次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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Over World Flower
2037/04/20
Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第2章「運命を撃ち抜く者」 01
2010/03/03
Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 04
2010/03/01
Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 03
2010/03/01
Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 02
2010/03/01
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■■■Over World Flower
2037/04/20 MonOver World Flower
Over world Flower =人の夢は儚き幻=


 全て終わった筈だった。
 自らが犯した罪を全て精算した筈だった。
 だが、再び眼を開いた時、世界は一新されていた。
 皮肉な運命。それは果たして「彼女」に何をもたらすのか。


プロローグ
第1章 01 02 03 04
第2章 01
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■■■Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第2章「運命を撃ち抜く者」 01
2010/03/03 WedOver World Flower
「――シッ!!」


 風を裂きながら迫る木刀。それを片手に持った木刀で防ぐ。普通の木刀に比べれば長さは少し短く、言うならば「小太刀」の長さを模した木刀だ。
 それを振るうのは私と、そして私の兄である高町恭也だ。私は木刀を打ち付け合いながら兄の身体に一撃を入れる機会を伺う。だが対峙してわかるのだが、兄はなかなかに人間離れしている。
 達人の動き、と言うのだろう。私も父さんに歩み寄り、家族との仲が深まった頃から兄達が修練を積んでいる「御神流」を自分も習う事を決めた。
 もちろん、それは将来の為。後に発生するだろう「P・T事件」と「闇の書事件」。その事件で私が「高町なのは」になってしまった事が影響して何か起きてしまう可能性も考えて強くなりたい、と思ったからだ。
 最初、父さんは渋り、兄と姉は戸惑っていたが、それでもなんとか無理矢理押し切り、こうして稽古を一緒にやるようになっている。
 まぁ、それで稽古を一緒になるようになってわかったのは、魔法が無いと本当にこの兄には勝てる気がしない、という事だ。私はお世辞にもセンスがあるとは言い難い。
 恐らく、兄や姉のように剣士としては大成する事は出来ないと思っている。それは兄や姉、父さんも感じているのだろう。それとなく剣術から興味を反らそうとしている行動が見られる。
 それはわかっている。だが、私は未来を知っている。だからこそ申し訳なく思うが今は剣術の稽古がしたい。剣士として大成は出来ずとも、この戦闘経験は後々生きてくるだろう。


「ぅくっ!」
「ハァッ!!」


 私の握っていた木刀が、兄の木刀に打ち払われて宙を舞う。これで勝負あり。今回は…2分か。そこそこ保った方か。


「なのは、大丈夫?」
「大丈夫だよ、姉さん」


 心配そうに声をかけてくるのは私の姉、高町美由希。心配してくれる姉に大丈夫だ、と知らせるように手を振りながら告げる。兄と私の実力差は圧倒的だ。御神流の稽古を始めて1、2年でどうにかなるような相手じゃないのは私がよくわかっている。
 兄も声をかけてくる。姉に比べればやや口調が固いが、それもこの人らしさだ。別に心配してないとか、情が薄いとかそういう訳じゃない。どちらかと言えば感情が表に出にくいだけなのだろう。
 姉から差し出されるタオル。それを私は受け取って汗を拭う。たった2分の事とはいえ、兄を相手にすればかなりの集中力を使う。ふぅ、と汗を拭った後に小さく息を漏らし、身体の中に籠もった熱を逃がす。
 私はタオルで汗を拭いながら道場の隅に移動する。そう、ここは道場。高町家にある道場なのだ。正直、凄いと思う。だからこそ父が剣術家なんだな、と改めて思ってしまう程だ。
 私が隅に移動すれば、今度は兄と姉の模擬試合が始まる。私はそれを観察する。御神流の剣士としては凡才である私だが、決してゼロじゃない。だからこそ兄と姉の動きを少しでも眼に焼き付けようと真っ直ぐに兄と姉の模擬試合に眼を向けた。





 + + + +





「はい、なのは、お弁当よ」
「ありがとう。母さん」


 朝、朝食を食べ終わった私は母に作ってもらった弁当を鞄に入れ、家を後にする。
 家を出る時は姉と一緒だ。登校時間が近いからだ。母親に声に見送られて私は姉と一緒に通学路へと向かう。私の通っている小学校「私立聖祥大付属小学校」への登校は途中で登校バスに乗る場合と、歩いて通う時の二通りがある。
 姉と一緒に出る時は歩いていく時だ。私がバスに乗るか乗らないかを決めるのはアリサとすずかの都合に合わせる事が多い。あの二人は所謂「お嬢様」という奴で、送迎の車が出る時がある。それが出る時は私は歩きで、あの二人がバスに乗る時は私もバスに乗る。
 アリサかすずかがどちらかが都合が悪くなれば、まぁ、基本的に三人でバスに乗る訳だが。それは余談だし、置いておく事にしよう。


「なのは~、そういえばあの小説、読んだ?」
「うん? あぁ、姉さんが前に貸してくれた小説? うん、面白かったよ。読み終わったから今度返すよ」
「そう? だったら続きもあるから読む?」
「うん、ありがとう」


