次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第2章 05
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 どれだけの時間が過ぎただろうか。原川がようやく書庫の整理を終えて見えてきたものは、ほぼ均等になっているのだ。同じ幅の本棚からそのまま抜いたならば当たり前だ。


「だが、正確すぎる」


 そう呟くのは本を整理した本人、原川だ。彼の前に詰まれた本は全部で六列。その内の四列が他の二列よりも本一冊分ほど下に窪んでいる。
 そしてその四列、そして二列がほぼ、いや、まったくの高さなのだ。これは明らかに作為的なものを感じる、とその場に居た皆は思う。


「…ゲームであったよね? こんなの」
「ゲーム…?」


 ふと、皆が頭を悩ませる中、新庄は不意に呟いた。それに相槌を打つのはヒオだ。ヒオは何やら考え込むような態度を取る。しかし段々とヒオの顔が深刻そうなものに変わっていくのに気付いた新庄がヒオ? と彼女の名を呼ぶ。
 するとヒオは明らかに慌てた様子で顔を上げて、アタフタと手を慌ただしく動かして叫んだ。


「金髪押し掛け系でしたら、ヒオ、今のままでも大丈夫ですよのよ!?」


 は? と誰かが吐息と共に声を零す。それに一瞬、場が静まり返ったのと同時に隣に居た原川がこめかみを押さえるようにそっと手を添えて。


「俺は全然大丈夫じゃないぞ、ヒオ・サンダーソン」
「え? あ、じゃ、じゃあジャンル的にヒオは駄目ですの!?」
「落ち着け。いいかヒオ、掌に込めって書いて舐めてみろ」
「あ、それ知ってますわ。日本のシキタリで、それをすると落ち着けるんですのね?」
「違う。そんなことをしてる自分が馬鹿だとよく解るだろうヒオ・サンダーソン」


 原川の言葉の刃にざっくりと心を断たれたヒオは俯く。皆がどこか呆れたような空気を醸し出す中、一人、首を傾げていたなのはは不意にヒオに視線を向けながら呟く。

「…金髪押し掛け系って何ですか?」
「え? えと、それは、ですね…」
「待て、お前は小学生相手に何を説明しようとしているヒオ・サンダーソン。高町なのは、気にするな。ちょっと頭が病気で奇怪な事を口にしただけだ」
「ひどーっ!!」
「うるさいぞヒオ・サンダーソン。…で? どういう事だ、新庄」


 なのはの問いかけにヒオがどう答えようか、と悩んだ瞬間に原川の鋭いツッコミが入り、問答が強制的に中断させられる。半ば涙目のヒオを軽くスルーして原川は話題の方向を下に戻そうとする。
 新庄が説明するのはブロックゲームの事だろう。なのはも新庄の話を聞く限りそう思う。だが、途中でまたヒオが何か口走りそうになった所で原川のツッコミが入り、強制的に黙らせる。


「ようは、この本棚には、一冊空いて未完成な棚と、全部詰まって完成している棚の二種があると?」


 ツッコミによって頭をはたかれたヒオが頭を押さえながら自問するように呟く。しかし、と言うようにヒオは皆に問いかけを投げかける。


「でも…何の本が足りないんですの?」


 ヒオの問いかけに再び皆が頭を抱え出す。衣笠書庫にある本は膨大だ。そこから特定の本を探し出すのは正直に言って無理だ。


「…なんかアイデアある人。こうなったら言ったもん勝ちよ?」
「…ん」
「はい、美影。何?」
「そこの地球儀。その棚だけ変。地球儀の横に本が詰まってる」


 本棚の一列。そこは地球儀の横に本が収められた棚がある。これにも何らかの仕掛けがあるのではないか、とそこは原川も手を出していない。
 確かにここまでピッタリに本の段差が同じとなると、この棚が不自然に見えるのは当然の帰結。
 ここまで意見を出したところで、思案するかのように腕を組んでいた佐山がゆっくりと目を開き、言葉を口にした。


「本棚は九列が左右2つの合計十八列。そして左最上段の一列が完成されている他、今のところ六列あたり二列が密度高く完成されているわけだね。――ならば、荒っぽく比率計算すれば…」
「穴の空いた棚と空いていない棚の比率は四体二ですよね? 棚は左右十八列だから…穴の空く棚は十二列。空かない棚が六列。…ですよね?」


 佐山の言葉を遮るようになのはが顔を上げて言う。佐山を遮ってなのはが口にした事に誰もが口を開けてなのはを見る。随分と計算が速いな、と。


「…算数は得意なんで。あ、続けてください、佐山さん」
「ふふふ…私の台詞を遮ってくれるとは…後で君とはお話をしないといけないみたいだね?」
「お話ですか? 良いですよ。飛場先生式で良いなら」
「何でだから2人とも喧嘩腰!? そんなになのはちゃん、似てるって言われたのが嫌だった!?」
「新庄さんも、佐山さんと似てる所ありますよね」
「そんな馬鹿なっ!?」
「どういう事なのかきっかり説明して欲しいのだが? 新庄君」
「…いや、でも、そう、違う! それでも僕は変態じゃないっ!!」
「おい、三人とも。話を戻せ」


