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リリカル・クロニクル
2037/04/19
リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 第3章 08
2012/08/03
リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 第3章 07
2010/10/14
リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第3章 06
2010/10/13
リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第3章 05
2010/10/13
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■■■リリカル・クロニクル
2037/04/19 Sunリリカル・クロニクル
リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=



 少女は全てを失った。翼を、夢を、未来を、居場所を、自身というその価値を。
 少女はただ一人取り残される。誰もいない世界の中で少女は己を嘲笑う。
 そして少女は出会う。それは十なる竜を統べる者達。世界の終末に抗う者達。
 そして少女は顔を上げた。そこに全てが見えた気がした。それは必然の物語…。
 それは綴られぬ年代記。幻の如き想いを抱いた「幻想年代記」。終わらせる為の戦いを描いた記録である…。
 ※Arcadia様にもご投稿させていただいております。


序章「喪失の道標」
 01 02 03 04 05 06

第1章「過去、現在、そして未来」
 01 02 03 04 05 06 07
 08 09 10 11 12 13 14
 15 16 17

第2章「終焉の鐘は鳴り響く」
 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

第3章「終わりのクロニクルへ」
 01 02 03 04 05 06 07 08 New
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 第3章 08
2012/08/03 Friリリカル・クロニクル
 空を行くサンダーフェロウは急上昇、そして下降、旋回、様々な動きを繰り返して相対するなのはを翻弄する。なのはは空を駆けながらアクセルシューターを周囲に展開するも、サンダーフェロウの速度の前に追跡は不可能。ただ接近してきた際に防御壁を張って防ぐ事しか出来ない。


「くぅっ! やっぱり、ジリ貧かぁ…っ!!」


 衝撃によってはじき飛ばされるなのはは歯を噛みしめながら悔しげに呟いた。このままでは一方的に嬲られるだけだ、となのはは予測を立てる。何か一手、それを打たなければこのまま敗北するだけだ、と。
 サンダーフェロウは機竜だ。その重量と巨体の突撃を受けただけでもなのはにとっては致命傷に近い。これでは魔力を無駄に消費され続けるだけ。なんとか打開策を打たなければと思案する。
 こんな時にいつもは頼れる相棒がいた。だが、今は相棒はここにはいない。それに不安を感じるも、Me-Ssiahを握る手に力を込める。こんな事で不安になってばかりではいられない、と。


「あっちが早くて捕まえられないなら…!!」


 なのはは突如思いついたソレを実行に移す。再び接近してくるサンダーフェロウ。旋回し、加速しながら突撃してくる巨体に対し、なのははシールドを張って防御する。そしてそのままサンダーフェロウが突き抜けようとした瞬間、なのはが設置していた魔法が発動する。
 それはチェーンバインドだ。なのはの掌から浮かび上がった光の鎖はサンダーフェロウを絡め取る。だが、それはサンダーフェロウの動きを抑制するものではない。サンダーフェロウに絡んだチェーンバインドをなのはは自身へと巻き付けた。


「なにっ!?」
『えぇっ!?』


 原川とヒオが驚く声がする。なのははサンダーフェロウに引きずられる。その身体にかかるGをバリアジャケットのG相殺機能を持って相殺しながらなのははMe-Ssiahを構えてチェーンバインドを巻き上げていく。
 少しずつ、だが確かになのははサンダーフェロウとの距離を詰めていく。


「不味いぞ、ヒオッ! 振り切れッ!!」
『は、はいっ!!』


 原川の叫びにヒオが応えようと加速を開始する。だが、遅い。
 ヒオの背、そこに僅かな痛みが走る。それはサンダーフェロウの背部装甲に位置する場所。なのはは風圧に堪えながらもMe-Ssiahを突き立て、サンダーフェロウに取り付いていた。
 にぃっ、とその唇を歪める。それは笑みの形にだ。ヒオが背筋を凍らせる中、なのはは突き立てたMe-Ssiahに魔力を込めている。


「…悪魔め」
「ディバイン…バスタァァアア―――ッッ!!!!」


 原川の呟きを飲み込むように、桃色の閃光が爆ぜた。





     ●





 桃色の閃光が爆ぜ、サンダーフェロウがなのはと共に落下していく様を佐山と命刻は疾走し、互いに刃を交えながら横目で見た。
 二人の位置は東京タワーを間近に控えていた。その場で切り結ぶ二人にはあの巨体と鮮やかな閃光はどうにも目を取られてしまう訳だ。


「こちらのポイントは五点。私が先に到達すれば私の勝敗が決まるな」
「行かせると思うか?」
「思わないな。ならば、倒して行こう」
「倒せるとでも?」
「貴様こそ、負けないとでも?」


 交差する。
 槍と木刀。獲物は違い、戦い方も、その経験も何もかもが異なる二人。だがその差異はただ差異であり、二人の根本は変わらない。退かない、と。お前には負けてやらないと佐山と命刻は意志を叩きつけ合う。
 佐山の振るったムキチの木刀が命刻の頭を割らんと迫り、命刻はそれをB-Spの柄で防ぎ、回転させるように命刻の凪いだB-Spの柄が佐山の腹を殴りつけようとする。それを佐山は木刀で受け止め、そしてはじき飛ばす。


「状況は明らかに私が優勢だ。これも、なのはのお陰だがな」
「あぁ。だが、この状況だからこそ、私は滾る。これも彼女のお陰だ」
「それは、得か?」
「至福だとも!!」


 佐山の振るった拳が命刻の頬を抉る。ジャストミート。だが、命刻は踏みこたえ、逆にその頭を佐山の額に打ち付ける。頭部への衝撃に佐山がもたれ、それを命刻が蹴り飛ばす。
 そのまま転がる佐山から離れ、そのまま疾走しようとした所で佐山が追いかけてくる。追う側と、追われる側と。ぶつかり合いの戦闘は追撃戦へとその様を変える。


「何を為せばいいと燻った日々に比べれば、何という僥倖!! 全力で追わねばと、全力でも足りぬと、あぁ、快い!! 徹底的に叩き潰してやりたいと思える貴様を追うこの幸福!! 耐え難いね!!」
「全力で拒否させていただこう。あぁもう、どうして私の鏡面である筈のお前がそんなに変態なんだ……! ――私がマトモだからかっ!?」
「鏡を見て発言する事を推奨しようっ!!」


 跳躍からの上段振り落とし。それを命刻は回避するも、佐山の叩きつけたムキチの木刀から冷気が迸り、命刻の飛んだ足を固めるように氷が形成される。命刻は咄嗟にB-Spを振り、氷を溶かす。
 その間に佐山が命刻を射程に捉え、再び鍔迫り合いとなる。


「困難だな! 貴様は強い! 私も強いが、私だからなッ!!」
「私はお前だからな。だからこそ、私はお前がどうしてそこまで食らいつくかわからん」
「温い、な! その顔面ぐちゃぐちゃにしてやりたいぐらいの殺意が沸いてくるな!!」
「そう、か」
「満たされてるというのは、幸福か?」
「至福だとも!!」


 佐山の問いかけと共に放たれた一撃を命刻は受け止めながらも笑みを浮かべて応える。


「満たされていた。あの日々は。だからこそ嘆いている。あぁ、もう手に入らないのだと。悲しいのだと。返して欲しいのだと。私は知っているんだ。―――満たされるという事を!!」
「飢えていた。あの日々は。だからこそ歓喜している。あぁ、こんなにも心が躍るのだと。
嬉しいのだと。心が沸き立つのだと。私は知っているのだ。―――満たされていくという事を!!」
「そこに、どう違いがあるか、わかるか!?」
「それは、どうして異なるか、わかるか!?」
「返してと!!」
「よこせと!!」


 二人の獲物は交差し、


『――私たちは知っているとも!!』


 そして、爆ぜる。


「不毛と知りながら叫ぼう…! 失われた思いを、空回りと知りながらも空回るしかない思いを叫ぶぞ…!!」
「聞いてやろう!!」
「返してくれ!! 私が得ていた全てを!! 悲しみなんてない、未来に向かうだけのあの日々を!! 不安も人並みで、平凡で、誇れるそんな日々を!! 友を!! 家族を!! 世界を!! 私に返してくれ!! 私たちに返してくれよっ!! 簒奪者ッ!!!!」


 交差したムキチの木刀から生じた冷気とB-Spより発生した熱気によって発生した水蒸気爆発の余波に足を取られ、吹き飛ばされ、されど再度地面に足をついて命刻は佐山へと疾走する。


「欲しいと! 欲しいと!! 全てが欲しいと!! 全てを持っていた私たちから全てを奪った!! あんなにも平和だったのに!! あんなに素晴らしい世界だったのに!!」
「幸福と、説くか」
「―――そうとも!!」


 そして命刻はB-Spを振り抜いた。





「―――戯け」





 それを、ムキチの木刀が受け止める。


「戯け、この戯けめ! 大事な事なので二回言ってやったぞ! もう一回ついでに言ってやろう! この戯けめ!!
「――その、心はッ!?」
「――足らん!!!!」


 渇、と。佐山が吼える。


「喜劇、幸福、至福、幸運、平和…!! 貴様の世界には有り触れていたのだろう…!! 何故ならばお前の世界には”神”がいないっ!!」
「ぬぅっ!?」
「自給自足、あぁ、何とも幸せだろう。足りぬモノはないと! 神に祈る事も、呪う事もしない!! 己で完結する!! そして完成するのがニート予備軍の引きこもり常習犯だっ!!」
「誰がニートかッ!! 引きこもりでもない!! ――部屋にいるのが大好きで、働きたくないだけだッ!!」
「―――それが、つまらんっ!!」