 姉との何気ない会話。少し前までは私は中身が「アネモネ」である事から日本語を不得手としていた。だが、それでもアリサに負けない為にも国語の教科書を熟読する事が多かった。
 実は姉はそれを気にしていたらしいのだ。以前は姉との関係も疎遠だった為、姉がこちらに話しかけてくる事は無かったのだが、私が歩み寄った事によって私と姉の距離は縮まり、姉が本を貸そうか? と提案してきた事が全ての始まり。
 私は当時、別に本が好きだった訳じゃない。ただ勉強をしていただけだったのだ。だが教科書とよく睨めっこをしていた私を姉は「本が好き」または「物語が好き」と解釈したのか、自分の本を貸すように提案してきたのだ。
 私は本が好きじゃなかった。だが、断るのも気が引けて、とりあえず借りる事にする。だがなかなか内容を読む気にはなれず、放置しようと思ったのだが、それでは本を貸してくれた姉に申し訳ない、と思ったので読んでみる事にしたのだ。
 正直に言おう。嵌ったのだ。読書に。
 姉から借りたのは、まだ子供向けの小説。姉が昔に読んでいた小説なのだと言う。それを眺めているうちに物語に引き込まれていき、そして最後のページを読み終わった後のあの読了感。溜まらなかった。
 続きがあると言われ、その続きも借り、前巻の感動も噛み締めつつ、そこから続く物語。人々の心の動き、一種の憧れや共感を感じさせる登場人物の言葉。なまじ、自分が物語りのような人生を歩んでいた為か、なかなかに共感出来る事が多く、思わず胸を震わせてくれる。
 そこからは姉との本の交流を切欠に仲が良くなった。今ではたまに一緒に風呂に入る事もある。姉の髪は長く、洗うのは大変そうなので手伝ったところ、自分も髪を洗って貰い、髪の洗い方など、気をつける事を丁重に説明してもらった。
 あまり気にしていなかったのだが、姉と触れ合い、まぁ、少しお洒落に気を使ってみようかな、と思うようにもなったのはきっと良い事なのだろう。まぁ、そのお洒落がよくわからず、自分で良いな、と思って選んだ服を家族に見せてみたのだが…。
 兄は悪くないんじゃないか、と言っていたんだが、他の父、母、姉からは非難囂々の嵐だった。何でも「黒一色って、どこの恭ちゃんだよっ!?」と姉は怒っていた。そして酷く将来を心配されてしまった。同時に兄がなんだか凹んでいた。…強く生きよう、兄さん。
 まぁ、そんな事もありながら私と姉の関係は良好だ。互いに本の話で盛り上がりながらそれぞれの学校へと向かい、別れる。手を振ってる姉に手を振って返し、教室を目指して歩き出すのであった。





 + + + + +





「将来の夢ってある?」


 昼休み。私はいつものようにアリサとすずかの三人で昼食を取っている頃、ふとアリサが振ってきた話題がそれだった。
 将来、と言われると嫌でも脳裏を過ぎるのは「P・T事件」と「闇の書事件」、そして「J・S」事件。どの事件も「高町なのは」が関与し、大きく関わった事件。「J・S事件」については詳しい事はほとんど覚えていないが、P・T事件、そして闇の書事件に関しては「アネモネ」との関連からそれなりに覚えている。
 覚えているといっても本当におおまかな事だ。ジュエルシードの事、その奪取に現れるだろうフェイト・テスタロッサの出生の秘密。闇の書は改変された夜天の魔導書だと言うこと。その主が八神はやてだと言うこと。
 それに関わらない、という考えも一度はあった。だが今は違う。この世界は管理外世界。自分以外にこの街をロストロギアの驚異から守れるのは私ぐらいだろう。
 八神はやてがどこに居るかさえわかれば助力を請う事も出来るかもしれないが、確か闇の書事件の際にはヴォルケンリッターは管理局と敵対していた。下手に関わると後々厄介な事になりかねない。
 学校にいないのを見ると別の小学校にいるのだろうか、と思ったこともあるが、下手に探ってデバイスも無い時期に主語騎士達と接触し、ボロを出した日には口止めに殺される可能性だってある。
 高町なのはは「P・T事件」の際に「レイジングハート」を手にしたという。ならばせめてその時期まではなるべくならば八神はやてには接触はしたくない。


「――ちょっと! 聞いてるの? なのは」
「ん? あぁ、悪いアリサ。ちょっとぼぅっ、としてた」
「もうっ! だから、アンタ将来の夢とかあるの?」
「…将来か…正直、想像出来ない」
「何かなりたいものとか無いの?」
「…まだ具体的には、ないかな。だけどまだこれからさ。ゆっくり探すよ」


 アリサとすずかに笑ってそう返し、私は小さく二人に気づかれないように溜息を吐いた。「高町なのは」がこの二人と知り合ったのか私は知らない。家族とどういう仲であったのかは知らない。
 だが、この人達は私にとって掛け替えのない大事な人達だ。絶対に傷つけさせやしない、その為だったら未来の知識だろうが何だろうが使ってでも守ってみせる。そう、それが私の目標、私が将来に成すべき事なのだから。


「あ、予鈴鳴った」
「えっ? やばっ」
「ほら、なのは急ぎなさいよー!」
「もぐっ…っ、わかってるっ!」


 お弁当をかき込んだら少し苦しかった。お茶で無理矢理流し込み、私は弁当箱をすぐに片付けて本令が鳴る前に教室へと駆け込むのであった。




 + + + + +





 たまに夢を見る。
 朝、眼を覚ますと隣に寝ている少女がいる。それは私と同じ顔を持つ、私と、アネモネと同じく「高町なのは」のクローン、すみれがいる。
 すみれは寝ぼけ目を擦って私におはよう、と言って私に声をかけてくれる。私もおはよう、と返してすみれと一緒にリビングへと向かうのだ。
 リビングには、私達のオリジナルである高町なのはが笑って出迎えてくれる。その横には高町なのはの娘であるヴィヴィオがいる。ヴィヴィオが元気よく私達に向けて挨拶をし、私とすみれも挨拶を返す。
 奧の方から母さんが呼ぶ声がする。既にテーブルには父さん、兄さん、姉さんが席に座っていて、私も三人に向けておはよう、と言う。
 わかっている。これは夢だ。もう「高町なのは」は私で、私の知る高町なのはは居ないのだ。そしてすみれも居ない。ヴィヴィオもいない。だからこの光景はあり得ないのだと。
 だが、思わず思ってしまう。もしもあの時…私がもっと早くに過ちに気付いていればこんな光景があったのかもしれないという事を。
 だが、今はもう望んでも手は伸ばせない。もう叶う事は無い。
 だから、せめて今は手放さないようにしよう。父がいて、母がいて、兄がいて、姉がいて、アリサがいる。すずかがいる。その他にも多くの知り合いがいる。彼等が生きているこの世界を…。
 だからこそ、そう、だからこそ――――。





