次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■創魔の疾風 =A girl creates the world= Act.09
2010/02/10 Wed創魔の疾風
 はやての足下に白の光を発しながら「六芒星」を描く魔法陣が展開される。それと同時にはやての背に10本の光の矢が出現する。
 シグナムは既に駆け出している。はやてはそれを見てから、息を短く吐き出し、手をシグナムへと向けた。


(魔力装填完了。「自己領域」より検索、該当。解凍開始。術式の正常起動を確認。全弾制御下。目標全設定確認。1番から10番までの撃墜物設定)


 全ての矢の照準をシグナムへと定め、解き放つ。白の光の軌跡を描きながら矢がシグナムの元へと飛んでいく。シグナムがレヴァンテインを振るい、矢を叩き落とそうとする。


(3番撃墜予測。1、2番待機。4番から10番まで軌道・速度修正。ランダムパターンセット完了)


 振り下ろされたレヴァンテインが光の矢を一本叩き落とした。それにはやてが二本の光の槍を自らの付近で待機させ、残りの7本の矢をシグナムへと向けて放ち直す。
 ある矢は一直線にシグナムを狙い、ある矢は直角な軌道を描きシグナムを狙い、ある矢は流線な軌道を描きシグナムを狙う。そしてその矢の動きも一通りではなく無数に変化していく。
 それをシグナムは回避。時折レヴァンテインを振り、叩き落とそうともするが、急に軌道を変え回避し、他の矢がシグナムを狙う。内心シグナムはその矢の操作に驚愕を覚えていた。


(矢自体にたいした脅威は無いが、この矢の動きは、予測がつかんっ!!)


 目では追いきれるし、反応出来ない速度では無い。だが、その動きが時折予測に無い動きをし、自らの隙を狙う。
 だがそんな中でもシグナムはまた一本と光の矢を叩き落とす。それにはやてはチッ、と舌打ちを零す。


(隙があらへん。どこ狙ったって当たらん。なんて反応速度や!?)


 必死にパターンを書き換えて狙って見る物の、その全てが反応されてかわされ、矢がまた一本と落とされてしまう。7本あった矢は6本に。6本は5本に。
 このままではいずれは自らの方へとシグナムの進撃を許す事となる。だがそれは己にとっては不利であると判断している。何故ならば己には防御能力がほとんど無いという事に今さっき気づかされたからである。
 シグナムの武器を見る限り、恐らく接近戦闘型。近づかれればこちらに勝機は薄いと判断している。


(絶対に、近づけさせへんっ!!)


 こうなれば長期戦だ。とはやてはシグナムを睨み、矢の操作に没頭するのであった。
 シグナムのレヴァンテインが振るわれ、矢が踊る。光が走り、レヴァンテインが舞う。2人は踊るように戦いに没頭していく。


「ふっ!!」


 シグナムがレヴァンテインを振るう。だが、叩き落とそうとした矢はまたヒラリ、と身を翳し、また別の矢が背後から、上方から狙ってくる。それに軽く舌打ちをし回避する。
 直角の軌道を描き二本の矢がシグナムを狙う。そのまま来るか、と思えば矢は左右へと散り、気づけば再び背後から矢が接近してくる。


(このままでは埒があかないな)

 
 シグナムは内心呟くのと共にレヴァンテインを握り直す。そして、レヴァンテインに備えられたある「システム」を起動させる。


「レヴァンテイン。カードリッジロードッ!!」
『Explosion!!』


 それは魔力を込めた弾丸であった。弾丸に込められた「圧縮魔力」が解き放たれ、シグナムに爆発的な魔力を与える。
 これこそベルカ式の特徴と言っても良い「カードリッジシステム」である。思わずはやてはそれに目を見開く。


「なんやそれっ!?」


 はやての驚く声が聞こえるが、シグナムは自らの成すべき事をする。圧縮されていた魔力を制御し、レヴァンテインのカードリッジシステムに続くシステムを起動させる。


『Schlangeform!!』


 シュランゲフォルム。レヴァンテインの機械音声が告げた瞬間。レヴァンテインの刃がワイヤーで繋がれた連結刃へと変化し、宙を蛇のように身を唸らせながら轟く。


「変形!?」


 はやての叫びと同時にシグナムがレヴァンテインを振り抜く。予測しなかった動きに矢が全て撃ち落とされた。シグナムはそれを見届けるの同時にレヴァンテインのワイヤーを引き戻し、剣の状態へと元に戻す。そしてはやてへと跳躍する。
 はやての驚愕の顔を目に入れながら、レヴァンテインを振り下ろす。狙いは右肩から左脇へと切り裂くような軌道。はやては思考する前に、身体能力強化を発動し、後ろへと跳躍。
 レヴァンテインが空を切り、一瞬シグナムが驚きの色を表情に宿したが、すぐに追撃せんとはやてへと一歩を踏み込む。再び一閃。だがはやては再びステップを踏み回避する。
 しばらくはやてが後方へと下がりながらシグナムのレヴァンテインを回避するが、背に何かが当たる。それは木。はやての進路上にそびえ立つ木であった。


