次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 第2章 02
2010/04/19 Monリリカル・クロニクル
 なのははある場所を訪れていた。それはUCATの地下だ。彼女にはどうしても確認しておきたい事があって此処を訪れていた。
 かつん、かつん、と廊下に響く自分の足音を耳にしながらなのはは地下へと進んでいく。その歩みに迷いはなく、彼女はその場所へとたどり着く。
 そこは1つの部屋だ。だがその部屋には様々な概念が仕掛けられている。それはまるでこの部屋に何かを閉じこめているかのようだ。
 いや、実際には閉じこめているのだろう。故にこのように概念が施されているのだから。なのはは小さく息を吐き出しながらそっと、その部屋の扉をノックした。


「…誰ですか?」


 扉の奧から声がする。それは少女の声だ。なのははその少女の声にもう一度息を吸い、その扉の奧にいる少女へと声をかけた。


「ちょっとお話したい事がありまして来ました。――田宮詩乃さん」





    ●





 田宮詩乃は戸惑っていた。その原因は目の前に座る少女。その少女の姿はあまりにも自分の知る「彼女」の姿に似すぎている。
 更に言えば彼女がそもそも自分をここに捕らえさせた人物だと言う事が詩乃に動揺を与えてしまっている。だが、詩乃の動揺も気にした様子もなく彼女はただそこにいる。
 詩乃が囚われている部屋は最低限の生活は送れるようにはなっているが、椅子など来客用のものがある訳ではなく、互いにベッドに腰をかけて話し合う形になってしまっている。


「…まずは名前から。私は高町なのはです。田宮詩乃さん、ですよね?」
「え、えぇ…」


 なのは。その名前に少しだけ詩乃は眉を寄せる。やはり思い出されるのは「彼女」の姿だ。やはり良く似ている。あの彼女と。
 だが纏う雰囲気は似ているようで違う。彼女は優しかった。明るくて元気で、まるで太陽のような印象を持っていた。
 彼女も似ていると言えば似ている。だがどちらかと言えば彼女はまるで沈み行く夕日のようなイメージだ。明るくも、どこか切なさを呼び起こしてしまうような…。
 そこまで思い、詩乃は何を考えているのか、と首を振った。こんな事を考えていてもどうしようもないのに、と。


「…私に似たような人が、詩乃さんの知り合いにいるんですか?」
「え…あ、その…」
「その人って、御神菜乃花、って言う人ですか?」
「!? ど、どこでその名前を…」


 なのはが何気なしに呟いた言葉に詩乃は驚きを見せてなのはを見た。Low-Gの人間はTop-Gの事を意図的に隠していた。それ故に知っているとは思わなかったからだ。


「…私の本物に教えて貰いました」
「…え…?」
「私が聞きたいのは、その私の本物の事です。…田宮詩乃さん。御神恭也を知っていますか?」
「…!? 貴方が…恭也さんの偽物…」


 なのはの問いかけに詩乃は茫然としたようになのはを見つめる。そしてその驚きの顔は次第に納得の色へと変わっていき、その表情は怪しむものへと変わる。


「…でも、どこで貴方は恭也さんの事を? 恭也さんは…10年前のTop-Gの崩壊の時に…」
「…亡くなったんですか?」
「…あの人は…新庄さん、えと、新庄運切の両親の護衛を務めていて…そのまま…」
「…新庄さんの両親の?」


 なのはは詩乃から告げられた情報に眉を寄せ、目を細める。どうして御神恭也が新庄の両親の護衛を務めていたのか? 疑問が過ぎるが、10年前の事だ。詩乃が知っているとは思えない。
 それに聞きたい事はそこじゃない。これはあくまで確認だ。戸田命刻も知っているならば、田宮詩乃も知っているのではないか、と当たってみたのは正解だったと。


「…その御神恭也って、幾つぐらいでしたか?」
「えと…だいたい18歳ぐらいですけど…」
「…そう、ですか」


 やはり間違いは無いようだ、となのはは確信して溜息を吐く。つまりは10年前に存在していた「御神恭也」は確実に青年で、だけど、その10年前に青年であった筈の「御神恭也」は自分の祖父として60年前に存在している。
 この矛盾点はどういう事なのか? なのはは考える。まるで「恭也」が2人いるようにも思えるが、そんな事はあり得ない筈だ。
 異なる時代に存在する「恭也」。これは一体どういう事なのか、となのはは思考を巡らせるも、答えは出る事はない。