『――誰か』


 ――私は…。


『――誰か……僕の声を聞いて……力を貸して……魔法の……力を……』


 ――絶対に、負けない。





 + + + + +





 私は夢を見た。一人の少年の夢だ。少年は何か化け物のような黒い影に向かって立ち向かうのだ。
 左手からは血が溢れている。だが少年はそれを気にした風もせずに、ポーチから赤い宝石を掲げる。手から溢れる翡翠色の光。それは魔法の光。
 刻まれる魔法陣。ミッドチルダ式。次元世界「ミッドチルダ」発祥の魔法。詠唱と共に封印魔法が起動し、化け物を封印する。
 が、魔法式が不完全だったのか、少年の力が足りなかったのか、化け物はその体に傷を負いながらもどこかへと逃げていく。
 それに少年が力尽きたように倒れる。そして、あの声が聞こえた。念話。魔力を持つ者同士が行える声を出さない意思疎通の魔法。
 私は朝のランニングに出る。兄と姉の後ろを付いていくのだが、私はあの少年―恐らくユーノ・スクライア―が倒れた場所を特定していた。
 確か、あれは通学路の途中に、と兄と姉のランニングコースを考えてその場所へとどう向かうかを考える。
 あれは公園の森の中だろう。都合の良い事にそこは私達のランニングコースだ。兄と姉に、少し体調が悪いと誤魔化し、先に行って貰う。兄と姉は背負っていこうか? と執拗に聞いてきたのだが、丁重に断っておいた。…少々胸は痛んだが。
 兄と姉に心の中で頭を下げながら私は公園の森の中へと入っていった。夢に見た光景、恐らく念話によって伝わった彼の意志、その強烈さが恐らく夢というイメージで再現されたのだと私は思う。すみれとのリンクを繋いでいた事がある私は多分そうなのだろう、と予測を立てていた。
 そして…彼はそこにいた。目を細め、私はゆっくりと歩み寄っていく。


「…ユーノ・スクライア…」


 そこに倒れているのはイタチのような動物。確か、フェレットだったか、と記憶を引き摺りだしながらそっと歩み寄っていく。
 どうやら意識が無いようでぐったりとしている。首には…やはり「レイジングハート」がかかっていた。何とも言えないような感情が私の心から溢れ出した。
 あぁ、やはり私は「高町なのは」になってしまったのだと、もうケリをつけた感情がぶり返してくる。不安、恐れ、それが私の体を震わせる。


「…だが、決めたんだ。護ると」


 そう。だから、絶対に私は負けない、と。
 携帯を取り出し、兄と姉にメールを送る。「動物が倒れている。どうしたら良い?」と。
 結果は分かり切っている。この後、動物病院に運べば良い。いくら人間だと言っても今の彼はフェレットでしかない。そこで治療を受ければ体力も回復するだろう。
 彼の目が覚めたら…始めよう。全てを護るために。もう一度、この力を振るおう。
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■■■Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 04
2010/03/01 MonOver World Flower
〈side:士郎〉




 俺、高町士郎にとって彼女は不可思議な存在であり、同時に目を逸らしたい、だが逸らしたくない、ともかく複雑に入り組んだ感情を抱いている。
 高町なのは。それは自分の娘の名。そして高町士郎が愛していると胸を張っているのと同時に、どのように接すれば良いのか、その距離感を掴めない相手である。
 その原因はなのはが元々、あまり物事に感心の無い子供だと言うのもあったが、何よりも自分が負った怪我によってなのはを1人にしてしまった事が原因だ。
 それからなのはとの距離感は更に開いてしまった。人をはね除けこそはしないものの、近づこうともしない無関心さに恐怖を抱いた。
 あの子は実は俺を嫌っているんじゃないか? と。だがなのはにそんな素振りは見られない。
 だがそれは本当なのか? 大きく削ってしまった時間。それが何にも代えがたい時間だったと気付いた時には後の祭りで。
 嫌われてもあの子を正しく導けるならばそれでも良いと思う。それが親の務めだ。
 だが、その務めを果たせなかったのは何よりも自分の所為だ。嫌う、嫌わないそれ以前にあの子の目には俺は入っていないのではないか、と。
 どうすればあの子を正しく育てられるのだろうか、と士郎は戸惑っていた。
 恭也と美由希という前例があったが、あの2人となのはは大きく違う。更に開いてしまった時間が何よりも痛い。
 何かしてやりたい。だけど何をしてやれば良いのかわからない。そんな士郎だからこそ。


「…父さん? えーと、気持ちよい?」
「あ、あぁ。もう少し強くしても良いかな?」


 唐突に肩もみをしたい、と言ってきたなのはに驚き、戸惑うのは至極当然な事なのかもしれない。





+ + + +





 この世界において私と血を分けた父である高町士郎。
 だが私の魂は彼の魂を受け継いではいない。子とは親の魂を少なからず受け継ぐものだ。姿形だけが似るんじゃない。私はそう思う。
 …本来、「高町なのは」として生まれる筈の魂を喰らったのか、それとも上書きしたのか、取り込んだのか、どうなのかはわからないが私は高町なのはを乗っ取って此処にいる。
 私にとって高町なのはとは障害だった。乗り越えなければいけない存在だった。コンプレックスというのだろう。
 どこまで言っても私は「高町なのは」という存在に縛られる。
 戦闘力で高町なのはに勝った所で、私という「個」は高町なのはよりも優れている訳ではない。
 そんな私が高町なのはとして生きている。成長して、気付いた事実。
 私は高町なのはに縛られている。生まれたその時からその魂に深く染みついた「オリジナル」の影。私がコピーだという事実。
 諦めていた。私は高町なのはに成り得ない。私は高町なのはよりも優れてはいない。
 だが…すずかに出会い、アリサに出会い、認められ、暖かさに触れて…。
 それは私が得たもの。決して「高町なのは」だから与えられたものではない。私という「個」が得たもの。
 友にという、共に時間を共有し合える関係。
 心地よかった。愛おしかった。今、何よりも大切だと胸を張って言える。
 優れているとか、優れていないとかじゃなくて、どうしたくて、どうありたいかで。
 捨てられる事の恐怖は拭えない。愛想を尽かされるのは怖い。
 だから手を伸ばす事を恐れていた。その距離を詰めるのが恐ろしかった。どう思われているのか知るのが恐ろしい。
 でも…背中を押してくれる人がいる。大丈夫だよ、と笑ってくれた人がいる。
 だったら…信じてみても良いだろうか。


