次回キリ番リクエスト30000!! 更新報告:12月15日 朧月の契り 第2章14 日記 を更新。
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Only One Flowers
2037/04/21
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話 Bpart
2010/02/28
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話 Apart
2010/02/28
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第20話 Bpart
2010/02/28
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第20話 Apart
2010/02/28
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■■■Only One Flowers
2037/04/21 TueOnly One Flowers
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来=


 始まりは一人の狂信者から。
 切欠はある少女の撃墜から。
 その時、全てが動き出した。時を経て、物語は動き始める。
 これは、2人の少女の物語。元は同じ、些細な差異によって別たれた道。
 それが再び重なる時、少女達はそこに何を見るのか?


プロローグ
第1話 Apart Bpart
第2話 Apart Bpart
第3話 Apart Bpart
第4話 Apart Bpart
第5話 Apart Bpart
第6話 Apart Bpart
第7話 Apart Bpart
第8話 Apart Bpart
第9話 Apart Bpart
第10話 Apart Bpart
第11話 Apart Bpart
第12話 Apart Bpart
第13話 Apart Bpart
第14話 Apart Bpart
第15話 Apart Bpart
第16話 Apart Bpart
第17話 Apart Bpart
第18話 Apart Bpart
第19話 Apart Bpart
第20話 Apart Bpart
最終話 Apart Bpart
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■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話 Bpart
2010/02/28 SunOnly One Flowers
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話「すみれ -Bpart-」





 太陽が温かい日差しを照らしている。空は青く雲が穏やかに流れていく。
 その空の下、ミッドチルダの一画に一人の少女が歩いていく。長く伸ばした栗色の髪。ポニーテイルにしたその髪が少女の歩みと共に揺れる。
 纏った服は白のYシャツにジーパンと言ったラフな格好。その手には小さめな花束が携えられている。少女はそのままミッドチルダの街並みを歩いていく。ふと、見渡せばそこには色々な人がいる。
 今日はミッドチルダは休日。友達と遊びに行くのか、子供が数名固まりながら歩いていく姿が見える。視線を逸らせば、腕を組み、仲が良さそうに歩いていく青年と女性の姿が見える。
 他にも休日出勤に向かう大人や、親に手を引かれ歩いていく子供の姿もまた見える。それに少女は小さく笑みを零しながら目的の場所へと向かっていく。
 暫く歩を進めると少女は町外れの方へと出て行った。街から離れると、ちらほらと自然が多くなってくる。豊かに生い茂る緑色の草むら。その中で、ふと見れば虫達がせわしなく動き回っている。
 視線を上げればそこには雄々しくその枝を伸ばす樹木が見える。その樹木に止まる小鳥達。歌を歌うかのように鳴き声を上げながら、その小さな翼を広げて空へと飛んでいく。
 足を止めて飛んでいく鳥たちの行く先を見つめてから、少女は小さく笑みを零した。小鳥達が見えなくなった後、少女は再び歩を進めていく。
 少女の目の前に階段が見えた。そこを上がれば少女の目的地があるのだ。少女は少し歩む歩調を早め、階段の前へとやってきた。
 一段一段…しっかりと踏みしめながら階段を昇っていく。階段はそう長い物でもなくすぐに終わった。階段を上りきったその先に広がるのは…墓地であった。
 故人の名前を刻んだ墓石が立ち並び、お墓の前にはお供え物があったり、花束が添えられてたり、または何もなかったりと様々だ。
 良く見れば墓石の形や色も、違ったりする物もある。改めてその様子を観察しながら少女は自分の探す墓石を探す。少し歩き回った後。少女はようやく目的の墓石を見つける事が出来た。ほっ、と小さく安堵の息を吐いてから、お墓の前に立つ。そっと墓石に手を伸ばして、墓石に刻まれた名をなぞった。そこに刻まれた名は…「アネモネ」。


「…1年…経ったよ。アネモネ」


 そう言って、少女、すみれは笑みを浮かべるのであった。彼女は墓前に花束を添えて、その場に腰を下ろした。


「私ね…高町家に入ったんだ。だから、今はね…高町すみれになったんだ」


 すみれは嬉しそうに笑いながら墓石に語りかける。


「えっとね。それでね、なのはお姉ちゃん、って呼ぶようになったんだ。なんか末っ子だったからそう呼ばれると嬉しいんだって。おかしいよね」


 すみれが高町家に入り、なのはがそう呼ぶようにお願いした所、すみれはそれを素直に了承し、なのはが歓喜で小躍りしたという。
 尚、証言者は高町すみれ、高町ヴィヴィオ、アイナ・トライトンの3名である。


「あと…後見人には、フェイト姉さんがなってくれたよ。ママみたいな物だ、ってヴィヴィオが言うから…私も、姉さん、って呼んでる」


 ヴィヴィオがなのはママ、とフェイトママ、と呼ぶ理由を尋ねた所、昔、機動六課にいた頃にそう言われた為に、すみれもそうした方が良いかな、と思いそうした。
 その際に、フェイトに酷く狼狽されたのをすみれは覚えている。その後、フェイトも「そっちの方が良い」との事で、このまま姉さん、と呼んでいる。