「…あの…」


 悩み耽っていたなのはにおずおずと詩乃は声をかける。それになのはは思考に潜らせていた意識を浮上させて詩乃と視線を合わせた。


「それで…貴方はどうして恭也さんの事を知ったの…?」
「…遺言を託されたんですよ。御神恭也さんに」


 自分の祖父だと言う事は敢えて伏せる。これを言えば面倒な事になるだろうから、となのはは思ったからだ。正直自分でもわからないのだ。
 それを聞いた詩乃は少し驚いたような顔をした後、なのはを真っ直ぐに見据える。膝の上に置かれた手は強く握られていて。


「……どうして…」
「…?」
「…どうして貴方は、全部知っていても、あんな事が言えたの?」


 詩乃はなのはの言葉の全てを聞いている。自ら悪役になろうと、Top-Gの人間に対して挑発とも取れる言動の全てを。
 全部知っていて、それでも尚、彼女はどうしてあんなにも自らの意志を貫き通せたのだろうか、と詩乃は疑問に思ったのだ。
 その詩乃の問いかけになのはは何度か瞬きをした後、瞳を伏せて小さく息を吐き出した。


「…幸せだから」
「…え?」
「今が凄い幸せで、それを壊されたくなかったんです。ただ護りたかった。確かに…申し訳ないって程度じゃない事をこの世界はしてしまった。だけど…私はこの世界が好きなんだ。詩乃さんがTop-Gを大事に思うように、私だってこの世界が好き」
「……」
「それを許せない、って思うならそれで良いです。だけど…正直に言えば、私は迷惑です。私達は何も知らない。ただ目の前に危機があって精一杯やってきました。自分たちなりに、この世界を護ろうとして、良くしようとしてきた。それを否定されたくない」


 だから、となのはは小さく呟きを入れてベッドから腰を上げる。立ち上がり、詩乃と向き合うように視線を向けて。


「…だから真っ向から全部、受け止めます。詩乃さんの苛立ちも、悲しみも、憎しみも。そして認めて欲しい。私達がここにいても良い。そんな未来が選べるまで」


 そっとなのはは胸に手を当てる。思い出すのはフェイト、そしてヴォルケンリッター達との戦いの日々の記憶…。


「言葉にしなきゃ伝わらない。だけど言葉でも届かない思いがあります。だから私は言葉も、力も、感情も、全部と向かい合っていきます。私には…そんな方法しか思いつかないから。それが正しいって思うから、私はそうして生きていくんです。それが、私らしい生き方ですから」


 浮かぶのは笑みの表情。それはとても力強い笑みだ。その表情に詩乃は思わず見つめてしまう。それは見ていてとても魅力的な笑顔だ。
 思わず惹かれてしまうような、そんな笑み。そんな笑みが出来るのはきっと心から笑っているからだろう、と詩乃は思う。そうなのだと理解する。
 あぁ、だからこそ詩乃は羨ましい、と思う。そんな笑顔を自分も出来たら…そして義姉さん、命刻にもそんな笑顔をして欲しかった。
 皆、どこか何かを抱えている。だからこそ心の底から、本当に笑えているのかどうかはわからなかった。皆、そう、皆そうだった。
 昔は…そこにあった筈の笑顔は無くなった。全てはLow-Gが全てを壊してしまったのだから。だからこそ…それは許してはいけない筈だった。
 忘れる事など許されない。知ればお前達だって笑えなくなるだろう。そしてそれがお前達の罪だと、それを突きつけるのが軍だった筈だ。
 なのに…彼女は違う。彼女は心の底から笑っている。自分の行いが正しいと胸を張れている。それは憎しみを感じる前に強いな、と感じてしまう。