「父さん、背中大きいね」
「そうか?」


 だから肩もみ。生活をする為には働かなきゃいけない。私が今、ご飯を食べられていて、学校に行けるのも全部、士郎と桃子のお陰。
 それに報いる事が出来る1つの手段。これの発案は実はアリサだったりする。それで実行して見たのだがやはり緊張する。
 言葉は素っ気ないものに感じられる。あぁ、本当に可愛げの無い子供だと思う。
 せめてマッサージだけはしっかりしようと士郎の要求に応えるように頑張る。


「なのは…」
「…何?」
「…急にどうしたんだ? 肩もみだなんて」


 不思議そうな士郎の声が怖い。私はおかしく見えるのか。そう思ってしまう。
 …ここには「高町なのは」はいない。だけど…「高町なのは」だったらどうしてたんだろう。
 わからない。怖い。踏み出せない。身体が固まって、息が苦しくなりそうだ。
 だけど、大丈夫だって言ってくれた。皆、優しいからって言ってくれた。そして私も知っている。
 なら、大丈夫。


「…したくなっただけだよ、父さん」
「…そうか」
「うん。…ありがと」
「はは、お礼を言うのは俺だろ? ありがとう、なのは」


 士郎のお礼の言葉に震えてしまった。それは本当に? と。
 よくわからない感情がごちゃ混ぜになる。不安なのか、歓喜なのか、理解が追い付かない。
 身体が震えないようにしようとして、身体が自然を前屈みになった。強ばった身体が士郎の背中に抱きつく形で触れる。


「…また…しても良いかな?」


 縋り付くように私は問いかけた。これで良いのかわからない。本当に士郎は喜んでくれたのだろうか?
 わからないから言葉を重ねる。でも届かない。どうすればもっと心が通えるのだろうか?
 それはすずかが、アリサが教えてくれた。それは真っ直ぐに言葉を伝える事。
 だから私は問いかける。少しでも知りたいから。少しでも、この距離を縮めたいから。



+ + + +





〈side:士郎〉





「…また…しても良いかな?」


 …俺は馬鹿だ。愚かだ。どうしようも無い程までに。
 こんなにも身体を震わせて肩もみをしてくれた娘が愛しくて堪らない。
 距離を取り合っていたのは、お互い様だったのだ。
 この子は無関心だった。それは今思えば聡いからこその無関心だったのではないか。
 あぁ、触れ合えばわかる。手に取るようにわかる。理解していく。
 この子はこんなにも怯えていたのか。こんなにも俺に怯えていたのか。
 距離を取ろうと計らなければならない程までに俺はこの子に接してあげる事が出来なかったのか。
 愚かだ。何が親だ。親を名乗る資格が無いと言われても仕様がない。それほどまでに俺は不甲斐なかった。
 身体を反らして背に抱きつくようななのはをそっと抱き寄せる。自分の胸元にすっぽりと収まる娘は驚いたような、それでいてどこか不安げに自分を見つめていた。


「…また、頼むな? なのは」


 ありがとう。怖かったよな? 傍にいてやんなきゃいけない人が傍にいなくて不安だったよな。
 本当にごめんな。ごめんな、なのは。俺ももっと頑張るから。親として頼られるようになるから。
 だからもうそんな顔はしなくて良いんだ。そんな顔はもう、二度とさせないから。


「…ぅん…また…するよ」


 消え入りそうな声でなのはが呟いた。あぁ、と俺は頷いて、ただ愛しい末娘の頭を撫でてた。





+ + + +





 高町家の長男、高町恭也と長女、高町美由希の朝は非常に早い。
 剣術家の家に生まれた2人は今まで積み重ねられてきた剣術の稽古に勤しむ。
 その訓練の最中、そろそろ終わりの時刻が迫っていた時だった。そろそろ上がろうかと恭也が思った時だった。
 道場の扉が開き、そこに1人の少女が入ってきた。それは彼等の妹である高町なのはの姿であった。
 思わず2人は驚いた顔でなのはを見た。何故なのはがここに? と疑問符が浮かぶ。
 ここで3人の関係がどのような関係か挙げておこう。恭也と美由希はこの妹の事を嫌ってはいないが、苦手な存在である。
 性格が悪い訳じゃない。ただ苦手意識を過去に持ってしまったのが今になっても引き摺っているのだ。
 高町士郎の入院の際、恭也は数々の無茶を重ね、美由希もまた落ち込んだりとなのはを構う事が出来なかったのだ。
 いつしか我が儘もコミュニケーションも取ってこない妹に2人が苦手意識を持ってしまうのは仕様がない事なのかもしれない。
 だからこそ、こうしてなのはが道場に来るのは本当に珍しい。


「兄さん、姉さん、ご飯だって」
「あ、あぁ。ありがとう、なのは」
「気にしないで。待ってる」


 いつもは自分たちが来るまで大人しく座って待っていた妹からの言葉に2人は暫し見つめ合い、そして首を傾げた。
 一体どうしたのか? と言いたげな顔をしながらとりあえずリビングへと向かう事にした。タオルで汗を拭い、リビングへと向かう。
 そこでは士郎と桃子、そしてなのはが朝食の準備をしながら待っていた。