 応、と佐山が叫ぶ。


「天を見ろ。そこには星がある。太陽がある。大地を見よ。足が地についている。倒れる事はない。倒れても受け止めてくれる。周りを見ろ。光があり、景色がある。風が吹いて、そして隣人がいる。そして人は時に争い、時に詰り、時に悪意を叩きつける」
「碌な事じゃないな」
「その涙は、重いと知った。その恨みは、深いと知った。その業は贖えぬ」
「あぁ、本当に碌なもんじゃない」
「――だからこそ、隣人の手が恋しい。引き上げてくれる手の温もりを、かけられる愛の囁きも、故にこそ、響くのだと―――ッ!!!!」


 嗚呼、と佐山は、


「――全てをよこせ、引きこもり!! 私は、私たちは世界の全てを受け継いで行こう!! そうだ、世界はいつだって無限大で、終わりなど、安定された平穏などいらぬ…!! 己の心の中に安定する自分を望め!! さすれば気づくだろう!!」
「それは、何だッ!! 変わらない安定、失わない大事なもの、理不尽のない世界の、不満にか!?」
「然り!!」
「ならばその先に何があると言う!! 安定のない世界で、何がある!!」


 答える。


「ならば、言おう!」


 吼える。


「――それは感情と理性でもあり、どちらでもなく、諦めも希望も生む絶対たるモノ」


 佐山が踏み出す。命刻が待ちかまえる。


「――終わりと始まりを生み、望むままに為し為さず、人が故に持つ矛盾にして正論」


 ムキチを握り直し、佐山は突貫する。


「ありとあらゆる全てでありながら、感情と理性を基礎に1つと言えるモノ―――!!」


 短く息を吐き出し、飛びかかる為の力を全身に。


「―――意志の力だッ!!」


 佐山の振るったムキチが命刻のB-Spが幾度目となるか、衝突する。
 


「私は望もう! 私の全てを賭けて、私の望むままに私が欲しい世界を築こうと!!」
「世界か! 貴様の言う世界とは何だ!!」


 冷気と熱気をそれぞれ放ちながら鍔迫り合う。放たれるエネルギーの余波に顔を歪めながら命刻と佐山は向かい合う。


「全てだ! 私たちの全てがある世界だ!! 今までの悲しみも、喜びも、何もかもその全てを抱えた上で進む世界だ!! 誰もが共に唄い、踊り、競い、在り続ける事の出来る世界だ!! 全ては等しくなり、私の世界の下に住まうのだ!!」
「独裁者となるつもりか―――ッ!!」
「独裁? 違う! 私は私の全てを賭けて私は作ろう!! ――だから、作るな、とは、言わぬよ!!」
「では―――!」
「望めよ! 全ては我にあり!! 己が心の中に、全ての答えは此処にッ!!!! 己の中の解答が唯一の解答だ!! それ故に手を取り合おう事も、それ故に争う事も出来るだろう!! その全てを私は認め、愛し、憎み、認めず、だがしかし受け入れる事を己に誓おうッ!!!!」


 そして、その先で―――選んでいくのだと。


「世界は、そうして作られていくだろう!! 皆が皆であるままに、皆が皆を思い、そして競い、時に争い、争いを嫌い、平和を望み、だが腐る事もせず、その繰り返しがずっと続いていく世界を私は望むッ!!!!」
「ずっと、変わっていくと! ずっと先に進むと! しかし問おう、佐山よッ! そこに弱者の居場所はあるのか!? 歩み出せぬ者に、未来は無い世界だろうっ!!」
「ならば、問おう!! 戸田命刻よ!! ――貴様ならどうするっ!?」


 佐山の問いに、命刻は自問する。
 ずっと変わり続ける世界。歩み出せぬ者はいつだってそこに足を止めたままだろう。
 そしたら未来は無い。そこに未来は無いから、結局、不幸が出来てしまう。
 正しいのだろうか。歩み出せる者だけが幸せになれる世界。それはずっと争いが続くだろう。独裁は続かない。


「私は―――私はッ!!」


 浮かぶのは、皆の顔。
 今まで出会い、過ごしてきた幼馴染みと、仲間と、知り合った少女と。


「それでも、共にあるべき道を探るだろう」
「歩み出せぬ者は置いていくぞ」
「それでも、共にあろうと私はその背を掴もう。そして、歩み出せぬ者の手を引こう」
「それは邪魔にもなるし、お節介だぞ」
「それでも、全てがある世界だ。いつか、やがていつか、私達も歩み出せる何かが生まれるかもしれないな。だから私は貴様に訴えるぞ、待て、と。私はここにいるぞと。歩み出せぬ者たちの手を引き、先行く者の背を掴み、されどどちらに傾く訳でもなく、その絆として―――私はありたい!!」


 それは、代弁者。


「答えてくれ世界を担い、作るという悪役よ! 世界を征服する悪役よ! 貴様の言う世界が失う痛みに値する芳醇な世界だと言うのなら―――――」


 それは、祈るように。


「――私を倒して見せろ!! 悪役ッ!!」
「――Tes.!!」


 佐山の手につけられた両腕のゲオルギウスが、震える。


「――ならば見よ、意志なる力。未来と過去を望む矛盾なる力。飽くなき望みが生み出す力を以てして――!!」


 ムキチの力がゲオルギウスの補助を受け、その力を震わせる。
 佐山の意志を受け、ムキチの力が上昇し、命刻のB-Spと衝突する。
 衝突は今までの比ではない水蒸気爆発を巻き起こし、二人の手元より武器が空に舞う。
 吹き荒れる水蒸気爆発の中、吹き飛ばされながらも地に這うようにしがみつき、佐山は前へ、前へと体を倒した。
 同じように命刻もまた前へと出る。
 あぁ、この決着に―――神も、世界もいらない! 神も世界も得るのは、この勝者でいい!!


(私が受け継いだ全てよ…! 私が得た全てよ…!)


 拳を握る。
 左拳。
 それは幻痛が走る拳。
 その痛みが呼び起こす。
 これまでの戦いを。
 これまで得た過去を。
 全ての思いと共に。
 佐山は拳を握る。
 そして鏡合わせのように命刻も右拳を握る。
 まったく互いに同じ軌道で。
 衝突――――結果は明白。ゲオルギウスをつけている佐山に上がる。
 だが、それでも命刻は痛みを無視する。彼女の賢石がすぐに再生を促す。
 佐山が受け継いだように、命刻も受け継いだものが。
 佐山が、前に倒す。
 命刻も、受ける。
 佐山の短い吐息と共に射出された拳のラッシュは命刻の体に吸い込まれていく。
 だが、それでもまだ命刻は動く。終わりなどないというように。
 佐山が吠える。その思いは1つ。


(負ける筈がないとも! 幾ら再生しようとも、私の鏡面が、私の相対が望むのは最高の敗北だ!! あぁ、そんな”つまらない”ものを望む者には、存分にくれてやろう――!!)


 吠える、獣の如く。
 振るわれる拳は動けぬ命刻の体に吸い込まれ、しかし打ち砕く事は敵わず。
 命刻の瞳が、佐山を見た。問うように、そして、応えるように佐山が頷き。
 頷きによって一瞬途切れた咆吼が、取り入れた酸素と共に叫びとなって吐き出される。


「もっと面白い世界を望めよ、世界は――――もっと面白くなるぞッ!!!!」


 限界にまで握りしめられた左拳が―――命刻の胸を穿った。
 そこには命刻の再生を司る賢石がある。ゲオルギウスが再生の力と拮抗し――そして、砕ける音を以てして破砕した。
 命刻の体が浮く。そして放物線を描き、命刻の体は地へと倒れていった。
 宙に舞い上がったムキチの入った木刀とB-Spを佐山は荒い息を吐き、酸素を求めながらもその手に2つの世界を掴んだ。


「ォ…、ォ、――――――ッッッッ!!!!!」


 吠える。
 それは勝利の咆吼。
 命刻の再生は既に始まっている。砕けた賢石もその形を取り戻しつつある。
 しかし、その表情は笑っていた。涙を流しながらも笑っていたのだ。


「笑えるか、命刻」
「……あぁ。痛くて泣きそうだ」
「痛いか命刻。どんな過去の痛みよりも」
「あぁ…痛い…」
「過去はいつだって超えられる。世界はいつだって―――更なる刺激に満ちてるぞ、命刻よ」
「あぁ―――――」


 まだ痺れる体を押し、命刻は己の顔を手で覆った。


「――それじゃあ、足は止められないよなぁ」
「Tes.、故に―――――」


 そっと、佐山が倒れる命刻に手を差し伸べる。


「共に行こう。失う痛みに比例し、いや、それすらも超える芳醇な世界を創るために。過去を望んだ者よ。過去よりも、未来は素晴らしいだろう?」











 そして、決着は着く。
 佐山が命刻と共に東京タワーに着く。そこには先に戦えた面々が集い、その身を休めていた。そして佐山を阻むものはいない。
 なのはが佐山と命刻に駆け寄り、佐山は命刻をなのはへと預けた。佐山に肩を貸されていた命刻はなのはに倒れ込むようにもたれかかり、なのはもそれを受け止める。
 これじゃ戦えませんね、と笑ったなのはに佐山は笑みを浮かべ、その頭を軽く撫で、前へと歩いていく。