 なのはと佐山の睨み合いから、新庄が巻き込まれて騒ぎ出した三人に原川が疲れたようにツッコミを入れる。
 なのはと佐山はそれで平然といつもの状態に戻るが、新庄がその2人の切り替えの良さに半ば驚きながら、渋々、と言った様子で話を戻す。


「…つまり、穴が空く棚が十一列か、穴の空かない棚が五列、どっちかになるわけね?」
「そういう事だ。そして、十一、という数字に心当たりは無いかね?」
「…あ。衣笠教授の神話大全」

衣笠教授の神話大全。それは衣笠天恭が十一の神話について記したものだ。その全ては実は全Gが対応しているという神話について綴られているものだ。それならば確かに鍵として持ってくるならば納得が行く。


「…確かにあれは十一冊。しかも著者は衣笠教授のものなら…」
「で、でも…どういう風に本を入れれば良いのかわからないよ?」


 新庄が疑問を口にする。それに一度、皆が沈黙するが、すぐに佐山が腕を組み直し、ふぅ、と息を吐き出して告げる。


「それも簡単だ」
「…あ! 地球儀ですのね! いえ、世界と、そこにある十一の神話!!」
「ほぅ、ヒオ君はわかったのかね?」
「はい! 左上の地球儀を差kんこうにして、この二枚の本棚を世界地図に見立て、十一個の神話を世界地図の的確の位置に置くんですの。衣笠教授の書斎の入り口は、全てのGの神話を俯瞰するものだったんだと思いますの!」





    ●





 ヒオは立ち尽くしていた。
 本棚には衣笠書庫の神話大全が収められ、書斎への扉が―――開かれていなかった。
 あれ? とヒオは疑問に思う。自分でもかなり自信の合った推測だったと思ったのだが、外れていたのだろうか? いや、でも…、とヒオが困惑してオロオロするのと同時に。


「あっれぇーっ!? どーして開かないのかしら! ヒオが折角良いアイデア出したのに!!」
「おかしいですよね風見先輩! 折角ヒオさんが頑張って答えを出したのに!!」


 不意に、風見と飛場がヒオ以上に困惑した様子で頭を抱えて叫びだした。だがなのはは確かに見た。2人の口元がこれ以上にないぐらいに釣り上がっていたのを。
 ふと、なのはは視線を移す。そこには哀れみの視線でヒオを見つめる新庄がいた。新庄はなのはの視線に気付き、達観しきった表情で首を振った。
 そして、2人は静かに十字を切った。――哀れな子羊に、アーメン。


「あ、いえ、その、これはヒオが間違っていたからで、その―――」
「どーしてなのかしら!? 飛場、ヒオのためにもちょっと頑張りましょう!」
「そうですね風見先輩、どう頑張るのか解りませんがヒオさんのためにも頑張りましょう!」
「あ、あの、だから、ヒオが間違ってて――――」


 ヒオが何とか2人を諫めようとしているが、2人は何やらノリノリで、今度は「ふぬぁぁああ!」やら「ぬぁぁああっ!」と気合いのこもった声を挙げながら本を入れ直し始める。
 それにヒオがようやく自分が弄られているという事に気付き、何とか救援を請おうと原川に縋り付く。だがその原川は疲れ切ったように天を仰ぐだけだ。
 さて、どうしたものか、となのはは思う。きっと、という勘で、根拠は無いがなのははこれで正しいと思っている。この本の並びはきっと正解なのだ、と。
 だが、きっと何かが間違っているのだろう。だが、その何かがなのはにはわからない。


「…何か、音はするのよねぇ?」


 ようやく巫山戯るのを止めて、風見が普通に本を入れ直しながら呟く。確かに、本を収めると何かが押されるような音が。
 だが、それでも本棚の門は開かない。どうして? 何故? 皆が首を傾げる中、一人、首を傾げていなかった出雲が暢気な様子で呟いた。


「どうしたもこうしたもねぇ、って。間違ってるんだから。だから開かない。――合っていて開かなかったら、どうしてだろう、って言い方もありだけどよ」
「…あのね覚。皆が考えてるんだから…」
「何かが間違ってるんだろう。だから開かない。だから開かないんだ。だったらどうしようも出来ないだろう。きっと、俺たちには何かが欠けてるんだろうさ。開ける為の何かが」


 出雲の言葉に確かに、となのはは頷く。答えがこれで合っているのだとしたら…何かの要素が欠けているのだろう。その要素は今の自分たちには無いもので、それを追い求めなければ開かない。
 本棚の前で皆が首を傾げる。だが、答えは出ない。ただ、無為に時間だけが流れてゆく。


「…今日は解散するとしよう。このままここに居ても、出雲の言うとおり、今の私達では開かない。ならば開くための何かを求めなければならないだろう」
「…それって、やっぱり過去よね?」
「……そうだな。そういう事になるだろう」