「おぉ、来たか。恭也、美由希。おはよう」
「あぁ、おはよう」
「おはよう」
「はい、おはようー。さぁ、ご飯にしましょう?」


 桃子がやけに上機嫌に2人に声をかけてくる。2人は桃子に急かされるままに席について目を丸くするばかりだ。
 何やらニヤニヤと笑っている士郎と桃子。ふとなのはの方に視線を移すといつものように食事を始めている。
 恭也と美由希はとにかく何が起こっているかはわからないが食事を摂る事にした。学校もある、ここで呆けている場合では無いのだ。


「…あれ?」
「…む?」


 ふと、2人が味噌汁を飲んだ時だった。普段呑んでいる味噌汁とは若干味が違うように感じた。
 気のせいか? と2人は思いながら再度味噌汁を口に含む。するとニヤニヤ顔で笑っていた桃子が。


「おいしい?」


 と問う。何かある、と感じた2人は桃子に逆に問い返す。


「お味噌でも変えた?」
「味が違うな…」
「えぇ。そのお味噌汁はなのはが作ってくれたのよ」
「………え”?」


 恭也、フリーズ。美由希は眼鏡がずり下がった。なのはは2人の反応を特に気にせずに食事を続けている。
 どういう事なのか、と混乱する2人に士郎がニヤニヤと笑みを浮かべながら。


「おいおい、せっかく妹が母親の手伝いをするようになったって言うのに褒めてやらないのかよ?」
「え? な、なのはが? え? 何で?」
「別に。気分」


 簡潔になのはは美由希の疑問に答える。今まで家族に対して不干渉気味だったなのはの行動に美由希は呆気取られるばかりである。
 恭也もまた同じだ。そんな2人に士郎は笑い声を上げて「修行不足だな」と呟いた。
 なのははふぅ、と小さく溜息を吐いた。どうやら食事を終えたらしい。彼女はそのまま食器を下げて片付ける。


「…急がないと遅れるよ?」


 なのはの呟きに呆気取られて硬直していた恭也と美由希はすぐさま食事を再開するのであった。





+ + + +





 学校へと向かうスクールバス。私はそのバスの背もたれにもたれかかりながらアリサとすずかと話をしていた。内容は勿論、士郎、いや、父さんとの事だ。


「それじゃ、上手く行ったんだ」
「うん。多分ね」
「最初は驚かれるかもしれないけど、すぐ慣れてくれるでしょ」


 すずかが嬉しそうに笑い、アリサもまた同じ顔で笑っている。その2人に吊られるように私も笑った。あぁ、こういう日常は悪くないな、と心の底から思う。


「ありがとう、アリサ、すずか」
「ふん、別にお礼なんかいらないわよ!」
「そうそう。別に私達はお礼がしたくてやった訳じゃないしさ」
「それでも、だ。ありがとうな、2人とも」


 今はこれで良い。そう思う事は許されるだろうか? と私は思いながら空を見上げた。雲1つ無い、快晴の空だった。
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■■■Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 03
2010/03/01 MonOver World Flower
 アリサとの見舞いから数日。私の周りは特に変化はない。つまり良くもならなければ、悪くもなっていないという事である。
 誰も私を腫れ物を扱うように扱い、目が合いそうになれば即座に逸らす。
 すずかがやはり心配そうにこちらを見てくるが敢えて無視をする。この中で私に近づくのは悪影響でしかない。
 ふぅ、と嘆息を吐いて空気の悪い教室から逃げ出すように廊下を歩いていたがすぐ次の授業の時間が迫っていた。
 軽く憂鬱な気分のまま教室に入ろうとした時だった。


「高町がわざと私を怪我させた!? アイツはそんな事する奴じゃないわよっ!!」


 ドアに手をかけた所で動きが止まった。中から聞こえてくるのはアリサの声だ。
 一体何を言っているのか、と視線を教室の中へと向けると皆の視線が集中している。集中しているその先にはアリサがいる。
 退院して来たのか、と若干の驚き。がしかし何故こんな状況になっているのかわからない。


「アイツは確かに無口だし、何考えてるかよくわからないけど、アイツは誰かを傷付けようとするような奴じゃないわよっ!!」


 …いや、本当、何、してるのか。


「だからアイツはそんな事してないの! 勝手に決めつけるなっ!!」


 …アホだろ。わざわざそんな事言う必要なんて無いだろう?
 なのに、何でわざわざそんな事をしてる…?


「…訳わからない」


 嫌いな相手だ。あっちもこっちの事を好いてくれているとは思えない。
 なのに何故アリサは自分を助けるような事を言ってくれるのか? 皆の前であぁも言えるのは何故なのか?


「…私もそう思う」
「…月村」
「だって…なのはちゃんは私を助けてくれたから。凄い不器用だけど…優しいから。困ってた私を助けてくれたから」


 …あぁ、すずかまで…。
 あぁ、何だろう。凄く胸が苦しい。だけど決してそれは深いな苦しさじゃなくて。
 頬が熱い。胸がぽかぽかと暖かくなってくる。自然と口の端が持ち上がる。
 あぁ、馬鹿だ。馬鹿が2人いる。
 こんなに、こんなに思われて良いのだろうか? 私は特に何もしていない筈なのに。
 私が「高町なのは」だからだろうか? いや、この世界で高町なのはは私だけだ。
 だから「私」は愛されてると思って良いのだろうか? きっと…そうなのだろう。


「…あぁ、もう…」


 止めて欲しいな、と思う。これじゃ教室に入れない。笑む顔が押さえられない。
 こんなにも嬉しい。こんなにも認めて貰える事が嬉しい。こんなにも誰かに思われる事が嬉しい。
 あぁ、あれだけ疎ましく、そして妬ましく思っていたものがこんなにも暖かいものだったなんて。