「佐山御言だ。ここに概念核の奉納を宣言する」
「承りました。これで10の概念核の奉納を確認。―――5対5の引き分けでございます」


 うむ、と佐山は頷く。
 マイクを、と手を差し伸べる。その手にマイクを渡され、佐山は僅かに息を吸い。


「ここに結論は出た。―――我等は全てを抱えて行く。未来も、過去も共にある。その全てと共に生きていくと―――――!! ここに、全竜交渉の全てを終えた事を宣言する!!」





 
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる= 第3章 07
2010/10/14 Thuリリカル・クロニクル
 誰もが見ていた。その戦いを。
 誰もが見ていた。見届ける為に。
 誰もが、そう誰もがこの決着の果てを見届ける為に見つめていた。
 舞い踊るのは世界を操りし者達。互いに譲れ得ぬものを賭けて戦うその姿は胸を打つ。
 最早、答えがどちらでも後悔はないだろう、と思う。この決着の果てに得られる答えならば、と。


「…皆…」


 その中で、新庄は両手を組んでモニターを見ていた。繰り広げられる戦い。決着が着いた戦いもあれば、未だ繰り広げられている戦いもある。
 皆が必死に戦っている。世界の答えを出す為に。間に立つ新庄はただ祈る。どうか、どうか、と。


「…頑張って…!」


 どちらを応援する訳ではない。だが、どちらが勝っても負けても、どうかより良い答えが得られますように、と。





    ●





 舞い踊る二機の武神の戦いは終わりを迎える為にその速度を加速させていた。劣勢は明らかにテュポーンだ。最後の進化を迎えた荒帝の性能が劇的に向上した訳ではない。だが、確実に荒帝の速度は上がっていく。
 テュポーンが拒絶するかのように動く。だが、それに食らいつくように荒帝は刃を振るう。荒帝は追い縋る。テュポーンを捉える為に。


「――くっ!」


 テュポーンの操作に追われる竜美はそれを強く感じている。こちらが拒絶するようにテュポーンを動かせば食らいつくように荒帝も追ってくる。
 荒帝は早い。だが、何故こうも劇的に変わる。姿形が変わっただけでは説明が付かない。そう、操る者に何かの変化が起きたと考えるべきだ。
 追い縋る。追い縋ってくる。こちらを捉えようと荒帝は迫る。それに竜美は体を震わせる。それはどうしようもない―――歓喜。


「来るの!? 来るなと言っても、来るの!?」
『行きますっ…! 行きますとも!!』


 加速。二機の加速は止まらない。そしてその中で竜美は驚愕の変化を目の当たりする。それは荒帝の動作。それは最初こそ稚拙ではあるものの、次第に洗練されていく動作。
 竜美は衝撃をゼロにする技を持っている。故にそれは絶対的な防御へと繋がり、竜美を最強へと押し上げる要因にもなっている。ならば、竜美に出来て飛場に出来ない事はない。そう告げるかのように飛場もまたその技能を洗練させていく。
 そして更にそれに強化を施すのが美影だ。飛場の力たる荒帝を操者である彼女は全てを飛場へと委ねる。行っておいで、とその全てを捧げるように。


「くっ…!」


 テュポーンの反応は悪くない。自分の望みを完璧に汲み取り、その動作をこなしてくれる。しかし、荒帝はそれに迫っていく。明らかに彼はこちらに届きつつある。いや、彼ではなく、彼らか。
 全てが一体となっているのだ。意志がそうさせる。彼らの意志が一つとなる事によってそれは足し算ではなくかけ算となっていく。可能性が広がっていく。
 それは竜美とは対極だ。竜美は単体で最強の力を得た。誰も彼女を傷つける事を出来ない。ただ一人でも、戦局を左右出来るだけの力を持っている。
 彼は違う。彼一人では竜美ほど大きな事はなしえない。飛場ではそれが無理だ。だがそれでも彼には美影という傍らにいてくれる人がいて、だからこそ強くなっていく。互いに望む限りどこまでも。
 ただ一人で生きてきた。強くならなければ、と自分に鞭を打ってきた。その果てに自分には何が残ったのだろうか? 何かを残してきたのだろうか? と。
 振り返れば、そこには何も無かったのかも知れない。命刻は命刻で戦う理由を見つけた。アレックスだって自分の正義を持っている。詩乃も自分の願いを持っている。皆、未来へと向かう道を見つけている。
 あぁ、そうだ。自分はまだ過去に向かってくる。それを取り戻したくて、それを覆したくて、でも出来なくて、どうにかして欲しくてただ叫んで、苦しんで、求めてきた。


「こ、のっ…!!」


 また、荒帝が加速を始めた。底知らず、荒ぶる神は止まらない。ただ前へと、前へと突き進む。それが未来へと進む力ならば、それはやっぱり自分とは対極の力だ。ならば、そうだ。だから――。


「だから…っ!」
『義姉さん…っ!!』


 ――過去と、未来の重なり合う今、この時を以て。


「『―――決着をッ!!』」


 暴風達が互いの最大の威力を以てぶつかり合った。互いに最大の加速の一撃。この先など無い、この決闘に相応しき最後の一撃を。互いに最大の速度を生み出す為の踏みだし。地を砕き、風を唸らせながら衝突。
 その結果…―――荒帝の剣が断ち切られた。巨大な鋼が地に突き刺さる音。先ほどまでの轟音の応酬が嘘だったように静まりかえっていた。故に折れた鋼が大地に突き刺さる音は大きく響く。その音に竜美は無表情だった。
 そして、その唇を噛んだ。胸にどうしようもない憤りが生まれる。あぁ、結局彼でも届く事は無かった、と。勝ったはずなのに、胸に去来した虚無感に空を仰ごうとして空を見上げた瞬間。


「ぁ―――」


 光が遮られる。光を背負うようにして落下してくるのは影。その影は少年のものだった。その身に纏っているものはぼろぼろになっていて、彼のトレードマークとも言えた鉢巻きはどこかへと消え失せている。
 だが、彼は確かにそこに健在だった。まだ彼には戦う意志が見えた。何故ならば彼の拳は握られていて、まっすぐこちらに向けられているのだから。諦めてはいない。彼はまだこちらを倒す気で―――!!
 こちらの気が抜けていた所為だろうか、反応が鈍い。体が戦闘のものに切り替わるのが遅い。このままではあっさりと彼の拳を受けてこちらは敗北して――。


「ま…っ」


 待って、と。そう言いかけて気づいた。あぁ、それは記憶をなぞるようであった。その構図は似ている。再現と言ってもおかしくは無い程までに竜美の記憶を揺さぶる。
 次々と倒れてゆく人々。もう動くことも出来ない程までに疲弊した者たちの中でただ一人、震えを押さえつけるように身を抱いて、何も出来ず、ただ朽ちていく事に怯えていた。だけど、まだ戦う力があったから護ると、幼いながらに誓った。
 救いに来たぞ、と。声がした。だが、極限状態にいた彼女に正常な思考など出来る訳もなく、ただ、何もわからぬまま、ただ、何も知らぬまま、ただ、―――。


「ぁ…ゃ…」


 迫る。彼は迫る。声もない。いや、聞こえていない? あの時と同じ。何もわからない。何も知らない。何が正しく、何が間違っていて、何をしなければならないかもわからないまま。


「やぁぁぁああああああああああっっ!!!!」


 拒絶の叫び。未知という恐怖に縛られた竜美の叫び。それは彼女のトラウマを抉る再現。そして―――繰り返す。
 血が、びちゃりと、手についた。刃に沿って伝った血は誰のもの? 私の持っている刃は何を貫いた? 苦しそうに吐息をするのと同時に血を吐き出したのは誰だ? 理解が出来ない、理解したくない、理解しようと頭が働かない。
 ただ、視界が真っ赤に染まる。いや、白くなったのだろうか。わからない、わからない、もう、何も見えない。何がどうなっているのかなんて。どうしてこんな事になっているのかなんて―――。


「…なるほど、なぁ」


 不意に、耳元で声が聞こえた。そして、手に何かが触れる感覚。それは今まさに握っている刀とは違う、ぬくもりの有る誰かの手のようで。それを認識してようやく竜美は視界が正常に戻っていく。
 目の前には、飛場がいる。飛場の背から刃が突きだしているのが見える。そして、竜美はあの日思った疑問を再度、繰り返す。竜美のトラウマにして、今の竜美を築き上げた決定的なあの瞬間を。それは――飛場の父を殺した、あの時の事を。自分を救いに来たぞ、とやってきた彼を混乱のままに突き刺し、殺めてしまった過去がぶり返す。


「…どうして……どうして、どうしてっ、どうして避けないのっ!?」
「……」
「避けれた筈よ! だって、ただ掲げただけじゃない!! ただ、突きだしただけなのに!! 何よ、何でよ!! 違う、こんなの違うっ!!」


 竜美は首を大きく振り、髪を振り回しながら叫んだ。こんなのは違う。こんなのは間違っていると彼女は繰り返す。こんな結果は違う。こんな結果を望んでいなかった。こんな結果になってはいけないのに。
 なのに、彼はどうして―――。


「…大丈夫、ですよ? もう、大丈夫です」


 何故、笑う? 何故、あの日と同じ? 何故、同じ言葉で? 何故、何故、何故――ッ!!