「年上の人には…さん付けしろ、ってはやてさんが言うんだ。でもさ、ヴィータさんって見た目が年下で…でも呼ばなかったらグラーフアイゼンを持って追いかけてくるんだよ? 酷いよね。シグナムさんもザフィーラさんもその時無視するし…シャマルさんは役に経たないし、リインとアギトは煽るし…」


 そこで思い出した、と言うようにすみれは頬を膨らませて。


「それでね、はやてさんったら酷いんだよ。「アネモネにやられた古傷疼くわー、慰謝料貰おうかー」って…それでなんか着せ替えさせられるんだよね…後、胸触ってくるし」


 不満そうにはやての顔を思い出しながらすみれは告げて。


「あ、さん付けしろ、って言われたけど…ティアナは、普通にティアナで呼んでるよ。もしくはティア。なんか今更だ、って言われちゃってさ…。それで、スバルさんに良く「私も呼び捨てで良いのに」って言われるんだけど、どうしたら良いんだろうね…」


 すみれは本気で困ったような表情をしながら、乾いた笑いを漏らして。


「後ね、エリオとキャロと友達になったよ。最初はちょっとぎこちなかったけど…今だったらたまに一緒にお買い物とか行くよ。キャロと。エリオとは…一緒に訓練したり。後、ルーテシア・アルピーノって子を紹介されたんだ」


 3人の友達の顔を思い出しながら、すみれは笑って。


「後…地球に行ったよ。なのはお姉ちゃんの故郷。そこでなのはお姉ちゃんの友達のアリサさんとすずかさんって人に会ったよ。最初は凄く驚かれたよ。その後でね、父さんとお母さん…あぁ、高町士郎と、高町桃子、って言うだけどね。その2人にも…ちゃんと受け入れて貰った。後、もう1人お姉ちゃんがいたんだ。美由希お姉ちゃん。眼鏡つけて、三つ編みなんだ」


 思いつく限りの事を、すみれは呟いていく。大事な思い出を語る彼女の姿は、とても微笑ましい物だ。


「…今度、学校に行こうと思ってるんだ。今まで…色々迷いながら、ずっと、家に引き籠もってたんだけどね。ヴィヴィオに良く怒られたよ」


 あはは、と苦笑を浮かべながら言うすみれ。当時のヴィヴィオはそれはもう、怖かった、と。


「…1年で…たった1年で…色々あったよ」


 まだ語り切れてない。まだ全然だ。まだまだ、もっと、もっともっと言いたい事がある。
 だけどそれは上手い具合に言葉にならなくて、沈黙に変わってしまう。墓地に穏やかな風が吹いていく。その風がすみれのポニーテイルを揺らしていく。


「…アネモネ…」


 墓石に刻まれた彼女の名を呼ぶ。そっと、胸を撫でて。


「…あの時、言えなかったけど…今なら、ちゃんと言えるよ。1年かかったけど…聞いて欲しいんだ」


 空を見上げながらすみれは小さな声で…呟いた。


「…サヨナラ、アネモネ…。私はもう歩いていけるから。だから心配しないで」


 そう言って微笑みを浮かべてすみれは立ち上がろうとした。そのすみれに、横から、スッ、と差しのばされた手があった。その手の先を見ると…そこには栗色の髪をサイドポニーにした女性が立っていた。


「…なのはお姉ちゃん…?」
「…ふふ、一人で行っちゃうなんて、薄情だね、すみれ」
「そーだよっ!」
「ヴィヴィオも…? 何で?」


 なのはの後ろでヴィヴィオが、私怒ってます、という顔でこちらを睨んでくる。睨まれても可愛く見えてしまうので、とりあえず怖くは無いなぁ、と思いながら、どうしてここに2人がいるのかと問いかける。
 そんなすみれになのはは笑みを浮かべて。先に立て、と言うようにすみれの手を握って立たせる。すみれがやや驚きながらも立たされて。


「良いでしょ? 何でもさ」
「それになのはとヴィヴィオだけじゃないしね?」
「…フェイト姉さん!?」


 なのはの後ろ側から顔を出した金髪の女性、フェイトにすみれは驚く。だが、更に驚く事にその後ろから茶髪の女性が顔を出して。


「私等もいるでー?」
「はやてさん…」
「おぅ。アタシ等だよ」
「ヴィータさん達まで…」

 はやての後ろには八神家の面々が立っていた。思わず呆然、としていると、ティアナとスバル、エリオとキャロまでも顔を出して。


「な、何で?」
「まぁ…良いじゃない?」
「そうそう」
「細かい事、気にしちゃ駄目だよ?」
「正確には、ティアナさんとフェイトさんに誘われたからなんだけどね…」


 ティアナが悪戯っぽい笑みを浮かべて、スバルがそれに同意するよに腕を組みながら頷いて。キャロがクスクスと笑いながら唇にそっと手を添える。エリオが少し遠慮しがちに頭を掻いて。