「…ふぅ…」


 震える吐息を吐き出す。真っ直ぐ前に視線を向ける。
 こんな情けない顔じゃダメだ。普通にしていよう。そうしよう。
 そっと手にかけていたドアに力を込めてスライドさせる。皆はどんな顔をしているだろうか?
 想像がつかない。アリサは、すずかは、皆はどんな顔をするのかな?
 高鳴る鼓動を抑え、私は教室へと足を踏み入れた。


「…ぁ…」


 そんな呟きが私の耳に届く。私はそれに気を留めた風も無く、軽く肩を竦めてアリサを見据える。
 アリサと私の目が合う。アリサは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしながら私を見ていた。思わず笑いが込み上げてくる。


「…退院したんだ?」
「え? え、えぇ…」
「そんなに叫んでると、また入院するよ?」
「なっ!? な、な、あ、あんたねぇっ! 人がせっかく心配してやったってのに何よその言いぐさはっ!?」
「心配してなんて言ってないよ?」
「くぁーーーっっ!! あんた、ムカツクっ!! やっぱりムカツクわっ!!」


 だんだんっ、と床を踏みならしながらこちらを睨み付けて怒鳴るアリサ。
 私は、どうどう、と手で抑えるようにアリサに示しながら笑うのであった。
 あぁ、これが笑わずにはいられない。何故だかはよく私にはわからないが。


「…なのはちゃん?」
「…すずか」
「…えと、その…」



 小さく、少し怯えたように縮こまりながらも声をかけてきたすずかに更に笑みが深くなる。
 本当に、まだよくわからないけど、嬉しいから。こんなにも嬉しいから。


「ありがとう、すずか。それと…ごめん」
「……うぅん、良いよ。良いの」
「ん。ありがと」


 互いに微笑み合う。そしてそれはいつか笑い声も混じってきた。
 そうして笑っていると、クラスメイトの1人がオドオドとしながら近づいてきた。
 暫し何か言い淀むように唇を動かしていたが、ふと、意を決したように。


「あ、あの、避けたりしてごめんなさいっ!」


 思わずその謝罪に面食らう。暫し呆然としていが、別に気にしてない、と告げる。
 それを皮切りにしたのか、クラスメイトが次から次へと謝ってきた。
 謝られる、という事に慣れていない為、思わず戸惑う私。そんな私をすずかが少し離れた所から笑いながら見ている。正直、助けて欲しい。


「ほらほら、そこでウジウジしてる奴も謝ってきたらどうなの?」


 そしてアリサ。何、更にこの集団を増やそうとしている。正直迷惑だから止めて欲しい。
 そうこうしている内にベルが鳴る。それでようやく席につけると思ったが謝る声は収まらず、先生が来て注意されるまでこの謝罪は止まらなかった。
 ようやくぐったりとしながらも私は席に着く事が出来た。ふと思わず視線はすずかとアリサに向く。
 すずかは目が会うと微笑んで来る。アリサは目が合うと不敵に笑みを浮かべる。
 私は想像してなかった。この2人が私にとって大事な人になるだなんて。
 この時はまだ自覚していなかったから。まだ、この時は…。





+ + + +





 時は流れるのは早い。あれから…あれ、というのはアリサが私の弁護をしてくれた時からだ。
 私は前のようにアリサと張り合い、すずかと穏やかに時間を過ごしていた。ただ変わった事と言えば、私とクラスの連中との距離が縮まった事。
 そして…何かとアリサが私とすずかと連むようになった事くらいだ。


「くぅーっ!! 何だってアンタあんなに算数の成績良いのよぅっ!!」
「出来るから」
「くのぉ…っ!! でも、あんた漢字ダメよね?」
「…覚えにくい」
「なのはちゃん、国語の成績パッ、としないからね。主に漢字方面とか」


 昼食をつつきながら談笑する。今日の話題は今日、返却されたばかりのテストだ。
 アリサはほぼパーフェクト。優等生の名は伊達ではない。
 すずかもそこそこと言った所だ。つまり可も不可も無い。
 そして私はどうか? 私は算数や理科は得意なのだが、国語が絶望的に不味い。
 中身が私だからだろうか。日常的に使っているので話すのは問題は無いが、いざ書いたりするとなると漢字というのはなかなか頭に入ってこない。
 正直、英語の方が気楽だ。あれはミッドチルダの言語と類字している為に読み書きは日本のものよりは楽だ。
 その影響か、私は本が好きではない。よって姉の美由希の読書好きには理解が追い付かない。文字だけのものの何が面白いというのか。


「くっ…それでもなのはには国語しか勝ってない…算数はもう負け確定だし、他はだいだい同じぐらいだし…」
「国語さえ出来ればねぇ…」


 アリサに負けたくないという影響の為か、私の成績はかなり上位の方にある。
 家でもよく勉強するようになってきた。だがやはり国語は漢字が多いのでやる気が失せるのだが。
 その代わりと言ってはなんだが、算数と理科の成績は学年トップと言っても良い程の成績になっている。魔導師としては知っておかなければならない事項だし、これは刷り込み教育によってアネモネであった時から理解している。
 ただ漢字だけはどうにもならない。出来れば刷り込みして欲しかったなぁ、と父親であった科学者、ジーク・インプレッサの事を思い出す。
 …あの人はあれからどうなったのだろうか? 今ではもう純粋に「父」として思えない相手であったが、あれも父親だったのだ。私にとっては。
 …私が士郎と馴染めないのもあの人の影響があるからなのだろうか、と考え込んでしまう。
 その時、額に軽い衝撃が走り、小さな呻き声と共に額を抑えた。