「死ぬかもしれないのに…! 死んじゃうのに! 何でっ!?」


 涙が停まらない。流れ落ちていく。あの日と同じで、何もかもが一緒で、竜美はただその身を震わせた。そう、こんな結果は間違っている。駄目なのだ。やってはいけない、あってはいけない結果だ。彼は強かった。自分を超えれた筈だ。
 事実、あの時、敗北を覚悟していたのだから。それを恐怖に負けて、ただ子供の癇癪のように振り回した刃が彼を刺してしまった。そしてその先に待つのは彼の死という結果で。


「竜美姉さん、僕は、死にません」
「…っ、でも、貴方の父親は同じところを刺されたのよ! そして…」
「死んでません!!」


 死んだわ、と。竜美が続けようとした言葉を飛場は周囲に響き渡るような声で否定した。そして、ふぅ、と一息を吐いて竜美の頬に手を伸ばした。飛場は慈しむように竜美の頬を撫でて。


「僕の父さんは死にました。僕と同じ場所を貫かれました。貫通してますし、内臓もやられました。間違いなく致死の傷ですね。――放っておけば」
「……ぇ……?」
「父さんは、ここから先を放っておいたんです。やるべき事があって、それを優先したから。だから…義姉さんにさされたことよりも、やらなきゃいけない事があった。だから死にました。でも、それは姉さんの所為じゃないんです。決して」
「ぁ…」


 飛場の刃が貫いた部分からは血が溢れ出す。それに竜美が蹈鞴を踏んで後ろに下がろうとして、飛場はその肩を掴んで押しとどめた。そして笑みを浮かべて。


「僕にはやるべき事がありますから。死にませんよ。美影さんといちゃつきたいし、諸処の道もまだ極めてませんから。だから、死にません。もしも父さんだって、死ぬよりも優先しなければならない事があったなら、生きてましたよ」


 だって、と。飛場は告げる。


「僕の父さん、だから」
「…っ…!?」
「僕がそうなんだ、なら、父さんだって、きっとそうなんですよ」


 だから、それは貴方の所為じゃない。父が死んだのは貴方じゃない。貴方は――仇ではない。恨む必要も、憎む必要もない、と。


「だから、僕の父さんの選んだ結果を、義姉さんが奪うのは反則ですよ?」


 最初は、ただ風が吹くだけだった。だが、次第に、その音に嗚咽の声が混じり始めた。ただ縋り付くように飛場の胸に顔を埋めて泣くのは竜美だ。
 許されない、と思っていた。自分が殺してしまったんだ、と。自分が奪ってしまったんだ、と。自分を助けに来てくれたのに、なのに殺してしまった。そんな恩知らずは罰せられるべきだと。何より貴方の手によって裁かれるべきだ、と。
 なのに、言葉が出ない。ただ涙と嗚咽だけが出てくる。涙を流す度に心が軽くなっていく気がした。だから竜美は泣いた。ずっと、ずっと溜め込んできたその心を吐き出すように。
 飛場はそれをただ抱きしめる。その顔をわずかに苦痛に歪めながらも、ただ愛おしげにようやくその本心を聞き出せた義姉を愛おしそうに抱きしめ続けた。
 そして、不意に飛場は空を仰いだ。風を切り裂く音と共に何かの影が空を駆け抜けた。それはサンダーフェロウの姿であった。勝ったのか、と飛場は思うのと同時に、ふっ、と力を抜いた。


「…すいません、後、よろしくお願いしますね、皆さん…」





    ●





「…今まで色んなものと戦ってきたけど、ありゃ格別だわ。化け物だわ」
「…同感ね」


 凄惨、と言うべき戦場跡。ビルは穴だらけとなり、コンクリートの大地は見る影もなく抉られている。爆撃されたのか、という程ぼろぼろになった戦場で倒れ込むのは二人。風見と出雲だ。彼らの纏う装甲服はぼろぼろとなって見る影もない。
 その少し離れたところに腰を下ろし、瓦礫の山に背を預けている女性がいた。それはレイジングハートだ。彼女の姿も正に満身創痍、といったところだ。まるで眠いのか、その瞳を薄らと開いて空を見上げている。


「…負けたわねぇ」
「あぁ、悪魔だな、本当にあのガキ」


 風見と出雲は呟く。だがそこに悔しさは無い。逆に清々としたものがあった。これだけの惨状を生み出すまで争った。2対1で戦って負けた、というには相手は如何せん強すぎた。
 単体で武神の軍団を圧倒出来るだけの実力がある、と風の噂で聞いた事があるが、あながち間違いではないな、と風見と出雲思った。負けた事が悔しい訳じゃないが、全力を出し切っての結果がこれなら受け入れるのは容易い。


「…ねぇ、レイジングハート。あんたのご主人様、本当に悪魔じみてるわね」
「…えぇ、否定は出来ませんね。最近のマスターは自重があまり無くなってきてますからね」
「おいおい、お前さん、保護者だろう? そこら辺どーなのよ」
「良いんじゃないでしょうか? …マスターはあれぐらいで丁度良いのかもしれませんね」


 レイジングハートは瞳を閉じて思う。瞳を閉じれば今までも記憶(メモリー)が浮かび上がってくる。思い出せばいつも自分の主である少女は誰かの為に戦っていた。
 最初に出会った時、彼女は自分の持ち主であったユーノの助けになりたいと、そして街の人達を護りたい、と願うようになっていた。それが最初の切っ掛け。
 その切っ掛けは孤独な目をした少女を知り、そして友達になりたい、その悲しみを和らげたいという願いを得た。そして彼女は対抗の為の力を身につけた。
 誰かの為に役立つことを知った。魔法という力が誰かを救える事を知った。自分にはその才能があると知ったなのはがどれだけ喜んでいたのか、今思えばレイジングハートはよくわかる気がした。
 そして闇の書の事件を終え、彼女は管理局の局員となった。目に映る悲しみが増えるにつれて、彼女はその身を削る度合いが強くなっていた。誰かの為になりたい、誰かの役に立ちたい。ただ、その献身な一心で。
 それが彼女を壊した。壊れるだけ尽くして、壊れるだけ頑張った彼女に残されたのは絶望だけだった。
 何が間違っていたのだろうか? 何がいけなかったのだろうか? なのはが悪かったのだろうか? …いいや、悪いものなど真の意味ではない。それはただのすれ違いでしかなかったのだから。
 なのははもっと自分が頑張れると思っていた。周囲もなのはを大人として扱い、彼女の歪みから目を逸らした。いいや、逸らさせてしまったのはなのはの力故にか。
 幼い頃の諍いでその距離感が微妙であった高町家が悪かった訳じゃない。互いに傷つけまい、とした結果がなのはの撃墜という形ならば、どちらに非があった訳じゃない。ましてや悲しむ人達がいるから、など理由にはならない。
 何も悪い訳でもないのに、彼女に与えられたのが絶望ならば…ならば、もう良いじゃないか、と。あれだけ頑張って報われないのはおかしい。ならば報われる為に戦って良いではないか、と。
 彼女は今、自分の幸せの為に生きている。恋をして、自分が幸せになるために我が侭を言って、途方も無い理想への道を駆け抜けている。それを止める理由はレイジングハートには無い。
 再び瞳を開いて空を見上げる。体は重い。失われた力はそうそう簡単に回復する訳ではない。それは主とて同じ。隣で倒れる風見と出雲とて同じだろう。


「…あぁ、清々しいものですね。何もかも出し尽くした後、というのは」


 それは空を飛ぶ感覚に似ている。開放感のある、無限の空をどこまでも飛んでいくような晴れやかさ。今なら主の空を飛ぶ事に憧れた気持ちがわかるような気がした。この開放感は何にも得難いものだ、と。
 それを望める場所があるというのは、何とも幸福な事だ、と。そしてその世界を創り出す為に主は戦っている。その一助になれたのならば、それは何とも誇らしい事だろうか、とレイジングハートはわずかに口元に笑みを浮かべた。


「…こちらの概念核は5つ…半分は得ました。ならば、敗北はない、ですか」


 …決着はどうなるだろうか。それはわからない。だが…きっと、それは悪くない答えになるんだと思う、とレイジングハートは力を抜いた。今はただ、その身を休めて、いずれ出されるだろう答えを楽しみに待つように。





    ●





 東京タワーの付近にサンダーフェロウが着地する。そこにはSfが立っていた。サンダーフェロウが大地に下ろしたのは神砕雷、ヴェスパーカノン、そしてアレックスより奪い取ったワムナビだ。それをSfは確認して、Low-Gと書かれた板に3つの花がつけられる。


『Low-Gが3ポイント先取ですね…。他の皆さんは大丈夫でしょうか…?』
「飛場はどうやら決着をつけたようだが…佐山と戸田はまだこちらに向かっている最中か。なら後は…」
『風見さんと出雲さんと…なのはちゃん』


 残る概念核は7つ。佐山が所有するムキチと命刻が有するB-Sp、そして未だ所持がどうなっているのかわからない残りの概念核。佐山と命刻の戦闘は機竜の身では不利だし、何より、あの二人の戦いを邪魔するのは無粋だろう。
 だが、かといってなのは達の戦いの下に介入するのも無粋だろうか、とヒオがうんうん、と悩んでいると、原川が険の籠もった声でヒオの名を呼んだ。え? とヒオが意識を現実に戻すのと同時に。