「……貴女は、強いね」
「…強くなりたかったんです。嫌いになりたくないから」
「…嫌いに?」
「嫌いなものばかりだったら、きっと生きるのが辛いですよ。人だから嫌いなものはやっぱり出来る。だけど…出来るだけ、些細な事でも好きだと思えるようになればきっと、とっても幸せになれると思うから」


 それは例えば、友達と話す何気ない日々。
 それは例えば、家族と過ごすかけがえのない時間。
 それは例えば、ふと目にしたものを愛おしく思える瞬間。
 それは例えば、目的に向かって進んでいく事への達成感。
 その1つ1つが輝いていけるなら、きっと人生だって輝いていける。何気ない事の全てが輝くならその人生はつまらないものになる事なんてあり得ない。


「幸せは、やっぱり自分で感じなきゃ得られないから。誰かに貰った幸せは、やっぱり私が感じたからで、それを得るためにはきっと何かしなきゃいけないし、してあげられたらもっと良いって、私は思います」
「…ぁ…」


 誰かに貰った幸せ。だけど、それを幸せだと感じるのは自分。
 あぁ、と詩乃は声を漏らす。それはなんて、それはとても、それは…納得の行く言葉なのだろう。
 幸せである事。幸せでいて欲しいと願ってくれていた人がいた。その人はきっとそれを正しいと思って私にしてくれたんだろう。
 だけど、じゃあ…私はあの人に、命刻義姉さんに何をしてきたのだろう。あの人が幸せになれるように何かをしてきたのだろうか?
 何もしてあげられてないんじゃないだろうか。自分は…何もしてあげてなかったんじゃないだろうか。
 そう思うと胸が苦しくなった。どうしようもなく目尻が熱くなる。え、と思うと同時に涙が零れていった。
 なのはが驚くような顔をしているのが詩乃には見えた。だけど詩乃は何も言えない。どうして自分が泣いているのかもわからない。
 ただぽろぽろと、ぽろぽろと涙が零れていく。何をしてあげられたのだろう、何もしてあげられてない。思えば思う程に涙が零れて…。
 その涙を拭うようになのはが手を伸ばす。そっと伸ばされた手は詩乃の涙を拭う。


「…悲しいんですか?」
「…悲しい…のかな…」
「…わかりません。だけど、理由も無く流れる涙はないですから」
「……」
「それはきっと、詩乃さんの思いですよ。だから…流した方が良いと思います。我慢しないで、全部。じゃないと溜まっちゃって苦しくなっちゃうから」
「…っ…」
「…邪魔なら、出て行きますから」


 すっ、となのはが手を離そうとする。だが、その手を詩乃は反射的に掴む。何かに縋っていないと不安で仕様がなくなる。ただ手が震えて、喉の奥が震えて、掠れた声が漏れて。
 なのはは自分の掴んだその手を優しく握り返す。包み込むように、繋ぎ止めるように。その存在を確かに感じさせるように。


「…泣いて良いんです」
「……っ…ぅ…ぁ…っ…!」
「大丈夫。大丈夫ですから…」
「あっ…ぁ、ぁぁっ…! ぁ、あぁ、あぁぁああああああっっっ!!」


 なのはの言葉が詩乃の心を縛りを解き放つ。解き放たれた詩乃の心は叫びとなって零れていく。
 ごめんなさい、ごめんなさいと心の中で繰り返す。些細な事でも幸せな事。あぁ、それは当たり前になってしまえば輝かないけれど、だけど本当はとても大事な事。
 あの人は優しい。そう、優しいんだ。自分が傷付いても誰かが傷付かなければそれでも笑っていられる人じゃないか。
 本当は臆病で、だからこそ優しくて、だからこそいっぱい、いっぱい傷付いて。それでも、震えながらでも立ち上がっている。
 護られてきたんだ。ずっと、その背中に。ずっとあの背中が自分を護ってきてくれたんだ。震えても倒れず、崩れ落ちなかったあの背中が。