「~~っ、すずか…?」
「ふふっ、だってなのはちゃんがまた悩んだ顔してるから、ね?」
「素直に悩ませてくれ…」
「私達に相談できない事?」


 アリサとすずかの視線が私に集中する。こうしてジッ、と見られるのは苦手なので思わず呻く。
 …相談、か。あまり相談などした事がない。ダメならダメとキッパリ諦めてきた。私はそうやって生きてきた。
 だが、それではダメだ、とアリサやすずかとの付き合いの中で思った。諦めたくない事と、諦めてはいけない事がある事を。
 諦めたくない事というのは、まだ見つからないが、諦めていけない事は…なんとなくわかる。
 士郎は良い人だ。それは私の嘘のない本音だ。
 だが…私は士郎に愛されているのだろうか? 私はあの人の子供だが、愛して貰っているのだろうか?
 多分、愛してくれてる。桃子も、恭也も、美由希も、皆。
 …それが、少し怖い。私は「なのは」じゃない。だけどなのはだと言う事実。
 私は私しかいない。この世界のなのはは私で、「なのは」はいない。
 だが、それでも私は私よりも優れた「私」を知っている。だからこそ、愛想を尽かされるのが怖い。
 ――もう捨てられるのは嫌だ。
 そんな事はしない、と思ってもこの恐怖からはなかなか逃れられるものではない。これがトラウマという奴なのかもしれない。


「…なのはちゃん? 困ってるなら力になるからね?」


 そう言われては私は弱い。すずかは狡い。その言い方は私を弱くする。
 こういう時、アリサが茶化してくれれば誤魔化せるのだがアリサはこういう時には沈黙してこっちを見てくる。頼むから空気を読んでくれ…。
 暫しすずかの追求の視線に曝される事となる。私は思わず溜息を吐いて。


「…ちょっと、家族とどう付き合えば良いかわからないだけだよ」
「え?」
「はぁ?」


 私の話した内容がそんなに意外だったのか、2人は目を丸くしている。


「…なのはちゃんのお兄ちゃんって恭也さん、だよね?」
「それに翠屋の士郎さんに桃子さん。あとお姉さんに美由希さんだっけ?」
「うん…」
「…優しい人、だよね? 皆」
「うん」
「じゃあ何で?」
「……理由は、よくわからない。苦手なのかもしれない」


 答える訳にも行かず言葉は濁す。私の返答を聞いたすずかとアリサは何かを悩むような表情でいたが、ふと、すずかが顔を上げて。


「…なのはちゃんの思うままで良いんじゃないかな?」
「思うまま?」
「うん。なのはちゃんがどうしたいかで良いと思うよ、私は。難しい事もわからないし」
「…そうね。まぁ好きにしてれば良いんじゃないの? 私だってそうしてるし」


 …そんな簡単な事で済むのかな?
 …思うまま、か。今度、そうしてみようかな。


「あ、そうだ。もし話辛いとかだったら良い方法あるわよ?」
「え?」


 ふとアリサが思いついたように視線を上に上げながら呟きを漏らす。
 それは何かと訪ねると、彼女はフフン、と言いたげに微笑んで。


「それはね…肩叩きよ!!」
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■■■Over Wold Flower =人の夢は儚き幻= 第1章「私と『私』」 02
2010/03/01 MonOver World Flower
 決して故意では無かった。そんなつもりは無かった。
 だが…傍目から見てそれはどう映るのだろうか?
 例えばだ。普段から仲の悪い2人がいるとする。その2人が張り合ってる際にどちらか一方が一方的に倒れた時…倒した方はどう見られるのだろうか?


「…ぁ…」


 それは…本当に偶然だった。わざとじゃない。ただそうなってしまっただけで、頭の中が真っ白になってしまった。


「…アリサ…?」


 体育館の床にボールが跳ねる音が…やけに遠く聞こえた。
 目の前には苦悶の表情で体育館の床に転がるアリサがいる。
 何故、こうなったのか? 私はほんの少し前までの光景を思い起こした。





 今日の体育の授業はバスケットだった。そして私の試合の番が来ると、アリサが敵チームにいた。
 私とアリサが張り合う立場にいたらどうなるのか? それはもう1つしかない。それはいつもの光景だった。
 試合が始まり、アリサがボールを持っていて敵陣の深くまで攻め込んでくる。流石にそこはアリサ。巧みなドリブルで一気に距離が詰められる。
 ゴール前に私はすぐに駆け抜け、アリサの前に立ち塞がりアリサのシュートを防ぐ。更に私がアリサからボールを奪おうと牽制する。


「くっ! このっ…!!」


 焦れったくなったアリサが無理な体勢でシュートを打とうとしたのだろう。半ば無我夢中だった私はそれを強引に止めた。
 反抗心が原因だったと言えばそうだろう。無理な体勢でシュートを打ったアリサ。それを半ば強引に止めた私。


「――ぁっ…」



 アリサの態勢が崩れる。それに合わせて自分も態勢を崩した。
 倒そうとした訳じゃない。だが…アリサは私に押し倒されるようにして倒れた。
 鈍い、何かが打つ音がした。
 ゆっくりと顔を上げた。そして思わず身体の動きを止めずにはいられなかった。
 アリサは動かなくなっていた。それを私は血の気が引く思いで…ただ、呆然と見つめる事しか出来なかった。
 暫くして先生が担架を持ってきてアリサを救急車に運ぶまで私は動く事が出来なかった。





+ + + +





 その次の日の事だ。
 アリサが入院した。どうも打ち所が悪かったらしい。当然その噂はクラス内に広まる。
 噂が広がったならばどうなるか? 私とアリサの対立は皆も知っている。…だから、こんな噂が流れるのも当たり前だったのかもしれない。



 ―高町の奴、アリサに怪我させようとしてやったって話だぜ。



 誰が、いつ、どこでそんな話をしたのかはわからない。だがそれは皆に限りなく真実に近い噂として広まった。
 私とアリサは立場が違う。アリサは皆を引っ張っていくリーダータイプの人間で好かれていた。
 確かにすずかを虐めていた事もあったがあの一件以来、アリサが誰かを虐めたという話は聞かない。
 対して私は友達が少なく、何を考えているのかわからないと皆に思われている。何をするかわからない奴。それが故意にアリサを怪我させようとしたとしても疑う材料がないのだ。
 ならば自然と天秤が私が悪いように傾いていく。
 わざとじゃない。アリサにそんな事しようだなんて考えなかった。嫌いだったけど、憎い訳じゃない。
 …だけど言っても、信じられない。