「はい、これで五つ奉納、だよね?」
「Tes.確認いたしました。Top-G 、5ポイント先取です」


 Sfの傍になのはがいた。その体は満身創痍で、息も荒い。だが不適な笑みを浮かべて五つの概念核武装を奉納している。その意味をヒオは瞬時に理解し、息を呑んだ。


『そんな…風見さんと出雲さんが負けた…?』
「…可能性は無くはない。さて、ヒオ…構えろ。アイツはやる気だぞ?」


 そう、なのははその手にMe-Ssiahを握り、サンダーフェロウへと向けているのだ。ヒオは自然と息を呑み、そして吐き出す。ゆっくりと顔を上げ、原川とサンダーフェロウへと呼びかける。


『そうですね…まだ戦いは終わってませんもの』 
「…あぁ、そういう事だ」


 サンダーフェロウは地を蹴った。空へと浮かびあがる。それを追うようになのはが空を昇る。互いに上昇し、東京タワーの天辺を越える。その瞬間、サンダーフェロウが追尾式の弾丸を放ち、それに応じるようになのはもアクセルシューターを解き放った。
 終結は近い。両者は身を削りあいながら、互いに決着を望む。そして決着の行方は――互いの代表へと託された。
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第3章 06
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 空を駆ける戦乙女。互いにその手に握るのは異世界の技術を導入した新世代の武装。元よりそれを操る悪魔を象るなのははこの戦争の最中で得た力を巧みに振るう。それに長年、親しみ続けてきた魔法を使用する事によって補助している。
 対して、戦女神を象る風見はその手の武装にある利点をある一点において要点においている。それが本来の彼女のスタイルであり、新世代の武装であるが故にそのスタイルを実現させている。
 それは異なる経緯で育まれたものであり、異なるものではあるが―――限りなく類似した戦闘スタイルだ。
 要は簡単だ。ぶっ飛べ、と。
 風見が短い呼気と同時になのはに対してヴァルキュリアを振り下ろす。なのははMe-Ssiahで受け止める。その瞬間、互いの背後から魔力弾が形成され、互いに互いを殴りつけようと放たれ衝突。
 衝撃が空気を振るわす。なのはと風見は斬り合いを結びながら魔力弾による射撃戦を同時に行う。花火が連続として散るように2人の周囲には光が瞬き、破裂していく。それに消されるようではあるが、連続として刃と刃を打ち付ける音が響いて。


「エゲツ無い戦い方を!!」
「どっちがッ!!」
「そっちがでしょ! まんま悪魔じゃないの!!」
「言いましたね、エイプキラーさん! ご自慢のコング☆パンチはどうしたんですか!?」


 切り結びに射撃、そして悪態の応酬。3つの応酬を繰り返しながらなのはと風見はぶつかり合う。体力的にはなのはの方がやや有利。長年魔導師として戦い続け、飛場道場にて鍛えられ、覚醒した身体能力は風見を越える。
 だが体格的に風見が有利だ。実際、なのはは受け止める度にその重みに顔を顰める。エイプキラーと呼んだのは誰だったか、あながち外れていない名前を付けたものだ、となのはは思う程だ。
 だが、互角と言われれば互角ではない。風見がやや不利な状況だ。だからこそ風見は接近戦を仕掛けているのだ。そこがなのはの領域だとしても、なのはの中距離戦が相手では風見はまだ魔法という概念に不慣れだ。そこに差がある。


「そんなに喰らいたきゃ、一発貰っていきなさいよッ!!」
「だれ、がッ!! そんなの喰らったら再起不能になりますよ!!」
「人を何だと思って―――ッ!!」
「エイプキラー」
「…えぇ。わかったわ。――潰す」


 風見は突撃する。全身を捻る渾身の突きの一撃だ。早い、となのはが思う。ガードが出来たがそれで精一杯。更には重い、と来る。だが、それでもなのはは揺るがない。負けない、負ける訳にはいかない、と。
 2人は落下していく。そしてそのまま墜落。大地になのはを叩き付けるように風見が押し抜く。が、なのはも大地を砕きながらも着地し、互いに睨み合う。風見が押し、なのはが堪える拮抗とした時間。
 だが、瞬間世界が切り替わる。なのはは全てへの理解が消失したのだ。理解が出来ない。自分は触れている。だが何を触れているのか。世界はどうなっているのか。理解が、出来ない。


(これは、7thの――――)


 打撃が通る。が、となのはは潰されるような息を吐き出す。腹を横から殴りつけられるような衝撃。地を滑るようになのはは転がっていく。なのはは息を吸う。は、と息を吐き出して歯を噛み締める。
 歯軋りの音が口の中に響く。ギリリッ、と不快な音は思考をクリアにする。世界は未だに理解が出来ない。己という情報しかない。だが、己は確かに握る者がある。それは理解が出来ずとも。


「私の、力だ…!」


 世界はわかりあえないという概念に満たされた。それは7th-Gの概念核、四神の宝玉の1つの効能。ならばこの戦場に7thの概念核を持ち込んで乱入してきた存在。それはその概念核の傍にはなんの概念核があったか。それを考えれば理解が出来て。


「出雲さんかッ!!」


 7thに隣接するのは6thだ。V-Swを回収に行った出雲がそのまま7thの宝玉を回収していたとしても不思議ではない。しかし、ならばこの状況下をどうする。自分は世界の全てを理解が出来ない。わからないから、攻撃がどう来るのかもわからない。
 ならば? どうする、となのはは自問して。そして彼女はその口元に笑みを浮かべた。そんな思考など意味が無いな、と。


「理解なんて、しなくて良い…」


 答えは、いつだってシンプルだ。


「全部、吹き飛ばせば良い!!」


 リンカーコアが駆動する。回る、回る、回る。魔力が体中に巡る。リンカーコアに刻まれた構成式を叩き出す。自身の足下には魔法陣が形成されているだろう。放つ魔法はシンプルに。
 ――動作するものを無差別に攻撃、と。


「アクセルシューター…ジェノサイドシフト!!」


 条件を絞れば当たらない。ならば、条件は広げる。吐き出される魔弾は既に100を越える。だがそれでも足らないとなのはは魔力を湯水のように汲み上げて放つ。放つ、放ち、破壊し、砕き、そしてその果てになのはの理解は戻る。概念が解除されたのだろう。
 周囲は魔弾によって打ち砕かれていた。その中で立つのは風見と出雲だ。苦笑を浮かべている。出雲の周囲には4つの玉が浮かび、その手にはV-Swが握られている。やはり、となのはは1つ頷いて。


「…こんの破壊魔め…」
「破壊は、創造と表裏一体。私が勝つ道を作る為なら―――敗北への道を潰せば良い。そして立ち塞がる貴方たちを砕けば良い」
「…悪魔じみてるわね、その考え方」
「悪魔に、なりたいとって心の底から思うよ」


 なのはは瞳を伏せる。その手に握るMe-Ssiahの感覚を確かめるように強く握り。


「それが、この世界に新しい光を灯すなら。私が、私らしいままに生き続ける世界なら―――何て呼ばれたって構わない」


 汗が浮かぶ。先ほどの魔力の消費は大分体に来た。だが、歯を噛む。まだだ、まだだ、と。


「望みが、あります」


 は、と息を吐き出し。


「欲しい世界が、あります。望めば叶う。伸ばせば届く。諦めなければ何かが得られる世界。届かぬばかりじゃなくて、いつか、きっと最後には良かったな、って思える世界」


 Me-Ssiahを握り直し、2人に向け。


「それはきっと多くのものがある世界じゃないと、得られないものだから…!! 全てを受け継いで、新しい世界を作っていく!! その為の引き継ぎに!! この戦いは必要だから!!」


 風見は見た。自らに放られたそれを。風見はそれを掴んだ。それは慣れ親しんだ相棒の感触。G-Sp2だ。それを投げはなったのは一人の女性。それは先ほどまでなのはと共に居た筈のレイジングハートで。
 レイジングハートの両手には二本の剣が握られていた。それはグラムと十拳だ。1stと2nd。それを手にしている意味を風見と出雲は理解する。魔法という概念に触れた彼等だからこそわかる。そして―――ここからが本番だ、と。


「…ヴァルキュリア。サポートに戻って」
『…Tes.』
「私の相棒になりたいなら憶えておきなさい。私と、その相棒であるG-Sp2の在り方。確かに性能で言うならアンタの方が使い勝手が良いのかもしれない。でも今の貴方にG-Sp2は越えられない。だからこそ、見せてあげるわ。その最高の相手が目の前にいるから。―――ねぇ、G-Sp2?」
『ガンバルヨ』


 光が生じる。光の中から現れるのは白の悪魔。鋭利な装甲に、角を模したような髪飾り、翼もまた大きく開き、桜色の翼を広げ、背部には尻尾が揺らめく。なのはのサタンモードだ。そのなのはの手にはグラムと十拳が握られている。
 合図もなく、宣誓もなく、ただ一歩。なのはと風見、出雲は戦闘を再開させた。