「――まずっ」
「はぁぁっ!!!」


 はやてはすぐさま反転し木を蹴り、駆け上がる。同時にシグナムのレヴァンテインが木を切り裂く。
 音を立てて木が斜めっていく。その木を伝い走り、他の木へと飛び移る。木が倒れる轟音が響く中、はやては木の枝を飛び渡りながらシグナムから距離を取ろうとする。
 シグナムは木の枝を飛び交うはやてを捕らえて追おうとする。だが待ちかまえていたかのように発射された光の矢にシグナムは反応仕切れない。


『Panzergeist!』


 そこでレヴァンテインが機械音声を発する。同時に、シグナムの身体を包み込むようにシグナムの魔力光である紫の光がシグナムの身体を纏う。それは光の矢を受け止める。
 思わず、それを確認したはやては驚きの声を挙げる。己の攻撃が一切効果をなさなかった。


(そんなんアリかっ…!)


 パンツァーガイストを解除して追いかけてくるシグナムに視線を送りながらはやては舌打ちを零す。
 このままじゃ不味い。相手の防御力をこちらの攻撃では抜く事が出来ない。どうする? と一瞬の思考。
 己の持ち札は「身体能力強化」「遠隔操作弾」。主にこの二つを使い戦闘をするのだが、現在の状況はそのどちらを使ってもこの騎士には敵わない。ならば、あれを使うしかない。


(魔力、装填)


 自らの身体に魔力を込める。同時に「自己領域」の己へと更なる指示を送りつける。


(「自己領域」より検索、該当。解凍開始。術式の正常起動を確認)


 全身に漲っていた魔力を一点へと集中。展開された式を起動させる。
 反転。シグナムの動きを観察。身体強化に魔力を分散。残りの魔力を「右腕」へ。
 一瞬、怪訝そうな顔をするシグナムを視界に入れて、足下に六芒星の陣がクルクルと回る。右手は淡い白の光を発光させて。そして、はやてが気合いを込めた咆哮を上げる。


「吹っ飛べぇっ!!」


 勢いよく右腕を突き出す。同時に、はやての全魔力を込められた「砲撃」が発射される。
 暴発にも等しきその魔力の奔流は真っ直ぐシグナムへと向かっていく。思わず、シグナムが目を見開く。本来砲撃魔法にはチャージ時間という物がある。だがはやての「砲撃」にはそのチャージがほとんど行われていない。
 いや、実際は右腕に収束させるという事でチャージはしているのだが、はやては幼い頃から身体能力強化と体内を巡る魔力の放出訓練を行っていた為、それを短縮する事を可能としていた。
 はやての奥の手。それはシグナムへと向かっていく。シグナムは踏みとどまり、再び「パンツァーガイスト」を展開する。
 そして、爆音が響き渡った。


「きゃぁっ!?」
「うぁあっ!?」
「ぬぅっ!?」



 爆風が2人の戦いを見守っていた3人の視界を遮る。魔力同士の衝突によって巻き上げられた粉塵が3人の視界を遮って。そして、ようやく3人の視界が元に戻った時に、全ての決着は付いていた。
 3人の目の前には、はやての首元にレヴァンテインを突きつけているシグナムの姿があった。だが、シグナムの騎士甲冑はところどころ破れたような部分があり、どうやら「パンツァーガイスト」でも防ぎきれなかったようであるのが見えた。
 一方はやては右腕を左腕で押さえながら荒い息を吐いていた。突きつけられるレヴァンテインに苦笑を浮かべて。


「私の、負けやな」


 そして、2人の戦いは終わりを告げた。
 はやての呟きを聞けばシグナムはレヴァンテインを引いて、鞘へと収めた。
 はやてがそれを見てからゆっくりと立ち上がって。そして「奧の手」を使った右腕が一気に痛んだ。