「まぁ…それはともかく、はい」
「…これ、花束?」


 驚いた様子のすみれに若干呆れたような表情をなのはは浮かべた後、すみれにそっと花束を差し出して、それにすみれは戸惑ったようになのはを見た。
 見上げるすみれの頭を撫でて。


「アネモネに、ね?」
「…え?」
「何となく花添えたい気分やったんよ。まぁ、気持ち程度に受け取ってやー」
「皆で少しお金出して買ったんだ」


 その言葉にすみれは渡された花束を見て涙が込み上げて来た。アネモネはあれだけ酷い事をした。許されないだろう事をした。だけど…それでもこうして皆は、花を持ってきてくれた。
 許して良いの? と、問うのは無粋だろう。すみれは、こみ上げてくる涙を拭って、皆に満面の笑顔を浮かべて。


「ありがとう…皆、ありがとうっ!!」





 風が花びらを攫っていく。そのまま、花びらを乗せながら風は、高く、高く…天へと昇っていく…。






 END……。
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■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話 Apart
2010/02/28 SunOnly One Flowers
 ジーク・インプレッサが逮捕されてから1週間が経過した。
 ミッドチルダにある病院。フェイトはその病室にいた。ベッドの上から晴れ渡った空を見上げている。特に何かするわけでもなく、ただぼんやりと。
 そんなフェイトの耳に扉をノックする音が聞こえた。ゆっくりとした動作で振り返り扉の方へと視線を向けてノックの主の入室を促す。


「どうぞ?」
「失礼するでー?」


 フェイトの病室に明るい声が響く。軽く片手を上げて入ってきたのははやてだった。それにフェイトは若干苦笑を浮かべてから。


「もう、元気そうだね」
「勿論や。まぁ、リンカーコアの方はまだなんやけどな。身体はぴんぴんや」


 そう言って自らの健康を主張するかのように腕をぐるぐると回して見せるはやてに、フェイトはおかしそうに、笑みを零すのであった。




Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 最終話「すみれ -Apart-」




 はやての手の中でリンゴが回る。はやてが果物ナイフでリンゴの皮を剥く音が聞こえる。その音を耳にしながらフェイトは自らの手を見つめている。暫し、互いに言葉は無く、リンゴの皮を剥く音だけが病室の中に響いて。


「…ねぇ、はやて」
「なんや? フェイトちゃん」
「…すみれ、どうしてるのかな?」


 小さく呟かれた言葉にはやては一瞬、リンゴの皮を剥く動きを止める。それから小さく溜息を吐き出して、天井を見上げるようにして。


「ティアナとか、ヴィータとか見舞いに行ってるそうやけど…アカンわ」
「…そんなに?」
「この前は喉を掻きむしろうとした、と言う話も聞いたで」


 再びリンゴの皮を剥く音が響く中、2人は沈痛な面持ちで俯いた。ジーク・インプレッサが引き起こした今回の事件での一番の被害者はすみれだろう。兵器として産み出され、彼の都合のままに捨てられた。
 同時にこの事件の加害者でもあり、被害者でもあるアネモネに失敗作と罵られながらも、彼女を救った矢先に…彼女を自らの手で殺した。


「…どこぞの悲劇物の物語やっちゅーねん」
「…はやて」


 はやてが小さく呟くように言う。それに、フェイトは些かはやての発言が軽率に思えた。故に目を細めてはやてを咎めるようにその名を呼ぶ。フェイトの声にはやては小さく溜息を吐いてから、悪かったわ、と呟いてからリンゴの皮剥きに戻った。
 再び2人の間に落ちる沈黙。リンゴの皮を剥き終わり、リンゴを食べやすいサイズに切り始めたはやてがぽつりと呟いた。


「そーいやフェイトちゃん。アネモネが、「風の花」って呼ばれてるの知ってるか?」
「…え?」
「アネモネはな…ギリシャ語の「アネモス」が語源っちゅう話やよ? ドイツの方でも何かしら風のなんたら~、って呼ばれてるらしいし…」


 そう言うはやての表情はその口調とは似合わぬ暗い物だった。


「まぁ…なんちゅう皮肉や、ちゅう話や。まるで…リインフォースやん」
「…ぁ…」


 確かに改めて言われればアネモネとリインフォースは良く似た消滅の仕方をした。
 それにはやては皮肉を感じていたのだろう。風の花、と名付けられた少女は…自らが祝福の風と名付けた人のように、残した者に全てを託して消えていったのだから。
 リインフォースは自身の存在を呪った。アネモネも…最後の時には自分を呪った、とすみれから聞いた話からそう解釈している。


「ある意味、この名前付けたジーク・インプレッサはジョークのセンスがあるわな。アネモネの花言葉もなかなかやで?」
「…どんなの?」
「「見捨てられる」「孤独」「期待」…。わかってて付けたんなら、これ以上の皮肉は無いわ」


 はやての言葉に、まったくだ、とフェイトは同意を示した。あの男の気紛れでつけたのだろうが、その気まぐれで踊らされた2人の…いや200人を越える子供達の事を思うと怒りが止められない。
 だが今、その仕事は自分の物ではない。自分は怪我の為、法廷に自分は立つ事は出来ない。クロノが代役を立ててくれる、という話だ。クロノが任せる人ならば信用がおけるだろう。ならば安心だと、自分に言い聞かせて。