    ●





 空を行く。空を制するのは鋼の巨体。竜を象りし概念兵器において最強の単体戦闘力を誇る兵器、機竜。概念核を有した2つの機竜は空気を震わせる速度で空を駆け抜けていく。サンダーフェロウとアレックスだ。
 その戦いは正に一方的に近かった。それは偏にアレックスの所持している概念核が不味かった。アレックスが所持していたのはワムナビ。熱に命を与え、その熱を得る為に高度な計算能力を有した世界の概念核。
 その高度な計算から得られる攻撃の数々。予測され、逃げ場を潰され、サンダーフェロウには幾つもの損傷が見られていた。サンダーフェロウの持つ武装は固定装備であるヴェスパーカノンだ。つまりサンダーフェロウの性能に変動は無い。
 つまり概念核の恩恵を受けているアレックスに対し、サンダーフェロウを駆るヒオと原川は自らの力のみでアレックスを撃退しなければならない。故にヒオは踏み込む。更に速度を。予測を超える速度を、と。
 それは常に最新の自分を見せ付ける事。果て無き限界、短距離走において距離を縮めなければ生き残れない。だから常にハイペースだ。ヒオはただ全力で駆け抜ける。


『負けません…! 負けませんのよっ!!』


 それは相手がもう一人の自分だ、とか、世界の命運がかかっているとか、ヒオにはそんな思考は最早無かった。この戦いが始まり、相手の攻撃が予測にある事に気付き、何度も損傷を受けた事によって気付いた事実。
 自分は変わっていかなければならない。自分は今の自分を越えていかなければならない。足を止める事は許されない。前へ、前へ、ただ前へ。明日へ。未来へ。勝利の為に。
 故にヒオは踏み込む。息が切れそうになる。だがそれでも、それでもとヒオは加速を続ける。相手の残弾とて無限ではない。ならば切れるまで走り続ける。常に最高の自分で、そして勝利をもぎ取る。


『敵ながら、天晴れである! ヒオ・サンダーソンよっ!!』


 逃げるサンダーフェロウを追いながらアレックスはヒオに対して叫ぶ。ヒオの飛翔はただ全速力で駆け抜けるだけの事。当たらない。どれだけ予測しようとも、どれだけ追い詰めようともヒオは止まらない。
 自分すらも無視している。アレックスはそう感じた。お前なんて眼中にない、そう言われたと解釈しても何らおかしくない戦場。アレックスが追いかけ、ヒオはただ自分に夢中で走る。だが――その先に2人の決着がある。


『貴方も、何も変わらないですのよ!』
『何がだ!』
『貴方も、私と! 同じだと!』
『吾輩は正義である! そして貴様は悪であり、吾輩の敵だ! 吾輩の正義を阻む者!!』
『貴方の正義とは何ですの!?』
『涙を止める事…! 悲しみの涙を止める事! それがヒーローを為す事だ!!』


 アレックスのミサイルポッドが開く。そこから放たれる大量のミサイルがサンダーフェロウの進路を塞ぎ、逃げ道を奪うように展開される。だがサンダーフェロウは更なる加速を試みる。純粋にその速度で包囲網を抜いていく。
 予測を、想像を超えていく。勝利のイメージは遠ざかる。だがそれでもアレックスは食らい付くかのようにサンダーフェロウを追う。


『涙は、停めるものではないですわ!』
『!?』
『涙は、流すものですわ! 流して、流しきって! そして選んでいくんですの!!』
『何を選ぶというのだ、ヒオ・サンダーソン!!』
『――全てを!! 決める事を!! 泣いたままでいるのか、涙を止めて歩み出すのか!! その全てを私には、私達には与えられているんですのよ!!』


 ヒオは走る。駆け抜ける。だが、その体は限界に近い。常に全力。緩める事も出来ない体は疲弊し、意識を点滅させる。だがその意識は強靭なまでに鋭く集中している。駆け抜ける、ただそれだけの為に。


『故に貴様は疾走を選ぶか! 何もかも無視し、自らで決めていくと!! 何と独りよがりな!!』
『自分の事ですもの! 自分で、決めます!! 誰かに決められるのではなく…自分で!!』
『吾輩は…それでも涙は見逃せぬ!! 故に、ヒオ・サンダーソン!! 貴様はここで落とす!! 落とさなければならぬ…!!』


 来る、とヒオが身構えようとした。その瞬間だった。
 ――僅かな、一瞬。
 ヒオの意識が点滅が長くなった。黒の意識が白の意識へと切り替わるまでの時間。それは何秒かの差。だが、世界は止まらない。ヒオは、サンダーフェロウは止まらない。止まらなかったサンダーフェロウはバランスを崩す。速度が、緩む。
 あ、とヒオが声を漏らした時は遅かった。それはまるで倒れ込む瞬間にも似ていた。疾走の途中で転んでしまう。受け身を取らなければ、などの思考も全て吹き飛ぶ。放心する。心がどこかへと飛んでいく。
 負ける――――?
 そう。敗北だ。それが、放心したヒオが唯一わかる事。このまま倒れ込めば自分は死んでしまう。速度を失ったサンダーフェロウは敵の攻撃を受けて沈む。それはもう目に見えてわかる予測。
 駄目だ、とヒオの心に諦めが満ちる。どうしようもなく涙が浮かび上がってくる。あ、と、伸びた声が喉から絞り出される。嫌だ、と叫ぶ心。それはまるで悲鳴にも似ていて。いやだ、と心は叫んでいて。


「―――いいさ。ヒオ」


 え、と。ヒオが思った瞬間。全ての力が意味をなさなかった。


『何ィッ!?』


 サンダーフェロウが脱力したようにその速度を放り出したのだ。一気に減速と共に軌道を変えたサンダーフェロウにアレックスの一撃は通らない。アレックスの放ったミサイルの包囲網と主砲の一撃を回避したサンダーフェロウは落ちていく。


「君は、立てる事を知っている人間だ。だが、君は立つのには時間がかかる。一度の失敗でくよくよする。――だが、いつの間にかまた必死に走ってる」
『原川、さん!』
「ただ、今は時間が足りない。君に倒れる時間は足りない。――そうだろう? ヒオ」
『―――』
「そうだろう?」
『原川、さん―――ッ!!』


 点滅した意識を振り払う。白へ、それは無意識の領域へ。何も思考しない、無我の境地へ。ヒオの踏み込んだ足が大地に触れる。それは深く地を沈み込ませるように力を込めて。


「まだ、やれるか?」


 問いが来る。いつだって、自分が悩んで、最終的に出す答えをわかってくれるように。原川はその時間を短くしてくれる。原川はわかってくれる。原川は―――信じてくれる。
 歓喜が身に走る。見ろ、とヒオは思う。見てください、とヒオは思う。それは原川に、そしてもう一人の自分に。


『行きます…』


 確かな決意を以て。


『行きますッ!!』


 再び、雷の名を持つ機竜は息を吹き返した。
 上る。昇る。地面への落下を続けていたサンダーフェロウは強引にその身を持ち上げる。徐々に角度は上へと向いていき、真上の空を目指す。重力に抗うように。雷が落ちる法則に抗い、空へと帰るように。
 それは途中に居たアレックスすらも追い抜いていく。アレックスは歯噛みする。また無視するのか、と。お前はそうして全てを置いていく。涙を置いていく。それはアレックスには許してはいけない事。


『人の涙を見過ごしてはいけないのである…!』
『人はそこから立ち上がる事が出来ますわ!』
『それは強い者の言える台詞だ!!』
『ヒオは強くなんかありません! ただ…ヒオを強くしてくれる人がいるから!!』


 サンダーフェロウが反転する。それは速度だ。予測された。だが、アレックスにはそれが限界だった。いくら計算しようとも、いくら予測しようとも、サンダーフェロウの攻撃を防げない。
 敵の攻撃は純粋だ。速度による衝撃波による攻撃。加速、加速、加速! ただそれのみを追求した速度の打撃。アレックスは身を捩る。全身に与えられる痛みを感じながらも空を見る。
 空は自由だった。だが、空には何もない。手を差し伸べてくれる人も。自分を抱きしめてくれる人も。それが自由。何もないのが、自由。何もかもを自分で選んでいかなければいけない自由。
 冷たい、とアレックスは思う。空は冷たい場所だ、と。だからアレックスは叫ぶ。


『この冷たい自由を浴びろと、貴様はそう言うのかヒオ・サンダーソン!!』
『自由こそが…全てを選択させるものならば!!』
『泣きたい者には泣けと、泣き続けたい者には泣き続けろと、それを認める事は吾輩には―――!!』
『それが、貴方の自由です!! もう一人の私!!』
『ッ!?』
『手を、差し伸べてくれるその温もりは優しい、嬉しい…! 私は、貴方がもう一人の私である事を誇ります!! 泣き続けた私だから、その手を差し伸べてくれた暖かさを知っています!! それを与え続けられる貴方に―――敬意を!!』


 ヒオは歌った。その歌は――星条旗。彼女の母国の歌にして、正義と自由を求めた国歌の歌。その歌に意味を。その歌に思いを。乗せる。乗せた歌を加速の原動力としてサンダーフェロウは力となる。
 サンダーフェロウの最大の加速が始まる。アレックスへの打撃への回数が、威力が跳ね上がる。アレックスはただ身を捩る事しか出来ない。いや、それしかしなかった。思ってしまったのだ。思って、知ってしまったのだ。
 あぁ、彼女は敗北者だったのだろう。強くもない。弱かった、ただそんな存在。無力で、泣き続けて――だからこそ隣にいてくれる幸いな者を得て、そしてそこから今の強さを得ていったのだろう。
 敗北して知っていく。そして、自分は敗北する。何故か? それは自分は知らなかったから。