「アイタタタッ!?!?」
「だ、大丈夫ですか!?主!?」


 シグナムが思わずはやてを心配するかのように声を荒らげる。はやては脂汗を浮かべながらシグナムに笑って。


「だ、大丈夫大丈夫。ちょうビリッ、って痺れるだけやから」


 そうは言うはやてだが、明らかに大丈夫そうではない。そこに他の3人もはやての方へと駆け寄ってくる。そして、シャマルがはやてが手を押さえているのを見てから、はやての手を取った。


「いっっ!? シャマル、ちょっ、さわらっ、イタタタッ!?」
「すいません主。失礼します」


 はやてが悲鳴を上げるもシャマルがはやての右腕を取り、触ったりして状態を確かめている。それを見てから、一瞬眉を寄せてから溜息を吐いて。


「クラールヴィント」
『Ya』


 シャマルが呼んだ名は自らのデバイス。首もとにかけられていたリングが指輪へと姿を変えて、シャマルの指へと収まった。
 そしてシャマルははやての手を撫でるように触れながら。ふと、クラールヴィントが光を放ち、はやての右腕へと浸透していくかのように消えていく。
 するとはやての手の痛みはどんどんと薄れていく。思わずはやてが驚いたような顔をする。


「お、おぉ? 痛くない…」
「勝手ながら治療させていただきました。…それより主。貴方は無茶しすぎです。こんな砲撃の打ち方してたら、貴方の右腕はいつか死にますよ?」
「うっ、それは自覚してるんやけど」


 はやての全魔力を込めた右腕。「砲身」としての役割を果たしたその代償は大きい。正直手が爆発してもおかしく無いんじゃないか?とシャマルが思う程であった。
 それにはやてが苦い顔をして、ヒラヒラ、と無事な左手を振る。


「それより、シグナムは強いなぁ。私は足下にも及ばなかったわ」
「いえ。主の遠隔操作には目を張る物がありました。そしてなおかつその魔力量。たった2年程で作り上げた魔法とは思えない程の完成度でした。しかし今だ未発達の部分もあると思われます」
「うん。それは自分でも自覚してるよ」


 シグナムの言葉に苦笑して。はやてはゴロン、と横になった。


「あー…世界は広いなぁ」


 クシャッ、と前髪を握って、はぁ、と溜息を吐いた。
 それと同時に、静かに日が照り始めていた。夜明けであった。それを、はやてとヴォルケンリッター達は眩しげに見つめるのであった。
 それから、朝日が差し込む中。決闘を終えたはやてとシグナム。そしてヴォルケンリッターの面々は朝食を取っていた。朝食は山菜に川魚。そして燻製肉やハンバーグなどと言った森の中で取れる物。はやてはたいした事は無い、と言っていたが、それでも幼い頃から家事を続けていたはやての料理は美味に値する物であった。
 無論、その肉に食らい付いたのはヴィータであるのだが、それをシグナムが諫め、シャマルがオロオロとし、ザフィーラが我関せず、と言ったように肉を頬張っていた。
 その光景を見ながら、はやてはふと思う。こうして他人と食事をするのはいつ以来だろうか、と。ふと、見上げた空は高く。澄み切った空はまるで飲まれて行きそうだったと、そう思った。
 騒がしい朝食を終えた後。はやてとヴォルケンリッター達は円になるように座り、今後の事について決める会議を行う事にした。


「今後、の事なんやけど、とりあえずどうしようか?」
「どうしようか? と言われますと?」
「うん。そう言えば私の事情の方ってあんまり説明しとらんかったっけ?」


 ガリガリ、と頭を掻くようにしながらはやては罰悪そうに言った。そう言えば私がどうしてこんな所にいるのか、などの事は全然説明していなかったなぁ、と。
 そりゃ出会って、いきなり主だの言われて、自分の知らない魔法に興味が湧いて、と、どうも好奇心が先走ってしまったなぁ、と。うん。これじゃ駄目やよなぁ、と。
 主、と慕う騎士達。だが、その主というのは私。それにやっぱりどうも遠慮願いたい、と思う。正直やっぱり人の上に立てるような人間では無いと思うからだ。
 さて、それはさておき、自らの置かれた状況を彼等にしっかりと説明しないと、と思いはやてはシグナム達と向かい合う。


「まずは、私なんやけど、実は私が山籠もりする前、1年前の話になるんやけどな?」
「1年前というと、丁度主が魔法を…」
「うん。実はな…私、何か何者かに襲われたんよね」


 はやては軽く言うが、それにシグナム達は目に見えて狼狽えた。まさか、自分達が彼女の前に姿を現す前にそのような脅威にさらされていようとは。その様子を見て、今度ははやてが慌てた。あわあわ、と両手をブンブンと振りながら取り繕うように。