「…すみれ…どうにかして持ち直すと良いね」
「…せやね」


 フェイトの呟きには…切なる願いが込められていた。はやてもそれに気づいたのか瞳を閉じて、同意を示すのであった…。




 + + + + +




 すみれは布団の中に潜り、ただ息を潜めていた。
 暗い。眼前に映るのは暗闇だ。淡く光は刺しているが無視。狭い場所故に、呼吸をする音が良く聞こえる。時折混ざる「声」にどうしようもなく泣きたくなる。
 だけど、もう涙は枯れ果てた。布団の中に蹲りながらすみれは自身の体を抱いた。
 深い悲しみが、心を引き裂いて…その引き裂かれた傷は癒えない。
 その時、扉をノックする音が聞こえた。すみれは無視する。誰が来ても、今は話したくない。会いたくない。眠っていたい。
 扉をノックする音はしばらくすると聞こえなくなった。代わりに聞こえたのは扉を開く音だ。誰かが入ってきたのだろう。どうでも良く思いながら、すみれは自らの身を強く抱きしめた。


「…すみれ」


 声。その声は、聞き覚えがあった。この病室に入ってから始めての声だ。思わず布団から顔を出して、その顔を確認した。そこには…高町なのはの姿があった。


「…なの…は」
「…うん。私だよ。声が出るようになったって…本当だったんだね?」


 なのはは気遣うようにすみれの頭を撫でながら問いかけた。それにすみれは喉に手を伸ばしかける。喉を、声を潰したくて、時折仕様が無くなる。
 この声はアネモネの物なのに。どうして自分が声を出しているのだろう。どうして、アネモネがいないのだろう。どうして私が、どうしてアネモネが…。


「…うぁ…」


 目が熱くなる。乾いた筈の涙がまた零れそうになる。アネモネの面影を持つなのはを見ると、なのはの声を聞くと、嫌でも思い出してしまう。蘇ってきた悲しい記憶は、再び彼女の閉ざした心の傷口を開く。
 泣き始めたすみれを見て、なのははすみれの被っていた布団を寄せ、そっとすみれを抱き寄せた。すみれは抵抗する事無くなのはの胸に納まって。


「…良かったね、は、言わない方がよい?」
「…ぅん…」
「…でも、私は良かったと思うんだ」


 なのはの言葉にすみれの身体が震える。なのはの言葉に耐えられなくなりそうになる。
 自分はアネモネを殺して、この声を手に入れた。アネモネが託してくれた声は、アネモネの死を以て、私に与えられた。
 それが堪らなく苦しかった。彼女の事を思い出すだけで、心に罅が入り、涙が止まらなくなる。なのはに縋るようになのはの腰に腕を回して。


「事情は…ティアナから聞いてるよ…。ねぇ? アネモネは…最後、どんな顔してた?」
「…笑って…た…」
「…どうして?」
「…わかんない。だけど…忘れないで、って…怖いって言ってたのに…力になる、って、私の為、って…幸せになって…って…」


 震えながらアネモネの言葉を思い出しながら呟くすみれ。その度に涙が零れ落ちていく。
 すみれが落とした涙を拭い取りながら、なのははあやすようにすみれの背を優しく撫でながら。


「…すみれは…今、幸せ?」


 なのはの問いにすみれは首を振る。幸せなんかじゃない。辛い、苦しい、悲しい。
 アネモネがいないから。アネモネにいて欲しかったから。アネモネにもっと笑っていて欲しかったから。アネモネともっと話がしたかったから。もっともっと彼女と生きていたかった。


「…そっか…。じゃあ…アネモネも、安心出来ないよ?」
「…ぇ…?」
「アネモネは…すみれの幸せを願ってたんだよね? だったら…すみれが幸せじゃなかったら、ずっと、ずっと苦しいと思う」
「…苦しい…の?」
「アネモネはそれを願って消えた。それが叶わないのは…辛いよね? 願いが叶わないのは辛いよね?」


 願いが叶わないのは確かに辛い。だから…アネモネは、辛い? でも、もうアネモネはいない。もうアネモネの声は聞こえない。アネモネが苦しいのかもうわからない。
 だってもうアネモネは死んでしまったのだから、と。すみれはそう思う。そんなすみれのの頭を撫でて、そっとなのははすみれを強く抱き寄せて囁くように言う。


「…アネモネはすみれの中で生きてるよ。すみれが忘れない限り…ずっと」
「…嘘…」
「嘘じゃない。すみれ…アネモネも、そう言わなかったの?」
「……っ!?」






『私を…忘れないで。私はずっと…貴方の力になるから。貴方と生きてるから…だから…悲しまないで…』







「…ぅ…ぐぁ…っ」


 脳裏に蘇ったアネモネの言葉に、声を押し殺してすみれは震えた。なのははただ、すみれの震えが収まるように包み込むかのように抱きしめて。


「…辛いなら、私が一緒にいるよ」
「…っ…なの…は…」
「私にも責任があるから…。だから、貴方を…貴方達を守りたいんだ。すみれが辛いなら…ずっと、一緒にいるよ…すみれが、一人で歩けるようになるまで」
「なの…はっ…なのはっ…なのはぁっ…!!」