『――同じか、ヒオ・サンダーソン。貴様の幸いは…吾輩の幸いと同じか!!』


 その答えは―――アレックスの意識を奪う、アレックスの敗北にして、サンダーフェロウの勝利を示す強烈な一撃だった。





 
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■■■リリカル・クロニクル =世界の終わりに悪魔と竜は戯れる=  第3章 05
2010/10/13 Wedリリカル・クロニクル
 空は自由だ。何者にも縛られる事なく、ただ突き進む事が出来る。望むべき場所へと居たる為に。
 レイジングハートは自分の周囲に障壁を張っていた。それは空気抵抗を限りなく薄くし、ただ前へと進む為の障壁だ。更にカードリッジをロードする事によって5th-Gの概念を展開し、前方を下と認識する事によって加速を続けている。
 レイジングハートは行く。空を。何故行くのか。それは己と共にありし主が望む願いがあるからだ。――届かせて、と。


「そこに、相対すべき者達がいる…」


 だが、追う相手は機竜だ。更には雷の眷属の名を持つ最速の機竜だ。
 だが、それがどうした。レイジングハートは自らの半身とも言える杖を握る。相手は最速? 良いだろう。自分では届かない? 良いだろう。認めよう。まずはそこからだ。
 だが、私の名を忘れるな、と。レイジングハートは杖を握る力を強める。自らの身の内から声がする。それはレイジングハートとユニゾンしたなのはの声だ。なのはは現在、レイジングハートにその身の全てを委ねて、レイジングハートに魔力を注いでいる。
 ユニゾンデバイス側からのユニゾンはユニゾン対象が緊急時の際の非常時の手段として用いられるのが通常のユニゾンデバイスの手法であるが、カウリングデバイスであるレイジングハートは違う。
 なのはを動力として取り込む事によってその性能をフルに発揮する事が出来るのだ。デバイスが人よりも優れる点。それは記憶力であり、計算力であり、人にはない緻密さ。ただ空を飛ぶのではなく、レイジングハートがその処理をフルに行う為にはなのはの補助を一切捨てて、自らが全てを運用すればよい。
 取り込んだ状態であればなのはに対しての補助も何もない。だからなのはは心も身も委ねている。もしもここでなのはがレイジングハートと意志を重ね合わせられなければその性能は著しく低下する。
 だがレイジングハートは知覚する。自分の性能はフルに発揮されている。淀みも迷いもなく、ただ真っ直ぐに向かっていける。それは―――なのはの信頼の証だ。届くだろう、と。届けてくれるだろう、と。


「我が名、レイジングハート…! 認める事から始まり、抗い、認め得ぬ為に……!!」


 諦める事はない。ならば、走れ。届かせろ。ただ、そこに欲するものがあるならば。
 行けるだろう。レイジングハートは考える。いいや。レイジングハートは思う。行くのだ。レイジングハートは誓う。望む戦場へと運ぶのだと。レイジングハートは力を込めた。障壁は更なる薄さと鋭さを持って空気を切り裂き、更に彼女の体を加速させた。


「――見つけたぁッ!!」


 吠える。レイジングハートの視線の先、そこにはサンダーフェロウが先を行く。その尾にレイジングハートは追い付いたのだ。だが、そこでは終わらない。加速は続く。捕らえる、と。
 サンダーフェロウを使った武器の経由。サンダーフェロウと荒帝、これは概念核が無くともその単体の性能から武装を回収せずとも戦える。だが、佐山や風見、出雲と行った面々、得に風見と出雲は概念核武装に頼った戦闘スタイルだ。
 だからこそ、ここで足止める。勝つ為にはそうしなければならない、と。なのはもまた概念核武装を所有せずとも十分に戦えるのだから。だからこそ、追い付くのだ、と。
 そして、レイジングハートは見た。サンダーフェロウの背から何かが飛び出したのを。それを確認した瞬間にレイジングハートは内からなのはの声を聞いた。そしてレイジングハートが光に包まれ、光が消えるのと同時になのはとレイジングハートがそれぞれ飛び出す。


「――さぁ、初の実戦と行こうかしら? ヴァルキュリア」
『Tes.My lord』


 風見が白の機殻に包まれた槍、穂先と柄の中心に宝玉を埋め込まれた槍を構え、背に背負ったX-Viから光を放ちながら飛翔してくる。風見の楽しげな声に応える声は無機質な機械音声。


「カウリングデバイス・タイプインテリジェント…ヴァルキュリア」


 なのはは風見の持つ槍を見て小さく呟いた。それに対して宙に浮かぶ風見はヴァルキュリアを振り抜くようにして構えて。


「アンタがテストしたんだっけ? アンタのテストデータ。見させて貰ったわよ。なかなか参考になったわ。お陰で―――良い気分じゃない」
「風見さんの要望でカスタマイズした後のデータ、見ましたよ。―――楽しそうですね」
「えぇ。当たり前じゃない」
「あはは、じゃあ…」


 なのはは腰からMe-Ssiahを引き抜き、風見は両手でヴァルキュリアを構えるようにして。
 言葉は無く、互いに初速から全速力。空中でなのはのMe-Ssiahが交差するように振り抜かれ、風見のヴァルキュリアを押し留める。空中で押し合い、なのはは足下に展開したフィンの出力を全開にし、風見がX-Wiから発せられる光を強めていく。


「――ここで、墜ちなさい?」
「――冗談。墜ちてもらいますよ?」


 互いに浮かぶ笑みは綺麗なものだ。だが放たれる言葉は物騒で、ここから始まるのは悪魔と戦女神の天駆ける戦場へと変わる。交差していたMe-Ssiahとヴァルキュリアが離れ、空駆ける乙女達の開戦が高らかに告げられた。






    ●





 なのはの追撃を振り切ったサンダーフェロウは地を踏み砕くようにして地に着地する。その眼前にはサンダーフェロウの武装であるヴェスパーカノンが安置されている。それを自らの概念空間に収め、ヒオはホッ、と一息を吐く。


『これで、まず1つ、ですね。原川さん』
「あぁ…そうだな」


 ヒオの安堵の声に原川は小さく頷きを返す。同時に、サンダーフェロウから2つの影が飛び降りるのを見た。1つは佐山で、もう1つは出雲だ。彼等は互いに別の方向を目指して走っていった。
 2人の後姿を確認したヒオは小さく息を吸う。そしてゆっくりと意識を空へと向けて、ヒオは原川さん、と原川の名を呼んだ。


『行きましょう。私達の戦場は…空にあります』
「あぁ。来るだろうな。…いや、そもそもこれを狙ってたのか? この争いは」
『どうでしょう? でも、良いんじゃないですか? ――スッキリしますもの』
「…終わらせる為に、か。あぁ、確かに終わりがスッキリする方が良い』
『えぇ。ですから…行きましょう。空へ。私達の―――相対すべき彼が来ます』


 そしてサンダーフェロウが地を蹴り、空へと昇った。身を回すようにして空でロールし、爆発するような加速と共に空を駆け上がる。目指すのは未だ見えぬもう一人の自分。相手側の機竜―――。


『アレックス…!』
『見つけたであるぞ、我が宿敵、サンダーフェロウ! ヒオ・サンダーソンよ!』


 ――アレックスが来た。もう一人の自分が。
 ヒオは力を込めた。だが、その力をやや抜くようにして息を吐き出し、眼前を見据えて。だがそれでも緊張が抜けきらないのか身は固いままだ。恐らく表に出ていれば汗が出ている事は間違いなしで…。


「ヒオ」
『…な、何ですの?』
「――良き答えを」
『―――』


 原川の声に、ヒオは抜けきれなかった体の力を抜く。ふぅ、と息を吐き出して。


『…原川さん、サンダーフェロウ…』
「…何だ? ヒオ」
『…ヒオ』
『―――行きましょう。良き、答えの為に』


 そして、応えた。ヒオの言葉に原川は操縦桿を握る手に力を込め、その口元に皮肉じみた笑みを浮かべて。


「Get Set…」
『Go ahead!!』


 二機の機竜は空を舞う。何よりも早く、どこまでも届かせる為に。その巨体に、更に巨大な願いを乗せて二機の機竜は空を奔った。





    ●





 徐々に始まりつつあるそれぞれの戦い。1つのモニターでは白と黒の武神が踊り、空では乙女達と機竜による空戦が行われている。東京を概念空間としたこの場所で行われる戦いには多くの者がその行方を見守っていた。
 新庄も観客の一人だ。胸元に手を添え、そこに収まった指輪を握る。それは佐山の母の指輪だ。本来は佐山のしていた指輪であったが、ゲオルギウスを得る為の鍵が新庄が佐山の母の指輪をし、そして佐山が新庄のしていた父親の指輪をしなければならなかったのだ。
 そして指輪の交換は果たされ、戦場へ行く佐山の両手にはゲオルギウスが収まっている。自分の父を材料とした概念武装が。故に新庄はどうか、と願わずにはいられない。


「新庄さん…?」
「…あ、詩乃さん? もう、出たんだ」
「え、えぇ。…命刻義姉さんが戦ってると聞いたので」


 新庄に声をかけてきたのは田宮詩乃だ。詩乃はどこか躊躇するようにしてからモニターへと視線を移す。そこにはなのはと風見、荒帝とテュポーン、サンダーフェロウとアレックスの戦いが繰り広げられていて。


