはもジェイルの視線による訴えの意味を理解したのか、扉へと近づいていく。
 これは恐らくなのはの、不破恭也の偽物の為に用意された場所なのだろう。先ほどの蓋もそうだった。ならばここもまたなのはに反応するのではないか、という予想。


「…ん…」


 そして、なのはがそっと扉に触れるのと同時に扉は淡い光を放ち、なのはを迎え入れるように開いていく。それに、なのはが吊られるように一歩を踏み出す。
 それに続いてジェイルも入ろうとして、彼を阻むように光が壁を形成する。おや? と言いたげにジェイルは光の壁を見つめる。なのはは思わず足を止める。


「…どうやら私はここまでのようだね?」
「…やっぱり、ここは私にしか…」
「そうだろうね。…高町君」


 なのはの呟きにジェイルは同意を示し、そして何かに気付いたように目を細めた。なのはもジェイルの変化に気付いて部屋へと視線を向けた。
 一言で言い表すならば、白い。ただ白の一室と言っても良い。白の光。白の壁。白の床。白に埋め尽くされた部屋。


「…ぇ…?」


 そこに腰掛けるようにして一人の女性が座っていた。黒衣のコートを纏ったような出で立ちだ。その姿に、ぎょっ、となのはが目を見開く。
 なのはが驚いている間に、女性はなのはの存在に気付いたのか、ゆっくりと顔を上げた。そしてなのはの存在を認識するのと同時に笑みを浮かべた。


「…やぁ、待ってたよ。君が来るのを」


 それは親しみを込めた声だった。その声になのはは更に困惑し、遂に表情にまで表してしまう。それに女性は楽しげに笑顔となる。なのはは震えた声を零して困惑を露わにする。


「…なん、で」
「君の名を、教えてくれる? 私の名前は知ってる? いや、知ってるか。ここに入れるという事。そして、君の持つ「ソレ」が教えてくれる」


 なのはの問いのような呟きに対して、女性は楽しげに語る。すぅ、となのはに指された指。なのはは半ば無意識にコートの下にあった「不破・雪花」を握る。その仕草に女性は淡く微笑み。


「初めまして。彼の後継にして偽物さん。――恭也の妻、不破雪花だよ」


 驚愕のなのはを前にして彼女―不破雪花―は微笑む。何故、という疑問がなのはの脳裏を駆け巡る。彼女は死している筈だ。記録上も、獏の夢からもそれはわかっていた。獏の夢は断片的だったが記録上では確かに彼女は死人だ。
 なのに関わらず、目の前にいる彼女はいる。更に摩訶不思議なのは、彼女はまだ20の後半を数えたぐらいの年頃だと言う事。
 おかしい、正にその一言に尽きる。どうして、と疑問が巡り、だが答えは出ずにただ空回りを続ける。
 その仕草に不破雪花は微笑みを浮かべる。彼女は口元を吊り上げるように笑って声を挙げた。


「そう混乱しなくて良いわよ。きっと君の認識は間違ってない。確かに私は死人。ここにいるのは幽霊のようなものだと思って頂戴」
「…お婆ちゃん…なんだよね」
「…お婆ちゃん? …そう、貴方は士郎の娘なんだね? そう…あの子の。良い奥さんに恵まれたかしら?」


 お婆ちゃん、という呼び方に対して彼女は嬉しそうに微笑んでなのはを見た。それは本当に嬉しそうで、なのはは理解する。この人は、本当に自分の父を愛してくれていたのだろう、と。
 だからこそ、過去に見た光景が思い出される。それだけ愛していた息子を置いて彼女が死を選んだ理由は何なのだろうか、と。そして何故幽霊のようなものとしてここにいるのか、と。


「…お父さんは、凄く美人で優しいお母さんと結婚したよ」
「そう…。それは良かった。……で? 貴方の名前は?」


 士郎の話に彼女は口元を綻ばせ、何かを噛み締めるようにそと瞳を伏せる。暫し間を置いた後、再び雪花はなのはに名前を問う。


「…なのは。高町なのは」
「…そう。その名もまた因果なのかもね」


 ふぅ、と吐息を吐き出す。そして腰を下ろしていた雪花はゆっくりと立ち上がる。彼女はなのはを見据えて。


「何故私がここに居るのか。ここは何なのか。それを知りたいかしら? いいえ。知りたいからここに来た。違うかしら?」
「……そうです。知りたいから、ここまで来ました」
「…そう。なら…」