 すみれは、ただ泣きじゃくる。なのははそんなすみれをあやすようにただ抱き続ける。
 逝く者が…残る者に残した物。それは重いけど、きっと何よりも尊い物。アネモネはただすみれの幸せを願った。その願いは叶えられるべき望みだ。


「…重いよ…。苦しいよ…」


 それはとてつもなく重たい。それでもすみれは思う。幸せになりたい、と。アネモネの為にも、自分の為にも。
 だから少しだけ、もう少しだけ泣かせて欲しい。そう呟きながら、すみれはただなのはの胸に顔を埋め、震えが収まるまで泣き続けた。
 泣いた後…少しでも笑えるようにしようと、そう思いながら…。
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■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第20話 Bpart
2010/02/28 SunOnly One Flowers
Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第20話「弔いの叫び -Bpart-」



 すみれが放ったスターライトブレイカーは全てを飲み込み、大地に小規模な一文字を描いた。最早「アネモネ」であった物は存在しない。完全消滅させたのだ。
 「アネモネ」の消滅を確認し、すみれはフラフラと地に下りてきた。地に足が付けば、ハルバードを地面に突き刺しその場に蹲った。


「すみれッ!?」


 それを結局呆然と見入る事しか出来なかったティアナが彼女の名を叫んだ。ティアナが叫ぶのと同時にフェイトがバルディッシュを支えにして立ち上がり、すみれの方へと歩み始めた。
 歩み出すフェイトに気づいたティアナは、彼女を支えるように肩を貸して、すみれの下へと歩いていく。


「うぁぁあああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」


 その最中、すみれが天を見上げて吠えた。喉が裂けるのではないか、と言う程にまで吠える。瞳からは、ただ涙が流れ続けていた。すみれはただ泣き喚いていた。その胸にある悲しみが彼女に泣き叫ばせる。その感情を少しでも吐き出そうとして。
 だがいくら吐き出そうとしても、吐き出しきれない悲しみは止まらない。何度も、何度も声を挙げ続ける。放っておいたら喉が裂けるまで叫び続けているのではないか、と思う程の叫びだ。
 その叫びにフェイトとティアナは顔を歪めた。すみれにとってアネモネという存在は自分達が思っているより大きかったのだろう。その彼女をすみれは、自らの手で消滅させた。フェイトとティアナはわかったのだ。アネモネはすみれをユニゾンから解除する為に自身を消滅させたという事を。
 故にプログラムが暴走し、あのような「化け物」が生まれた。更にあれはすみれの言葉が正しいのなら「アネモネの負の心」の象徴とも言えるのだろう。


「…すみれ」
「…フェイトォ…」


 なんとかティアナの肩を借りながらもフェイトはすみれの下へと辿り着いた。すみれはフェイトに気づいて吠えるのを止めた。だが、それは一瞬だ。すぐに表情が悲しみに歪み、フェイトに縋るように抱きついて、また吠える。
 吠え続けるすみれをフェイトは唇を噛み締めながら抱きしめた。どれだけ辛いのか、最早想像も付かない。ただせめて悲しみが少しでも癒える事を願いながら抱きしめるしか出来なかった。
 すみれとフェイトにティアナは視線を直視させる事が出来なかった。視線を逸らした時…ティアナは気づいた。
 それは転送の光。何かが転送してくる、とティアナは警戒の視線を向けてクロスミラージュを構えた。転送の光が消えた時、そこにいたのは、ジーク・インプレッサだった。
 思わずティアナが呆気取られた瞬間だった。ジークがいきなり大声で笑い出した。


「素晴らしいッ!! 素晴らしいよ君は!! No.207…いや、すみれ!! 君はなんて素晴らしいんだ!!」
「…は…?」


 ティアナは目を見開いてジークを見た。何を言っているのか理解が出来ない。いや、したくないのだ。コイツは何を言っている。今、目の前で何を見て、その言葉を吐いている。その言葉に反応したのか、すみれが吠えるのを止めてジークを見た。


「最高じゃないか! その力!! まさか、まさかだっ!! まさかそのような素晴らしい力に目覚めてくれるとは、君は最高だよ!! まさに私の理想だっ!!!!」


 狂ったように拍手までし出したジークにティアナは殺意が湧いた。人の心を何とも思っていないこの男に本気で吐き気がする。それはフェイトも同じようだ。まるで射殺さんばかりの視線でジークを睨み付け、歯軋りの音を強く鳴らせた。だがそれ以上に怒りを放つ者がいた。それは…すみれ本人だった。


「ぁ…ぁぁぁ…ぁぁああああああああああああああああああっっっ!!!!」


 涙を流しながら憤怒の顔を浮かべ、すみれはフェイトの腕から抜け出しジークへと走り出した。それにフェイトは思わず、彼女の名を呼んで制止の声を挙げる。ティアナも止めようとしたが、彼女は一直線にジークへと向かって走っていき。