「い、いや、その時は私も逃げ出せて、それで、今こうして姿隠しながら山の中で魔法の訓練してたんや。この世界に魔法って存在しないから、こういった人目の付かん所やないと訓練も出来へんかったし」
「…そうですか」
「それで、なんやけどな。さっきも言ったとおり、私の世界には魔法が無い。なのに私を襲ってきた二人組は、魔法を使って来た」


 魔法を使った。その言葉にシグナムの目が細められる。ここは魔法文明が存在しない。それははやてによってわかっている。はやてが目覚めたのは半ば偶然と言っても良い。闇の書が主に選んだ事も影響しているかもしれないが。
 さて。そんな中で、はやてを襲ったという魔法使いとは何者なのだろうか?


「その二人組について詳しく教えて貰えますか?」
「容姿は瓜二つやった。多分双子だと思う。…後は、見間違いかと思ったんやけど猫の耳みたいのが生えてた」
「猫の耳、ですか?では、使い魔…」


 シグナムの問いかけにはやてがそう答え、シャマルが呟きを漏らす。
 使い魔、という単語にはやては思わず「やっぱり魔法使いには使い魔がいるんやなぁ」と思いながらもシャマルの方へと顔を向けて。


「使い魔って、魔法使いが使役するって感じの…」
「そうですね。魔法使いが使役する、動物を元にした者ですよ。恐らく主を襲撃してきたのは猫を素体にしたんですね」


 なるほどな、とはやては呟いた。対してヴォルケンリッター達の面々の表情は重苦しい。
 もしはやてを襲ってきた二人組というのが使い魔だと言うのならば、それを行わせた筈の主もまた、居る筈だ。その主は一体何を狙っているのか?


「…闇の書の力を狙っているのかもしれません」
「そうやな。そう考えるのが自然、やな」


 あれから襲撃は無いが、いつかは見つかってしまう可能性がある。
 どうする?とはやては逡巡した。もし、闇の書の力が目的なら、今、闇の書が起動してしまった以上、見つかる可能性は跳ね上がる場合がある。
 だが、考えども考えども良い方法は浮かんでこない。うーん、と唸っていると、助け船を出すようにシグナムがはやてに声をかけて。


「主。闇の書を完成させればよろしいのでは?」
「…なんでや?」
「闇の書の力があれば主は強大な力を得られる事が出来ます。故に、襲撃者の存在も取るにたらなく…」
「シグナム」


 はやてがシグナムの言葉を遮るようにその名を呼ぶ。平坦とも言えるその声に、シグナムは言葉を止め、はやてへと視線を向けた。まるで、水面に波紋が広がるような雰囲気を持っていた。静かな物が乱され、荒れ狂う前兆のように。


「気に食わんな。他人の力で強くなってもおもしろかない。それに、他人から「魔力」の「核」であるリンカーコアやったか? それを蒐集して、何も影響無いんか?」
「それは…」
「あるんやろ? なんとなくやけど、気づいた。核に手出しておいてなんもありません、なーんて都合の良い話はないやろ」


 はやてはシグナムの方へと視線を向け、そして息を軽く吸ってから溜息を吐いて。


「あんな。他人犠牲にしてまで強うなりとうないわ。なるなら、自分の力でなりたいわ」


 はやては、人は他人がいなければ生きていくのは難しいと考えている。一人で生きてきたからこそ、わかる事。他人という者がどれだけ、生きていく上で大事かと言う事を。
 故にはやては他人を害する事を嫌う。それがどうしても仕様がない場合や、自らに明らかなる敵意を持って攻撃してくるならば話は別だが、それでも、好きではない。
 この一人で生きてきた間。鹿などの野生動物を数多く、その手で殺めて来た。だからこそ、はやては仕様がない場合には手を下すが、それ故に、忌避する。


「シグナム。私が「魔法」を使ってるのはな、所詮は楽しいからや。それしか私には無かったしな。それぐらいやったから。娯楽、って言うんかな」
「娯楽、ですか…」
「そや。娯楽や。せやけど、それ無くしたら…私どうすれば良いんや」


 また、図書館に通って知識を集められれば良い。だが、もう街に戻る事も出来ないだろう。私は狙われているのだから。だから、残ったのは、魔法だけだ。だからこそはやては魔法を大事に思う。それははやてにとって大事な宝物だ。
 だから、奪いたくない。奪わせたくないから、奪いたくない。奪われれば復讐したくなるし、気に入らなければ反抗する。だから、そっとしておいて欲しい。
 見せびらかしたい気持ちや、競いたい気持ちもどこかにある。シグナム達と出会えて、本気でそう思った。だけど、同時にそっとしておいて欲しい気持ちもある。