「義姉さん…! 命刻…義姉さん…!! ごめん…なさい…!! ごめんなさい…!!」


 私が弱いから。私がずっと弱かったから。だから傷付いて、それでも頑張ってきてくれたあの人の背中が。
 気付いてあげられなかった。気付いてあげるべきだったのに。なのに…私の目も曇っていたのかも知れない。
 私も私で一杯一杯だったのかもしれない。だけど、こうしてUCATに捕まって、もう何も出来ない。そんな立場になって、解放されてようやく気付けた。
 あぁ…私達は悲しかったんだ。ずっとずっと悲しくて泣いていたんだ。だから苦しくて、憎んで、そうじゃなきゃずっと泣いてしまうから。泣き続けるのは乾いてしまうから。心の全てを吐き出してしまうから。
 心の全てを吐き出してしまったら、得るものが無い私達には何も残らないから。だから欲しかったんだ。だから、ずっと、ずっと――。


「…辛かったんですね」
「…っ…ぅん…っ!!」
「…悲しかったんですね」
「…う…んっ…!」


 握ってくれる手の温かさが。握り返せば、握り返してくれるその手の感触が。受け止めてくれるその全てが…。
 望みたかった。望んでいた。そして望んでいる。私は…私達は、ずっとあの時に失った時の傷を癒してくれる何かを求めていた。


「…辛かったよぉ…! 悲しいよ…っ! だから…だからっ!」
「……はい」
「うぅ…っ、うぁあっ…うぁぁああっ…!!」
「……ごめんなさい。…私は、返す事は出来ないし、だからと言って何かを差し出せる訳じゃない。だから…全部、全部叩き付けてください。それは全て受け止めますから。全部、真っ直ぐに。必ず」


 詩乃は叩き付ける。それは弱々しい拳だったが、それはひたすらに重い。泣きじゃくるように涙を流しながら詩乃はなのはの胸に拳を叩き付ける。
 なのはは堪えるような顔をしながらその手を受け止める。受け止めて、包むように握って。
 暫し、詩乃の泣き声だけが部屋の中へと響き渡る。それは一人の少女の泣き声。「軍」として訴えた彼女とは違う、一人の彼女という存在の叫び。
 それは同じのようであって、少し違う。そしてその叫びはただなのはに響くように伝わる。響けば震え、震えは軋みとなってなのはに苦痛をもたらす。
 だけど受け止めると決めた。憎しみも、悲しみも。そして…そこから始めていく。自分が思うように。望むように。だからなのははただ受け止め続ける。彼女が泣き止むまで、ただ、何も言わずに…。





    ●





 …どれだけ時間が経っただろうか。響き続けた詩乃の叫びは止まっていた。詩乃は目に泣いた跡を残しながらも、落ち着いたのか今では鼻を少し鳴らすだけだ。
 なのははそんな詩乃を見つめている。詩乃は少し気まずげになのはから視線を逸らす。そして一息。一度瞳を拭ってあげた顔はとても晴々したものだった。


「…貴方はやっぱり強い人ですね」
「…そんな事ないですよ」
「…そんな事ありますよ。…いいなぁ。私もそうだったら…もっと早く気付いてたのかもしれないのに」


 そうすれば命刻義姉さんはもっと笑ってくれただろうか。何かが変わっていただろうか。もっと他に結末があったんじゃないかって詩乃は思う。
 だけどそれは最早過去の事。それはあり得ない未来。現にこうして自分はこうならなければ気付く事は無かったのだから。


「…今からじゃ、遅いかなぁ」
「…どうでしょう。でも、まだ終わってない。Low-GとTop-Gとの戦いも、各Gとの戦いも、世界も。本当の最後まで何一つ終わってないんですよ」
「…うん。そうだね」


 まだ終わってない。そう、まだ決着は付いていないのだ。ならばまだ時間はある。まだ機会はある。そう、それなら…と詩乃は思う。


「…なのはさん」
「なのはで良いですよ。敬語もいりません」
「…じゃあ、なのはちゃん。お願いがあるんだ」
「…何ですか?」
「…命刻義姉さん、貴方と戦っていた人がいるでしょう? あの人は凄く私の事を気にしてくれて、護ってくれた人なんだ。そしてきっとこれからも護ってくれる。護ろうとしてくれる。その為にきっと戦い続けると思う。
 …でも、本当はあの人は臆病で、それでいて優しいから。だから本当は戦いに向いてない人なんだと思うの。命刻義姉さんがどう思うかわからないけれど…だけど、もう、義姉さんは戦わなくても良いと思うの。戦わされる戦いは義姉さんにはもう、あって欲しくない」