「…世界の運命を決める戦い、だってさ。でもさ、良く見れば、これってお互いの相対したい人と戦えるようになってるんだよね?」
「…そう、ですね」
「…それさ、命刻さんが言い出したんだ」
「え?」
「命刻さんが、皆に、皆の決着をつけさせてやりたい、って。だからこうして乱戦で、でもそれぞれが戦えるように、って手を回したの。いけない事かもしれないけど、でも、必要な事だとボクは思うから」


 新庄はモニターを真っ直ぐに見つめる。は、と息を吐き出して。


「終わらせる為なんだ。だから、全部精算していこう、って」





    ●





 佐山は疾走していた。その手には木刀が握られていた。それは佐山が回収したムキチが入った木刀だ。それを手にすれば疲労はたちまち消え、加速用の符によって疲弊する佐山の体を癒していく。
 佐山は脇目もふらずに疾走していた。目指すのは東京タワーだ。何故東京タワーを目指すのか? それは概念核を奉納すべき場所が東京タワーであり、そこに皆来るだろう、と。それぞれの決着を終えて、終えた奴が後は必要ないとそれを集めておいていくだろう。


「見ているか…!」


 佐山は問う。誰に問うているのか、佐山はただ問う。


「世界すら、自分の因縁の決着付けの演出だ! 個人が世界を動かしている! そ・し・て! その中心は私に集まる!! 快い、快い戦場だ!!」
「――その言葉の中身の1つを訂正して貰おうっ!!」


 突きが来る。佐山を空中から串刺しにしようと槍を振るったのは命刻だ。命刻の手に握られるのはB-Spだ。佐山は前に身を倒すようにして槍をかわす。コンクリートへと突き刺されたB-Spは焔を放ち、コンクリートを溶かすようにして振り抜かれて。


「訂正? 何を訂正しろと?」
「誰がお前を中心にだ。自惚れ馬鹿め」
「馬鹿は貴様だ。私を何だと心得る? ――私だぞ!?」
「意味がわからんわぁっ!!」


 命刻の突きに佐山は木刀でいなす。瞬間、焔が猛ろうとしたが木刀がその身に霧水を発生させ、氷結する。それは氷結の刃だ。ありとあらゆるものを凍らせる氷刃。ありとあらゆるものを凍らせ砕く刃と、ありとあらゆるものを焼き尽くし斬る刃がぶつかり合う。
 概念核と概念化同士の衝撃に加え、水蒸気爆発にも似た爆風が佐山と命刻を吹き飛ばす。吹き飛ばされた2人は互いに正反対のビルの方へと飛ばされ、佐山は身を捻るようにしてビルを蹴り、壁蹴り。そのまま何度か壁を蹴って地面へと復帰。
 同じく命刻もまた地を疾走し始める。佐山の体には既に加速用の符は無い。先ほどの命刻の持つB-Spの焔によって焼かれてしまった。だが自分自身は共にありしムキチが護ってくれた為に無傷だ。


「おい、地味代表」
「なんだ、キチガイ代表」
「ここか?」
「いいや。なら、あそこか?」
「そうだな」
「どうする?」
「行くか?」
「行こう」
「なら、付いてこい」
「は、貴様がな」


 互いに地を蹴った。行くべき場所は黒と白の武神が踊る決着の地へと。





    ●





 駆動する。軋み、音を奏でる。振るわれた刀と刀が切り結び、離れ、再び切り結ぶ。それは剣舞だ。剣舞を舞うのは2体の武神。荒帝とテュポーンだ。
 その二機の状態は一目瞭然。装甲にかすり傷程度を残すテュポーンと、装甲の幾つかを吹き飛ばされている荒帝と。どちらが優勢で、劣勢なのかはもう丸わかりで。


『…くそっ…』


 飛場が歯噛みする。やはり、届かない、と。
 何故、と思う。そしてわかる。弱いなぁ、と。
 悔しい、と思う。だから泣き喚きたい気にもなって、逃げ出したくなる。
 どうして、と思う。結局こうなっているのは目の前で対峙している竜美がいるからで。
 でも、と思う。
 でも、彼女は待っているんだろう。それは彼女が―――勝ってはならない人に勝ってしまったからで。
 本当は優しい。だけど、優しいから。彼女は怨みが似合わない。だからその姿は知れば知る程に痛々しくて、どうにかしたくなるけれど。


『届け…られない…のか…』


 先ほどから己の全てをかけて飛場は挑んだ。だが遠い。強い。それは自分の父の強さを越えた強さで。ずっと破られないように強くなってきたんだろうなぁ、と飛場は感じ取る。
 だから、悔しい。自分は何も越えられない。自分は何にもなれない。英雄にも、救世主にも。何にもなれず、ただ、そこで終わって朽ちていくだけで。


「終わり、かしら?」


 不意に、テュポーンの肩に乗っていた竜美が呟きを零した。飛場は答えを返せない。ただ荒い息を吐き出すだけだ。その言葉に答えを返したい。まだだ、と。まだやれます、と。だがそれでも上がった息は言葉を返せない。


「…終わり、なのね」


 そう、と呟いた彼女に見えたのは明らかな落胆で。あぁ、と。飛場は空を仰ぎ、ちくしょう、と呟いた。終わりになんてしたくない。こんな終わり方で望むためにここに来たわけじゃない。
 テュポーンの刃が迫る。それに飛場も応えようとして―――すり抜けた。
 いや、すり抜けた訳じゃない。消えたのだ。何が? それは荒帝が、だ。何が、と飛場が何が起きたのかを把握するよりも前に飛場を抱きしめる力を感じた。それは美影の腕で。


「…リュージ君」
「…美影さん…」
「…泣いてるよ? リュージ君」


 美影の言葉に、飛場は、あ、と声を漏らした。自分は泣いていた。情けない事に。どうしようもないぐらいに、ぽろぽろと涙がこぼれていって。


「…泣いてるんです」
「……」
「本当は、泣きたい筈なのに…泣けなくて…」
「……」
「泣けなくさせてるのは僕で…僕しかいないのに…っ!」


 望まれているのに。どうして、こんなにも己は無力なのだ、と飛場は拳を握る。竜美は待っている。ずっと。


「終わらせてあげたいのに……っ!」


 叫ぶ。


「終わらせて…っ!」
「…終わらせて?」
「…終わらせて…」


 どうしたいんだろう?


「…寂しいのは、嫌だもんね」
「……」
「竜轍さんも、トシさんも、お母さんもいるけど…それでも、いなくなったら、寂しいよね?」
「…ぁ…」
「お父さんがいなくなって…リュージ君…寂しかったよね…。だから、だよね。――もう、手放さない為に」


 ギュッ、と美影は飛場を抱いた。大丈夫、と告げる。その胸元の賢石が光を帯びる。え、と飛場は振り返った。今までそんな事は無かった、と。進化の賢石は徐々に罅を入れていく。あ、と飛場は声を漏らして。やめ、と停止の言葉を吐こうとして、その唇を指で止められる。


「私は、人になるよ。人になって、リュージ君と一緒にいる。リュージ君が望むものを一緒に見たい。それが私の願いだから。私が、リュージ君と一緒に居たいって思うから」


 だから、ね?


「竜美を、美樹を、迎えに行こう? 私、一人っ子だから―――お姉ちゃん、欲しいよ」


 一緒に、望むよ。





    ●





 その変化は劇的だった。
 金色であった美影の髪がまるで闇を吸うかのように漆黒へと染まっていく。前髪の一房を残して黒く染まった髪が風に揺れる。かしゃん、と美影の胸元にあった賢石が砕ける音がする。
 役目を果たしたのだ。人へと進化する自動人形。人形は自らの意志を望み、その望みが彼女を人へと至らせた。
 飛場は思う。彼女は至った。自分がいて、そして彼女が望むようになってくれて。


 ――僕も、同じ場所へいけるかな…?


 美影のように。彼女が望んだ髪の色はきっと彼女の名を表すもの。それは彼女の母がLow-Gの子として育って欲しいと当てたLow-Gの名前。美影の母が美しいと思った光景をつけた名。美しき影の名を。
 変わったなぁ、と飛場は思う。変わっていけるんだなぁ、と飛場は思う。そう。だからだ。拳が震える。握られているからだ。そこには力が込められている。意志は砕けた。だが再度ここに生まれた。


「――リュージ君」
「――」
「勝ちたい?」
「―――はいッ!!」
「そっか…―――私も、だよ」


 ――望む場所へ、行こうか。


 飛場は呼ぶ。再度、その力を。諦めない為に、何度砕けたって、何度負けたって…譲れない事なのだから。


「――荒帝ッ!!」


 力が、顕現する。
 再び召喚された黒の武神。だがその細部は異なりを見せている。美影の進化が更に強靭な姿を欲したのだ。望むべき場所へと至る為に変わり、得てゆく為に。
 頭部、四肢、胸部、背部、追加フレーム、人工筋肉、装甲…次いで次いでと現れるパーツが一気に合致していく。飛場と美影を取り込み、更に荒帝は形を組み替えていく。
 右腕には鋼の装甲とも言えるプラットフォーム。神砕雷の設置台。左腕には細身の爪を伸ばしたような形状の盾が来る。盾の株には柄があり、勢いよく引き抜けば刃が現れる。
 更にパーツが追加され、フォルムが女性的へと変貌していく。最後に頭部から黒い髪が炎のように吹き出て風に靡いていく。


『美樹義姉さん…』
「……」
『何度負けたって…何度砕かれたって…貴方を負かすまでは…一歩も退きませんよ!!』
「―――ッ!!」


 再度、黒の風と白の風はその身を打ち付け合う。


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