「シグナム。私はな、そんな多くは望まん。だから、必要以上以外の事は認めんからな」
「…では、主は闇の書の完成を目指さないと?」
「当たり前や。んな物で強うなってもなぁ…」


 なんか、こう、ゲームで反則した気分や、とはやては苦い顔で言う。それに、シグナムは困惑を隠せない。こうまでして、闇の書の完成を拒む主など例に無かったからだ。
 誰もが、力を目の前にぶら下げられれば、それに惹かれるのは人の心理だ。だからこそ、はやてが決意したのは、それだけ、魔法に思い入れがあるからこそ。
 そこまで大事に魔法を育む事を大切に思っているこの少女の思いを、穢す事など出来るだろうか?
 それが、主の強い願いならば。


「わかりました。主がそう望むならば、闇の書に関しては現状維持とします」
「すまんな。シグナム。私の事、思ってくれるんはありがたいけど、流石にな」


 ははは、と笑いを零しながらはやては頬をぽりぽりと掻いて。それにシグナムはいえ、と小さく返す。その様子に、ヴィータが唇を尖らせながら問いかけて来た。


「じゃあ、結局アタシ等はどうすれば良いんだ?」


 若干ヴィータが機嫌が悪いように見えるのは、彼女自身も困惑しているからに他ならない。自分達は闇の書の守護騎士であり、いつも、主の身を守り、闇の書の完成の為に生きてきた。それを「完成させない」と決めた主。
 別に、このままこの少女が死ぬまで守護を努めろ、と言われれば従うしか無いのだが…。


「そうやなぁ…。じゃあ、ヴィータはどうしたい?」
「…どうしたいって、アタシは守護騎士だから主の命に」
「ほんま…面倒やな、アンタ等。私は人の上に立てるような人間やない言うてるやろうが。命令なんか下せるわけないやないか…」


 はやてが頭を抱えながら言う。何度も言うようだが、はやては主になるつもりはさらさら無い。人の上に立てるような人間では無いからだ。うぅむ、とはやては悩むように腕を組んで。


「なんかしたい事ないの?」
「したい事と…言われましても…」


 はやての問いかけに、シャマルが困ったような表情を浮かべる。他の騎士達も同様の顔を浮かべている。ただのプログラムである自分達は主に従う事が当たり前であった。だからこそ、このように「自意識」という物を求められても困るのだ。
 それにはやては頭を抱える。頭の痛い問題やなー、と思いながらしばし腕を組んで。


「わかった。なら、やりたい事がみつかるまで、ってのはどうや?」
「…やりたい事が見つかるまで?」
「うん。私は一応やけど、アンタ等の主になる。その間、一緒にいて私は一応やけどアンタ達の主をやる。だけど、したい事を探しに行こう。それが見つからなければずっと私と居れば良いし、したい事を見つけたらそのしたい事をすれば良い」


 つまりや、とはやてはピンッ、と指を立てて。


「目標が見つかるまで一緒に居る。今決めれん事なら後回しや。私はとりあえず主になる。でも、皆は皆のしたい事を探そう、な?」
「……はぁ」


 シグナムが気の抜けたような困惑した答えを返す。それに、シャマルも、ヴィータも、ザフィーラも困惑するしか無い。したい事を探す。今まで、プログラムとして生きてきた自分達が、「自分自身」のしたい事を探しに行く…。


(不思議な気分だ…)


 思わず、シグナムはそう思った。他の3人もこの感情を感じているのだろうか。


「というわけで、私は一応仮主って事なんで、敬語と主呼びは禁止な。呼ぶならはやてって呼んでや」
「「……む?」」


 はやてがニマーッ、と笑みを浮かべて言う。それに反応したのはシグナムとザフィーラだ。その隣ではシャマルがにこやかに笑みを浮かべながら、ヴィータはふて腐れたような仕草をしながら。


「わかりました。…じゃなくて、わかったわ。はやてちゃん」
「…ま、アタシもそっちの方が気楽だし、はやてって呼んでやるよ」
「ありがとな。……そっちの二人もえぇな?」


 はやてがシャマルとヴィータに微笑みかけるが、シグナムとザフィーラは渋い顔を浮かべた。
 この後、はやてとシグナム、ザフィーラによるちょっとした口論が始まるのだが、その勝敗はどちらに上がったのかは……また、別のお話…。
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