「お前がぁっ! お前がぁぁっ!!」
「ぐふっ!?」


 すみれの右拳がジークの左頬を殴りつける。殴られるとは思っていなかったのか、笑ったままジークは殴り飛ばされ地面に転がる。転がったジークに飛びかかり、再び拳を振るう。再びジークの顔面が殴り飛ばされ、歯が折れて地面に転がっていく。それでも、尚ジークは笑い続ける。


「何を怒っているんだい!? 素晴らしい力だろう!? 喜び給えっ!? 君は勝者になったんだよっ!? 誰にも屈しない力を…」


 もはやそれ以上の言葉は無かった。ジークにとっても、すみれにとっても。すみれはジークの言葉を遮るように殴る。ただひたすら殴り続ける。まるで悪鬼のような表情でジークをすみれは殴りつけていく。
 すみれの拳を受けてジークの顔が腫れて歪んでいく。唇の端を切ったのか血も飛び交う。思わず呆然と見ていたティアナとフェイトだがすぐに止めに入る。いくら犯罪者とはいえこれは不味い。最悪、すみれにまで罪がかかってしまう。


「止めなさい! すみれッ!!」
「ッ!? 離して、離してぇっ!?」


 ティアナが無理矢理羽交い締めにしてすみれを押さえ込むが、涙を零しながらすみれは叫ぶように訴える。ティアナは歯を食いしばってそれを堪える。ここで離す訳にはいかない、と。
 すみれは、ジークを殴り続けるだろう。最悪、殺すつもりだ。…いや、きっと殺すつもりだったのだろう。だがそれだけはさせる訳にはいかない。故に、ティアナは叫んだ。


「アンタ、アネモネに生かして貰った命を無駄にするつもり!? そいつを殺したら、その命を無駄にするって事なのよっ!?」
「っ!?」
「だから、落ち着きなさいっ!! こんな奴…殴る価値すら無いわ!!」


 それだけ叫ぶように言い切れば、ティアナは荒い息を吐いたまま、すみれを抑え付ける。ふと、急にすみれの力が抜け、すみれが俯き、涙を零したまま呻き声を上げ始めた。
 …悔しいのだろう。だが、ティアナは先ほど言ったようにすみれがジークを殴る価値は無いと思っている。それは誰もがそう思うだろう。


「…アネモネの為にも…コイツには、法廷に立たせて、裁かせる。裁くのは…アンタの仕事じゃないわ」
「…ぅっ…ぐぅっ…うぁっ…ぁぁっ…」


 呻き声は、泣き声に変わっていた。ジークはぴくり、とも動かない。どうやら気絶しているようだ。それにフェイトが何かを堪えるような表情をしながらしゃがみ込んだ。
 その時、3人の眼前に空中モニターが表示され、そこには焦った表情のクロノがいて。


『3人とも、大丈夫か!?』
『ようやくモニター回復しましたよーっ!? ご無事ですか!?』


 クロノに続いて、シャーリーのモニターも追加され、2人が心配そうに声をかけてくる。どうやらすみれとアネモネの衝突からモニターが使えない状況にあったようだ。
 その間にも何かが起きているというのはわかっていたが、詳細がわからなかった為、こうして焦れったさを堪えながら、ようやく通信が繋がったと言った所なのだろう。クロノの顔を見て、フェイトは疲れたように溜息を吐いて。


「…アネモネは…消滅。…ジーク・インプレッサは、今、確保したよ」


 フェイトの告げた事実にすみれが身を震わせた。アネモネの名が出たからだろう。落ち着かせるようにティアナが後ろからすみれを抱きしめて、何度も頭を撫でてやる。
 その様子にクロノは何かあったのだろう、と事情を察知して、そうか、とただそれだけ短く返すだけに留めて、瞳を閉じた後、フェイト達に指示を下した。


『…わかった。今、回収する。暫くそこで待機していてくれ』


 クロノがそれだけ告げるとクロノのモニターが消える。シャーリーも、空気を読んだのか、暗い表情のまま、労いの言葉を告げてモニターを閉じた。
 残された3人。その3人の頬を撫でるように荒野の風が寂しく吹いていった。





 + + + + +





 この後の顛末をお話しよう…。
 クラウディアに帰艦したすみれ、フェイト、ティアナは、すぐさまミッドチルダの病院に入院させられる事になった。軽傷の順から名前を挙げていくならば、すみれ、ティアナ、フェイトだ。
 フェイトは肋骨を骨折。内臓にもダメージが与えられたのか、全治2ヶ月程と診察の結果が出された。ティアナの方も左腕骨折。更に過労で、暫くは休みを取った方がよい、と医師に診断された。
 そして…すみれなのだが、肉体的には誰よりも軽傷ではあったが…精神的に深く傷付き、食事を喉に通さなくなった。時折、声を出すだけで、涙を零すなどと精神的にかなり不安定な状況にあり、暫く入院させられる事になった。
 ジーク・インプレッサは、クロノが収容所へと送り、裁判の準備を行っているという。投獄されたジークは、どこか虚ろな状態で、質問にも答えず、時折暴れ出すという奇怪な行動を取り、精神鑑定も行われているという話だ。
 すみれがジーク・インプレッサを殴ったという話は、ジークの証言も無く、クロノによって怪我の理由をでっち上げにより、自然と消滅していったので、結果的にすみれのお咎めは無しという流れになった。
 この後に…フェイトはこの事件の事をこう語る。