 そして、その日、佐山の解散の一言でそれぞれの面々は衣笠書庫を後にしていくのであった。





    ●





 衣笠書庫からの解散の後の話だ。
 その後は事態は慌ただしく動いていった。Top-Gの存在が明らかになった事によって、全竜交渉を疑問視する声が挙げられ、各Gが居留地に閉じこもってしまった事。
 更に、日本UCATに対する各国UCATからの追求が起きて、半ば全竜交渉部隊は身動きが取れない状態になった。
 更には佐山達は学園祭の準備も始まり、日常と全竜交渉部隊としての生活に追われる事となる。
 そんな中、学校を半ば休学している状況のなのははと言うと……。


「…よいしょ、と」


 なのははUCATの居住区に割り当てられた部屋、そこで荷物を纏めていた。着替えなどを詰め込んだバッグを肩から下げて部屋を後にする。
 鍵を閉めて、鍵をバッグの中に入れれば、ふぅ、と息を吐き出す。ふと、なのはは頭上に手を伸ばす。そこには、獏がいる。
 いつもは佐山の頭の上にいる獏だが、今日はなのはの頭上にいる。それには当然、訳がある。
 荷物を抱えて歩き出したなのはは段々と見えてきた人影に軽く手を振った。それに気付いた人影の一人、ウーノがなのはの鞄を手に取った。


「あ、ウーノさん。別に良いですよ。自分で持ちますから」
「Tes.お気にせずに」
「良いんだよ、高町君。どうせ詰んでしまうのだから。身長の低い君では届かないだろう?」


 ウーノに取られた鞄に少し申し訳なさそうに告げるなのはだったが、それを軽く流すウーノと、どこか暢気な様子で声をかけてきたジェイルに反論され、口を閉ざす。
 身長が低い、という一言に半ば殺気を交えてジェイルを睨み付けたなのはだったが、はぁ、と溜息を吐き出して。


「…わかりましたよ、もう。好きにしてください」
「あぁ、では好きにさせて貰おう。ウーノ」
「はい。準備は出来ていますので」
「…ありがとうございます。ウーノさん」
「私に御礼は言わないのかね? 高町君」
「野垂れ死んでて結構ですよ?」


 ジェイルと目を合わせずになのはは簡潔に言い切り、ウーノの背を追う。その背をやれやれ、と言いたげに肩を竦め、苦笑を浮かべたジェイルが追いかけていく。
 彼等が向かった先には車が一台止められていた。その運転席に座るのはトーレで、助手席にはチンク、後ろにはドゥーエとクアットロが乗っている。


「待ってましたよー。なのは」
「うん、お待たせ。クアットロちゃん」


 見た目の年齢が近い為か、2人は既にタメ語で話している。故にちゃん付け。チンクもちゃん付けされそうになったが、本人の断固なる拒否によって彼女は呼び捨てである。
 それ以外は、皆、さん付けである。さて、しかし何故こうしてジェイル達がわざわざ車を用意してなのはを待っていたのか。


「じゃあ、行きましょうか」
「――第97管理外世界の観光に…!!」
「御神家の跡地に行くんですよ!!」


 ポーズを取りながら決めたジェイルになのははレイジングハートを無詠唱で起動し、アクセルシューターを全弾叩き込んでおく。
 だがジェイルはそれを奇妙な回転するような動きで回避する。何やら「ゲ○ダン!!」などと叫び、途中途中でポーズを取る。
 その奇妙な動きに嫌悪感を感じたなのはは遠慮無しにフラッシュインパクトを直接叩き込んでおいた。錐揉み回転をしながら吹き飛ぶジェイル。たまやー、とクアットロが楽しげに呟いた。


 そう、なのははこれからUCATを離れ、独自に御神家の過去を探りに行こうとしているのであった。
 それ故に、佐山から役立つだろう、と獏をレンタルし、こうしてジェイル達が足を用意してくれる、という事になったのだが…。


「ちょっ、トーレさん!! 制限速度、制限速度っ!!」
「制限? 私に制限など存在しない…! あるのはただ、速さの限界への境地…!! 誰も私の前を走らせるものか!!」
「きゃー! はやいはやいーっ!!」


 まだここはUCATの敷地内。故にそこは森が広がっている山道な訳なのだが、そこを100キロは超えているのではないか、というスピードで駆けていく車。
 なのははシートベルトをしっかりと付けているが、それでも不安なのでレイジングハートでいつでも防御魔法を展開出来るようにしている。
 ウーノは平然と、ドゥーエは流れる景色に目を向け、クアットロははしゃいでいる。チンクは瞳を閉じて眠っているようだ。その中、ふと、隣に視線を向けるとやや顔色が悪いジェイルがいる。


「…あの、ジェイルさん?」
「…何かね? 高町くん。ここにポリ袋はあるが?」
「いやーっ!! 誰か止めてーっ!! むしろこの人どうにかしてーっ!!」
「いや、君の所為でもあるんだがね…。あぁ、頭が…!!」
「クネクネしないでください!! 気持ち悪い!!」
「気持ち悪い…私が気持ち悪い? そうか…私は気持ち悪かったのか。うぇぇ…」
「いやぁぁあーーーっ!! もう、降りろーーーーっっ!!」


 ぎゃーぎゃーとなのはの騒ぐ声が車内に響き渡る。こうして、騒がしく、賑やかになのはの過去を巡る旅が始まるのであった…。





 
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