 命刻が自ら刀を取るなら…詩乃は拒まない。義姉さんが望むなら、と笑って送り出してやろう。
 だけど自分の為に、我が身を削ってでも戦うというのならば…詩乃は、今の詩乃なら言えるだろう。だから、今、彼女はなのはに託す。


「…命刻義姉さんを止めて。もしも義姉さんが自分の為に戦うなら戦ってあげて欲しい。だけど…もしも私の為に戦うというのなら…絶対に止めて欲しい。もう私は足手纏いにはなりたくないの。命刻義姉さんには…命刻義姉さんの道を歩んで欲しいから」
「…詩乃さん」
「…だから、勝手だとは思うし…こんな事言ってたら裏切り者だと思われちゃうかもしれない。でも…それでも私は命刻義姉さんが大切なんだ。――私の家族だから」


 だから、と詩乃はなのはを真っ直ぐに見つめて。


「…お願いしても、良い?」


 詩乃の瞳が不安げに揺れる。なのははその瞳を真っ直ぐに見つめる。暫し、詩乃となのはの視線が交錯する。
 どれだけ間を置いただろうか。詩乃と視線を合わせていたなのははゆっくりとその表情を変えていく。――そして微笑みへと変わる。


「…えぇ、わかりました」
「…良いの?」
「詩乃さんは私にそう望んで、私もそうしてあげたいな、って思ったから。だから…やってみようと思います」


 なのはは力強く告げる。誰かに強制された訳ではなく、誰かに同調し、自ら力を貸したいと望んだが故に。だからその返答もまた力強い。
 なのはの返答に詩乃はそっと胸を撫で下ろす。そして思う。まだ自分は何か出来る。まだ自分はこの言葉を、思いを伝える事が出来る。何かする事が出来る。
 足手纏いかもしれない。だけどそれでも足掻きたい。足掻く事が出来る。それは…きっととても幸いな事。


「…ありがとう、なのはちゃん。本当に…ありがとう」
「御礼は良いですよ。まだ何も果たしてないんですから」
「…うぅん、それでも、私は今、御礼が言いたいんだ。…だからありがとう」


 詩乃もまた微笑む。言葉を、思いを受け止めてくれる彼女の存在はとても力強く、暖かく、そして頼もしい。
 それはきっと恐らく、なのはの力。恐らく、彼女の親友であるフェイト・T・ハラウオンも感じたのだろうなのはの力。
 曲がる事無く、ただ真っ直ぐに真っ向から全力で。受け止めてくれる彼女はとても魅力的なのだろう。
 きっと本人はそれを自覚してはいないんだろうけど、と詩乃は思わず思う。きっとソレは無自覚だからこそ輝く力。それが高町なのはという少女なのだろう。


「…じゃあ、御礼の代わりに私からもお願いしたい事があるんですけど、良いですか?」「…え? 何?」
「…Top-Gの話が聞きたいです。それから…御神恭也について教えてくれませんか?」
「…恭也さんについて?」


 なのはは頷く。その顔は真剣な表情で詩乃は思わず息を呑む。きっと何か理由があるのだろう。これだけ彼女が真剣になるだけの理由が。
 …命刻義姉さんの事に応えてくれた彼女だ。ならば自分もまた応えない訳にはいくまい、と詩乃は思い、頷く。


「うん、別に良いよ。…そうね…じゃあ、何から話そうかな…」





    ●





 あの人は、優しかった。
 あの人は、不器用だったけれど。
 あの人は、それでも優しかった。
 あの人は、私の頭を良く撫でてくれた。
 あの人は、あまり表情を変える事は無かったけれど。
 あの人は、それでも微笑む時はとても優しかったのだ。
 あの人は、とても強くて、優しかったからとても大好きだった。

 あの人は、御神恭也はそんな人だった……。
 …じゃあ、話すよ。あの人との思い出。私の知っている恭也さんの事を…。




 
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