「…記憶に残るような…虚しい事件だったよ。きっと…今までの事件で、一番ぐらいに、ね」


 こうして…ジーク・インプレッサによって引き起こされた事件はようやく、幕を下ろそうとしていたのであった。
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■■■Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第20話 Apart
2010/02/28 SunOnly One Flowers
「制御…不能だと?」


 ジーク・インプレッサは先ほどまで狂喜に歪めていた顔を驚愕に変化させていた。
 その原因は管制人格が消滅した事により、制御するプログラムが破損してしまったのだ。バックアップすら破壊され、残されたのは、ただ暴走する力の固まりだけになってしまった。


「…何故だ…? 何故管制人格が…アネモネが消滅した…?」


 理解が出来ない、と言った様子でジークは呟き続ける。夢見た「最強」はどこへ行ったのか。ただそれだけを自分に問いかけながら…。




Only One Flowers =選び取ったそれぞれの未来= 第20話「弔いの叫び -Apart-」




 眼前で吠える巨大な獣。多種多様な生物が混ざり合って出来た不気味な生物。いや、生物とは言えない「何か」。それを見てティアナは身を震わせた。おぞましい、と。


「何だってのよっ…!?」


 意味がわからない。それが彼女の正直な心境だ。すみれとアネモネがユニゾンで融合して、その融合した少女と戦っていたら、急にすみれが出てきて、あんな化け物が出てくる。 状況が目まぐるしく移り変わる所為で、ティアナも現時逃避したい程までに、この状況を理解する事が出来ない。その時だ。獣が咆哮を止め、今度はただ「吠える」のではなく、何かを呟きだした。


「ニクイ…コワイ…シ…イヤ…コロス…イキル…」


 それは呪詛だ。ティアナはその言葉を聞いて背筋が震えた。それは暗い負の思いだ。一体コイツは何なのか、と呆然と見上げていると、化け物の背後から触手が伸び、ティアナを地に叩き付けようと迫った。
 呆然としていたティアナは、反応が遅れ、逃げる事が出来ない。当たる、と思った瞬間だ。


「ティアナ! 下がってッ!!」


 それは誰かの声。その声と共に触手が白桃色の魔力砲によって吹き飛ばされる。思わず呆然とする。ティアナが振り返ると、そこにはフェイトを支え、掌をこちらに向けているすみれの姿がある。


「早くッ! フェイトを連れて下がって!!」


 呆然とするティアナに向けてすみれは叫び続ける。ティアナはそこでようやく気を取り戻し、すみれとフェイトの方へと走り出した。その際、触手が何度も向かってくるが、すみれの魔力弾によって牽制され、ティアナに当たる事は無い。ティアナは2人の下に辿り着き、怪しむようにすみれを見た。


「アンタ…どうして声…」
「後にして。それより、フェイトを連れて下がって。ここにいたら危ない」
「で、でもあの化け物どうすんのよっ!?」


 どうやら、どうしてすみれの声が出るようになったのか、その疑問にすみれは答えてくれないようだ。確かにその問答をしている時間が無いのは事実だが。
 すみれが撤退を勧めるのもわかる。フェイトのダメージが酷すぎる。ここは一度退くべきだろう。だが、そうしてしまえばあの化け物はどうしするのか、と。
 それにすみれは、フェイトをティアナに預ける。手を自らの首にぶら下げていた赤い宝玉の付いたタグ、待機状態のハルバードへと伸ばし、強く握って。


「…私がやる」
「はぁっ!? あ、あんた一人で!?」
「大丈夫。行ける。だから、ちょっと下がってて…」


 そう言って、化け物の方へと一歩、踏み出していくすみれにティアナは戸惑うしかない。明らかに無謀だ。そんな事を認める訳にはいかない。故に、呼び止めようとした時だ。


「…あれは…アネモネの悲しみだから。私が止めなきゃいけないんだ」


 すみれの悲しそうに呟かれた言葉に動きを止められた。ティアナはすみれに何を問う事も、その行動を止める事が出来なかった。
 その背中に、言いようの無い寂しさと、悲しさ。そして…怒りを感じたからだ。すみれから移されたフェイトが、ティアナの腕の中で身動ぎをして。


「すみ…れ」


 フェイトがすみれへと手を伸ばそうとする。フェイトの声が聞こえたのか、すみれが顔だけフェイトに向けて振り返る。
 そこにあったのは今にも泣きそうな表情のすみれだ。だがそれでも安心させるように笑みを浮かべようとしたのだろう。泣き笑いのような表情がそこにあった。