 彼女は微笑む。そしてとん、と軽くステップを踏んでくるり、と回る。そうすれば凜、とした音が響き渡る。それと同時にまるで世界が震えたような感覚をなのはは感じる。
 そして吹き出すのは闘気。その気を放つのは―――紛れもない、眼前の不破雪花で。


「――私と戦いなさいな」


 いつの間にか、雪花は背中側の腰に二刀の刀を左右に分けて十字に交差するように腰に差していた。
 そして膨れあがる闘気がびりびり、となのはに叩き付けられ、彼女の震わせる。そしてなのはは理解する。本気なのだ、と。つまり――戦うしかない、と。戦う以外の答えは無いのだ、と。
 無意識になのはは小太刀へと手をかけた。不破・雪花へと。だが…そこでなのはは違和感に気付く。そして驚愕する。まるで沈黙しているように力が感じられない。
 何が、と思う間に雪花がなのはの眼前へと迫っていた。ひゅ、となのはは息を呑んで後方へと飛ぶ。なのはの前髪を掠り、小太刀が抜き放たれ、振り抜かれる。
 一歩、二歩、となのはは大きく飛ぶようにして息を整える。コートを勢いよく脱ぎ捨て、ベルトから吊した不破・雪花にもう一度触れる。やはり力の鼓動が感じられない。


「――無駄よ。それは抜け殻。その概念刀の力は同一にして自身よりも大きな存在、つまり私に押さえ込まれている。概念刀の力は使えない」
「なっ…!?」
「力を取り戻したいなら、私を倒すしかないわよ。もしくは尻尾巻いてこの部屋から逃げるか?」
「何でこんな事を!!」
「何故? 資格があるのか問うのよ。なのは」


 再び小太刀が振るわれる。速い剣閃だ。竜轍並、いや、下手をすればそれ以上の太刀筋になのはは無力と化し、ただの刃となった不破・雪花を振るう。
 右の小太刀が来る。なのははそれを左の小太刀で迎撃。だが次いで左の小太刀が来て、それをまた右の小太刀で返す。右が来て、左で返し、左で来れば、右で防ぎ、右で攻めれば、左によって絡め取られる。動きを封じられ、慌てた所に右が来て、左で防ぐ。
 連続して奏でられる金属音は不快感さえも呼び起こす。傍目から聞いていればなんと耳障りな音な事だろう。だが、不破雪花は高揚した表情を浮かべてなのはと切り結ぶ。


「資格、って…!?」
「――御神の真実を知る為の力。恭也が残し、恭也が願い、恭也が望んだ「未来」の担い手かどうか…見極めさせてもらうよ」


 まるで獣のように歯を剥いて笑みを浮かべて雪花が加速する。それに合わせてなのはも加速する。次第に小太刀で切り結ぶ感覚が遅延していくのをなのはは感じる。点滅するかのように色がモノクロとカラーで切り替わる。
 次第に色が抜け落ち、モノクロへと化す。まるで水の中を動いているかのように体の動きが鈍い。その鈍い動きの中、思考だけは通常の通りに動く。だから雪花の動きが読める。
 遅延する時間、その中で互いに小太刀をぶつけ合い、金属音が高く鳴り響き、互いに身を引いた瞬間になのはの世界は再び色を取り戻す。


「――ははっ!! 神速の扉は開いてるって事ね!?」


 楽しい、と言わんばかりに雪花がなのはに斬りかかる。すぅ、と息を吸い、力強く吐き出すのと同時に左右の小太刀が突きの連閃を繰り出す。
 なのはは再び世界の色を失わせる。1つ、また1つとなのはは小太刀を捌いていく。感覚に戸惑いはあるが、今は戦いに意識を集中させろ、となのははモノクロの世界の中で小太刀を振るう。


「いい、いいよ! 筋が良いよ! センスも良い! はは! 楽しいね!! 若い原石を見ちゃうとさ!!」
「くぁっ…!!」
「ほらほら、付いていけなくなってきてるよ!? ――私を倒さずして、御神の深奥に触れる事は罷り通らぬ。ならばこそ、見せてみなさい、なのはぁ!!」


 ぎぃん、と甲高い金属音と共に距離が取られる。雪花は笑みを浮かべ、なのはは歯を噛み締めた苦悶の表情。再び開いた距離は、次の瞬間、一瞬にして消え去り、再びなのはと雪花は剣舞を繰り広げる。
 まだ、戦いは始まったばかり―――。
 
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