「…それに怪我させたの、事実だしね」


 最近はすずかも寄りつけなくさせた。何かとこちらを心配していたがすずかにまで被害が及ぶ可能性もあったからだ。
 すずかには冷たく接している。それですずかが泣きそうになって、やっぱり私は嫌な奴なんだと噂が広まる。
 …仕様がない。だって、私が悪いんだから。溜息を吐いて、私は誰もいなくなった教室を後にしていった。





+ + + +





 更にその後日の事…。


「…ふぅ」


 私は思わず溜息を吐き出した。目の前には病院がある。手にはある病室のメモがある。
 そこはアリサの入院している病室がメモされている。


「…悪い事したら、謝らないとね」


 1日置いてしまったが…正直どんな顔をすれば良いのかわからなかった。
 すみれの時のようにすれば良いのだろうか? ただ言葉だけで足りるのだろうか?
 わからない。人にどう謝れば良いのだろうかわからない。だけど謝らなければならない。


「…行こう」


 迷ったって何も出来やしない。このままじゃ士郎も桃子もすずかも心配したままだ。
 それにアリサの状態も気になる。先生にも促されたのもある。自分で思ったのもある。
 考え込みながら歩いていくと、気付けばアリサの病室の前に立っていた。
 息を吸い込む。手を軽く握り、ノックをする。


「はーい」
「…高町だけど」
「…えっ!?」


 自分の名前を告げながら病室の中に入るとアリサの驚いた顔が見え、驚いた声が耳に届いた。
 まぁ驚くだろうな、と思う。逆の立場なら自分も驚くだろうし、と思いながら。


「…えと」
「…な、なによ…」
「謝りに来た」
「…」
「…ごめん」
「……アンタさ、謝るんだったらもっとこう、謝り方とかあるんじゃないの?」


 アリサが呆れたように溜息を吐きながら言う。


「…謝り方よくわかんないし、回りくどいのも嫌かな、って」
「…ふぅん」
「…大丈夫なの?」
「別に~? パパが大袈裟にしてるだけよ。もう退屈ったらありゃしない」
「そう、良かった」


 本当に良かった。アリサの言葉を聞いて安心した。もう私の所為で誰かが傷付くのは嫌だ。


「…にしても、アンタが見舞いに来るなんてね」
「謝らないと思ってたし」
「…そう。私も、悪かったわね。ムキになりすぎたわ」
「いや、私が悪いし」
「…何よ。私だってムキになったって言ってるでしょ?」
「…いや、私が元々アリサと張り合ってたのがいけないし…」
「はぁ…?」


 アリサの顔が「あんた、馬鹿?」というような顔になった。何故そんな顔をされるのかが本気でわからない。


「…アンタって結構根暗だったのね」
「…そうだね」
「あーっ! 腹立つ! やっぱりアンタ腹立つわっ!! 退院したら覚えてなさいっ!! コテンパンにのしてやるんだから!!」
「…いや、何でそうなる?」
「うるさいっ!! 良いっ!? アンタはねっ! 私がコテンパンに負かすって決めたのよっ!! だから、こんな事ぐらい気にするんじゃないわよっ!!」


 指を指しながら私に向けて宣言するアリサ。正直、アリサがそんなに私に張り合うのかがわからない。
 その理由を聞いてみれば「気にくわないから」としか返さない。あぁ、私も改めて思う。
 私はアリサ・バニングスが嫌いだ。





+++++





〈side:アリサ〉


 …まったく、本当驚かせてくれるわ。いきなり高町が見舞いに来るなんてね。
 でも、アイツなんだかんだ言って心配してくれてたし…月村の時もそうだったけど、やっぱりアイツって…。
 …でも根暗なのよね。あぁもうっ! 思い出したら腹立ってきた! 何よっ! 私が認めてやってるのにあんなウジウジしてるの!? わけわかんない!!
 絶対、あんな奴に負けないんだから! そうよっ!! あーっ! もうっ、早く退院したいーっ!!





++++






〈side:すずか〉





「…はぁ」


 私は思わず溜息を吐く。
 自分の部屋で考えるのは友達の事だ。
 その友達の名前は高町なのは。昔、私のヘアバンドを取られた時に取り返してくれた優しい友達。
 普段は何を考えているのかよくわからない、あまりお喋りをしない女の子。
 だけど彼女のそれはただ不器用なだけというのは私は良く知っている。
 だって、私、月村すずかは高町なのはの友達なのだと胸を張って言えるのだから。
 だけど、私は今、とても沈み込んでいる。その理由はとても簡単な事。


「…はぁ」


 アリサ・バニングス。なのはちゃんといつも張り合っている女の子。
 あの日、彼女はいつものようになのはちゃんと競い合っている時に、不幸な事故で入院してしまった。
 それが原因でなのはちゃんはバニングスさんを傷付けようとわざとやったという話が噂として広がってしまった。
 それはただの噂。だけどなのはちゃんの不器用さがそれを極めて真実だと思わさせてしまった。
 その所為か、なのはちゃんは最近私を遠ざけようとしている。それはなのはちゃんが私も虐められないようにしている為だというのがわかる。実際、他の友達からも止められた。


「…でも」


 それは何か間違っている気がする。だってなのはちゃんは間違った事はしてない。
 悪い事をしようとしてた訳じゃない。皆にそう言えば良かった。いや、そう言わなければいけなかったんだと思う。
 だけど足が竦んでしまった。怖かった。私の言葉なんて誰にも伝わらないんじゃないかって。
 だから私は何も言えなくなってしまった。なのはちゃんも遠ざかってしまった。


「……はぁ……」


 ただ情けない。後悔だけが募る。どうして言い出せなかったのか、と。
 私はやっぱり弱虫だ。そんな自分が、嫌になりそうだった。
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