「…ごめん。私に任せて」


 ただそれだけ小さく告げ、すみれは化け物の方へと疾走を始めた。彼女がアネモネの悲しみと称した物へと。ただ、その後ろ姿をフェイトとティアナは見送る事しか出来なかった。


「ハルバード」


 すみれは呼びかける。それに答えるように手握ったハルバードが反応を返し、自身の手に槍が現れる。それを強く握り、まずはランスフォームから、セイバーフォームへと変化させる。


「フルドライブ…ライオット」


 すみれは更に、ハルバードを変形させる。セイバーフォームの刃が半分に裂けるように亀裂が生まれる。コアが二分化され、カードリッジシステムも2つに追加され、片刃の双剣が生まれる。刃の柄の部分には互いを繋ぐようなコードが繋がれる。
 力が高まるのを感じる。双剣の実体刃に、魔力刃を付与させる。魔力を濃厚圧縮し、結晶化。フレームに「嵌める」ように刃を付与させ、予め付与させておいた「魔力刃」を繋ぎに。
 フレームの負担を軽減させるために思いついた方法で刃を構築した所、上手く行った。それに手応えを感じながら、眼前にそびえる巨体を睨み付ける。


「アネモネ…」


 あれはアネモネの悲しみだ。アネモネはもういない。アネモネはここにいる。自分と共にいる。
 そう思うだけで涙が零れ落ちそうになる。だが、それを拭う暇は無い。こちらに向かってくる触手を片方の剣で切りつける。そのまま触手の上を伝って走るように疾走。
 それを止めようと触手が無数に向かってくるが、それを斬りつけ、踏みつけ、飛び回りながら回避する。ただ、奧へ。奧へと。その巨体の心臓部へと向かっていく。


「カードリッジロード」
『Explosion』


 双方から排出されるカードリッジ。計、6発。左右を合わせて残弾は6発。それを確認し、周囲に集まりだした粒子状の魔力結晶にオートガードさせながら、更に体勢を低くするように走り抜けようとする。
 だがそれを許さぬように、触手が道を塞ぐ。小さな舌打ちと共に、詠唱を開始。


「彼方より来たれ、やどりぎの枝」


 それはアネモネの残した「力」。アネモネのリンカーコアに刻まれた力は「1つ」になった今、自らの力ともなった。噛み締めるように、その力の迸りを確かめ、更に詠唱を続ける。


「銀月の槍となりて、撃ち貫け!! 石化の槍、ミストルティン!」


 ベルカ式の魔法陣が展開され、まず6発の光の槍を放ち、中心部から最後の1発を放つ。放たれた光の槍は道を塞いだ触手へと直撃。直撃した触手は石化を始めていく。
 それに獣の咆哮が鳴り響く。まるで悲鳴のようだ。それに顔を歪めながら、石化した触手を、結晶剣で破砕。そのまま破片と共に前方へと飛ぶ。そこに待っていたのは、牙のような物を弾丸にしたのか、無数に白い弾丸が向かってくる。


『Sonic Move』


 高速移動の魔法を起動。その場から消えるようにして移動し弾丸を会費する。斜め上の触手を蹴り上げ、反動を生かしながらそのまま直進していく。心臓部が目前に近づいてきた。
 そこには十字架に貼り付けられたように化け物の肉へと埋まるアネモネ…いや、「アネモネの残滓」を確認する。あれがコアとなっている筈だ。目的は見えた。ならば、後やる事は決まっている。


「カードリッジフルロードッ!!」
『Explosion!』
「圧縮魔力…解放ッ!!!」


 カードリッジを全弾消費し、次に周囲に結晶化させていた魔力の結合を解く。一瞬にして周囲に散る魔力を1つに集めていく。起動する術式に多少のアレンジを加え、集束させていく。
 星が集う。未だ、結晶化を解かれていない二本の魔力結晶に詰め込まれていく。


「スターライト…」


 告げる名は…最強の魔法の名。すみれが一度は打ち破った物。オリジナルや「アネモネ」と比べればかなり改変された物になるかもしれない。だけど、これが私なりの全力全開。
 自らの魔法を阻止せんと触手が迫る。だが、それよりも先に心臓部を潰す。そこにいる「アネモネの残滓」を消し去る。


(…言えないね)


 剣を振り上げてすみれは目の前に映る「アネモネの残滓」に、苦笑いを浮かべて。


(…サヨナラは……言えないよ)


 涙が溢れ出した。もう彼女の姿が見えない。だが、もう後は振り下ろすだけだ。見る必要などない。もう、彼女が消える所なんて見たくない。だから好都合だったのかもしれない。


「ブレイカァーーッッ!!!!」
『Starlight Breaker』

 咆哮と共に星光の剣は解き放たれた。十字を描くように振り下ろされた剣。本来球状になって解き放たれるそれは「斬撃」として放たれる。刃の壁、というべきだろうか。それは一直線に巨体の中心部を貫き…そして2つの剣が交差した瞬間に。


「ブレイク…シュートォッ!!!」


 終わりを告げる宣言が響き渡り…閃光を弾けさせた。そこにある「悲しみ」を飲み込みながら…。
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